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MUFG Report 2022 CEOメッセージ MUFG Report 2022 CEOメッセージ

MUFG Report 2022(統合報告書)
CEOメッセージ

全てのステークホルダーのチカラになるために

取締役
代表執行役社長 グループCEO
亀澤 宏規

環境・課題認識

私の今年の一字は「初」です。毎年正月に家族で書き初めをする際、一年の心構えとしての一字を決めています。

 

社長に就任して3年目、中期経営計画は2年目なのに、なぜ今になって「初」なのか。理由は二つあります。一つは、今が新しい世界の「最初」だということ。コロナ禍で2年が経過し、いずれコロナ前に戻るという考えはなくなりました。世の中はずいぶん変わり、新しい世界が始まる局面だと考えています。そしてもう一つは、その新しい世界を読み解き、適応するためには「初々しさ」が大切だということです。別の言い方をすれば、過去の経験や専門家の意見が、必ずしもそのまま活かせる世界ではなくなっています。昨年から「これまでの延長線上に我々の未来はない」と社内外で発信してきました。皆がそれぞれ、今何をすべきかをゼロから考え直して、作っていかなければならない。そういう状況だからこそ、過去の成功体験よりも初々しさが必要ではないか。

 

「デジタル」と「グリーン」の潮流は不可逆的なものですが、足元の国際情勢や経済動向などがこれらの変化を加速させるのか、進む角度を変えるのか、確りと見極める必要があります。コロナのような想定外の大きな環境変化に対し、事前に十分な準備を行うことは容易ではありません。世の中への感度を高く持ち、変化の兆しを見逃さず、つかみ取る。そして予想外のことが生じても対応できる柔軟性を備える必要があります。

 

今は分散化・多様化の時代だと認識しています。かつては産業も思想も、権威が方向付けをして、一定のコンセンサスのもとで議論するのが当たり前でした。しかし現在は価値観が多様化し、議論の粒度が細分化され、個人がSNSなどで自由に意見を発信できるようにもなりました。ある種の民主化とも言える権限の分散です。そして、ただ分散しただけではなく、ICT技術の急速な発展により、さまざまなものが繋がり新しい価値が生まれるという変化も起きています。さらに言えば、今多くの起業家が注目するWeb3.0やメタバースの浸透で新たな世界や価値観が生まれ、意思決定やコンセンサス作りのメカニズムも大きく変わる可能性すらあります。その世界では今の国の概念も通貨の概念もなく、金融の再定義も必要になるかもしれません。そういう時代に私たちは生きています。お客さまの価値観やニーズも多様化し、社会も大きく変わるなか、金融も変革をしていかなければ生き残ることはできません。

 

このような分散化・多様化が進む中で、企業経営はどうあるべきか。会社もトップダウンだけではなく、一人ひとりが自律的に判断し、行動することが極めて重要になります。また同時に、一人ひとりの動きがバラバラにならないための軸が必要となります。2021年4月に定めたMUFGのパーパス「世界が進むチカラになる。」は、まさに我々がよりどころとする軸となるものです。

 

パーパスは額に入れて飾っておいては意味がありません。どうやって浸透させ、行動に繋げていくかが鍵になります。この1年は、パーパスを社員が自分ごと化するための取り組みとして「MUFG Way浸透セッション」を行ってきました。その際、私自身、半生を幼稚園から振り返り、学生のとき、入社したとき、異動したときなどの初心を思い返してみました。銀行員を長くやっているうちに、堅くきちんとすることが良いと思うようになっていたけれど、自分って本当はどうだったろう。自分は「仕事で社会に貢献したい」という思いでこれまで行動してきたし、そのために生きているよなと。こんなことをさらけ出すのは恥ずかしくて皆あまり言わないけれど、そういう初心は忘れないほうがいい。皆の中にある初心を呼び起こし、それを素直に表現できる会社にしたい。

 

そして、こうしたパーパスのもとでMUFGが「どのようにステークホルダーのチカラになるか」をまとめたのが、2021年度からスタートした中期経営計画(以下、中計)です。環境変化に応じたビジネスモデルを作り上げる「挑戦と変革の3年間」と位置付けて、この1年間取り組んできました。

