独立監査人の監査報告書
2020年6月24日
株式会社 三菱UFJ銀行
監査意見
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社三菱UFJ銀行の2019年4月1日から2020年3月31日までの連結会計年度の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。
当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社三菱UFJ銀行及び連結子会社の2020年3月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。
監査意見の根拠
当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。
監査上の主要な検討事項
監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。
当監査法人は、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、以下の事項を監査上の主要な検討事項とした。
1 貸出業務における貸倒引当金の算定
2 買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価
1 貸出業務における貸倒引当金の算定
会社は、中核的な事業の一つとして貸出業務を行っている。貸出業務には、貸出先の倒産等により貸し付けた資金の全部または一部が回収できなくなること等により損失を被るリスクが存在する。会社は、このような貸倒れによる損失の発生に備えるため貸倒引当金を計上している。当連結会計年度末の連結貸借対照表における貸倒引当金の計上額は、6,125億円である。なお、会社による貸倒引当金の計上基準の詳細は、連結財務諸表の「 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4 会計方針に関する事項 (6) 貸倒引当金の計上基準」に記載されている。
監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
貸倒引当金の算定は、内部規程として予め定めている資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則ってなされている。しかしながら、その算定プロセスには、貸出先の債務償還能力を評価・分類した内部信用格付の決定、貸出先から差し入れられた担保の価値の評価、及び、過去実績を基に算定した損失率への将来見込等による調整といった種々の見積りが含まれている。
特に、貸倒引当金の算定における重要な要素である内部信用格付は、貸出先が業績不振や財務的な困難に直面しており、将来の業績回復見込や事業の継続可能性の判断に高度に依存して決定される場合がある。このような特定の貸出先の将来の業績回復見込や事業の継続可能性は、貸出先企業内外の経営環境の変化による影響を受けるため、見積りの不確実性や経営者による主観的な判断の程度が高い。
また、「(追加情報)」に記載されている新型コロナウイルス感染症の拡大に対する貸倒引当金の計上額(以下、「追加引当額」という。)は、貸出先企業への当該感染症拡大が及ぼす影響を考慮し、貸出先の財務情報等に未だ反映されていない信用リスクの増大を見積ることにより算定されている。その算定プロセスには、当該感染症拡大が将来の業績に重要な影響を及ぼすことが見込まれる貸出先の範囲(特定の業種や地域)についての仮定、及び、当該業種や地域に属する貸出先の将来の業績悪化による内部信用格付の下方遷移についての集合的な見積りが含まれている。これらの重要な仮定や見積りには、当該感染症の広がり方や収束時期に関して会社自らが置いた仮定が反映されているが、当該仮定には統一的な見解がなく客観的な情報を入手することが困難であるため、見積りの不確実性や経営者による主観的な判断の程度が高い。
特定の貸出先の内部信用格付の決定、及び、追加引当額の決定に係る経営者の重要な見積りや当該見積りに用いた仮定が、貸出先の信用リスクを適切に反映していない場合には、結果として貸倒引当金が適切に算定されないリスクが潜在的に存在している。したがって、これらの重要な見積りや当該見積りに用いた仮定の検討を含む特定の貸出先の内部信用格付及び追加引当額の妥当性は、当監査法人の監査上の主要な検討事項である。
監査上の対応
当該監査上の主要な検討事項に対して当監査法人は、主に、特定の貸出先の内部信用格付及び追加引当額の決定に係る会社の内部統制の有効性を評価し、また、特定の貸出先の内部信用格付及び追加引当額の決定に係る根拠資料を入手し妥当性を評価した。
特定の貸出先の内部信用格付については、当該内部信用格付が内部規程に基づき適切に決定されることを確保するための社内における査閲と承認に係る内部統制の有効性を評価した。また、当該内部統制において利用される貸出先の情報等の重要な基礎データについては、その正確性と網羅性を確保するための内部統制の有効性を評価した。さらに、内部信用格付が貸出先の将来の業績見込の判断に高度に依存して決定される特定の貸出先を検討対象とし、その内部信用格付の決定の基礎となる貸出先の情報の適切性を評価するとともに、経営者が貸出先の業績見込に適用した重要な仮定を識別し、当該仮定について、信用リスク評価に係る内部専門家(当監査法人又はネットワーク・ファームに所属する専門家をいう。以下同様。)を利用し、利用可能な企業外部の情報との比較を行うことを含めてその合理性を評価した。
