文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社および当社グループ各社は、当社が採択したMUFGグループ全体で共有する「経営ビジョン」を全ての活動の指針とし、当社の「目指す姿」である「「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行」(コーポレート・メッセージ “信託が動かす未来を/TRUST Drives Our Future”)、ならびにその実現に向けた戦略の柱として「「コンサルティング&ソリューションビジネス」強化」、「信託ビジネスのイノベーションへの取組み」、「デジタル化による「変革」 ~Digital Transformation」および「人財・働き方・カルチャーの「変革」」を掲げ、お客さま、社会および株主等の全てのステークホルダーから評価をいただける信託銀行を目指して、経営に当たっております。
当社が目指しております「「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行」とは、社会・お客さまの課題を解決する会社ということになります。当社は、少子・高齢化や個人の資産形成、企業のコーポレート・ガバナンス改革、インベストメント・チェーン改革など、社会の様々な課題の解決に貢献する「金融サービス業への転換」を進めております。
金融自由化やデジタル化の流れの中で、対面での店舗網を持たないネット銀行やネット証券、新しい技術を持った企業の新規参入等、当社のビジネスに係る競争は激しさを増しております。その中で当社は、高い専門性とMUFGグループの広大な顧客基盤を融合し、個人のお客さま向けの資産運用、資産管理、資産承継および法人のお客さま向けの不動産、企業年金、証券代行等に軸足を置いた信託型の「コンサルティング&ソリューションビジネス」をさらに進化させていくとともに、重要な成長領域である国内外のアセットマネジメント業務(資産運用業務)およびインべスターサービス業務(資産管理業務)にも一層注力してまいります。さらに、信託の仕組みを活用した新たなソリューションの創出も推進してまいります。
足元では、新型コロナウイルス感染症の広がりが実態経済へ影響を及ぼし、同時に個人や企業の行動様式や社会構造の変化をもたらしつつあります。当社は、引き続き社会インフラとしての機能をしっかりと果たしていくとともに、社会の変化に伴う新たな課題の解決にも取り組んでまいります。
<経営ビジョン>
私たちの使命
・いかなる時代にあっても決して揺らぐことなく、常に世界から信頼される存在であること。
・時代の潮流をとらえ、真摯にお客さまと向き合い、その期待を超えるクオリティで応え続けること。
・長期的な視点で、お客さまと末永い関係を築き、共に持続的な成長を実現すること。
・そして、日本と世界の健全な発展を支える責任を胸に、社会の確かな礎となること。
それが、私たちの使命です。
中長期的にめざす姿
世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ
-Be the world's most trusted financial group-
1.お客さまの期待を超えるクオリティを、グループ全員の力で
2.お客さま・社会を支え続ける、揺るぎない存在に
3.世界に選ばれる、アジアを代表する金融グループへ
共有すべき価値観
1.「信頼・信用」(Integrity and Responsibility)
2.「プロフェッショナリズムとチームワーク」(Professionalism and Teamwork)
3.「成長と挑戦」(Challenge Ourselves to Grow)
当社および当社グループ各社は、MUFGグループの中核企業の一つとして、専門性を一層発揮し、より質の高い、競争力のある商品やサービスの開発ならびに新たな市場やチャネルの開拓によるお客さまへの商品提供機会の拡大に注力していく所存であります。
当連結会計年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、米中貿易摩擦等を受けて総じて減速基調にあったものの、年度後半にかけては、半導体産業等の製造業にも世界的に底入れの兆しがみられ、米中貿易摩擦等の政策要因による不透明感が依然残るなかでも上向きに転じる動きを示していました。しかしながら、第4四半期に入ってからは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大という新たな危機に直面しました。この感染症は、まず中国で大きく拡大しましたが、2020年2月末以降先進国の米国や欧州でも急激に広がり、更にASEAN(東南アジア諸国連合)やNIEs(台湾、韓国、香港、シンガポール)等中国以外のアジア地域でも感染者増加がみられました。こうしたなか、わが国でも、2020年3月末にかけ大都市圏を中心に新規感染者の発生が増加する展開となりました。感染拡大を抑止すべく各国・地域では厳しい公衆衛生上の措置がとられましたが、こうした措置は一方で経済活動の著しい低下をもたらすことになりました。
金融情勢に目を転じますと、年度初めから第3四半期にかけては米中貿易摩擦等の推移を受け、その時々で相場が上下に反応する展開となりましたが、日米株価は上昇傾向、円の対ドル相場は総じて1ドル100円台後半で推移していました。ただ、第4四半期に入ってからは、新型ウイルス禍の拡大を受け、株価は調整色を強めたほか、円の対ドル相場も振れの大きい展開となりました。金利については、米中貿易摩擦に伴う景気の先行き不透明感や低いインフレ率等を理由に各国の中央銀行が利下げを行う等して金融緩和姿勢を強めたことを背景に、海外先進国、わが国ともに総じて低位で推移しました。年度末にかけては、新型ウイルス禍拡大後に、米国で再び政策金利の下限がゼロ%となり、一部の新興国が米国に追随して利下げを行う等、世界的に更に強力な金融緩和政策がとられた結果、海外を中心に金利は一段と低下しました。
当社グループは、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を目指すMUFGグループの中核企業の一つとして、MUFGグループの事業戦略を通じて、信託銀行の機能を発揮することにより、総合金融グループとしてのシナジーを追求していく所存であります。
当社は、高い専門性とMUFGグループの広大な顧客基盤を融合し、相続業務および不動産、年金、証券代行等に軸足を置いた信託型の「コンサルティング&ソリューションビジネス」を引き続き展開していくとともに、重要な成長領域である国内外のアセットマネジメント業務およびインベスターサービス業務にも一層注力し、お客さま、社会および株主等の全てのステークホルダーから評価をいただける信託銀行を引き続き目指してまいります。
① 各事業部門における課題
(リテール部門)
少子・高齢化の進展に伴い、個人のお客さまが安心・豊かに暮らしていくための仕組みづくりに対するニーズは益々高まっております。当社は、お客さまの資産運用、不動産活用、相続に係る商品やサービスをワンストップで提供する総資産営業を軸に対応してまいります。さらに、認知症問題へのソリューションとして、スマートフォンアプリを活用し、ご家族等による「みまもり機能」を付加した代理出金機能付信託「つかえて安心」を提供しておりますが、今後も高齢社会における課題に対応した商品やサービスの提供・開発を継続してまいります。
(法人マーケット部門)
法人のお客さまには、コーポレート・ガバナンスの高度化や株主・投資家との対話の重要性の高まりといった課題に対し、長年培ってまいりました株主名簿管理業務を起点とした株主戦略コンサルティングサービスを提供し、また、不動産仲介、テナントリーシング、CRE(企業不動産)戦略コンサルティングといった総合的な不動産ソリューションをより進化させ、企業の持続的な成長基盤づくりを支えてまいりたいと考えております。
(受託財産部門)
低金利が継続する中での、法人のお客さまの企業年金制度の管理や運用の課題、働き方改革を起点とする人事制度や退職給付制度等の福利厚生制度の課題はさらに重要性を増してきております。当社は、企業年金の資産運用・資産管理・制度管理サービスの提供、退職給付制度の設計に関するコンサルティングといった機能により、お取引先従業員の皆さまの老後の安心を支える仕組みづくりをお手伝いしてまいります。さらに、国内外の投資家のお客さまからの多様化・高度化する資産運用ニーズに対応すべく、グローバルなアセットマネジメント業務およびインべスターサービス業務を成長戦略の主軸と置き、M&A戦略も含めて注力してまいりたいと考えております。
(市場部門)
市場・金融規制に加え、市場参加者に対する社会からの目線の高まりなど、市場部門に係る事業環境は国内外で大きく変化しております。
当社は、グローバル分散投資を通じた、安定した資金収益の確保に努めるとともに、資産運用会社等のお客さま向けの為替マネジメントサービス等アウトソースニーズに応えるサービス提供を引き続き行ってまいります。
