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CDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクトへの挑戦 :三菱UFJフィナンシャル・グループ
2004年9月。カンボジアの首都プノンペンから約20キロ南に位置する、カンダル州アンスヌール村。カンボジア最大の精米所であるアンコール精米所の視察を終えた三菱UFJ証券クリーン・エネルギー・ファイナンス室主任研究員の吉高まりは、「これならきっと、CDM(クリーン開発メカニズム)事業にできる」と確信を持ちました。
CDMは、京都議定書で温暖化ガスの削減目標が課された先進国が、発展途上国で温暖化ガス削減プロジェクトの実施に寄与した場合、プロジェクトによる排出削減量を自国の削減分とみなすことができる仕組みです。
クリーン・エネルギー・ファイナンス室は、このCDMに取り組み、温暖化ガス排出量の削減と発展途上国の持続可能な発展、その両者への貢献をめざしています。
アンコール精米所では、従来、ディーゼル油を燃料に発電し、その電力で精米機を動かしてきました。吉高らが考えたCDM事業とは、精米後に出るもみがらを燃やして発電を行い、精米に使う電力をまかなうというもの。化石燃料であるディーゼル油も、もみがらも、燃やすと二酸化炭素(CO2)を排出しますが、もみがらの場合は、稲が成長する過程で吸収したCO2と同量を排出するだけなので、大気中のCO2濃度には影響を与えず、温暖化を促進しません。
CDMでは、プロジェクトにより確かに排出量を削減できることを証明し、国連に認められる必要があります。排出量の削減が途上国で認められた場合は、削減量分のクレジットと呼ばれる証明が発行され、プロジェクトに寄与した国の削減量に組み込むことができるのです。
精米用の発電の燃料とするために集められたもみがら
アンコール精米所の案件を支援するのは、技術提供を行うオランダ企業や、日本の削減分獲得のために設備費の一部を負担する独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)です。クリーン・エネルギー・ファイナンス室では、CDMプロジェクトの実現可能性を検討し、国連に提出する「プロジェクト設計書(PDD)」を作成するほか、クレジット取得手続きに関するアドバイスや代行など、総合的なコンサルティングを行っています。アンコール精米所の案件では、プロジェクトの実現可能性調査やPDDの作成、バリデーション(効果の実証)、国連への登録などを行いました。
バイオマス発電の燃料となるヤシ
CDMには、プロジェクトが発展途上国の持続可能な発展に寄与すること、という条件もあります。今回のもみがら発電の場合、電気が通っていなかった精米所の周辺地域に余剰電力を供給するため、地域住民の生活の質向上にも貢献できます。バイオマス発電(注)の技術移転もできます。カンボジア環境省気候変動オフィスの責任者は、「資源が少ないカンボジアではエネルギー源の確保が重要な問題。このプロジェクトは、エネルギー問題の解決に貢献する上、農業の促進にも役立つ」とプロジェクトに大きな期待を寄せ、カンボジア初のCDM事業を承認しました。
(注)もみがら、ヤシ、木材など生物起源の物質をエネルギー源とした発電。
クリーン・エネルギー・ファイナンス室は、2001年に設置された社長直轄のクリーン・エネルギー・ファイナンス委員会からその活動をスタートしました。当初、メンバーは委員長の波多野順治と吉高の二人。金融の仕組みを活かして環境に貢献するさまざまな手法を検討した中で、CDMに着目しました。その理由は、環境保全に貢献する事業に直接資金を回せること。そして、証券会社の強みを活かせること。
CDMはこれまで金銭的な価値が認められていなかった環境に金銭的価値を与え、それをテコに、資金を呼び込みます。国連に提出するPDDが有価証券の目論見書と似ているなど、証券市場と類似した手続きもありました。
吉高まり(クリーン・エネルギー・ファイナンス室主任研究員)
委員会設置時は、京都議定書が発効するかどうかもわからない状況。事業の先行きも見えませんでしたが、現在は各方面からの問い合わせが殺到しています。フィリピンのごみ埋立地からのガス回収やマレーシアでのヤシがら発電など、これまでに44件のプロジェクトを手がけてきました。同室のメンバーは20人以上に増え、さまざまな国籍の、環境や金融の専門家が働いています。「金融機関の能力をフルに発揮して、CDMの仕組みを使って社会に貢献していきたい」。金融を通して環境保全に貢献する方法を長い間模索してきた吉高は、こう意気込みを語ります。タイの植林およびバイオマス発電事業など、すでに新しいプロジェクトも計画しており、今後もさまざまなCDMプロジェクトを手がけていく予定です。