追加引当額については、当該追加引当額が内部規程に基づき適切に決定されることを確保するための社内における査閲と承認に係る内部統制の有効性を評価した。また、当該内部統制において利用される貸出先の情報等の重要な基礎データについては、その正確性と網羅性を確保するための内部統制の有効性を評価した。さらに、当該感染症拡大により重要な影響を受けることが見込まれる業種や地域の選定、及び、当該業種や地域に属する貸出先の内部信用格付の下方遷移の程度について、信用リスク評価に係る内部専門家を利用し、利用可能な企業外部の情報との比較を行うことを含めてその合理性を評価した。
2 買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価
会社は、戦略的施策の一環として、グローバルに、複数かつ大規模な買収・出資・資本提携等を行っている。会社は、当連結会計年度においてPT Bank Danamon Indonesia, Tbk.(以下、「バンクダナモン」という。)及び会社の完全親会社である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社であるPT Bank Nusantara Parahyangan, Tbk. (以下、「バンクビーエヌピー」という。)の株式を追加取得し連結子会社とした。またこれらの二社は、バンクダナモンを存続会社とし、バンクビーエヌピーを消滅会社とする吸収合併を行っている(以下、一連の株式追加取得による子会社化及び二社の合併を「企業結合取引」という。)。会社は、この重要な企業結合取引を通じて、多額ののれん及びその他の無形固定資産を連結貸借対照表に計上している。この点、無形固定資産の時価評価には、専門的な知識を必要とする複雑な見積りが含まれているため、適切に時価が算定されないリスクが存在し、また、のれんには、投資先の属する地域や業界における想定外の変化等の種々の原因により当初想定通りのシナジーその他の効果を得られず、減損処理されることによって多額の損失が発生するリスクが存在する。会社が当連結会計年度に資産計上したのれん及びその他の無形固定資産の詳細は、連結財務諸表の「 注記事項 (企業結合等関係)」に記載されている。
(1) 企業結合取引により計上した無形固定資産の評価
監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
企業結合取引の結果として計上した無形固定資産には、「代理店との関係」(企業結合日の時価795億円)が含まれている。当該無形固定資産の企業結合日における時価は、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの現在価値として算定されているが、その算定プロセスには各種の見積りや仮定が考慮されている。具体的には、将来キャッシュ・フローの見積りの重要な要素として、市場の成長予測を反映した貸出実行額の増加率、及び、過去実績に基づく既存代理店の剥落率が考慮されている。また、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについては割引率に反映されている。これらの重要な見積りや仮定には、企業価値評価に係る専門的な知識が要求されるとともに、主として市場や顧客等の状況といった外部要因により変動するものであるため、不確実性及び経営者の主観的な判断の程度が高い。
上記の無形固定資産の時価を算定するために用いた重要な見積りや当該見積りに用いた仮定が適切でない場合には、結果として、企業結合時の無形固定資産の取得原価が適切に測定されないリスクが潜在的に存在している。したがって、これらの重要な見積りや見積りに用いた仮定を含む無形固定資産の時価評価の妥当性は、当監査法人の監査上の主要な検討事項である。
監査上の対応
当該監査上の主要な検討事項に対して当監査法人は、主に、会社による無形固定資産の時価評価に係る内部統制の有効性を評価し、また、会社による時価評価結果を入手し妥当性を評価した。
内部統制の有効性の評価においては、将来キャッシュ・フローの見積りに適用された市場の成長予測を反映した貸出実行額の増加率及び過去実績に基づく既存代理店の剥落率並びに割引率が適切に決定されることを確保するための社内における査閲と承認に係る内部統制の有効性を評価した。また、当該内部統制において利用される重要な基礎データについては、正確性と網羅性を確保するための内部統制の有効性を評価した。さらに、将来キャッシュ・フローの見積りに適用された貸出実行額の増加率及び過去実績に基づく既存代理店の剥落率並びに割引率が、企業に固有の事情を反映し適切に見積られているかどうかについて、企業価値評価に係る内部専門家を利用し、利用可能な企業外部の情報との比較を含め、その妥当性を評価した。
(2) バンクダナモンの取得により計上したのれんの減損処理の要否
監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
会社は、2019年4月に連結子会社としたバンクダナモンについて、その企業結合取引当初、2,347億円ののれんの発生を認識した。企業結合後、上場子会社であるバンクダナモンの株式の市場価格は取得原価に比べ大幅に下落している状況が継続しており、経営者は、当該市場価格の下落の状況を「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会 2002年8月9日)等に基づき、バンクダナモンののれんの減損の兆候として把握した。のれんの減損処理を行うかどうか、すなわち、バンクダナモンへの投資時に予想した収益性が当初よりも低下しており、投資の回収が見込めなくなった状態にあるかどうかの判定にあたり、経営者は、バンクダナモンへの投資から得られる割引前の将来キャッシュ・フローを算定している。割引前将来キャッシュ・フローの総額は、バンクダナモンの事業計画を基礎として、将来の市場及びインドネシア経済全体の成長率についての仮定を反映して算定されている。これらの仮定を反映した将来キャッシュ・フローの見積りは長期に亘り、また、主として市場の状況といった外部要因により変動するものであるため、不確実性及び経営者の主観的な判断の程度が高い。
