2016年度の振り返りと分析

経営環境

2016年度の金融・経済環境は、世界経済は、中国の構造調整や、英国のEU離脱選択、米国の政権交代等のイベントを受けた国際金融市場の変動など、不透明感の強い展開が続きましたが、全体としては先進国を中心に緩やかな回復基調を維持しました。米国経済は、企業部門の生産や設備投資に一部もたつきがみられましたが、雇用環境の改善に支えられ、内需を中心とした自律的な回復を続けました。欧州経済は、英国のEU離脱選択に伴う不透明感の高まりや南欧諸国の不良債権問題等を抱えつつも、雇用環境の改善や低金利などに支えられた内需の持ち直しが続きました。アジア経済は、構造調整局面を迎えた中国経済の減速が各国の輸出を下押ししましたが、全体としてはASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に底堅い推移となりました。

こうしたなか、日本経済は、一部には改善の遅れもみられましたが、年度を通じて緩やかな回復基調を維持しました。個人消費は、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかながらも持ち直しが続き、住宅投資も堅調に推移しました。設備投資は、秋口までの円高進行に伴う企業収益の増勢鈍化から弱含む局面もありましたが、輸出や生産の持ち直しに支えられて緩やかな増加基調を維持しました。公的需要は横ばい程度の推移となりました。

金融情勢に目を転じますと、世界経済の先行き不透明感などを背景に秋口にかけて円高が進み国内株価も軟調に推移しましたが、米国の大統領選挙後には新政権への期待感などから急速な円安、株高に転じました。その後は年度末にかけて再び円高方向の調整が進むなど、為替と株価は総じて振れの大きい展開となりました。金利は、米国において2016年12月および2017年3月に利上げが行われた一方、英国では国民投票後の2016年8月に利下げが行われ、ユーロ圏でも金融緩和策が維持されました。

日本では、2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が導入されるなど、積極的な金融緩和姿勢が維持され、長期金利は低位での推移が続きました。

実質GDP成長率の推移(前期比年率)グラフ
雇用者所得の推移(前年同期比)グラフ
設備投資(実質GDPベース、見通し)グラフ
金利・為替・株価の推移グラフ

連結業績サマリー

連結業務純益

連結業務粗利益は、海外の預貸金・手数料収益が堅調に推移しましたが、マイナス金利影響を受けた国内預貸金収益の減少や、運用商品販売の低迷、債券関係損益の減少に為替影響も加わった結果、前年度比1,313億円減少の4兆118億円となりました。営業費は、規制対応費用が増加したものの、国内の経費抑制努力に加え為替影響もあり、同82億円増加の2兆5,935億円となりました。以上の結果、連結業務純益は同1,396億円減少の1兆4,182億円となりました。

与信関係費用総額

与信関係費用総額は、個社要因はあったものの、資源関連が落ち着いたことなどにより、期初想定を大きく下回る同997億円費用減少の1,553億円となりました。

株式等関係損益

株式等関係損益は、政策保有株式の売却進捗により、同366億円増加の1,249億円となりました。

経常利益

モルガン・スタンレーの業績伸長に加え、その他の関連会社の利益貢献もあり、持分法による投資損益は同140億円増加しましたが、三菱UFJニコスやアコムにおける利息返還損失引当金の繰入や、退職給付費用の増加等によりその他の臨時損益が同1,894億円悪化した結果、経常利益は同1,787億円減少の1兆3,607億円となりました。

親会社株主純利益

特別損益は、モルガン・スタンレー向け出資に係る持分変動損失の増加等により同168億円悪化しましたが、税金費用は税引前利益の減少に加え法人実効税率の低下により同1,180億円の減少となりました。

以上の結果、親会社株主純利益は同249億円減少しましたが、業績目標の8,500億円を上回る9,264億円となりました。

親会社株主純利益の推移グラフ
親会社株主純利益内訳グラフ

事業本部別の営業純益

事業本部別の営業純益*1は、国際事業本部が為替影響を受けながらも前年度比増加となりましたが、リテール・法人・受託財産・市場事業本部は、国内外の市況の影響を受け減少となった結果、前年度比1,552億円減少の1兆3,958億円となりました。なお、海外対顧収益比率*2は40%となりました。