さらに当社は、信託ビジネスのイノベーションへの取組みとして、シルバー金融ビジネス、インフラビジネス、データ信託を柱とした新商品・新サービスの創出、デジタル技術を活用したお客さまの課題解決にも挑戦してまいります。
② 業務効率化
業務の効率化につきましては、AI(Artificial Intelligence)等を活用した営業支援や、RPA(Robotics Process Automation)等を活用した事務の自動化等、デジタル技術を活用した業務プロセスの見直しやIT環境の整備等を通じた生産性の向上に、会社全体の課題として取り組んでおります。
③ 人財・働き方・カルチャーの変革
お客さまに価値ある商品・サービスをご提供するためには、高い専門性を持った人財の育成が必須であり、さらにその人財が能力を十分に発揮できるような企業カルチャーの醸成が、当社にとっての重要課題と考えております。プロフェッショナルな人財を惹きつけるための人事制度の見直し、社内コミュニケーションの一層の円滑化、スピード感をもった働き方への変革、および新しいことに挑戦する風土を作ることにより、社員全員が「良い仕事」をする会社にしていきたいと考えております。
④ 当社を支える基盤となる取組みと持続可能な社会実現への貢献
当社は、国内外の各種法令・制度改正への厳格な対応等、コンプライアンスの徹底とリスク管理の一層の高度化を引き続き推進するとともに、信託銀行として求められる高度な企業倫理を果たすべく、当社役職員に求められる思考様式・行動様式を制定した「三菱UFJ信託銀行のFiduciary Duty」の更なる浸透を図ってまいります。
加えて、お客さま本位の業務運営の更なる高度化を図るために、その取組みを定期的に公表・見直しするとともに、引き続きお客さまの利益に適う商品・サービスの提供に努めてまいります。
また、運用機関としての一層のガバナンス強化を図るために、「スチュワードシップ委員会」による当社のスチュワードシップ活動についての定期的なモニタリングの実施、利益相反管理の強化や議決権行使結果の公表の充実等、運用機関としてのスチュワードシップ活動の実効性を更に高めるための施策を引き続き実行してまいります。
さらに、「環境・社会課題への対応」と「持続的成長」の両立の実現に向け、企業活動を通じた社会問題や環境問題への取組みを積極的に推進するとともに、コミュニティへの貢献をしつつ、企業価値の向上を目指していく所存であります。
⑤ 新型コロナウイルス感染症の広がりがもたらす変化への対応
当社は、在宅勤務の進展や工場等の国内回帰等に伴う法人のお客さまの不動産ニーズの変化や、ワークスタイルの変化に伴う新たな人事課題など、新型コロナウイルス感染症の広がりがもたらすお客さまの行動様式や社会構造の変化に伴う新たな社会課題の解決にも取り組んでいくとともに、当社としてのお客さまとの接点のありかたや、当社社員のこれまでとは異なる新しい働き方を含む、会社運営そのものの見直しにも取り組んでまいります。
当社の親会社である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの中期経営計画では、中期経営計画の最終年度である2020年度の財務目標の水準とともに、中長期的にめざす財務目標の水準を以下のとおり設定しております(2018年5月公表)。
当社は、各種のリスクシナリオが顕在化した場合の影響度と蓋然性に基づき、その重要性を判定しており、今後約1年間で最も注意すべきリスク事象をトップリスクとして特定しています。2020年3月の当社リスク管理委員会において特定されたトップリスクのうち、主要なものは以下のとおりです。当社では、トップリスクを特定することで、それに対しあらかじめ必要な対策を講じて可能な範囲でリスクを制御するとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的な対応が可能となるように管理を行っています。また、経営層を交えてトップリスクに関し議論することで、リスク認識を共有した上で実効的対策を講じるように努めています。
主なトップリスク
(注)リスク事象:2020年3月の当社リスク管理委員会での調査審議結果を経て、取締役会に報告されたものの一例で
す。一般的に起こり得る事象で、当社固有でない情報も含まれます。
当社グループ(以下、当社という。)の事業その他に関するリスクについて、上記トップリスクに係る分析を踏まえ、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項は、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める所存です。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
1.外部環境等に関するリスク
(1)本邦および世界の経済の悪化のリスク
本邦および世界の経済は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大とそれに対して各国で採られる渡航、店舗等の営業その他の経済活動の制限等の措置、原油価格の下落等の要因もあり、大幅に悪化する可能性があります。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の収束時期が不透明であることに加え、米国政権の動向、各国・各地域における保護主義的な通商政策への転換が国際的な自由貿易体制をゆるがすという懸念、英国のEU離脱後の交渉のゆくえに関する懸念、中国経済の成長鈍化とそれに伴う新興国・資源国の景気低迷、世界各地域における政治的混乱等の要因も引き続き存在しており、先行き不透明な状況です。また、紛争(深刻な政情不安を含む。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、影響を受けた地域の経済の悪化や市場の混乱が引き起こされる可能性もあります。本邦および世界経済が悪化した場合、当社には、保有する有価証券等の市場価格の下落による損失、貸出先の業績悪化等による不良債権および与信関係費用の増加、外貨資金流動性の悪化、外貨資金調達コストの増加、リスクアセットの増加等が生じる可能性があります。また、各国の中央銀行の金融政策の変更による国内外の金利の低下等に伴う資金収益力の低下、お客さまの預かり資産減少等に伴う信託報酬や手数料収益の減少等により、当社の収益力が低下する可能性があります。さらに、経済活動の停滞による企業の新規投資や商取引の減少、個人消費の落ち込み、先行き不透明な金融市場での投資意欲減退、などが生じる可能性があります。
また、債券・株式市場や外国為替相場の大幅な変動により金融市場の混乱・低迷、世界的な金融危機が生じた場合等には、当社が保有する金融商品の価値が下落し、適切な価格を参照できない状況が生じ、または金融市場の機能不全が生じ、当社が保有する金融商品において減損もしくは評価損が生じる可能性があります。
これらにより、当社の事業、財政状態および経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(2)外的要因(紛争・テロ・自然災害等)に関するリスク
紛争(深刻な政情不安を含む。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、社会インフラに障害が発生し、当社の店舗、ATM、システムセンターその他の施設が被災し、または業務の遂行に必要な人的資源の損失、またはその他正常な業務遂行を困難とする状況が発生することで、当社の業務の全部または一部が停止または遅延するおそれ、あるいは事業戦略上の施策や市場・規制環境の変化への対応が計画通り実施できないおそれがあります。また、これらの事象に対応するため、予防的なものも含めた追加の費用等が発生するなどにより、当社の財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
例えば、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に対して、当社では安全確保と業務継続の両立に向けて、社長を本部長とする対策本部を設置し、リモートワークやオフピーク通勤の推進等各種対策を講じておりますが、当社および業務委託先の多数の従業員が罹患した場合や今後世界的な感染拡大が続く場合等には、更なる悪影響を受ける可能性があります。
また、当社は、自然災害のなかでも特に地震による災害リスクにさらされており、首都圏等当社の事業基盤が集中している地域において大規模な地震が発生した場合には、当社の財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。当社では、このような災害等のリスクに対し必要な業務継続計画を整備し、常にレベルアップを図っておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限りません。例えば、2011年3月に発生した東日本大震災のような大規模災害に伴う津波、液状化現象、火災、計画停電や節電対応等により、当社の店舗、ATM、システムセンターその他の施設の運営が悪影響を受けるおそれがあります。
