文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当行が判断したものであります。
新型コロナウイルスは、それ以前より存在し、進んでいた社会構造の変化を、さらに大きく加速・変化させました。例えば、非対面サービスやリモートワークは、今まで以上のスピードで世の中へ浸透していますし、人々の働き方や価値観を多様化させつつあります。また、社会課題に対しては、かつてない貢献意識の高まりが生まれています。
このような、社会そのものが大きく構造変化するなか、我々金融機関には様々なことが求められてきますが、シンプルにまとめると、重要なテーマは、「社会のデジタルシフトへの対応」と「社会課題解決への貢献」だと考えております。
「社会のデジタルシフト」については、新型コロナウイルスの影響もあり、不可逆かつ加速する大きな変化と捉えています。具体的には、非対面、ペーパーレス、印鑑レスへの対応や、物理的にオフィスに出勤するスタイル等、お客さまとの接点のあり方や行員の働き方を含む、「MUFGの運営そのもの」の革新が必要と考えます。
「社会課題解決への貢献」については、ESGのうち「E」環境の重要性、すなわち金融機関として気候変動リスクへの対応を更に推し進めていく必要があることに加え、今まで以上に「S」、社会課題への貢献が問われています。社会課題解決と経営戦略の一体化をより進めていくことが鍵です。また、デジタルとも重なりますが、例えば、社会インフラを担う企業として、認証や印鑑レスへの取組みを通じた日本社会への貢献と自らの成長を同期させること等も重要と考えます。
こうした社会構造変化を当行の成長機会へと繋げるための経営方針のキーワードは3つ、「デジタル化」「強靭性」、「エンゲージメント」です。
一つ目は、「会社のあり方をデジタル化する」。実際にはリアルとのバランスではありますが、社会のデジタルシフトに対応するために、第一に掲げました。
二つ目は、「事業としての強靭性の重視」です。今回の危機で、MUFGはどんな環境においても信頼され続ける存在でなければならないと、改めて考えさせられました。金融機関としての健全性を確保して、経営資源を当行の有する強みのある領域へと重点配置いたします。
最後が、「エンゲージメント重視の経営」です。これは、大きな変化が会社ひいては行員一人ひとりに求められるなか、変革の方向性に対する共感性を大切にし、行員間や組織間、お客さまとの間、また社会とも共感できる、皆が参画意識を感じられる、魅力的な会社にしていきたいと考えるものです。
当年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、米中貿易摩擦等を受けて総じて減速基調にあったものの、年度後半にかけては、半導体産業等の製造業に世界的に底入れの兆しがみられるなど、米中摩擦等の政策要因による不透明感が依然残るなかでも上向きに転じる動きを示していました。しかしながら、第4四半期に入ってからは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大という新たな危機に直面しました。この感染症は、まず中国で大きく拡大しましたが、2020年2月末以降先進国の米国や欧州でも急激に広がり、更にASEAN(東南アジア諸国連合)やNIEs(新興工業経済地域)等中国以外のアジア地域でも感染者増加がみられました。こうしたなか、我が国でも、2020年3月末にかけ大都市圏を中心に新規感染者の発生が増加する展開となりました。感染拡大を抑止すべく各国・地域では厳しい公衆衛生上の措置がとられましたが、こうした措置は一方で経済活動の著しい低下をもたらすことになりました。
金融情勢に目を転じますと、年度初めから第3四半期にかけては米中貿易摩擦等の推移を受け、その時々で相場が上下に反応する展開となりましたが、日米株価は上昇傾向、ドル円相場は総じて1ドル100円台後半で推移していました。ただ、第4四半期に入ってからは、新型コロナウイルス禍の拡大を受け、株価は調整色を強めたほか、ドル円相場も振れの大きい展開となりました。金利については、米中貿易摩擦に伴う景気の先行き不透明感や低いインフレ率等を理由に各国の中央銀行が利下げを行う等金融緩和姿勢を強めたことを背景に、海外先進国、我が国ともに総じて低位で推移しました。年度末にかけては、新型コロナウイルス禍拡大のなか、米国で再び政策金利の下限がゼロ%となり、一部の新興国も米国に追随して利下げを行う等、世界的に更に強力な金融緩和政策がとられたことで、金利は海外先進国、我が国ともに低位での推移を続けました。
中期経営計画では、「シンプル・スピーディー・トランスペアレント*なグループ一体型の経営」の実現を通じて、全てのステークホルダーに最善の価値を提供することをめざします。グループ経営のあり方を、従来の「グループ協働」や「グループ起点」から、「グループ一体型の経営」へとさらに進化させ、各社が担う機能をより強化し、商品・サービスの機能強化とソリューション提供能力の向上に取り組んでまいります。
中期経営計画の3年目となる2020年度も、環境の変化に機動的に対応しつつ、「11の構造改革の柱」を中心とするグループの重点戦略を着実に実行いたします。更に、戦略実行の過程で生じる課題に対し適切に対処することで、実践力・実行力を高め、変革をスピードアップいたします。
一方、足元の新型コロナウイルス感染症については、現時点では感染拡大範囲や収束時期が著しく不透明な為、経済や当行業績に与えるすべての影響を正確に把握することは困難ですが、2020年度の経済見通しや業績への影響の見極めに努めてまいります。
当行は、お客さま、行員、ステークホルダーの安全確保を最優先とし、社会機能の維持に不可欠な金融インフラとして、事業者の資金繰り支援等の施策を通じ、お客さま・行員をはじめとする全てのステークホルダーの皆さまの期待に応えてまいります。
* Transparent/事業会社間・営業拠点と本部・役職等の壁を意識せずオープンに話ができ、グループの向かう方向やその理由を分かりやすく共有できる組織を表したキーワード
(グループ重点戦略)
「11の構造改革の柱」を中心とするグループの重点戦略をMUFGグループの各事業会社、事業本部、コーポレートセンターが一体で推進し、営業純益で2,500億円程度の効果発現をめざします。
さらに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえ、策定した新たな経営方針のもと、お客さまとの取引接点やチャネル、ミドル・バックオフィスのデジタル化、スマート化を進め、結果として損益分岐点を引き下げることを目指す「国内リテール領域のデジタル化」、地域ごとの成長性・強みの見極めと経営資源の最適配置、またGrab社との協働を通じた次世代金融サービスへの挑戦などによる「グローバル戦略の再構築」、会社のカルチャー改革に繋がるものですが、事務プロセスのペーパーレス化・印鑑レス化等を通じた効率化を進め、行員の多様な価値観・働き方を踏まえた環境や基盤の整備を、より一層推し進める「基盤・プロセス改革」を優先すべき重点戦略として取り組んで参ります。なお、既存の一部の施策では、足元の新型コロナウイルス感染症への対応の影響等により進捗に遅れが生じる可能性もございますが、今後影響については慎重に見極めて参ります。
*1 Business Process Re-engineeringの略称。既存の業務内容や業務フロー等を全面的に見直す業務の抜本的改革のこと。
*2 Relationship Manager(取引先担当者)とProduct Office(商品やサービスの企画・開発・提供を担う部署)との相互連携により高度なサービスを提供していくこと。
*3 Corporate and Investment Bankingの略称。預金や貸出等の通常の法人向け銀行業務(コーポレートバンキング)と企業の直接調達支援やM&A等の投資銀行業務(インベストメントバンキング)を一体的に捉え、高度な金融サービスを提供していくこと。
当行の親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループの本中期経営計画では、中期経営計画の最終年度である2020年度の財務目標の水準とともに、中長期的にめざす財務目標の水準を以下の通り設定しております(2018年5月公表)。
当行は、各種のリスクシナリオが顕在化した場合の影響度と蓋然性に基づき、その重要性を判定しており、今後約1年間で最も注意すべきリスク事象をトップリスクとして特定しています。2020年3月の当行リスク管理委員会において特定されたトップリスクのうち、主要なものは以下のとおりです。当行では、トップリスクを特定することで、それに対しあらかじめ必要な対策を講じて可能な範囲でリスクを制御するとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的な対応が可能となるように管理を行っています。また、経営層を交えてトップリスクに関し議論することで、リスク認識を共有した上で実効的対策を講じるように努めています。
主要なトップリスク
※リスク事象:2020年3月の当行リスク管理委員会での審議を経て、取締役会に報告されたものの一例です。一般的に起こり得る事象で、当行固有でない情報も含まれます。
当行及び当行グループの事業その他に関するリスクについて、上記トップリスクに係る分析を踏まえ、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項は、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当行は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
外部環境等に関するリスク
1. 本邦及び世界の経済の悪化のリスク
本邦及び世界の経済は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに対して各国で採られる渡航、店舗等の営業その他の経済活動の制限等の措置、原油価格の下落等の要因もあり、大幅に悪化する可能性があります。新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が不透明であることに加え、米国政権の動向、各国・各地域における保護主義的な通商政策への転換が国際的な自由貿易体制をゆるがすという懸念、英国のEU離脱後の交渉のゆくえに関する懸念、中国経済の成長鈍化とそれに伴う新興国・資源国の景気低迷、世界各地域における政治的混乱等の要因も引き続き存在しており、先行き不透明な状況です。また、紛争(深刻な政情不安を含みます。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、影響を受けた地域の経済の悪化や市場の混乱が引き起こされる可能性もあります。本邦及び世界経済が悪化した場合、当行には、保有する有価証券等の市場価格の下落による損失、取引先の業績悪化等による不良債権及び与信関係費用の増加、市場取引の相手先の信用力低下等による収益減少、外貨資金流動性の悪化、外貨資金調達コストの増加、リスクアセットの増加等が生じる可能性があります。また、各国の中央銀行の金融政策の変更による国内外の金利の低下等に伴う資金収益力の低下等により、当行の収益力が低下する可能性があります。さらに、経済活動の停滞による企業の新規投資や商取引の減少、個人消費の落ち込み、先行き不透明な金融市場での投資意欲減退、お客様の預かり資産減少などが生じる可能性があります。