上記ののれんの減損処理を行うかどうかの判定に用いた重要な見積りや当該見積りに用いた仮定が適切でない場合には、のれんの減損による損失が適切に認識されないリスクが潜在的に存在している。したがって、これらの重要な見積りや見積りに用いた仮定を含むバンクダナモンののれん減損処理の要否は、当監査法人の監査上の主要な検討事項である。
なお、経営者は、上述の会計基準等に基づいてバンクダナモンののれんの減損処理を行うかどうかの判定を行った結果、減損処理は不要であると判断した。ただし、当該バンクダナモンののれんは、連結財務諸表の「 注記事項 (連結損益計算書関係) ※4」に記載されている通り、会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(日本公認会計士協会1998年5月12日 2018年2月16日最終改正)第32項の規定に基づき、当連結会計年度末において全額償却されている。
監査上の対応
当該監査上の主要な検討事項に対して当監査法人は、主に、バンクダナモン株式の市場価格の下落を含む、経営者が把握したのれんの減損の兆候について理解するとともに、割引前将来キャッシュ・フローの算定に係る会社の内部統制の有効性を評価し、また、割引前将来キャッシュ・フローの算定結果を入手し妥当性を評価した。
内部統制の有効性の評価においては、割引前将来キャッシュ・フローの見積りに適用されたバンクダナモンの事業計画、将来の市場及びインドネシア経済全体の成長率が適切に決定されることを確保するための社内における査閲と承認に係る内部統制の有効性を評価した。また、当該内部統制において利用される重要な基礎データについては、正確性と網羅性を確保するための内部統制の有効性を評価した。
さらに、割引前将来キャッシュ・フローの見積りに適用された将来の市場及びインドネシア経済全体の成長に係る仮定が適切に見積られているかどうかについて、企業価値評価に係る内部専門家を利用し、利用可能な企業外部の情報との比較を含め、その妥当性を評価した。また、バンクダナモンの事業計画について、利用可能な業績の実績値と比較することにより、過去の事業計画の達成状況を遡及的に検討した。
加えて、バンクダナモンの取得及びのれんの償却に関連する連結財務諸表の表示を検討し、当連結会計年度に発生した重要な会計事象が連結財務諸表に網羅的かつ正確に表示されているかどうかについて評価した。
連結財務諸表に対する経営者及び監査等委員会の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。
監査等委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
連結財務諸表監査における監査人の責任
監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。
監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。
・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手 続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ 適切な監査証拠を入手する。
・ 連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。
・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理 性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。
・ 経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠 に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。
・ 連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠してい るかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎 となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。
・ 連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証 拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。
監査人は、監査等委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。
監査人は、監査等委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。
監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
利害関係
会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上