(3)自己資本比率等の規制によるバランスシートサイズの制約
当社には、「バーゼルⅢ:より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」(以下、バーゼルⅢという。)に基づく自己資本比率およびレバレッジ比率に関する規制が適用されております。その詳細については、後記「3.(1)自己資本比率等に関するリスク」をご参照下さい。当社は、これらの自己資本比率およびレバレッジ比率を遵守して業務を遂行する必要があるため、自己資本等の金額により、総資産の額が制約されることになります。また、マイナス金利政策の影響から受託財産における投資待機資金等の余裕資金が当社銀行勘定に流入することで、有価証券、貸出等その他の資産を増加させることが困難になる可能性があります。これらの制約により、当社の全般的な収益性が低下する可能性があります。
(4)LIBOR等の金利指標の改革に係るリスク
当社では、デリバティブ、債券、証券化商品、貸出等、多数の取引においてロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の金利指標を参照していますが、2014年7月に金融安定化理事会は金利指標の改革および代替金利指標としてリスクフリーレートの構築を提言しました。また、2017年7月、LIBORを規制する英国の金融行動監視機構(FCA)長官は、2021年末以降はLIBOR公表継続のためにパネル銀行にレート呈示を強制する権限を行使しない旨表明しており、2021年末以降のLIBORの公表には不確実性があります。
当社では、2021年末以降のLIBOR公表停止の可能性が高まっているとの認識のもと、LIBOR等の金利指標の改革や代替金利指標への移行に対する対応を進めております。しかし、かかる移行は複雑で、かつ現時点で未確定な要素が多数あり、これによって、以下の事由を含め、当社の事業、財務状況および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
・当社の金融資産および負債に含まれるLIBOR等を参照するデリバティブやローンを含む幅広い金融商品の
価格、流動性、収益性および取引可能性に悪影響を及ぼす可能性
・既存のLIBOR等を参照する契約の参照金利をLIBOR等から代替金利指標に変更するための取引相手方
との契約修正等の交渉が必要になる可能性
・顧客、取引相手方等との間で、金利指標の改革や代替金利指標への移行に伴う、契約の解釈、代替金利指標と
の価値調整等に係る紛争が生じる、あるいは顧客との取引における不適切な取引慣行および優越的地位の濫用
等に関する紛争に繋がる可能性
・LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に関する規制当局への対応が必要となる可能性
・LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に対応するリスク管理その他の業務のためにシステム開発が必要
となり、かかる開発が十分に行えない可能性、あるいはシステム投資その他の費用の発生の可能性
気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる物理的な被害、気候関連の規制強化および低炭素社会への移行が、当社の投融資先の事業や財務状況に影響を及ぼし、投融資先への影響を通じて当社および当社が顧客から管理・運用を委託された資金の投融資ポートフォリオの管理・運営に影響を与え、当社の経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社は、気候変動に関するリスクの把握・評価や、情報開示の重要性を認識し、金融安定理事会によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures。以下、TCFDという。)が策定した気候変動関連財務情報開示に関する提言を支持するとともに、TCFDに沿ったリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組んでおりますが、気候変動に関するリスクへの取組みや情報開示が不十分であった場合またはそのように見做され、社会に対する責任を十分に果たしていないと見做された場合などには、当社の企業価値の毀損に繋がるおそれがあり、当社の事業、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2.戦略に関するリスク
(1)競争、ビジネス戦略等に関するリスク
金融業界では、AIやブロックチェーンといった新たな技術の進展や規制緩和等に伴い、電子決済領域など、他業種からの参入が加速しており、今後も競争環境は益々厳しさを増す可能性があります。
また、当社は、収益力増強のためにグローバルベースで様々なビジネス戦略を実施しておりますが、競合相手である他のグローバル金融機関による統合・買収・戦略的提携の進展等に伴い、競争が激化してきております。そうした中、以下に述べるものをはじめとする様々な要因が生じた場合には、これら戦略が功を奏しない、当初想定していた結果をもたらさない、または変更を余儀なくされ、こうした競争的な事業環境において競争優位を得られない場合、当社の事業、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・当社が目指している手数料収入の増大が想定通りに進まないこと。
・デジタライゼーション戦略の遅れ等により次世代の金融サービス提供が想定通りに進まないこと。
・効率化を図る戦略が想定通りに進まないこと。
・本邦における長短金利操作付き量的・質的金融緩和の長期化、またはマイナス金利幅の更なる拡大により、受
託財産における投資待機資金等の余裕資金が当社銀行勘定に流入することで、日本銀行当座預金へのマイナス
金利に係る支払の増加やバランスシートの拡大によるレバレッジ比率の悪化(財政状態の悪化)および日本銀
行への当座預金増加による流動性規制比率の低下(短期安定資金確保を示す指標の悪化)を引き起こすおそれ
があること。
・既存の貸出についての利鞘拡大が想定通りに進まないこと。
・現在実施中または今後実施するMUFGグループ内の事業の統合・再編等の遅延により、顧客やビジネスチャ
ンスの逸失もしくは想定を上回る費用が生じること、または効率化戦略もしくはシステム統合において想定し
ていた結果をもたらさないこと。
・必要な人材を確保・育成できないこと。
・必要な外貨流動性を確保できないこと。
・本邦および諸外国の法規制により、金融機関以外の事業者への投資の機動性や積極性が制限されること。
(2)業務範囲の拡大に伴うリスク
当社は、業務範囲をグローバルベースで拡大しているため、新しくかつ複雑なリスクにさらされる場合があります。当社では、かかるリスクに対応するために内部統制システムおよびリスク管理システムや法規制対応体制の構築、必要な人材の確保・育成に努めておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限らず、当社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、当社は、戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、今後も買収・出資・資本提携等を行う可能性があります。このような戦略的施策を踏まえ、当社では、買収・出資・資本提携後のPMI(Post Merger Integration)の着実な遂行や海外グループ会社の管理態勢高度化等に取り組んでおりますが、買収・出資・資本提携等においては、相手先の属する業界や相手先をとりまく経営環境の想定外の変化、経済の停滞、相手先の関係する法令・会計基準の変更、当社の意図とは異なる相手先の戦略や財務状況の変化、監督当局の承認が取得できないこと等により、買収・出資・資本提携等が当社の想定通り進展せず、もしくは変更・解消され、または想定通りのシナジーその他の効果を得られない可能性や、買収・出資・資本提携等に際して取得した株式や買収・出資・資本提携等により生じたのれん等の無形固定資産の価値が毀損する可能性があります。これらの結果、当社の事業戦略、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