また、債券・株式市場や外国為替相場の大幅な変動により金融市場の混乱・低迷、世界的な金融危機が生じた場合等には、当行が保有する金融商品の価値が下落し、適切な価格を参照できない状況が生じ、又は金融市場の機能不全が生じ、当行が保有する金融商品において減損若しくは評価損が生じる可能性があります。
これらにより、当行の事業、財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。
2. 外的要因(紛争・テロ・自然災害等)に関するリスク
紛争(深刻な政情不安を含みます。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、社会インフラに障害が発生し、当行の店舗、ATM、システムセンターその他の施設が被災し、又は業務の遂行に必要な人的資源の損失、又はその他正常な業務遂行を困難とする状況が発生することで、当行の業務の全部又は一部が停止又は遅延するおそれ、あるいは事業戦略上の施策や市場・規制環境の変化への対応が計画通り実施できないおそれがあります。また、これらの事象に対応するため、予防的なものも含めた追加の費用等の発生などにより、当行の財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大により、当行では一部の拠点を休業したり、移動の制限により、当行及び業務委託先の業務が一部縮小するなどの影響がありました。当行では安全確保と業務継続の両立に向けて、頭取を本部長とする危機対策本部を設置し、リモートワークやオフピーク通勤の推進等各種対策を講じておりますが、当行及び業務委託先の多数の従業員が罹患した場合や今後世界的な感染拡大が続く場合等には、更なる悪影響を受ける可能性があります。
また、当行は、自然災害のなかでも特に地震による災害リスクにさらされており、首都圏等当行の事業基盤が集中している地域において大規模な地震が発生した場合には、当行の財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。当行では、このような災害等のリスクに対し必要な業務継続計画を整備し、常にレベルアップを図っておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限りません。例えば、2011年3月に発生した東日本大震災のような大規模災害に伴う津波、液状化現象、火災、計画停電や節電対応等により、当行の店舗、ATM、システムセンターその他の施設の運営が悪影響を受けるおそれがあります。
3. LIBOR等の金利指標の改革に係るリスク
当行では、デリバティブ、貸出、債券、証券化商品等、多数の取引においてロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の金利指標を参照していますが、2014年7月に金融安定化理事会は金利指標の改革及び代替金利指標としてリスクフリーレートの構築を提言しました。また、2017年7月、LIBORを規制する英国の金融行動監視機構(FCA)長官は、2021年末以降はLIBOR公表継続のためにパネル銀行にレート呈示を強制する権限を行使しない旨表明しており、2021年末以降のLIBORの公表には不確実性があります。
当行では、2021年末以降のLIBOR公表停止の可能性が高まっているとの認識のもと、LIBOR等の金利指標の改革や代替金利指標への移行に対する対応を進めております。しかし、かかる移行は複雑で、かつ現時点で未確定な要素が多数あり、これによって、以下の事由を含め、当行の事業、財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
・ 当行の金融資産及び負債に含まれるLIBOR等を参照するローンやデリバティブを含む幅広い金融商品の価格、流動性、収益性及び取引可能性に悪影響を及ぼす可能性
・ 既存のLIBOR等を参照する契約の参照金利をLIBOR等から代替金利指標に変更するための取引相手方との契約修正等の交渉が必要になる可能性
・ 顧客、取引相手方等との間で、金利指標の改革や代替金利指標への移行に伴う、契約の解釈、代替金利指標との価値調整等に係る紛争が生じる、あるいは顧客との取引における不適切な取引慣行及び優越的地位の濫用等に関する紛争に繋がる可能性
・ LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に関する規制当局への対応が必要となる可能性
・ LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に対応するリスク管理その他の業務のためにシステム開発が必要となり、かかる開発が十分に行えない可能性、あるいはシステム投資その他の費用の発生の可能性
4. 気候変動に関するリスク
気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる物理的な被害、気候関連の規制強化及び低炭素社会への移行が、当行の取引先の事業や財務状況に影響を及ぼし、取引先への影響を通じて当行の与信ポートフォリオ管理・運営に影響を与える等により、当行の経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。当行は、気候変動に関するリスクの把握・評価や、情報開示の重要性を認識し、金融安定理事会によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures。以下、「TCFD」といいます。)が策定した気候変動関連財務情報開示に関する提言を支持するとともに、TCFDに沿ったリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組んでおりますが、気候変動に関するリスクへの取り組みや情報開示が不十分であった場合又はそのように見做され、社会に対する責任を十分に果たしていないと見做された場合などには、当行の企業価値の毀損に繋がるおそれがあり、当行の事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
戦略に関するリスク
5.競争、ビジネス戦略等に関するリスク
金融業界では、AIやブロックチェーンといった新たな技術の進展や規制緩和等に伴い、電子決済領域など、他業種から金融業界への参入が加速しており、今後も競争環境は益々厳しさを増す可能性があります。
また、当行は、収益力増強のためにグローバルベースで様々なビジネス戦略を実施しておりますが、競合相手である他のグローバル金融機関による統合・買収・戦略的提携の進展等に伴い、競争が激化してきております。そうした中、以下に述べるものをはじめとする様々な要因が生じた場合には、これら戦略が功を奏しない、当初想定していた結果をもたらさない、又は変更を余儀なくされ、こうした競争的な事業環境において競争優位を得られない場合、当行の事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・ 取引先への貸出ボリュームの増大が想定通りに進まないこと。
・ 既存の貸出についての利鞘拡大が想定通りに進まないこと。
・ 本邦における長短金利操作付き量的・質的金融緩和の長期化、又はマイナス金利幅の更なる拡大により、貸出 利鞘の縮小が進行すること。
・ 当行が目指している手数料収入の増大が想定通りに進まないこと。
・ デジタライゼーション戦略の遅れ等により次世代の金融サービス提供が想定通りに進まないこと。
・ 効率化を図る戦略が想定通りに進まないこと。
・ 現在実施中又は今後実施するグループ内の事業の統合・再編等の遅延により、顧客やビジネスチャンスの逸失 若しくは想定を上回る費用が生じること、又は効率化戦略若しくはシステム統合において想定していた結果をもたらさないこと。
・ 必要な人材を確保・育成できないこと。
・ 必要な外貨流動性を確保できないこと。
・ 本邦及び諸外国の法規制により、金融機関以外の事業者への投資の機動性や積極性が制限されること。
6.業務範囲の拡大に伴うリスク
当行は、業務範囲をグローバルベースで拡大しているため、新しくかつ複雑なリスクにさらされる場合があります。当行では、かかるリスクに対応するために内部統制システム及びリスク管理システムや法規制対応体制の構築、必要な人材の確保・育成に努めておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限らず、当行の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、当行は、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指し、その戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、今後も買収・出資・資本提携等を行う可能性があります。しかしながら、買収・出資・資本提携等においては、当行の意図とは異なる相手先の戦略や財務状況の変化、相手先の属する業界や相手先をとりまく経営環境の想定外の変化、経済の停滞、相手先の関係する法令・会計基準の変更、監督当局の承認が取得出来ないこと等により、買収・出資・資本提携等が当行の想定通り進展せず、若しくは変更・解消され、又は想定通りのシナジーその他の効果を得られない可能性や、買収・出資・資本提携等に際して取得した株式や買収・出資・資本提携等により生じたのれん等の無形固定資産の価値が毀損する可能性があります。これらの結果、当行の事業戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。買収・出資に伴う当行ののれん等の無形固定資産の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価」、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照下さい。
更に業務範囲の拡大が予想通りに進展しない場合、当行の業務範囲拡大への取組みが奏功しないおそれがあります。
主要な出資先に関するリスク
7.海外の重要な子会社に関するリスク
