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第三者意見

MUFGは現行の中期経営計画をギアアップする形で、2017年5月、「MUFG再創造イニシアティブ」を策定した。2018年度からの次期中期経営計画を待たず、事業戦略の洗い直しを行った経緯は、統合報告書に詳述されているが、一言でいえばグローバルな社会経済の急速な環境変化に即応するため、変革の加速と一段の深化を目指すものといえる。

藤井良広

上智大学地球環境学研究科客員教授
一般社団法人環境金融研究機構代表理事 藤井良広

環境・社会・ガバナンス(ESG)を軸とした企業の社会的責任(CSR)の取り組みも、同様に、一段のギアアップが求められる節目を迎えている。環境面ではグローバル課題である地球温暖化対策を国際的に推進するパリ協定が2016年末に発効する一方で、トランプ米政権が同協定からの離脱を宣言した。グローバルに展開する多くの企業は、自らの判断を問われる状況になっている。

社会面では、2015年9月に採択された国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けた取り組みが本格化している。持続可能な社会を実現するための17のゴールと169のターゲットに、企業はどう取り組み、ビジネスチャンスに転換できるのか。目白押しの課題が経営判断を迫る形で相次いで浮上しており、企業のガバナンスは一層の適応力を求められている。

MUFGは本報告冒頭のCEOメッセージで「金融グループ本来の社会的使命」として、これらの持続可能社会の課題に取り組むことを宣言している。求められるのは「宣言から取り組みへ」である。その取り組みはMUFGですでに動き出している。特筆される活動の一つは、2016年9月のグリーンボンドの発行だ。同グリーンボンドの発行が画期的なのは、本業のリスク管理と、ESG市場での新たな展開を両方とも満たす「知恵」を発揮した点だ。

MUFGをはじめ世界の主要銀行は、バーゼル国際銀行監督委員会で「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」に指定されている。そのG-SIBsを対象に、2019年3月から自己資本強化のための「総損失吸収力(TLAC)規制」が導入される予定だ。MUFGは同規制対応で発行するTLACボンドの一つに、グリーンボンドを組み込んだ。まさに本業とESG対応の統合の具体例であり、MUFGの金融技術力をアピールする形となった。

地球温暖化対応で、金融の役割を問う金融安定理事会(FSBの)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告がまとめられたのも、この1年の間に、金融界が環境問題に正面から向き合うきっかけの一つになった。投融資先の企業等が抱える気候変動リスクとオポチュニティを金融が評価し価格付けするフレームワークづくりを求められたのだ。実はこの点でも、MUFGは有利なポジションにいる。

前年の本欄でも指摘したように、MUFGは2005年度から環境・エネルギー分野への融資を通じて、融資先のCO2排出削減効果を把握する活動を展開してきている。すでに把握した取引先の累積CO2削減量は100万トンを超えている。10年を超える取引先の「環境負荷」を評価する経験は、TCFDが求める気候変動リスク・オポチュニティの評価要請を、ある意味で先取りしていたことになる。今後のMUFGの「気候変動対応力」の展開に期待したい。

ESG課題が、金融にとっての新たなリスク・オポチュニティの一つになることは、多くの金融人の間でも理解が深まってきた。ただ、注意しなければならないのは、「非財務要因」とも呼ばれるESG課題のリスクは、経済評価が可能な従来の財務要因と異なるだけではなく、ESG各分野のリスク評価も同一ではない点だ。

簡単にいえば、投融資などの財務上のリスクは、その資産・債権額の範囲にとどまるが、ESGの場合、資産・債権額を超えて拡大する可能性がある。また気候変動などの環境リスクの場合は、CO2排出量などを測定することである程度定量化できるが、コミュニティへの影響や人権問題などの場合、定量化は極めて困難になる。これは外部不経済としての環境リスクと、社会の外部経済に企業のほうが立脚することで生じる社会リスクとの違いである。さらにガバナンスリスクは、経営環境の変化等の不確実性を把握する明確な手法が存在しない、といった課題がある。

MUFGにおいては、こうしたリスク管理面においても、財務・非財務の両要因を統合的にとらえ、経営の安定と持続可能な社会の実現の両方の目的を、主導していく役割を果たされることを期待したい。

(2017年9月現在)

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