買収・出資に伴う当社ののれん等の無形固定資産の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定(買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価)」、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照下さい。
さらに、業務範囲の拡大が予想通りに進展しない場合、当社の業務範囲拡大への取組みが奏功しないおそれがあります。
(1) 自己資本比率等に関するリスク
① 自己資本比率等の規制および悪化要因
当社には、バーゼルⅢに基づく自己資本比率およびレバレッジ比率に関する規制が適用されております。
また、2023年より、リスク計測手法等の見直し、レバレッジ比率の要求水準への上乗せが適用される予定です。
当社またはMUFGグループの自己資本比率およびレバレッジ比率が各種資本バッファーを含め要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限、業務の停止等を含む様々な命令を受ける可能性があります。
また、MUFGグループ内の一部銀行子会社には、米国を含む諸外国において、現地における自己資本比率等の規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
当社の自己資本比率およびレバレッジ比率に影響を与える要因には以下のものが含まれます。
・債務者および株式・債券の発行体の信用力の悪化に際して生じうるポートフォリオの変動
・調達している資本調達手段の償還・満期等に際して、これらを同等の条件で借り換えまたは発行することの
困難性
・有価証券ポートフォリオの価値の低下
・為替レートの不利益な変動
・自己資本比率等の規制の不利益な改正
・繰延税金資産計上額の減額
・その他の不利益な事象の発生
② グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIBs)に対する規制
MUFGグループは、金融安定理事会(FSB)によりG-SIBに指定されており、他の金融機関より高い資 本水準が求められていますが、今後更に高い資本水準を求められるおそれがあります。
③ 資本調達
2013年3月以前に調達した資本調達手段は経過措置の範囲内で自己資本に算入することができますが、借り換 え等の際には現行規制を充たす資本調達が必要となります。当社および株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループは、現行規制を充たす資本調達手段の発行を進めておりますが、新たに調達する資本調達手段について自己資本への算入が認められる要件として、その調達を行った金融機関が実質的な破綻状態にあると認められる場合等に、元本削減または普通株式への転換が行われる旨の特約が定められていること等が必要とされており、市場環境等の状況によっては、同等の条件で借り換えまたは発行することができず、自己資本比率およびレバレッジ比率が低下するおそれがあります。
④ 破綻時における総損失吸収力(TLAC)規制
FSBが2015年11月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収及び資本再構築に係る原則」および2017年7月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の内部総損失吸収力に係る指導原則」を踏まえ、本邦では2019年3月期よりMUFGグループを含むG-SIBsに対して一定比率以上の損失吸収力等を有すると認められる資本・負債(以下、外部TLACという。)を確保することが求められ、また、確保した外部TLACはグループ内の主要な子会社に一定額以上を配賦すること(以下、内部TLACという。)になっています。また、規制で要求される水準は2022年3月期から引き上げられる予定です。MUFGグループ内では、当社、株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社およびMUFG Americas Holdingsが主要な子会社として指定されています。MUFGグループは、外部TLAC比率または本邦における主要な子会社に係る内部TLAC額として要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限を含め、様々な命令を受ける可能性があります。外部TLAC比率および内部TLAC額は、自己資本比率等の規制に係る上記①~③に記載する様々な要因により影響を受けます。MUFGグループは、要求されるTLACの確保のため、適格な調達手段の発行を進めておりますが、TLACとして適格な調達手段の発行および借り換えができない場合には、外部TLAC比率および内部TLAC額として要求される水準を満たせない可能性があります。
また、MUFGグループ内の米国の一部銀行子会社であるMUFG Americas Holdingsは、現地におけるTLAC規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
当社はグローバルにビジネスを展開しており、外貨建ての金融資産および負債を保有しています。為替レートの変動により、それらの資産および負債の円貨換算額も変動します。当社では、通貨毎の資産と負債の額の調整やヘッジを行っておりますが、変動を相殺できない場合、当社の自己資本比率、財政状態および経営成績は、為替レートの変動により、悪影響を受ける可能性があります。海外における保有資産および負債の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照下さい。
4.信用リスク(信用供与先の財務状況悪化等により損失を被るリスク)
(1)貸出業務に関するリスク
当社は、担保等を用いて貸出業務の信用リスクの削減に取り組んでおりますが、借り手が期待通りに返済できない場合、または当社が借り手の返済能力の悪化に対して、またはその可能性を予測して講じた措置が不適切または不十分である場合には、将来、追加的な与信費用が発生する可能性があります。その結果、当社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼし、自己資本の減少につながる可能性があります。なお、与信関係費用、リスク管理債権の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」をご参照下さい。当社の与信関係費用および不良債権は、国内外の景気の悪化、貸出先の業績不振等により増加する可能性があります。
① 貸倒引当金の状況
当社は、貸出先の状況、担保の価値および経済全体に関する前提および見積りに基づいて、貸倒引当金を計上しておりますが、経済情勢全般の悪化や個別貸出先の業績悪化等により追加の貸倒引当金を計上せざるを得なくなったり、実際の貸倒れが貸倒引当金を上回ることにより、追加的な与信費用が発生したりする可能性があります。2020年3月末基準における当社の連結貸借対照表上の貸倒引当金額は19億円でした。貸倒引当金の計上については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項 (6) 貸倒引当金の計上基準」をご参照ください。
(2)他の金融機関との取引
国内外の金融機関(銀行、ノンバンク、証券会社および保険会社等を含みます。)の中には、資産内容の劣化およびその他の財務上の問題が存在している可能性があり、今後悪化する可能性やこれらの問題が新たに発生する可能性もあります。こうした金融機関の財政的困難が継続、悪化または発生すると、それらの金融機関の流動性および支払能力に問題が生じるだけでなく、金融システムに問題が生じ金融業や経済全般へ波及するおそれもあり、以下の理由により当社に悪影響を及ぼす可能性があります。
・当社は、一部の金融機関へ信用を供与しております。
・当社は、一部の金融機関の株式を保有しております。
・問題の生じた金融機関が貸出先に対して財政支援を打ち切るまたは減少させるかもしれません。その結果、当
該貸出先の破綻や、当該貸出先に対して信用を供与している当社の不良債権の増加を招くかもしれません。
・経営破綻に陥った金融機関に対する支援に当社が参加を要請されるおそれがあります。
・政府が経営を支配する金融機関の資本増強や、収益拡大等のために、規制上、税務上、資金調達上またはその
他の特典を当該金融機関に供与するような事態が生じた場合、当社は競争上の不利益を被るかもしれません。
・預金保険の基金が不十分であることが判明した場合、当社の支払うべき預金保険の保険料が引き上げられるお
それがあります。
・金融機関の破綻または政府による金融機関の経営権取得により、金融機関に対する預金者の信任が全般的に低
下する、または金融機関を取巻く全般的環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・金融業および金融システムに対する否定的・懐疑的なマスコミ報道(内容の真偽、当否を問いません。)により