  1. *1 管理ベースの連結業務純益、法人は海外の日系取引を除く
  2. *2 海外対顧収益比率=国際÷顧客部門営業純益
事業本部別営業利益グラフ
営業利益増減内訳グラフ

リテール事業本部

マイナス金利影響を受けた利鞘縮小による預金・貸出収益の減少や、相場環境悪化による運用商品販売収益の減少を主因に、同613億円減少の2,253億円となりました。

法人事業本部

大口案件の獲得等で投資銀行収益は増加しましたが、リテール同様に金利低下を受けた預金・貸出収益の減少を主因に同381億円減少の4,222億円となりました。

国際事業本部

東アジアは中国を中心に業績が低迷しましたが、欧州・米州は大型ファイナンス案件、アジア・オセアニアは大型プロジェクトファイナンス、クルンシィ(アユタヤ銀行)ではオートローンおよびコンシューマーファイナンスがそれぞれ好調に推移した結果、円高によるマイナス影響を受けながらも同244億円増加の4,825億円となりました。

受託財産事業本部

厚生年金基金の解散、個人の投信市場冷え込み等の影響で、同93億円減少の609億円となりました。

市場事業本部

国内為替業務・海外セールス&トレーディング業務は好調も、米国大統領選後の金利上昇を受けた外国債券の保有ポジション整理によりバンキング収益が減少した結果、同584億円減少の3,691億円となりました。

連結貸借対照表サマリー

貸出金(銀行勘定+信託勘定)

政府等向け貸出の減少を主因に、2016年3月末比4兆6,974億円減少し、109兆2,094億円となりました。リスク管理債権比率は、同0.04ポイント低下し1.41%となりました。

貸出金(末残)グラフ

預金

法人等預金の増加を主因に、同9兆7,651億円増加し、170兆7,302億円となりました。

預金(末残)グラフ

国内預貸金利回り

国内預貸金利回り差(政府等向け貸出除き)は、市場金利低下等の影響を受けた貸出金利回り低下により、2015年度第4四半期比0.10ポイント縮小しました。

国内預貸金利回りの推移(政府等向け貸出除き)グラフ

有価証券

その他有価証券の残高は、国債および外国債券の減少により、2016年3月末比10兆7,053億円減少し、54兆8,131億円となりました。その他有価証券の評価損益は、国内株式の評価益が増加したものの、国債および外国債券の評価益が減少した結果、同3,462億円減少の3兆1,390億円の評価益となりました。国債の残存期間別残高は、国内外の金利環境を踏まえ慎重な運営を実施し、短期債の割合を高めました。その結果、デュレーションは2.6年と短期化しました。

その他有価証券(時価あり)の内訳図表
国債の残存期間別残高(銀信単体合算)グラフ

自己資本

自己資本額

利益剰余金の増加、その他の包括利益累計額の増加および劣後債務の調達を主因として、普通株式等Tier1資本は2016年3月末比3,931億円、総自己資本は同1,343億円それぞれ増加しました。

リスクアセット

国内法人貸出および海外貸出の増加等を背景として、同1兆9,220億円増加しました。

自己資本比率

普通株式等Tier1比率は11.76%、Tier1比率は13.36%、総自己資本比率は15.85%となりました。なお、2019年3月末に適用される規制に基づく普通株式等Tier1比率の試算値は11.9%となっています。

自己資本比率図表

株主還元

MUFGは、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題と位置付け、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的、持続的な増加をめざすことを基本方針としています。普通株式の2016年度期末配当は、1株につき9円、年間では中間配当金9円と合計で18円となり、前年度実績である18円と同額となります。また、株主還元の充実、資本効率の向上および機動的な資本政策の遂行を可能とするために、2016年度は5月および11月にそれぞれ約1,000億円の自己株式取得を実施しました。

なお、2017年5月15日付の取締役会にて、保有する自己株式の上限を、発行済株式総数の5%程度を目安とし、それを超える部分は原則として消却する方針を決定しました。2017年3月末の自己株式の保有比率は約5%であるため、2017年度以降新たに取得する株式は、この方針に従い、原則消却していく予定です。

配当の実績・予算グラフ
自己株式取得の概要図表