2021年度の振り返りと2022年度の目標

2021年度は変革に向けた最初の一歩を確りと踏み出すことができたと思います。パーパスを軸にさまざまな取り組みを進め、戦略の3本柱として掲げた「企業変革」、「成長戦略」、「構造改革」は、それぞれ着実に進捗しているという手応えがあります。

 

「成長戦略」と「構造改革」の進展は財務面にも表れています。ウェルスマネジメントやグローバルAM / ISなどの領域を中心に、顧客部門の営業純益が前年度比で大幅に増加しました。経費は為替影響を除けば前年度比で減少し、リスクアセットも確りコントロールできています。親会社株主純利益は1兆1,308億円とMUFG発足以来の最高益となり、ROEは7.79%と前年度比2.16%上昇しました。

 

また、事業ポートフォリオの見直しも進展しました。昨年9月に経営資源の最適配置の観点からMUFGユニオンバンクをU.S. Bancorpへ売却することを決定し、米国事業は法人取引に経営資源を集中させることにしました。稼ぐ力を強化するために、既存の主要戦略の領域で一層の成長を実現するとともに、さらなるリスクテイクや新たなビジネスにもチャレンジしています。アジアのスタートアップ向け融資に取り組むMars Growth Capitalへの出資を合計5億米ドルに増額したほか、インドのスタートアップを対象にした3億米ドルの投資枠としてMUFG Ganesha Fundを設定しました。

 

2022年度はこれらの取り組みを加速させ、中計で掲げた2023年度のROE目標7.5%と、親会社株主純利益1兆円以上の安定的な達成に向け、確りと目標達成の道筋を示したいと思います。足元ではコロナ禍への警戒が残るなか、国際情勢の変化や地政学リスクの高まりなどの不透明な状況が続いています。また、欧米のインフレの高進を受け、金融政策に対する見通しの変化による市場の大きな変動にも注意が必要です。こうした環境においても、顧客部門を中心に業績を着実に向上させるべく、業務純益の増加をめざします。親会社株主純利益の目標は、株式関係損益の減少やMUFGユニオンバンク売却に伴う保有債券の評価損計上などの下振れを勘案しつつ、中計の目標達成を展望できるよう1兆円としました。

 

これらの達成に向けた戦略の詳細は別ページに譲り、ここでは「企業変革」として掲げた「デジタルトランスフォーメーション」、「環境・社会課題解決への貢献」、「カルチャー改革」について、その進捗と課題をご説明したいと思います。

デジタルトランスフォーメーション

2021年4月にデジタルサービス事業本部を立ち上げ、デジタルと事務に関わる機能・権限を集中させました。これにより、既存業務の効率化と新規領域への挑戦の両面でデジタルトランスフォーメーションの取り組みが加速しました。

 

既存業務のデジタル化は、店舗改革やペーパーレスなどが着実に進捗し、経費削減の形で財務面にも効果が表れています。2023年度までに、口座開設や住所変更といった主要な手続の70~80%程度をオンライン化し、手続のためにご来店いただく必要はほとんどなくなります。また、RipcordのAI・ロボ技術を活用した印鑑票等の紙資料の電子化も本格稼働を開始しました。

 

新規領域への挑戦として、さまざまな外部事業者と連携したサービスも始めています。これまで商品や業態ごとに縦割りで役割分担していたものを、モジュール(機能)で捉え直し、いろいろな形で提供を始めているところです。例えばマネーフォワードとの合弁で設立したBiz Forwardは、中小企業のお客さま向けにオンラインファクタリングなどの新たな金融サービスを提供しています。また、子会社化したビジネステックの「ビジクル」は、デジタルトランスフォーメーションやESGなどの問題解決プラットフォームです。ここにゼロボードの温室効果ガス排出量の計測機能や、Biz Forwardの資金繰り支援機能などを載せて、中小企業のお客さまのいろいろなお悩みに対し、金融面に限らず多様なサポートができるようにしました。個人のお客さま向けの資産運用プラットフォーム「Money Canvas」の提供も開始しました。お客さまにとって真に必要なものを提供する観点から、グループ内だけでなく他社の金融商品も取り扱っています。これらの取り組みを通じて、お客さまとの接点を増やし、面に広げていきたいと思っています。

 