当社の評判、信任等が低下するおそれがあります。
5.政策投資株式リスク(保有する株式の時価下落により損失を被るリスク)
(1)保有株式に係るリスク
当社は政策投資目的で保有するものを含め市場性のある株式を大量に保有しており、2020年3月末基準の保有時価合計は約0.8兆円、その簿価は約0.4兆円となっています。当社では、株価変動リスクの抑制の観点も踏まえ、「政策保有に関する方針」において、政策保有株式の削減を基本方針とし、保有意義・経済合理性を検証した上で、保有の妥当性が認められない場合には、取引先の十分な理解を得た上で、売却を進めております。また、政策保有株式に対しては、ベア型投信の保有により部分的にヘッジを行うことで、株価変動リスクの削減に努めております。
しかしながら、株価が下落した場合には、保有株式に減損または評価損が発生もしくは拡大する可能性があります。また、自己資本の算出にあたり、保有株式の含み損益を勘案していることから、株価が下落した場合には、自己資本比率等の低下を招くおそれがあります。その結果、当社の財政状態および経営成績に悪影響を与える可能性があります。
6.市場リスク(金利、有価証券の価格、為替などの変動により損失を被るリスク)
(1)市場業務に伴うリスク
当社は、デリバティブを含む様々な金融商品を取り扱う広範な市場業務を行っており、大量の金融商品を保有し ています。これにより、例えば、国内外の金融政策の変更等により内外金利が低下した場合、当社が保有する国債 等の再投資利回りが低下する可能性があります。また、長短金利差が縮小する場合、資金利益が減少する可能性が あります。一方、内外金利が上昇した場合、当社の保有する大量の国債等に売却損や評価損が生じる可能性があります。また、円高となった場合は、当社の外貨建て投資の財務諸表上の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。加えて、株価が下落した場合やクレジットスプレッドが拡大した場合、当社が保有する株式・債券等の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。当社では、このような内外金利、為替レート、有価証券等の様々な市場の変動により損失が発生するリスクを市場リスクとして管理しておりますが、計算された市場リスク量は、その性質上、実際のリスクを常に正確に反映できるわけではなく、またこのように示されたリスク量を上回る損失が実現する可能性もあります。
なお、当社が保有する有価証券残高の状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」をご参照下さい。
7.資金流動性リスク(資金繰りがつかなくなるリスク)
(1)当社の格下げ等に伴う資金流動性等の悪化リスク
格付機関による当社の格下げにより、当社の市場業務およびその他の業務が悪影響を受けるおそれがあります。特に外貨調達においては、調達コストの増加、または調達余力の減少により、当社の流動性や収益力が悪影響を受ける、また市場業務においては、顧客からの信用低下等を起因に一定の取引を行うことができなくなる等の悪影響を受けるおそれがあります。なお、2020年4月に、Fitch Ratingsは当社の長期発行体デフォルト格付をAからA-に1段階格下げし、Standard and Poor'sは当社のアウトルックを「ポジティブ」から「安定的」に変更しました。
格付機関は、当社の財務体質や関連子会社の評価、国内外の金融業界全体に影響を与える要因などに基づいて、当社を定期的に評価していますが、当社がコントロールできない要因も含まれており、また、格付評価機関の評価手法については当社がコントロールしうるものではありません。当社は、資金流動性リスク管理上の指標を設ける等、適正な資金流動性の確保に努めておりますが、上記要因などに基づく評価または格付方法の変更の結果、当社の格付が引き下がる可能性があり、かかる事態が生じた場合には、当社の市場業務および他の業務の収益性に悪影響を与えるおそれや、当社の財政状態および経営成績にも悪影響を与えるおそれがあります。
8.オペレーショナルリスク(内部管理上の問題や外部要因により損失が発生するリスク)
(1)不公正・不適切な取引その他の行為が存在したとの指摘や、これらに伴う処分等を受けるリスク
当社は、事業を行っている本邦および海外における法令、規制、政策、自主規制等を遵守する必要があり、国内外の規制当局による検査、調査等の対象となっております。当社はコンプライアンス・リスク管理態勢およびプログラムの強化に継続して取り組んでおりますが、かかる取組みが全ての法令等に抵触することを完全に防止する効果を持たない可能性があります。
当社が、マネー・ローンダリング、経済制裁への対応、贈収賄・汚職防止、金融犯罪その他の不公正・不適切な取引に関するものを含む、適用ある法令および規則を遵守できない場合、あるいは、社会規範・市場慣行・商習慣に反するものとされ、顧客視点の欠如等があったものとされる場合には、罰金、課徴金、懲戒、評価の低下、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消しを受ける可能性があります。また、当社が顧客やマーケット等の信頼を失い、当社の経営成績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。将来、当社が戦略的な活動を実施する場面で当局の許認可を取得する際にも、悪影響を及ぼすおそれがあります。
(2)情報紛失・漏洩に係るリスク
当社は、国内外の法規制に基づき、顧客情報や個人情報を適切に取り扱うことが求められております。
当社では、顧客情報や個人情報を多く保有しており、当社は、情報の保管・取扱いに関する規程類の整備、システム整備を実施し、管理態勢高度化に取り組んでおりますが、不適切な管理、外部からのサイバー攻撃その他の不正なアクセス、もしくはコンピュータウイルスへの感染等により、顧客情報や個人情報等の紛失・漏洩を完全には防止できない可能性があります。その場合、罰則や行政処分の対象となるほか、顧客に対する損害賠償等、直接的な損失が発生する可能性があります。加えて、顧客の信頼を失う等により当社の経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性、ならびにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
(3)システム、サイバー攻撃等に関するリスク
当社のシステム(業務委託先等の第三者のシステムを含みます。)は、事業を行う上で非常に重要な要素の一つであり、適切な設計やテストの実施等によりシステム障害等を未然に防止し、セキュリティ面に配慮したシステムの導入に努めていますが、システム障害やサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス感染、人為的ミス、機器の故障、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵、新技術、新たなシステムや手段への不十分な対応等を完全には防止できない可能性があります。また、全てのビジネス要件や金融機関に対する規制強化の高まりからくる規制要件に対応するシステムの高度化への要請を十分に満たせない可能性や、市場や規制の要請に応えるために必要なシステム構築や更新がその作業自体の複雑性等から計画通りに完了しない可能性があります。その場合、情報通信システムの不具合や不備が生じ、取引処理の誤りや遅延等の障害、情報の流出等が生じ、業務の停止およびそれに伴う損害賠償の負担その他の損失が発生する可能性、当社の信頼が損なわれまたは評判が低下する可能性、行政処分の対象となる可能性、ならびにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
(4)テロ支援国家との取引に係るリスク
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの重要な子会社である株式会社三菱UFJ銀行は、イラン・イスラム共和国(以下、イランという。)等、米国国務省が「テロ支援国家」と指定している国における法主体またはこれらの国と関連する法主体との間の取引を実施しており、また、同行はイランに駐在員事務所を設置しております。