当行の海外の重要な子会社であるMUFG Americas Holdings Corporation(以下、「MUFG Americas Holdings」といいます。)、 Bank of Ayudhya Public Company Limited(以下、「アユタヤ銀行」といいます。)やPT Bank Danamon Indonesia, Tbk.(以下、「バンクダナモン」といいます。)は、それぞれ主に米国、タイ、インドネシアにおいて、リテール・法人業務を営んでいます。これらの子会社の事業又は経営の悪化により、当行の財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。悪影響を与える要因には、米国やタイ、インドネシアを中心とした東南アジアの経済の不確実性や貸出先の経営状態の悪化、金利・為替・株価・不動産市場・商品の急激な変動、政治や社会情勢の不安定化、金融制度や法律による制約、銀行間の熾烈な競争、自然災害、感染症の拡大、テロや紛争等、訴訟に伴う損失、同地域に投資や進出をする企業の業績やそれらの企業が所在する国の景気・金融制度・法律・金融市場の状況、並びにそれらの子会社の内部統制及び法令等遵守態勢の不備に起因する費用の発生等が含まれます。なお、のれん等の無形固定資産の減損損失については、「6.業務範囲の拡大に伴うリスク」をご参照ください。
自己資本に関するリスク
8.自己資本比率等に関するリスク
(1) 自己資本比率等の規制及び悪化要因
当行には、バーゼルⅢに基づく自己資本比率及びレバレッジ比率に関する規制が適用されております。また、2023年より、リスク計測手法等の見直し、レバレッジ比率の要求水準への上乗せが適用される予定です。
当行の自己資本比率及びレバレッジ比率が各種資本バッファーを含め要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限、業務の停止等を含む様々な命令を受ける可能性があります。
また、当行の一部銀行子会社には、米国を含む諸外国において、現地における自己資本比率等の規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
当行の自己資本比率及びレバレッジ比率に影響を与える要因には以下のものが含まれます。
・ 債務者及び株式・債券の発行体の信用力の悪化に際して生じうるポートフォリオの変動
・ 調達している資本調達手段の償還・満期等に際して、これらを同等の条件で借り換え又は発行することの困難性
・ 有価証券ポートフォリオの価値の低下
・ 為替レートの不利益な変動
・ 自己資本比率等の規制の不利益な改正
・ 繰延税金資産計上額の減額
・ その他の不利益な事象の発生
(2) グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIBs)に対する規制
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」といいます。)は、金融安定理事会(FSB)によりG-SIBに指定されており、他の金融機関より高い資本水準が求められていますが、今後更に高い資本水準を求められるおそれがあります。
(3) 資本調達
2013年3月以前に調達した資本調達手段は経過措置の範囲内で自己資本に算入することができますが、借り換え等の際には現行規制を充たす資本調達が必要となります。当行は、現行規制を充たす資本調達手段の発行を進めておりますが、新たに調達する資本調達手段について自己資本への算入が認められる要件として、その調達を行った金融機関が実質的な破綻状態にあると認められる場合等に、元本削減又は普通株式への転換が行われる旨の特約が定められていること等が必要とされており、市場環境等の状況によっては、同等の条件で借り換え又は発行することができず、自己資本比率及びレバレッジ比率が低下するおそれがあります。
(4) 破綻時における総損失吸収力(TLAC)規制
FSBが2015年11月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収及び資本再構築に係る原則」及び2017年7月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の内部総損失吸収力に係る指導原則」を踏まえ、本邦では2019年3月期より三菱UFJフィナンシャル・グループを含むG-SIBsに対して一定比率以上の損失吸収力等を有すると認められる資本・負債(以下、「外部TLAC」といいます。)を確保することが求められ、また、確保した外部TLACはグループ内の主要な子会社に一定額以上を配賦すること(以下、「内部TLAC」といいます。)になっています。また、規制で要求される水準は2022年3月期から引き上げられる予定です。三菱UFJフィナンシャル・グループ内では、当行、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、「三菱UFJ信託銀行」といいます。)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社及びMUFG Americas Holdingsが主要な子会社として指定されています。当行は、外部TLAC比率又は本邦における主要な子会社に係る内部TLAC額として要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限を含め、様々な命令を受ける可能性があります。外部TLAC比率及び内部TLAC額は、自己資本比率等の規制に係る上記(1)~(3)に記載する様々な要因により影響を受けます。当行は、要求されるTLACの確保のため、適格な調達手段の発行を進めておりますが、TLACとして適格な調達手段の発行及び借り換えができない場合には、外部TLAC比率及び内部TLAC額として要求される水準を満たせない可能性があります。
また、当行グループ内の米国の一部銀行子会社であるMUFG Americas Holdingsは、現地におけるTLAC規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
9.為替リスク
当行はグローバルにビジネスを展開しており、外貨建ての金融資産及び負債を保有しています。為替レートの変動により、それらの資産及び負債の円貨換算額も変動します。当行では、通貨毎の資産と負債の額の調整やヘッジを行っておりますが、変動を相殺できない場合、当行の自己資本比率、財政状態及び経営成績は、為替レートの変動により、悪影響を受ける可能性があります。海外における保有資産及び負債の状況については、本有価証券報告書の「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご覧下さい。
信用リスク(信用供与先の財務状況悪化等により損失を被るリスク)
10.貸出業務に関するリスク
貸出業務は当行の主要業務の一つとなっています。当行は、担保や保証、クレジットデリバティブ等を用いて信用リスクの削減に取り組んでおりますが、借り手が期待通りに返済できない場合、又は当行が借り手の返済能力の悪化に対して、又はその可能性を予測して講じた措置が不適切または不十分である場合には、将来、追加的な与信費用が発生する可能性があります。その結果、当行の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼし、自己資本の減少につながる可能性があります。なお、与信関係費用、リスク管理債権の状況については、本有価証券報告書の「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、クレジットデリバティブ取引については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(デリバティブ取引関係)」をご参照ください。当行の与信関係費用及び不良債権は、新興国を含む国内外の景気の悪化、資源価格の変動、不動産価格や株価の下落、新興国通貨安、貸出先の業界内の競争激化等による業績不振等により増加する可能性があります。
(1) 貸倒引当金の状況
当行は、貸出先の状況、担保の価値及び経済全体に関する前提及び見積りに基づいて、貸倒引当金を計上しておりますが、経済情勢全般の悪化や個別貸出先の業績悪化等により追加の貸倒引当金を計上せざるを得なくなったり、実際の貸倒れが貸倒引当金を上回ることにより、追加的な与信費用が発生したりする可能性があります。2020年3月末基準における当行の連結貸借対照表上の貸倒引当金額は6,125億円でした。貸倒引当金の計上については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 貸倒引当金の見積り」をご参照下さい。
(2) 特定業種等への貸出その他の与信の集中
当行は、貸出その他の与信に際しては、特定の業種、特定の与信先への偏りを排除すべくポートフォリオ分散に努めておりますが、エネルギーや不動産業種向けの与信は、相対的に割合が高い状況にあり、これらの業種等の業績悪化の影響を受けやすい状況にあります。個々の与信先の状況や、業界特有の動向、新興国を含む各国の国情については継続的にモニタリング・管理を実施しておりますが、国内外の景気動向や不動産・資源価格・外国為替の動向等によっては、想定を上回る信用力の悪化が生じる可能性があります。
(3) 貸出先への対応
当行は、回収の効率・実効性その他の観点から、貸出先に債務不履行等が生じた場合においても、当行が債権者として有する法的な権利のすべてを必ずしも実行しない場合がありえます。
また、当行は、それが合理的と判断される場合には、貸出先に対して債権放棄又は追加貸出や追加出資を行って支援をすることもありえます。かかる貸出先に対する支援を行った場合は、当行の貸出残高が大きく増加し、与信関係費用が増加する可能性や追加出資に係る株価下落リスクが発生する可能性もあります。
11. 他の金融機関との取引
国内外の金融機関(銀行、ノンバンク、証券会社及び保険会社等を含みます。)の中には、資産内容の劣化及びその他の財務上の問題が存在している可能性があり、今後悪化する可能性やこれらの問題が新たに発生する可能性もあります。こうした金融機関の財政的困難が継続、悪化又は発生すると、それらの金融機関の流動性及び支払能力に問題が生じるだけでなく、金融システムに問題が生じ金融業や経済全般へ波及するおそれもあり、以下の理由により当行に悪影響を及ぼす可能性があります。
・ 当行は、一部の金融機関へ信用を供与しております。
・ 当行は、一部の金融機関の株式を保有しております。
・ 問題の生じた金融機関が貸出先に対して財政支援を打ち切る又は減少させるかもしれません。その結果、当該貸出先の破綻や、当該貸出先に対して貸出をしている当行の不良債権の増加を招くかもしれません。
・ 経営破綻に陥った金融機関に対する支援に当行が参加を要請されるおそれがあります。
・ 政府が経営を支配する金融機関の資本増強や、収益拡大等のために、規制上、税務上、資金調達上又はその他の特典を当該金融機関に供与するような事態が生じた場合、当行は競争上の不利益を被るかもしれません。
