社外取締役と投資家との対話

奥田務 奥田務

2017年2月に開催した機関投資家向け説明会「MUFG Investors Day」で行われた、質疑応答の概要です。

Question

MUFGの企業文化について、強みと弱みをどのように考えていますか。(国内大手証券会社アナリスト)

企業のあるべき姿として、大切なのは社会的な信頼や安心です。同じく、金融の原点も信頼と安心です。この点については、MUFGは非常に強いと感じています。その反面、保守的でリスクを取りにくいとも言えます。

企業文化の醸成は難しいテーマですが、粘り強く良い点を残しながら、弱い点を補強していくことが大切です。MUFGはその点についても、真面目にやっていると評価しています。

一方で懸念があるとすれば、従業員が今の組織に安住してしまっている部分があるのではないかということです。ITの進展によりマーケット環境が大きく変わり、全ての産業において業界の壁がなくなってきています。こうした環境変化に対し、いかに柔軟に素早く対応するか。企業環境は大きく、しかも不連続に変わっています。そういう意味で、全ての社員が健全な危機感を常に持ち続け、企業変革を続けていくことが非常に重要です。

Question

社外取締役の立場から見て、MUFGのリスクをどのように考えていますか。(国内大手証券会社アナリスト)

最も大きなリスクは、国内マーケットが縮小し、低金利が定着してしまっているなか、抜本的にビジネスモデルをどこまで変革できるかという点です。また、海外のポートフォリオ、特にアメリカが大きい点も、アドバンテージであると同時に、リスクでもあると認識しています。

共通する課題は、二つあります。一つ目は、人材の育成。海外のオペレーションが増え、国内ビジネスは今までの延長線では考えられなくなってきています。変革に挑戦していくなかで、経営環境に即した人材をいかに育成するかが課題だと考えます。

もう一つは、巨額なシステム投資。金融機関はこれをやらないと生き残れません。事業をグローバルに展開しているので、世界にまたがるシステムを構築する必要があります。米州MUFGホールディングスの社外取締役とも議論しましたが、彼らもシステム投資に問題意識を持っていました。システム投資の質と量が大きな課題です。

Question

MUFGの社外取締役を引き受けた理由について教えてください。(国内大手機関投資家)

MUFGは、グローバルに活躍する、日本を代表する企業の一つであり、その社外取締役に選任されたことは、実業人として光栄に思っています。

MUFGが安心できる会社であるという認識は持っていましたが、ここまでオープンマインドな会社だとは思っていませんでした。社外取締役が耳の痛いことを申し上げても、真摯に受け入れてくれています。取締役会後に社外取締役だけで集まり、議論した話を会長、社長に洗いざらい報告していますが、それを受けて会長も社長も適切に対応してくださいます。これだけ大きい会社にもかかわらず、オープンマインドで社外の声に耳を傾けてくれることに対して、私としても非常にやりがいを感じます。

Question

平時における社外取締役の役割をどのように考えていますか。(外資系大手証券会社アナリスト)

会社の状況が良いときも悪いときも、社外取締役は必ず必要だと思います。社外の目が入ることによる緊張感が大切だからです。

MUFGの経営の執行ラインは社外取締役の意見に対して真摯に向き合っています。逆にその姿勢を見て、私たち社外取締役も刺激を受けるほどです。

指名・ガバナンス委員会についても、社会の変化についていかないといけません。サクセッションプランについても、社外の目が必要です。重要なポジションにどういう人が必要なのか、人格、能力、過去の経験や実績の3つを中心に評価基準を作り、それに基づいて候補者を選定してもらいます。さらに、その候補者の方々それぞれに、5〜10人程度で360度評価を行い、絞り込まれた候補者に対して私たち指名・ガバナンス委員会のメンバーが面談を行います。その内容を踏まえ、もう一度委員会で議論し、委員会としての案を取締役会に提言するというプロセスを踏むのです。その時代にあった人をどのように選ぶのか、ステークホルダーや社員に対してプロセスの透明性を示すことが大事だと考えます。

もし、平時と非常時に違いがあるとすれば、非常時の場合は社内から人を探してこられず、社外から選ぶこともありうるという点でしょうか。

企業の成長と企業価値を高めていく観点から、ポストの必要条件とプロセスの透明性を示す。この二つが指名・ガバナンス委員会にとって重要です。

Question

社外取締役の人選について教えてください。現時点で足りない、あるいは強化したい機能は何ですか。
(国内大手機関投資家)

MUFGの社外取締役は、「誰が」というネームベースではなく、どのような人が必要なポジションかということが議論されており、バックグラウンド、経験、考え方、方向性等がよくバランスされていると思います。

強化すべきは、外国人の社外取締役です。これだけビジネスがグローバルになってくると絶対に必要ですし、既に要望は出しています。MUFGにはグローバル・アドバイザリーボードがあり、世界を代表する見識を持たれた素晴らしいメンバーで構成されていますので、次は、社外取締役です。また将来は執行部にも入って欲しいと思っています。

同業からの受け入れについても、海外では当たり前の話であり、これは良いことだと思います。日本の終身雇用制度から考えると抵抗があるかもしれませんが、将来的には可能性があります。小売業では既に事例がありますし、金融業界でも将来的にはそうなると思います。

Question

MUFGが10年後にも輝く企業であるためには何が必要ですか。(外資系大手証券会社アナリスト)

今のMUFGは商業銀行が中心ですが、10年後もそれが継続しているかは定かではありません。将来を注視するあまり、足元の穴に落ちてはいけない。難しいテーマではありますが、社会や経済の変革を見据えながら、いかに事業ポートフォリオを組み替えそれぞれを強化して対応していくか、あるいは短期と中長期の目線をいかにバランスさせていくかがポイントだと思います。

大きな課題として、国内外の比率があると思います。今後も海外の割合は高まると思いますが、あくまでもベースは国内にあるべきです、50%程度は国内にウェイトを置く必要があるのではないでしょうか。

また、個人のお客さまと法人のお客さまをどのようにバランスさせるかという問題も、事業ポートフォリオ戦略を考える際に大きな軸となります。事業戦略に基づいた人材の育成とシステム構築が、10年後を見据える上で大事なポイントだと考えます。