米国法は、米国人が当該国家と取引を行うことを、一般的に禁止または制限しております。さらに、米国政府および年金基金をはじめとする米国の機関投資家が、イラン等のテロ支援国家と事業を実施する者との間で取引や投資を行うことを規制する動きがあるものと認識しております。このような動きによって、当社を含むMUFGグループ各社が、米国政府および年金基金をはじめとする機関投資家、あるいは規制の対象となる者を、顧客または投資家として獲得、維持できない結果となる可能性があります。加えて、社会的・政治的な状況に照らして、上記国家との関係が存在することによって、MUFGグループの評判が低下することも考えられます。上記状況は、当社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、米国政府による対イラン制裁措置により、米国人の関与するイランとの取引の禁止などが実施されています。さらに、2018年5月の米国によるイランに関する包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)からの離脱後に発令された大統領令により、広範なイラン関連取引や活動について、関与した非米国人に対して二次制裁を適用し得るものとされています。当社を含むMUFGグループでは、二次制裁を含む米国による措置が適用されるリスクの増加を受けて、今後とも当該リスクのモニタリングと対応策を実施してまいります。さらに、米国証券取引所に登録している企業(米国外企業を含みます。)には、特定のイラン関連の取引の開示が引き続き義務づけられています。日本においても、イランの拡散上機微な核活動・核兵器運搬手段開発に関与する者に対する資産凍結等の措置が実施されています。MUFGグループでは、これらの規制を遵守するための態勢の改善に努めています。しかしながら、かかる態勢が適用される規制に十分対応できていないと政府当局に判断された場合には、何らかの規制上の措置の対象となる可能性があります。
(5)規制変更のリスク
当社に適用される国内外の法律、規則、会計基準、政策、実務慣行および解釈、ならびに国際的な金融規制等は変更される可能性があり、かかる変更への対応のため経営資源を投じる必要があり、場合によっては経営戦略を変更せざるを得なくなるおそれがあります。また規制変更への対応が不十分である場合には規制当局から処分等を受けるおそれがあり、当社の財政状況および経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
(6)評判に関するリスク
当社のビジネスはお客さまのみならず、地域社会、国際社会等からの信頼と信用の下に成り立っています。そのため、当社の評判は、お客さま、投資家、監督官庁、および社会との関係を維持する上で極めて重要です。
MUFGグループの経営ビジョンや行動規範等を踏まえ、評判リスクの適切な管理に努めておりますが、特に、人権、環境、健康、安全等の社会的責任への懸念が生じる取引や各種法令等 (アンチマネー・ローンダリング、経済制裁、競争法、暴力団排除条例等) の趣旨に反するおそれのある取引などを防止できず、またはこれらに適切に対処することができなかった場合で、大規模な報道に繋がり得るなど世論の注目が高いときや規制当局の関心が高いときなどにおいて、当社は、現在または将来のお客さまおよび投資家を失うこととなり、当社の事業、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があり、企業価値を毀損する可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
(財政状態及び経営成績の状況)
当連結会計年度の業績につきましては、以下のとおりとなりました。
資産の部につきましては、有価証券及び現金預け金の減少等により前連結会計年度比1兆6,759億円減少して、35兆6,696億円となりました。負債の部につきましては、預金の減少等により1兆6,208億円減少して、33兆5,974億円となりました。純資産の部につきましては、利益剰余金が増加する一方、繰延ヘッジ損益及び退職給付に係る調整累計額の減少等により550億円減少して、2兆722億円となりました。
また、信託財産総額につきましては、包括信託及び投資信託の受託残高の増加等により14兆1,606億円増加して、271兆9,235億円となりました。
損益の状況につきましては、当社の本業の期間損益を示す連結業務純益(一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前)は、前連結会計年度比184億円減少して1,499億円となりました。
セグメント別の内訳では、リテール部門が△29億円(前連結会計年度比△43億円)、法人マーケット部門が512億円(同+25億円)、受託財産部門が694億円(同△70億円)、市場部門が598億円(同△16億円)となりました。法人マーケット部門の各事業内訳は、不動産事業が239億円(同+40億円)、証券代行事業が234億円(同+1億円)、資産金融事業が38億円(同△17億円)であります。
なお、「市場部門」は、当連結会計年度より、部署の新設・廃止及び一部業務の移管を行い、市場国際部門から名称変更したものであります。
税金等調整前当期純利益は1,603億円となり、これに法人税等合計・非支配株主に帰属する当期純利益を加味した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比102億円増加の1,142億円となりました。
当連結会計年度末の連結自己資本比率(バーゼルⅢ:国際統一基準)は、連結普通株式等Tier1比率19.46%、連結Tier1比率21.90%、連結総自己資本比率25.46%となりました。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、借用金の増加及び預け金の減少等に伴い収入が増加する一方、預金の減少及びコールローン等の増加等により、1兆7,984億円の支出(前連結会計年度比支出が1,478億円減少)となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得による支出等により支出が増加する一方、国内外の債券投資等による収入により、1兆537億円の収入(同収入が5,159億円減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、劣後特約付借入れの増加等に伴い収入が増加し、555億円の収入(同収入が5,525億円増加)となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比7,415億円減少して13兆7,265億円となりました。
信託報酬は、前連結会計年度比57億円増加して1,183億円となりました。資金運用収支は、国内では207億円減少して932億円、海外では82億円減少して218億円となり、相殺消去額を控除した結果、合計で333億円減少の955億円となりました。また、役務取引等収支は、国内では15億円増加して1,463億円、海外では380億円増加して716億円となり、相殺消去額を控除した結果、合計で400億円増加の2,215億円となりました。
(注) 1.「国内」とは、当社(海外店を除く)及び国内に本店を有する連結子会社(以下、「国内連結子会社」とい
う。)であります。
「海外」とは、当社の海外店及び海外に本店を有する連結子会社(以下、「海外連結子会社」という。)で
あります。
2.連結会社間の相殺消去額については、上記「相殺消去額」欄に計上しております。
3.「資金調達費用」は金銭の信託運用見合費用(前連結会計年度147百万円、当連結会計年度144百万円)を控除
して表示しております。
資金運用勘定の平均残高は、国内・海外合計で預け金を中心に前連結会計年度比2兆9,807億円減少して27兆6,005億円となり、利回りは0.09ポイント低下して1.20%となりました。一方、資金調達勘定の平均残高は、預金を中心に5兆5,843億円減少して32兆2,827億円となり、利回りは0.02ポイント上昇して0.73%となりました。
(注) 1.「国内」とは、当社(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。
2.平均残高は、当社については日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、国内連結子会社については 月末毎の残高等に基づく平均残高を利用しております。
3.平均残高及び利息は、当社と国内連結子会社を単純合算したものを表示しております。
4.「資金運用勘定」は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度5,016,173百万円、当連結会計年度4,784,670百万円)を、「資金調達勘定」は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度114,587百万円、当連結 会計年度111,449百万円)及び利息(前連結会計年度147百万円、当連結会計年度144百万円)をそれぞれ控除し て表示しております。
