塗師
赤木 明登
時代輪島塗飯椀
Photo by 張逸雯(拙考)
1962年岡山県生まれ。徒弟制度の中で、輪島塗職人の塗師として修業後独立。生活漆器として「ぬりもの」の世界を切り開く。実用性と共に、輪島塗の原点にある精神性を探求している。
時代には、その時代の精神というものがある。精神性は、同じ時間を生きるすべての人に広く共有されているが、それを形と色という物質性のなかに表現することができるのは、ごく限られた人たちだけだろう。工芸は、時代の精神をあらわしてこそ幸福になる。
彫刻家/ガラス作家/富山ガラス造形研究所講師
小曽川 瑠那
息を織る
Photo by OOZU Daisaku、東京都美術館
愛知県生まれ。富山ガラス造形研究所でガラスを学び、金沢卯辰山工芸工房を経て2011年独立、飛騨高山にアトリエ開設。2025年より飛騨高山と富山の二拠点生活。経年劣化しないガラスを儚い命や記憶を保管するための記録メディアと捉え、命・記憶・風景など、見えないものや変化していくものを主にガラスで記録している。作品はレッテガラス美術館(ドイツ)、富山市ガラス美術館、羽田空港、国内外のホテル等に収蔵。
制作とは世界を見る、気づく、知る、学ぶことだと考えています。常識に捉われず、自身の眼差しを大切に。心揺さぶる作品と、エネルギー溢れる若き才能との出会いを心から楽しみにしています。
テキスタイルアーティスト
小林 万里子
熱と水
Photo by Osamu Sakamoto
1987年大阪府生まれ、多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻・同大学院修了。織る、染める、編む、刺すといった様々な染織技法と素材を組み合わせ、循環する自然と生命の結びつきを表現する。国内外の展覧会や芸術祭だけでなく、企業や公共施設への作品提供も行いアートを通じた社会との接点を広げている。
私が作品を作るときにずっと大切にしていることは、「頭」ではなく「手」で考え生み出すということです。自らの手で生み出す喜びに溢れた、想像力を刺激されるような作品に出会えることを楽しみにしています。迷っていたら勿体無い。ぜひ思い切って応募してみてください。
漆芸作家
高橋 悠眞
symphony
1988年東京都生まれ。2015年、東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース卒業。2018年、金沢卯辰山工芸工房修了。現在、金沢市を拠点に制作活動を行う。漆と自身との「折り合い」や「境界」を主題に、塗り重ねる過程で生じる漆独自の現象を生かし、普遍的な風景を表現している。近年はストリートカルチャーと工芸文化に内在する共通性にも着目し、陶芸家やアパレルブランドとのコラボレーションによる作品も発表している。
「工芸アーティスト」という言葉には、継承と創造という、どこか二律背反めいた力が同時に含まれています。そのあいだで揺れたり迷ったりするのは自然なことで、むしろ作品の源になるはずです。完璧な答えを持っていなくても大丈夫。いま抱えている違和感や問いごと、このコンペに持ち込んでみてください。その揺らぎから生まれる表現を楽しみにしています。
陶磁器作家
新里 明士
光器
Photo by OSAMU SAKAMOTO
1977年生まれ 千葉県出身
2001年 多治見市陶磁器意匠研究所修了
2011年 文化庁新進芸術家海外研修制度研修員 (ボストン・アメリカ)
現在 岐阜県土岐市にて制作
・パブリックコレクション
国立工芸館新北市鶯歌陶磁博物館(台湾)
Minneapolis Institute of Art(アメリカ)
Museo Internazionale delle Ceramiche (イタリア)
V & A Museum(イギリス)
他多数
最近、工芸を取り巻く環境が劇的に変化しているように感じます。若い作り手の方々が作るものを通して、現在の工芸の有り様を共に考えていけたらと思います。
開化堂 6代目
八木 隆裕
リメイク缶
1974年生まれ大学卒業後3年の社会経験を経て2000年開化堂入社。創業時より作り続ける茶筒の技術習得に励む傍ら、国内外の市場へと積極的に展開をする。2012年より工芸を担う後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成し、国内外で工芸を広める活動を行う。ロンドンVictoria&Albert museum、パリ装飾美術館、コペンハーゲン デザインミュージアム等のパーマネントコレクション選出。京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター特別協同研究員就任。
唯一無二のものだけではないところにも目を向けてものづくりをしても良いと考えています。将来「有り触れること」のできるものになることの価値もあるかと感じます。そしてそれを作り続けることの意味もあると考えます。100年、200年と続いていくとそれは「唯一無二」のものに同じ価値のあるものへとなっていくのではないでしょうか。
陶芸家
佐合 道子
とこしえ
Photo by Hiraku Ikeda
1984年三重県生まれ。石川県金沢にて制作。有形無形を問わず、変化し続けるものを「いきもの」と捉え、その気配や揺らぎを可視化することをテーマとする。九谷の磁土や技法を取り入れつつ独自の制作方法を探求し、白と光が重なり合うことで生まれる表情を造形に映し出している。主な展覧会に、「現代工芸への視点―装飾の力」(東京国立近代美術館工芸館、2009)、「和巧絶佳展 令和の超工芸」(パナソニック汐留美術館、2020)、「皮膚と内臓:自己、世界、時間」(台南市美術館、2025)。
工芸は、時代に合わせて姿を変えながらも、失われずに受け継がれてきた“確かなもの”を内に宿しています。その存在があるからこそ、工芸は今も生き続けているのだと思います。応募される皆さまが、その確かさを手がかりに、新しい表現へと踏み出されることを楽しみにしています。