・ 預金保険の基金が不十分であることが判明した場合、当行の支払うべき預金保険の保険料が引き上げられるおそれがあります。
・ 金融機関の破綻又は政府による金融機関の経営権取得により、金融機関に対する預金者の信任が全般的に低下する、又は金融機関を取巻く全般的環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・ 金融業及び金融システムに対する否定的・懐疑的なマスコミ報道(内容の真偽、当否を問いません。)により当行の評判、信任等が低下するおそれがあります。
政策投資株式リスク(保有する株式の株価下落により損失を被るリスク)
12.保有株式に係るリスク
当行は政策投資目的で保有するものを含め市場性のある株式を大量に保有しており、2020年3月末基準の保有時価合計は約3.3兆円、その簿価は約1.7兆円となっています。当行では、株価変動リスクの抑制の観点も踏まえ、「政策保有に関する方針」において、政策保有株式の削減を基本方針とし、保有意義・経済合理性を検証したうえで、保有の妥当性が認められない場合には、取引先の十分な理解を得た上で、売却を進めております。また、政策保有株式に対しては、トータル・リターン・スワップ等をヘッジ手段として部分的にヘッジを行うことで、株価変動リスクの削減に努めております。
しかしながら、株価が下落した場合には、保有株式に減損又は評価損が発生若しくは拡大する可能性があります。また、自己資本の算出にあたり、保有株式の含み損益を勘案していることから、株価が下落した場合には、自己資本比率等の低下を招くおそれがあります。その結果、当行の財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
市場リスク(金利、有価証券の価格、為替などの変動により損失を被るリスク)
13.市場業務に伴うリスク
当行は、デリバティブを含む様々な金融商品を取り扱う広範な市場業務を行っており、大量の金融商品を保有しています。これにより、例えば、国内外の金融政策の変更等により内外金利が低下した場合、当行が保有する国債等の再投資利回りが低下する可能性があります。また、長短金利差が縮小する場合、資金利益が減少する可能性があります。一方、内外金利が上昇した場合、当行の保有する大量の国債等に売却損や評価損が生じる可能性があります。また、円高となった場合は、当行の外貨建て投資の財務諸表上の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。加えて、株価が下落した場合、当行が保有する株式等の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。当行では、このような内外金利、為替レート、有価証券等の様々な市場の変動により損失が発生するリスクを市場リスクとして管理しておりますが、計算された市場リスク量は、その性質上、実際のリスクを常に正確に反映できるわけではなく、またこのように示されたリスク量を上回る損失が実現する可能性もあります。
なお、当行が保有する有価証券残高の状況については、本有価証券報告書の「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」をご参照ください。
資金流動性リスク(資金繰りがつかなくなるリスク)
14.当行の格下げ等に伴う資金流動性等の悪化リスク
格付機関による当行の格下げにより、当行の市場業務及びその他の業務が悪影響を受けるおそれがあります。特に外貨調達においては、調達コストの増加、又は調達余力の減少により、当行の流動性や収益力が悪影響を受ける、また市場業務においては、担保拠出の追加が求められる、又は顧客からの信用低下等を起因に一定の取引を行うことができなくなる等の悪影響を受けるおそれがあります。例えば、2020年3月末時点のデリバティブ取引及び信用格付に基づいて、当行の格付が1段階格下げされたと仮定した場合、約578億円、2段階格下げされたと仮定した場合、約845億円の追加担保を当行が提供する必要があったと推定されます。なお、2020年4月に、Fitch Ratingsは当行の長期発行体デフォルト格付をAからA-に1段階格下げし、Standard and Poor'sは当行のアウトルックを「ポジティブ」から「安定的」に変更しました。
格付機関は、当行の財務体質や当行の関連子会社の評価、国内外の金融業界全体に影響を与える要因などに基づいて、当行を定期的に評価していますが、当行がコントロールできない要因も含まれており、また、格付評価機関の評価手法については当行がコントロールしうるものではありません。当行は、資金流動性リスク管理上の指標を設ける等、適正な資金流動性の確保に努めておりますが、上記要因などに基づく評価又は格付方法の変更の結果、当行の格付又は当行子会社の格付が引き下がる可能性があり、かかる事態が生じた場合には、当行の市場業務及び他の業務の収益性に悪影響を与えるおそれや、当行の財政状態及び経営成績にも悪影響を与えるおそれがあります。
オペレーショナルリスク(内部管理上の問題や外部要因により損失が発生するリスク)
15.不公正・不適切な取引その他の行為が存在したとの指摘や、これらに伴う処分等を受けるリスク
当行は、事業を行っている本邦及び海外における法令、規則、政策、自主規制等を遵守する必要があり、国内外の規制当局による検査、調査等の対象となっております。当行はコンプライアンス・リスク管理態勢及びプログラムの強化に継続して取り組んでおりますが、かかる取組みが全ての法令等に抵触することを完全に防止する効果を持たない可能性があります。
当行が、マネー・ローンダリング、経済制裁への対応、贈収賄・汚職防止、金融犯罪その他の不公正・不適切な取引に関するものを含む、適用ある法令及び規則を遵守できない場合、あるいは、社会規範・市場慣行・商習慣に反するものとされ、顧客視点の欠如等があったものとされる場合には、罰金、課徴金、懲戒、評価の低下、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消しを受ける可能性があります。また、当行が顧客やマーケット等の信頼を失い、当行の経営成績及び財政状況に悪影響が生じる可能性があります。将来、当行が戦略的な活動を実施する場面で当局の許認可を取得する際にも、悪影響を及ぼすおそれがあります。
なお、当行は、2017年11月に、当行の米国内支店・代理店の銀行免許の監督機関を州当局から連邦当局へ変更する申請を米国通貨監督庁(Office of the Comptroller of the Currency。以下、「OCC」といいます。)に提出し、OCCにより承認されました。当行は、当該銀行免許の監督機関の変更申請に伴い、OCCとの間で、OCCが当行の米国の経済制裁対応に関する内部管理態勢の監視を行っていくこと等で合意しました。これは、当行が米国の経済制裁対応に関し2013年及び2014年に米国ニューヨーク州金融サービス局(New York State Department of Financial Services)との間で行った合意を実質的に継承するものです。2019年2月に、当行は、OCCとの間で、当行のニューヨーク支店、ロスアンゼルス支店及びシカゴ支店において、米国の銀行秘密法に基づくマネー・ローンダリング防止に関する内部管理態勢等が不十分であるとのOCCからの指摘に関し、改善措置等を講じることで合意しました。当行は、上述の事象に関連する事項について、必要な対応を行っております。今後、新たな展開又は類似の事象が生じた場合には、関係当局より更なる制裁金支払の処分等を受け、又は関係当局との間で新たな和解金の支払合意を行うなどの可能性があります。
また、当行は、当行を含むパネル行が各種銀行間指標金利の算出機関に呈示した内容等を調査している各国の政府当局から、情報提供命令等を受けております。また為替業務に関しても、当局から同様の情報提供要請を受けており、一部の当局との間では制裁金の支払いに合意しました。当行は、これらの調査に対して協力を行い、独自の調査等を実施しております。上記に関連して、当行は、指標金利であれば他のパネル行、為替業務であればその他金融機関とともに、米国におけるクラスアクションを含む、複数の民事訴訟の被告となっております。今後、新たな展開又は類似の事象により、当行に重大な財務上その他の悪影響が生じる可能性があります。
16.情報紛失・漏洩に係るリスク
当行は、国内外の法規制に基づき、顧客情報や個人情報を適切に取り扱うことが求められております。当行では、顧客情報や個人情報を多く保有しており、当行は、情報の保管・取扱いに関する規程類の整備、システム整備を実施し、管理態勢高度化に取組んでおりますが、不適切な管理、外部からのサイバー攻撃その他の不正なアクセス、若しくはコンピュータウィルスへの感染等により、顧客情報や個人情報等の紛失・漏洩を完全には防止できない可能性があります。その場合、罰則や行政処分の対象となるほか、顧客に対する損害賠償等、直接的な損失が発生する可能性があります。加えて、顧客の信頼を失う等により当行の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性、並びにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
17.システム、サイバー攻撃等に関するリスク
当行のシステム(業務委託先等の第三者のシステムを含みます。)は、事業を行う上で非常に重要な要素の一つであり、適切な設計やテストの実施等によりシステム障害等を未然に防止し、セキュリティ面に配慮したシステムの導入に努めていますが、システム障害やサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウィルス感染、人為的ミス、機器の故障、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵、新技術、新たなシステムや手段への不十分な対応等を完全には防止できない可能性があります。また、すべてのビジネス要件や金融機関に対する規制強化の高まりからくる規制要件に対応するシステムの高度化への要請を十分に満たせない可能性や、市場や規制の要請に応えるために必要なシステム構築や更新がその作業自体の複雑性等から計画通りに完了しない可能性があります。その場合、情報通信システムの不具合や不備が生じ、取引処理の誤りや遅延等の障害、情報の流出等が生じ、業務の停止及びそれに伴う損害賠償の負担その他の損失が発生する可能性、当行の信頼が損なわれ又は評判が低下する可能性、行政処分の対象となる可能性、並びにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
18.テロ支援国家との取引に係るリスク