(注) 1.「海外」とは、当社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.平均残高は、当社については日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、海外連結子会社については 月末毎の残高等に基づく平均残高を利用しております。
3.平均残高及び利息は、当社と海外連結子会社を単純合算したものを表示しております。
4.「資金運用勘定」は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度38,944百万円、当連結会計年度68,227百万円)を控除して表示しております。
(注) 1.平均残高は、当社については日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、連結子会社については月末 毎の残高等に基づく平均残高を利用しております。
2.連結会社間の相殺消去額については、上記「相殺消去額」欄に計上しております。
3.「資金運用勘定」は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度5,049,680百万円、当連結会計年度4,845,975 百万円)を、「資金調達勘定」は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度114,587百万円、当連結会計年度111,449百万円)及び利息(前連結会計年度147百万円、当連結会計年度144百万円)をそれぞれ控除し て表示しております。
役務取引等収益は、国内・海外合計で投資信託委託・投資顧問業務を中心に前連結会計年度比442億円増加して2,869億円となりました。一方、役務取引等費用は、国内・海外合計で42億円増加して653億円となりました。
(注) 1.「国内」とは、当社(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、当社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.連結会社間の相殺消去額については、上記「相殺消去額」欄に計上しております。
「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む連結会社毎の信託財産額を合算しております。
(注) 1.上記残高表には、金銭評価の困難な信託および自己信託に係る分を除いております。
自己信託に係る信託財産残高 前連結会計年度末 1,504百万円
当連結会計年度末 850,748百万円
2.合算対象の連結子会社 前連結会計年度末 日本マスタートラスト信託銀行株式会社
当連結会計年度末 日本マスタートラスト信託銀行株式会社
3.共同信託他社管理財産 前連結会計年度末 247,006百万円
当連結会計年度末 246,129百万円
(注) 1.上記残高表には、金銭評価の困難な信託および自己信託に係る分を除いております。
なお、自己信託に係る信託財産残高は、前事業年度末1,504百万円、当事業年度末850,748百万円であります。
2.共同信託他社管理財産 前事業年度末73,163,139百万円、当事業年度末74,069,343百万円
3.元本補てん契約のある信託の貸出金 前事業年度末14,083百万円のうち、延滞債権額は0百万円、3ヵ月以上延滞債権額は7百万円、貸出条件緩和債権額は117百万円であります。
また、これらの債権額の合計額は124百万円であります。
4.元本補てん契約のある信託の貸出金 当事業年度末12,285百万円のうち、延滞債権額は0百万円、貸出条件緩和債権額は3百万円であります。
また、これらの債権額の合計額は3百万円であります。
なお、前記(注)2.共同信託他社管理財産には、当社と日本マスタートラスト信託銀行株式会社が職務分担型共同受託方式により受託している信託財産(以下、「職務分担型共同受託財産」という。)が前事業年度末72,916,133百万円、当事業年度末73,823,213百万円含まれております。
前記信託財産残高表に職務分担型共同受託財産を合算した信託財産残高表は次のとおりであります。
信託財産残高表(職務分担型共同受託財産合算分)
金銭信託
(注) 1.信託財産の運用のため再信託された信託を含みます。
2.リスク管理債権の状況
前連結会計年度末 貸出金14,083百万円のうち、延滞債権額は0百万円、3ヵ月以上延滞債権額は7百万円、貸出条件緩和債権額は117百万円であります。また、これらの債権額の合計額は124百万円であります。
当連結会計年度末 貸出金12,285百万円のうち、延滞債権額は0百万円、貸出条件緩和債権額は3百万円であります。また、これらの債権額の合計額は3百万円であります。
(参考)
資産の査定は、貸出金等の各勘定について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1.破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2.危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3.要管理債権
要管理債権とは、3ヵ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4.正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
(注) 1.「国内」とは、当社(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、当社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.連結会社間の相殺消去額については、上記「相殺消去額」欄に計上しております。
3.流動性預金=当座預金+普通預金+通知預金
4.定期性預金=定期預金
(注) 1.「国内」とは、当社(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、当社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.連結会社間の相殺消去額については、上記「相殺消去額」欄に計上しております。
3.「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
(参考)
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
当社は、国際統一基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては先進的内部格付手法、オペレーショナル・リスク相当額の算出においては先進的計測手法を採用するとともに、マーケット・リスク規制を導入しております。
また、自己資本比率の補完的指標であるレバレッジ比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(平成31年金融庁告示第11号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
連結レバレッジ比率(国際統一基準)
単体レバレッジ比率(国際統一基準)
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当社の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1.破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2.危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3.要管理債権
要管理債権とは、3ヵ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4.正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
(生産、受注及び販売の状況)
「生産、受注及び販売の状況」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(リテール部門)
リテール部門では、多様化する個人のお客さまのニーズに対し、資産運用・ローン・不動産・資産管理・資産承継等に関する信託銀行ならではの商品・サービスをご提供し、お客さまからの評価向上に努めてまいりました。また、「つみたてNISA」の取扱いや、「ずっと安心信託」、「教育資金贈与信託」、「暦年贈与信託」、「結婚・子育て支援信託」、「解約制限付信託」、「代理出金機能付信託」に続き、2019年12月に、信託を活用したノンリコース型のリバースモーゲージ商品として「リバースモーゲージ信託(ゆとりの約束)」の取扱いを開始、2020年2月に、将来の認知機能低下に備えられる代理出金機能をファンドラップに追加した本邦初の商品として「つかえてラップ(MUFGファンドラップ代理出金特約)」の取扱いを開始する等、信託商品の提供を通じた顧客基盤の拡大のための活動にも取り組んでまいりました。