外部事業者のプラットフォーム上で我々が金融サービスを提供するBaaS(Banking as a Service)の取り組みも進めています。我々が提供する決済システムや本人確認の仕組みなどは、安心・安全を維持するためにかなりのコストがかかるため、他業種が簡単に取って代われるものではありません。お客さまに安心して決済やIDをご利用いただくために、我々が責任を持ってBaaSを提供することには大きな価値があると思います。

 

いずれの取り組みもまだ始まったばかりで、ビジネスになるまでには時間がかかりますが、金融・デジタルプラットフォーマーの実現に向けて、複数のアプローチを進めているところです。これによって、MUFGの進むべき方向性も明確になってくると思います。

環境・社会課題解決への貢献

世界が直面する環境・社会課題解決のチカラになることは、金融機関としての大きな役割だと思っています。

 

2021年5月にカーボンニュートラル宣言をしてから、かなりのスピードで気候変動への取り組みを進めてきました。社内に9つのワーキンググループで構成されるグループ・グローバル横断のプロジェクトチームを立ち上げ、経営が参加するコミッティを定期的に開催しています。また、サステナブルビジネス部を立ち上げ、外部から部長を招聘して推進態勢を強化しました。2022年4月に発行した「MUFG Progress Report」では、投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量ネットゼロに向けて、電力および石油・ガスセクターの中間目標を発表しました。並行して、国内外の約550社のお客さまとエンゲージメント活動を行ってきました。MUFGの国内全社の自社契約電力は2022年度中に100%再生可能エネルギー化を実現する予定です。

 

このように多くの進捗を示すことができた一方、我々の取り組みはやや守りに偏っていると感じています。カーボンニュートラルに向けた取り組みを攻めのツールとして、ビジネスを通じてお客さまの脱炭素化を支えていくことができなければ、社会にとっても我々にとってもサステナブルとは言えません。これは我々だけでなく全ての産業や全ての企業の課題でもあります。既に着手しているお客さまもたくさんいらっしゃるので、我々もお客さまと一緒に事業リスクを取っていきます。また、資金面の支援だけでなく、温室効果ガス排出量の把握や削減に向けた戦略策定、カーボンオフセットなど多様なソリューションの開発・提供により、お客さまの脱炭素化を支援していきます。

 

コロナ以降、欧米金融機関のCEOとオンラインでコミュニケーションする機会が増えましたが、その時間の大部分は環境・社会課題への対応について話しています。日本ではまだそこまでの温度感にはなっていません。だからこそ、我々はグローバル企業として、世界のイニシアティブに積極的に参画していく必要があると思っています。

 

その一つのNZBA(注1)は、世界で100以上の銀行が加盟していますが、MUFGはステアリンググループのメンバーとして運営に関与しています。また、6つの作業部会に参画し、そのうちの一つで議長を務め、トランジションファイナンスの国際的な枠組み作りを行っています。お客さまとのエンゲージメントや脱炭素に向けた技術開発支援を通じて、具体的な道筋を付けながら、世界の脱炭素化に貢献していきたいと思います。

 

(注1) Net-Zero Banking Alliance 国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が2021年4月に設立した、2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量ネットゼロにコミットする銀行のイニシアティブ

カルチャー改革

カルチャー改革は行動だと思います。意識が変わっても実際に行動が変わらなければ、外から見たら何も変わっていません。

 

社員の行動は変わったかというと、施策への挑戦は明らかに増加しました。例えば公募制度のJob Challengeには、約2,300人の応募があり、前年度の約3倍になりました。30人超が公募で支店長になり、社内副業や外部企業への出向に挑戦する人も増えてきました。実績が積み重なるうちに、社員の間で「挑戦は良いこと」という意識が少しずつ広がってきたように思います。挑戦する社員が増えた分、落選する社員も増えていますが、挑戦したこと自体を評価しています。新事業を提案して落選した社員とはオンラインで面談し、挑戦への感謝を伝えています。彼ら・彼女らはかなり悔しがっていて、熱い思いを持っているのが伝わってくるので、私にとっても刺激になっています。そしてこの熱量が周りにも波及しつつあるのを感じます。現在、Spark Xという新規ビジネス創出プロジェクトが進んでいるところですが、これは昨年行った「社長と本気で語る会(注2)」のメンバーが提案し、自ら企画・運営している施策です。応募の事前説明会が起業に向けた研修プログラムのようになっていて、面白い取り組みをしてくれているなと思います。グループ約20社の社員から650件のエントリーがあり、挑戦の広がりを感じています。