当行は、イラン・イスラム共和国(以下、「イラン」といいます。)等、米国国務省が「テロ支援国家」と指定している国における法主体又はこれらの国と関連する法主体との間の取引を実施しております。また、当行の銀行子会社はイランに駐在員事務所を設置しております。
米国法は、米国人が当該国家と取引を行うことを、一般的に禁止又は制限しております。更に、米国政府及び年金基金をはじめとする米国の機関投資家が、イラン等のテロ支援国家と事業を実施する者との間で取引や投資を行うことを規制する動きがあるものと認識しております。このような動きによって、当行が米国政府及び年金基金をはじめとする機関投資家、あるいは規制の対象となる者を、当行の顧客又は投資家として獲得、維持できない結果となる可能性があります。加えて、社会的・政治的な状況に照らして、上記国家との関係が存在することによって、当行の評判が低下することも考えられます。上記状況は、当行の財政状態、経営成績及び当行の株価に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、米国政府による対イラン制裁措置により、米国人の関与するイランとの取引の禁止などが実施されています。更に、2018年5月の米国によるイランに関する包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)からの離脱後に発令された大統領令により、広範なイラン関連取引や活動について、関与した非米国人に対して二次制裁を適用し得るものとされています。当行では、二次制裁を含む米国による措置が適用されるリスクの増加を受けて、今後とも当該リスクのモニタリングと対応策を実施してまいります。
更に、米国証券取引所に登録している企業(米国外企業を含みます。)には、特定のイラン関連の取引の開示が引き続き義務づけられています。本邦においても、イランの拡散上機微な核活動・核兵器運搬手段開発に関与する者に対する資産凍結等の措置が実施されています。当行では、これらの規制を遵守するための態勢の改善に努めています。しかしながら、かかる態勢が適用される規制に十分対応できていないと政府当局に判断された場合には、何らかの規制上の措置の対象となる可能性があります。なお、これに関連する処分等については、「15.不公正・不適切な取引その他の行為が存在したとの指摘や、これらに伴う処分等を受けるリスク」をご参照下さい。
19.規制変更のリスク
当行に適用される国内外の法律、規則、会計基準、政策、実務慣行及び解釈、並びに国際的な金融規制等は変更される可能性があり、かかる変更への対応のため経営資源を投じる必要があり、場合によっては経営戦略を変更せざるを得なくなるおそれがあります。また規制変更への対応が不十分である場合には規制当局から処分等を受けるおそれがあり、当行の財政状況及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
20. 消費者金融業務に係るリスク
当行は、消費者金融業に従事する関連会社等を有すると同時に消費者金融業者に対する貸出金を保有しております。消費者金融業に関しては、いわゆるみなし弁済を厳格に解するものを含め、過払利息の返還請求をより容易にする一連の判例が出され、これらに伴い過払利息の返還を求める訴訟が引き続き発生しております。消費者金融業に従事する当行の関連会社等における過払利息の返還による費用負担のほか、当行が貸出金を保有する消費者金融業者の業績悪化による追加的な与信費用が発生する可能性があり、消費者金融業に不利な新たな司法上の判断や規制強化がある場合には追加的な費用負担が発生する可能性もあります。
21. 評判に関するリスク
三菱UFJフィナンシャル・グループは、本邦及び国際金融市場においてG-SIBに指定されており、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指しております。当行のビジネスはお客さまのみならず、地域社会、国際社会等からの信頼と信用の下に成り立っています。そのため、当行の評判は、お客さま、投資家、監督官庁、及び社会との関係を維持する上で極めて重要です。MUFGグループ経営ビジョンや行動規範等を踏まえ、評判リスクの適切な管理に努めておりますが、特に、人権、環境、健康、安全等の社会的責任への懸念が生じる取引や各種法令等(アンチマネー・ローンダリング、経済制裁、競争法、暴力団排除条例等)の趣旨に反するおそれのある取引などを防止できず、又はこれらに適切に対処することができなかった場合で、大規模な報道に繋がり得るなど世論の注目が高いときや規制当局の関心が高いときなどにおいて、当行は、現在又は将来のお客さま及び投資家を失うこととなり、当行の事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があり、企業価値を毀損する可能性があります。
(財政状態及び経営成績の状況)
当連結会計年度の業績につきましては、以下のとおりとなりました。
資産の部につきましては、当連結会計年度中171,063億円増加して、当連結会計年度末残高は2,704,185億円と
なりました。主な内訳は、貸出金1,053,586億円、現金預け金632,349億円、有価証券529,014億円となっております。負債の部につきましては、当連結会計年度中176,904億円増加して、当連結会計年度末残高は2,581,330億円となりました。主な内訳は、預金・譲渡性預金1,832,097億円となっております。
損益につきましては、経常収益は前連結会計年度比4,741億円増加して53,381億円となり、経常費用は前連結会計年度比6,134億円増加して46,262億円となりました。以上の結果、経常利益は前連結会計年度比1,392億円減少して7,119億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比5,145億円減少して979億円となりました。
なお、報告セグメントの業績は次のとおりであります。
営業純益は前年同期比18億円減少して775億円となりました。
営業純益は前年同期比17億円減少して1,897億円となりました。
営業純益は前年同期比71億円増加して1,427億円となりました。
営業純益は前年同期比251億円増加して2,321億円となりました。
営業純益は前年同期比640億円増加して2,441億円となりました。
営業純益は前年同期比387億円増加して△921億円となりました。
なお、当連結会計年度より、部門間の収益・経費の配賦方法の変更に伴い、報告セグメントの利益の算定方法を変
更しております。
変更後の算定方法に基づき作成した前連結会計年度のセグメント情報については、「第5 経理の状況」中、
1「連結財務諸表等」(1)「連結財務諸表」「注記事項」(セグメント情報等)に記載しております。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローにつきましては、営業活動においては、前連結会計年度比41,255億円収入が減少して、64,904億円の収入となる一方、投資活動においては、前連結会計年度比37,623億円支出が減少して41,157億円の支出となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度比8,051億円収入が増加して、7,393億円の収入となりました。
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末比28,454億円増加して632,349億円となりました。
国際統一基準による連結総自己資本比率は14.43%となりました。
国内・海外別収支の内訳は次のとおりであります。
当連結会計年度の資金運用収支・役務取引等収支・特定取引収支・その他業務収支の合計は27,290億円で前年度比2,436億円の増益となりました。国内・海外の別では国内が12,670億円で前年度比487億円の増益、海外が16,529億円で前年度比1,003億円の増益となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内に本店を有する連結子会社(以下、「国内連結子会社」という。)であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外に本店を有する連結子会社(以下、「海外連結子会社」という。)であります。
2 資金調達費用は金銭の信託運用見合費用を控除して表示しております。
3 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
国内における資金運用/調達の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度の資金運用勘定平均残高は前年度比46,294億円増加して1,359,322億円となりました。利回りは0.13%低下して0.79%となり、受取利息合計は10,750億円で前年度比1,394億円の減少となりました。資金調達勘定平均残高は前年度比40,629億円増加して1,562,116億円となりました。利回りは0.00%低下して0.30%となり、支払利息合計は4,818億円で前年度比54億円の増加となりました。
(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、一部の連結子会社については、月末毎の残高等に基づく平均残高を利用しております。
2 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。
3 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高及び利息を、それぞれ控除して表示しております。
海外における資金運用/調達の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度の資金運用勘定平均残高は前年度比1,286億円減少して695,124億円となりました。利回りは0.12%上昇して3.28%となり、受取利息合計は22,835億円で前年度比808億円の増加となりました。資金調達勘定平均残高は前年度比9,614億円増加して698,711億円となりました。利回りは0.03%上昇して1.75%となり、支払利息合計は12,277億円で前年度比425億円の増加となりました。
(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、一部の連結子会社については、月末毎の残高等に基づく平均残高を利用しております。
2 「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
3 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高及び利息を、それぞれ控除して表示しております。
(注) 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