一方、長引く低金利の影響による資金収益の減少や、不透明な市場環境下における投資商品収益の減少等、厳しい収益環境が続きました。
以上の結果、当連結会計年度のリテール部門の連結実質業務純益は△29億円(前連結会計年度比△43億円)となりました。
(法人マーケット部門)
法人マーケット部門のうち、不動産事業では、不動産に係る売買・賃貸借の仲介・管理業務・鑑定評価・コンサルティング業務等の多様な商品・サービスの提供に努めるとともに、お客さまの不動産に関するニーズに対応した提案を実施してまいりました。
証券代行事業では、コーポレートガバナンス・コードを背景としたお客さまのニーズに対応すべく、株主との対話を支援するコンサルティングサービスの提供に注力してまいりました。
資産金融事業では、企業の保有資産を活用した資金調達ニーズと資金運用ニーズを繋ぐ信託機能の提供を目指し、企業への調達ソリューションの提案及び法人・個人向け運用商品の開発・提供に注力してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の法人マーケット部門の連結実質業務純益は512億円(前連結会計年度比+25億円)となりました。
(受託財産部門)
受託財産部門では、高度かつ専門的なノウハウを活用し、運用力や商品開発力の向上に取り組み、お客さまの多様なニーズにお応えすることに努めてまいりました。
インベスターサービス業務においては、グローバル展開を重点戦略と位置付け、買収した海外のファンド管理会社を通じて専門性を高めながら、効率的・安定的なサービスを提供する態勢を整備し、事業の拡大を進めるとともに、事業拡大戦略の一環として、2019年10月に、アセットマネジメント会社向けミドル・バック業務のアウトソーシング受託を主要業務とし、同業務にかかるシステム開発に強みを持つ海外資産管理会社であるPoint Nine Limited(現MUFG Investor Services FinTech Limited)の株式を取得し、子会社化しました。
アセットマネジメント業務においては、2019年8月に、オーストラリア連邦の大手金融グループであるCommonwealth Bank of Australia及びその完全子会社であるColonial First State Group Limitedからの、Colonial First State Group Limitedが保有する主要完全子会社9社の株式を取得し、子会社化しました。
年金業務においては、退職給付制度の設計・運営に関するコンサルティングや企業年金の資産運用・資産管理サービスの提供を進めるとともに、法人のお客さまの福利厚生に資するサービスの拡充に努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の受託財産部門の連結実質業務純益は694億円(前連結会計年度比△70億円)となりました。
(市場部門)
当社は、ビジネスのグローバル化進展に伴い、各事業のグローバル展開を支える態勢の構築を目的として、市場国際部を廃止し、それまで同部で培ってきた海外における事業の企画・統括機能を経営企画部に、市場業務にかかる企画・統括機能を市場企画部に移管いたしました。これに伴い、市場国際部門は、2019年4月1日付で市場業務に特化し、市場部門に名称変更しました。
市場部門では、証券投資・資金為替取引等の市場業務において、市場環境の変化に応じた適切なリスク管理や内外の金融規制への対応を行いつつ、安定的な収益確保に努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の市場部門の連結実質業務純益は598億円(前連結会計年度比△16億円)となりました。
加えて、当社は、中期経営計画において掲げた、目指す姿である「「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行」を実現するため、慶應義塾大学及び野村ホールディングス株式会社との一般社団法人 金融ジェロントロジー協会の設立、東京大学及びソフトバンク株式会社との「ヘルシー・エイジング・システム」を構築するための産学共同研究の開始、情報銀行プラットフォーム「Dprime」の提供に向けた活動等に取り組んでまいりました。
今後とも、当社グループの総合力強化と持続的な成長を図るべく、経営の効率化に努めるとともに強固な経営・財務基盤の構築を目指してまいります。
連結業務純益(一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前)は、前連結会計年度比184億円減少して1,499億円となりました。
連結普通株式等Tier1比率は最低所要水準4.5%を上回る19.46%となりました。
当連結会計年度における主な項目は、次のとおりであります。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 国内・海外別収支」をご参照ください。
前表をご参照ください。
前表をご参照ください。
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 (有価証券関係)」をご参照ください。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ⑤ 銀行業務の状況 (ⅰ) 国内・海外別預金残高の状況」をご参照ください。
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 ③ 連結株主資本等変動計算書」をご参照ください。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 (自己資本比率等の状況)」に記載しております。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 (キャッシュ・フローの状況)」に記載しております。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
(買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価)
〇 企業結合における無形資産への取得原価の配分
MUFGグループは、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指し、その戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、これらの企業結合取引により生じた無形資産を連結貸借対照表に計上しております。
注記事項の(企業結合等関係)に記載のとおり、当連結会計年度において、First Sentier Investors(以下、「FSI」という。)は、当社の連結子会社となりました。
当該企業結合取引の結果として、当社が連結貸借対照表に計上した無形資産の企業結合時における時価には、「顧客関連資産」(1,008億円)が含まれております。
無形資産の企業結合日における時価は、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの現在価値として算定されており、当該キャッシュ・フローの算定に使用される仮定は、機関決定された買収価格の基礎となった中期計画に基づいております。また、時価評価に適用した重要な見積りや、当該見積りに用いた仮定のうち、主なものは以下のとおりです。
・FSI取得により資産計上した無形資産に用いた主な見積り・仮定
将来キャッシュ・フローに使用される前提は、機関決定された買収価格の基礎となった中期計画に基づいており、公正価値評価の方法として、インカムアプローチ法を用いております。
「顧客関連資産」においては、既存顧客との取引が継続する期間において享受できる超過収益に基づくキャッシュ・フローを現在価値に割引くことにより価値を算定しております。当該キャッシュ・フローには、株式、債券、インフラ等の投資対象の市場成長予測等を反映した預り資産残高の増加率及び過去実績に基づく既存顧客の剥落率などの見積り・仮定を用いています。
無形資産に適用する割引率の基礎として、株主資本コストを使用しております。当該割引率には、顧客関連資産に関連するビジネスのリスクを考慮したリスクプレミアムなどの見積り・仮定を用いています。
経営者は、企業結合時の無形資産の時価及びのれんの額に用いた見積り・仮定は合理的であると考えています。しかしながら、これらの見積り・仮定には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより当該見積り・仮定が変化した場合には、結果として、企業結合時の無形資産への取得原価及びのれんの額への配分が適切に測定されない可能性があります。
該当事項はありません。