国内及び海外の役務取引等収支の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度の国内の役務取引は、役務取引等収益が5,617億円で前年度比69億円減収、役務取引等費用が1,621億円で前年度比74億円増加した結果、役務取引等収支では前年度比144億円減少して3,995億円となりました。海外の役務取引は、役務取引等収益が5,412億円で前年度比311億円増収、役務取引等費用が938億円で前年度比43億円増加した結果、役務取引等収支では前年度比268億円増加して4,473億円となりました。
この結果、役務取引等収支合計では、前年度比30億円増加して7,016億円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
2 「その他商業銀行業務」には、預金・貸出業務、代理業務、保護預り・貸金庫業務、信託関連業務等を含んでおります。
3 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
国内及び海外の特定取引収支の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度の国内の特定取引収益は218億円で前年度比321億円増収、特定取引費用は4億円で前年度比14億円減少した結果、特定取引収支では前年度比335億円増加して213億円となりました。海外の特定取引収益は737億円で前年度比307億円減収、特定取引費用は500億円で前年度比0億円増加した結果、特定取引収支では前年度比307億円減少して237億円となりました。
この結果、特定取引収支合計では前年度比3億円増加して432億円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
2 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
国内及び海外の特定取引の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度末の国内の特定取引資産は前年度比14,017億円増加して51,718億円、特定取引負債は前年度比1,328億円減少して18,722億円となりました。海外の特定取引資産は前年度比7,265億円増加して29,551億円、特定取引負債は前年度比3,832億円増加して15,587億円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
2 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
2 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
3 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
4 定期性預金=定期預金+定期積金
(注) 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
(注) 特定海外債権等は、当行の特定海外債権引当勘定の引当対象とされる債権、並びに当該引当勘定の引当対象国に対する海外子会社の債権のうち、当該引当勘定の引当対象に準ずる債権であります。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び国内連結子会社であります。「海外」とは、当行の海外店及び海外連結子会社であります。
2 「相殺消去額」とは、連結会社間の内部取引等に係る消去額合計であります。
3 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、当行は、国際統一基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては先進的内部格付手法、オペレーショナル・リスク相当額の算出においては先進的計測手法を採用するとともに、マーケット・リスク規制を導入しております。
また、自己資本比率の補完的指標であるレバレッジ比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(平成31年金融庁告示第11号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1.破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2.危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3.要管理債権
要管理債権とは、3ヵ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4.正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
「生産、受注及び販売の実績」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものであり、リスクと不確実性を内包しているため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性がありますので、ご留意ください。
当連結会計年度の連結業務純益(一般貸倒引当金繰入前)は、市場関連収益の増収に加え、インドネシアのバンクダナモンの連結子会社化による増収もあり、前連結会計年度比1,400億円増加して8,200億円となりました。当連結会計年度は本業の収益を表す連結業務純益の反転を目指して取り組んできましたが、連結業務粗利益の増加、及び経費率の低下により、5年ぶりの増益を実現しました。
しかしながら、前連結会計年度に計上した貸倒引当金戻入益の剥落や新型コロナウイルス感染症の影響拡大を考慮した貸倒引当金の計上(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項 (6) 貸倒引当金の計上基準(追加情報)」ご参照)等もあり与信関係費用総額が増加したことに加えて、海外連結子会社ののれん一括償却に伴う特別損失の計上もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は同5,145億円減少して979億円となりました。
当行の親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループは、総合金融グループの強みを発揮するため、グループ各社が緊密な連携のもと、一元的に戦略を定め事業を推進する事業本部制を導入しています。各事業本部は、お客さまの幅広いニーズにお応えするため、グループ各社それぞれの強みを融合させた戦略の立案や施策の運営を行っています。当連結会計年度における事業本部別の事業の取組みは次のとおりです。
(法人・リテール事業本部)
市況悪化に伴い資産運用ビジネスは苦戦しましたが、ウェルスマネジメントビジネス拡大によるグループ一体での事業・資産承継ビジネスに加え、コンシューマーファイナンスやクレジットカードを含む資金決済が堅調であったほか、コスト抑制も進めました。
個人のお客さま向けビジネスでは、お客さまとの接点の改革と生産性の向上に取組み、インターネットバンキングやスマートフォンアプリの機能改善によりサービス利用者数が大幅に増加しました。
中堅中小企業のお客さま向けビジネスでは、成長産業支援室を立上げ、新産業の育成をめざしてベンチャー企業への融資や上場支援を一層強化しました。
(コーポレートバンキング事業本部)
貸出利鞘の改善に加えて、大型起債案件の引受けやM&A助言などの証券関連収益が業績を牽引しました。
当行と信託の営業本部を統合し、海外拠点と一体運営する体制に移行したことに加え、グループ内の調査・助言機能を結集したリサーチ&アドバイザリー・ユニットを立上げるなど、付加価値の高い情報とソリューションをワンストップで迅速に提供することを最優先に取組みました。また、当行・信託・証券の協同で、気候変動リスクなどをテーマにした大企業CFO向けセミナーも継続的に開催しました。
(グローバルCIB事業本部)
モルガン・スタンレーとの協働により、米国にて過去最大級の買収ファイナンスの幹事行を務めるなど、資産回転型ビジネスの強化に向けた取組みを着実に加速させました。
また、外貨の預金と貸出のバランスや取引採算性の改善に向けた取組みを継続的に強化し、既存の低採算貸出の削減を加速させるとともに、新規の貸出についても厳格なスクリーニングを徹底しました。
加えて、2019年11月にドイツのDVBバンクからの航空機ファイナンス関連資産と従業員の承継を完了しました。
(グローバルコマーシャルバンキング事業本部)
MUFGユニオンバンクは、収益性の改善に向け、貸出ポートフォリオの見直しや経費構造改革による生産性の向上に取組みました。
アユタヤ銀行は、オートローンを中心とする個人向け貸出が順調に伸長し、過去最高益を実現しました。
バンクダナモンは、大企業から中堅中小・個人取引に至る幅広い分野でグループ協働を進め、ビジネスを拡大しました。バンクダナモンを連結子会社化したことで、ASEANを中心とした商業銀行のプラットフォームを完成しました。
また、2020年2月に資本業務提携したGrab社との協働を通じて、東南アジアでの次世代金融サービスの提供を進めてまいります。
(受託財産事業本部)
資産運用事業は、2019年8月に豪州を本拠とする資産運用会社の買収を完了し、グローバルブランド名をFirst Sentier Investorsに変更しました。また、顧客ニーズに沿った機動的な商品提供や高付加価値な情報提供により、国内法人向けの運用商品販売額が伸長し、運用商品残高が増加しました。
資産管理事業は、海外ではファンドに対する貸出などの、国内では事務代行などの複合サービスを展開してビジネスを着実に拡大しました。
年金事業は、確定給付年金では外部評価No.1を9年連続で獲得し、確定拠出年金では加入者数を伸ばしました。また、人事制度・退職給付制度の一体コンサルティングで新規顧客を増やし、年金にとどまらない、福利厚生の総合コンサルティングに注力しました。
(市場事業本部)
顧客向けビジネスでは、事業法人向け為替取引において、お客さまの利便性や価格競争力を更に高めるための電子化への投資を継続し、安定的な取引量確保と収益貢献に繋げました。また、海外の証券子会社を中心に業務戦略の見直しを実施するとともに、各拠点のセールス&トレーディング業務の機能整理による経費削減を進めました。
トレジャリー業務では、持続性ある健全な外貨ビジネスを支えるため、日本国債を用いた有担保調達の拡大等による調達手段や調達先の多様化に取組みました。また、市場変動が大きい局面においても、安定的な外貨資金繰り運営を行いました。
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
当連結会計年度の連結業務純益(一般貸倒引当金繰入前)は、連結業務粗利益がその他業務収益の増加を主因に前連結会計年度比2,433億円増加、営業経費は前連結会計年度比1,032億円増加し、前連結会計年度比1,400億円増加して8,200億円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、バンクダナモン及びアユタヤ銀行ののれん一括償却等を主因に、前連結会計年度比5,145億円減少して979億円となりました。
当連結会計年度における主な項目は、以下のとおりであります。
連結業務粗利益は、前連結会計年度比2,433億円増加して27,418億円となりました。
資金運用収支は、資金運用収益及び資金調達費用がともに増加し、前連結会計年度比15億円減少して16,050億円となりました。
役務取引等収支は、運用商品関連手数料等が減少した一方、バンクダナモン連結化等により役務取引等収益が増加し、前連結会計年度比30億円増加して7,016億円となりました。
特定取引収支は、前連結会計年度比3億円増加して432億円、その他業務収支は、国債等債券関係損益の増加等を主因に、前連結会計年度比2,418億円増加して3,791億円となりました。
営業経費(臨時費用控除後)は、国内は減少した一方、海外は増加し、前連結会計年度比1,032億円増加して19,218億円となりました。この結果、連結業務純益(一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前)は、前連結会計年度比1,400億円増加して8,200億円となりました。
与信関係費用総額は、一般貸倒引当金繰入及び与信関係費用の増加、偶発損失引当金戻入益の減少を主因に、前連結会計年度比2,140億円増加して1,355億円となりました。
株式等関係損益は、前連結会計年度比1,137億円減少して150億円となりました。
株式等売却益は前連結会計年度比418億円減少して1,235億円、株式等売却損は前連結会計年度比293億円増加して532億円、株式等償却は前連結会計年度比425億円増加して553億円となりました。
貸出金は、バンクダナモン連結化を主因に、前連結会計年度末比16,951億円増加して1,053,586億円となりました。
当行グループのリスク管理債権(除く信託勘定)は、前連結会計年度末比1,266億円増加して9,037億円となりました。
貸出金残高に対するリスク管理債権(除く信託勘定)の比率は、前連結会計年度末比0.10ポイント増加して0.85%となりました。
債権区分別では、破綻先債権額が前連結会計年度末比74億円減少、延滞債権額が前連結会計年度末比633億円増加、3ヵ月以上延滞債権額が前連結会計年度末比23億円減少、貸出条件緩和債権額が前連結会計年度末比731億円増加しております。
部分直接償却後 未収利息不計上基準(資産の自己査定基準)
[連結]
地域別セグメント情報
[連結]
業種別セグメント情報
[連結]
[ご参考]金融再生法開示債権の状況
金融再生法開示債権は、前連結会計年度末比188億円増加して6,519億円となりました。
開示債権比率は、前連結会計年度末比0.02ポイント増加して0.67%となりました。
債権区分別では、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が159億円増加、危険債権が394億円減少、要管理債権が424億円増加しております。
当連結会計年度末の開示債権の保全状況は、開示債権合計6,519億円に対し、貸倒引当金による保全が1,405億円、担保・保証等による保全が3,724億円で、開示債権全体の保全率は78.68%となっております。
金融再生法開示債権
[単体]
(注) 上段は当連結会計年度末の計数、下段(カッコ書き)は前連結会計年度末の計数を記載しております。
有価証券は、前連結会計年度末比27,116億円増加して529,014億円となりました。株式が6,627億円減少しましたが、地方債が7,263億円、社債が3,313億円、その他の証券が22,166億円、それぞれ増加しました。
(注) 「その他の証券」は、外国債券及び外国株式を含んでおります。
繰延税金資産の純額は、前連結会計年度末比878億円増加して△4,565億円となりました。
(注) 連結財務諸表上の繰延税金資産から繰延税金負債を差し引いたものです。
発生原因別内訳(単体)
預金は、前連結会計年度末比72,252億円増加して1,776,132億円となりました。
国内個人預金[単体]が26,412億円増加、国内法人預金その他[単体]が28,905億円増加、海外支店[単体]が684億円増加しました。
(注) 「国内個人預金[単体]」及び「国内法人預金その他[単体]」は、特別国際金融取引勘定分を除いております。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比5,840億円減少して122,855億円となりました。
その他有価証券評価差額金は、前連結会計年度末比2,056億円減少して14,853億円となりました。また、非支配株主持分は、前連結会計年度末比2,464億円減少して4,270億円となりました。
総自己資本の額は、前連結会計年度末比3,470億円減少の142,856億円となりました。
リスク・アセットの額は、前連結会計年度末比24,526億円減少して989,736億円となりました。
この結果、連結総自己資本比率は、前連結会計年度末比0.00ポイント増加して14.43%、連結Tier1比率は、前連結会計年度末比0.16ポイント減少して12.29%、連結普通株式等Tier1比率は、前連結会計年度末比0.12ポイント減少して10.70%となりました。
(注) 総自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づく平成18年金融庁告示第19号に定められた算式に基づいて、国際統一基準を適用のうえ算出しております。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要(キャッシュ・フローの状況)」に記載しております。
当連結会計年度の内部管理上の区分けを基準とした事業部門別収益状況は、次のとおりです。
[各事業部門の主な担当業務]
(注) 1. 連結業務純益の内部取引消去等連結調整前の計数(子会社からの配当収入のみ消去)です。
行内管理のために算出した損益であり、財務会計上の損益とは一致しません。
2. その他部門の業務粗利益では、子会社からの配当収入、及び株式会社三菱UFJフィナンシャル・
グループ宛貸出収益を控除しております。
円預貸利鞘の低下による資金収益の減少、及び運用商品等の手数料収益の減少により、粗利益は前年を下回る実績となりました。
国内の手数料収益は減少したものの、国内外の貸出利鞘が改善したことで資金収益が増加し、粗利益は前年を 上回りました。
貸出収益の増加、及び米州を中心とした手数料収益の増加に支えられ、粗利益は前年を上回りました。
アユタヤ銀行の金利収益の増加、及びバンクダナモン連結化の影響により、粗利益は前年を上回りました。
国内外の金利低下を背景に機動的な操作運営を実施し、粗利益は前年を上回る実績となりました。
当行の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用
いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当行は、信用供与先の財務状況の悪化等により、貸出金等の資産の価値が減少ないし消失し、損失を被るリスク(このリスクを当行では「信用リスク」と定義しております)に備えて、貸倒引当金を計上しております。
当連結会計年度末の連結貸借対照表に計上した貸倒引当金額は6,125億円であり、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項 (6)貸倒引当金の計上基準」を記載しております。
「貸倒引当金の計上基準」に記載の資産の自己査定とは、保有する貸出金等の資産を個別に検討して、債務者区分及び担保・保証等の状況を勘案したうえで、回収の危険性、又は価値の毀損の危険性の度合に応じて貸出金等の資産の分類を行うことをいいます。資産の自己査定結果は貸倒引当金の計上の基礎となるため、「債務者区分の具体的な判断基準」を資産の自己査定基準において整備しております。
適切な債務者区分の決定が行われるよう、当行では、信用リスクを評価するための統一的な基準として債務者区分と整合した信用格付制度を導入しており、原則として信用を供与している全ての取引先及びその取引を対象に信用格付を付与しています。信用格付のうち、一般事業法人等を対象とする債務者格付は、取引先の今後3~5年間における債務償還能力を15段階で評価し分類したものです。当行では、取引先の決算情報に基づく財務定量評価に加え、現時点及び将来の取引先が属する業界環境や、経営リスク、資金調達リスク等の定性要因を債務者格付に反映させています。信用格付は年1回以上の頻度で見直しを行っており、取引先の業況変化等により信用力に変化があると認められる場合には、遅滞なく見直しを実施しています。また、信用格付は、営業部店及び審査所管部が付与し、当該部署から独立した与信監査部署が監査・変更指示を行うことで、透明性の確保を図っています。
なお、信用格付制度及び過去の一定期間における貸倒実績又は倒産実績を基礎とする算定手法では捕捉されない可能性のある将来の信用リスクの増大が見込まれる場合には、一定の仮定に基づき、必要な調整を加えて貸倒引当金を計上しております。
こうした貸倒引当金を算定するにあたっての前提及び見積りには不確実性がありますが、有効な内部統制に基づき、客観性や合理性を確保した最善の見積りを行っております。
買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価
① 企業結合における無形資産への取得原価の配分
当行グループは、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指し、その戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、これらの企業結合取引により生じた無形資産を連結貸借対照表に計上しております。
注記事項の(企業結合等関係)に記載のとおり、当連結会計年度において、PT Bank Danamon Indonesia, Tbk.(以下、「バンクダナモン」という。)は、当行の連結子会社となりました。
企業結合取引の結果として、当行が連結貸借対照表に計上した無形資産の企業結合時における時価には、バンクダナモンの取得における「代理店との関係」(795億円)及び「コア普通預金」(298億円)が含まれております。
無形資産の企業結合日における時価は、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの現在価値として算定されており、当該キャッシュ・フローの算定に使用される仮定は、機関決定された中期計画に基づいております。また、時価評価に適用した重要な見積りや、当該見積りに用いた仮定のうち、主なものは以下のとおりです。
(バンクダナモンの取得により資産計上した無形資産に用いた主な見積り・仮定)
将来キャッシュ・フローに使用される前提は、機関決定された中期計画に基づいており、公正価値評価の方法として、インカムアプローチ法を用いております。
「代理店との関係」においては、既存代理店との取引が継続する期間において享受できる超過収益に基づくキャッシュ・フローを現在価値に割引くことにより価値を算定しております。当該キャッシュ・フローには、インドネシアにおける自動車・二輪車販売市場に関連する市場の成長予測を反映した貸出実行額の増加率及び過去実績に基づく既存代理店の剥落率などの見積り・仮定を用いています。
「コア普通預金」においては、既存の預金顧客の預金残高が存続する期間において享受できる資金調達コストの節減効果に基づくキャッシュ・フローを現在価値に割引くことにより価値を算定しております。当該キャッシュ・フローには、預金顧客の剥落率などの見積り・仮定を用いています。
無形資産に適用する割引率の基礎として、株主資本コストを使用しております。当該割引率には、各無形資産に関連する将来の取引継続や取引規模、取引採算性の変動等のリスク、事業規模に伴うリスクを考慮したリスクプレミアムなどの見積り・仮定を用いています。
経営者は、企業結合時の無形資産の時価及びのれんの額に用いた見積り・仮定は合理的であると考えています。しかしながら、これらの見積り・仮定には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより当該見積り・仮定が変化した場合には、結果として、企業結合時の無形資産への取得原価及びのれんの額への配分が適切に測定されない可能性があります。
② のれんの減損処理の要否
当行グループは、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指し、その戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、これらの企業結合取引により生じたのれんを連結貸借対照表に計上しております。
買収・出資・資本提携等においては、相手先の属する業界の想定外の変化等により、当行グループの想定通りのシナジーその他の効果を得られない可能性や、計上したのれんの毀損により、当行グループの事業戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度末の連結貸借対照表におけるのれんの計上額は、874億円であります。
のれんの減損の兆候の識別、減損損失の認識の判定及び測定は、のれんが帰属する事業に関連する資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行います。
(減損の兆候の識別)
のれんを含む資産グループが、以下のいずれかに該当する場合には、減損の兆候を識別します。
・営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっている場合、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合
・事業価値を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生じる見込みである場合
・営む事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、又は、悪化する見込みである場合
・資産又は資産グループの市場価格が著しく下落した場合
・その他、のれんを含む資産グループに減損が生じている可能性を示す事象が発生していると考えられる場合
減損の兆候があると識別されたのれんについて、のれんが帰属する事業に関連する資産グループの減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額(以下、「帳簿価額」という。)と、のれんを含むより大きな単位から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額(以下、「割引前キャッシュ・フロー」という。)を比較し、後者が前者を上回る場合には、減損損失は認識されません。前者が後者を上回る場合には、のれんの総額を超えない範囲で、その超過分を減損損失として認識します。
割引前将来キャッシュ・フローの算定は、その性質上、判断を伴うものであり、多くの場合、重要な見積り・前提を使用します。当該割引前将来キャッシュ・フローの算定に使用される前提は、それぞれのグルーピングにおける将来見込み及び中期計画に基づいており、将来の市場及び経済全体の成長率、現在及び見込まれる経済状況を考慮しております。
経営者は、のれんの減損損失の認識の判定に使用した見積りの前提は合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、割引前将来キャッシュ・フローや公正価値の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、減損損失が認識されるか否かの判定及び認識される減損金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
注記事項の(企業結合等関係)に記載のとおり、2019年4月に連結子会社となったバンクダナモンに係るのれん(2,347億円)を計上しました。
企業結合後に、上場会社であるバンクダナモンの株式の市場価格は取得原価に比べ相当程度下落している状況が継続しており、当該市場価格の下落の状況をバンクダナモンに係るのれんの減損の兆候として識別しましたが、2019年度ののれんの減損判定において、バンクダナモンに係るのれんを含む資産グループから得られる割引前キャッシュ・フローが帳簿価額を超過していたため、減損損失を認識することはありませんでした。
しかしながら、当該バンクダナモンに係るのれんは、注記事項の(連結損益計算書関係)に記載のとおり、会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(平成10年5月12日 日本公認会計士協会)第32項の規定に基づき、当行が保有するバンクダナモンの株式の市場価格下落を受けた減損処理に伴って、当連結会計年度末において全額償却しております。
デリバティブ取引の時価評価
当行及び連結子会社は、顧客に対して為替・資金・証券サービスを提供する業務、並びに市場取引及び流動性・資金繰り管理を行う業務において、多種多量のデリバティブ取引を保有しており、会計上の見積りの観点から重要であると認識しております。
これらのデリバティブ取引は、時価で測定され資産及び負債として計上しております。時価は、市場価格等の市場情報や、金融工学理論に基づく評価モデルなどに基づき、決定しております。
具体的には、市場価格が入手可能な場合は、その市場価格を時価とします。市場価格が直接入手できない場合、所定の手続により承認された評価モデルに基づいて時価を算出しております。評価モデルは市場適合性の観点から検証を実施しておりますが、その性質上会計上の見積もりを含みます。
また評価モデルに投入するインプットには為替レート・イールドカーブ・ボラティリティ・クレジットカーブ・株価等の市場で直接又は間接的に観察可能なインプットのほか、相関係数や倒産確率等の重要な見積りを含む市場で観察できないインプットを使用する場合もあります。算定した時価等について市場で観察できないインプットが重要な構成要素である場合、これらの時価として「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(金融商品関係) 2 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
なおこれらの評価モデルを用いた時価に対しては、必要に応じて、市場での売買コストを反映させる調整や、取引相手方の信用リスクに関する調整(CVA)等の出口価格への調整を実施しております。
経営者は、適切な検証を実施した上でデリバティブ取引に関する時価が合理的であると判断しております。ただし、これらの時価の算定に使用された見積り・前提には不確実性が含まれているため、予測困難な前提条件の変化などにより、デリバティブ取引の時価評価に関する各種見積りが変化した場合には、結果として、当行及び連結子会社における時価の評価額が変動する可能性があります。
新型コロナウイルス感染症の拡大に関連し、当行が会計上の見積りを行う上でどのような仮定を置いたかについ
ては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)
4 会計方針に関する事項 (6)貸倒引当金の計上基準」に記載しております。なお、他の重要な会計上の見積り及び
当該見積りに用いた仮定には、重要な影響を与えないものと判断しております。
当行は、2006年1月1日付で、当行の親会社である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループとの間で、経営管理契約を締結しております。
本契約は、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社・関連会社を含むMUFGグループの健全且つ適切な業務運営の確保と当行の業務進展を図ることを目的としており、当行は株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループより、経営管理に関わる役務の提供を受けております。
(2) バンクダナモンの株式追加取得
当行は、インドネシア共和国(以下、「インドネシア」という。)の大手商業銀行PT Bank Danamon Indonesia Tbk.(以下、「バンクダナモン」という。)への戦略出資について、2019年4月29日、第三段階として、既存の株主より、バンクダナモン発行済株式総数の54.0%を追加取得いたしました。これにより、当行はバンクダナモン発行済株式総数94.0%を保有することになり、バンクダナモンは当行の連結子会社となりました。更に、2019年5月1日、バンクダナモンを存続会社とし、PT Bank Nusantara Parahyangan,Tbk.を消滅会社とする吸収合併により、当行のバンクダナモン株式の所有割合は94.1%となりました。
当行は、東南アジアのビジネスプラットフォーム構築に向けた戦略出資等を通じて同地域の商業銀行業務を強化してまいりました。バンクダナモンへの戦略出資の完了に伴い、今後バンクダナモンや他のパートナーバンクとの更なる協同・シナジーを追求してまいります。
該当事項はありません。