 

また、「MUFG Way浸透セッション」の中で、拠点長たちからフィードバックをもらいましたが、私が思っていた以上に、社員の間でパーパスの議論が受け入れられているように感じました。冷めた見方をする社員もまだまだいますし、パーパスの浸透度はまだ2合目か3合目ぐらいだと思います。それでも、パーパスをきっかけに、「自分は何を実現したくてこの会社に入ったのか考えた」とか、「お客さまにこういうことを提供したいと思うようになった」とか、「上司・部下の間でお互いの考え方を知ってコミュニケーションができるようになった」といったコメントを、思ったより多くの社員からもらいました。

 

一方で、課題はスピードです。投資家やアナリストの皆さまからは、カーボンニュートラルへの取り組みやMUFGユニオンバンクの売却などの経営判断に対し、MUFGは決断が早くなったと言っていただくことがあります。私自身も、社員が報告や相談を上げてくるスピードが速まって忙しくなったと感じることが増えました。一方、毎年実施している社員の意識調査では「業務運営にスピード感がある」と回答した社員は6割に留まっています。特に若い社員ほど、スピード感が感じられないという声が多かったという事実があります。人員減少もあり現場の一人ひとりの負担が増えている面もあると認識しています。手続やルールの簡素化、システム・ツール等の充実などに一層取り組んでいきます。

 

(注2) 10人の社員がMUFGの未来について社長と4カ月にわたり議論した施策

人的資本への投資

経営として、社員が進むチカラになることは重要な役割だと思っています。さまざまなチャレンジ施策や研修へ投資し、社員に活躍の場を与えることはその一つです。

 

2021年度には、デジタルスキル認定制度として、指定の資格取得に報奨金を出す施策を行いました。業務でデジタルに携わっていない社員からも多くの挑戦があり、期中に予算を倍にして1,633人がゴールドスキルとして認定されました。デジタル中核人材を育成する「DEEP研修」は、大量の本や講義でスキルを習得し、それを活用したビジネスを構想する密度の濃い研修プログラムです。これまでに約290人が受講し、デジタルトランスフォーメーション推進の担い手となっています。また、海外採用社員の国内本部への異動によるOJTや、自律的なキャリア形成を支援するリカレント教育なども行っています。

 

持株・銀行・信託・証券の本部機能を集約し、グループ一体運営の象徴となる「MUFG本館」の建設プロジェクトにも、公募で社員に参画してもらい、リモートとリアルのハイブリッドな働き方に相応しい場を構想してもらっています。ここでも東京の本部で働く社員だけでなく、関西からリモートで議論に参加する社員もいて、熱い思いを持ってくれていることを嬉しく思います。さまざまな意見を取り入れて新しい働き方に相応しい職場環境を作っていきたいと思います。

 

多様な意見を取り入れることは、環境変化に柔軟に対応するために欠かせません。私の中でインクルージョン&ダイバーシティの原体験となっているのは、30代のころ証券に出向して株式業務の立ち上げに携わったときのことです。当時、外部の証券会社などから採用したメンバーには、いろいろなバックグラウンドの方がいて、それぞれ全然違う考え方を持っていました。議論すると思わぬ意見が出てきて、苦労もしたけれど楽しかった。株で強くなりたいという共通の目的があったからこそ、良い議論ができたのだと思います。パーパスを共有していれば、多様性は組織の強みになるとそのとき学びました。同質性の高い組織はあうんの呼吸でやりやすい面がありますが、世の中が変化する中でこれまでのやり方は通用しません。だからこそ多様性が必要で、立ち返るためのパーパスが必要なのです。

 

ジェンダーダイバーシティの面では、国内女性マネジメント比率の2023年度目標を20%へ引き上げるなど、ある程度の進捗がありましたが、もう一段ギアを上げて取り組む必要があります。昔ながらの男性中心の働き方を前提にした考え方では、環境変化に柔軟に対応することはできません。時間がかかる項目もあるため、将来に向けて一刻も早く取り組む必要があると思っています。取り組みの実効性を高めるため、今年度から役員報酬にインクルージョン&ダイバーシティの浸透・推進に関する評価項目を追加しました。

 

ダイバーシティは属性に関するものだけではありません。実は一番重要なのは、一人ひとりがイントラパーソナルダイバーシティ(個人の内面の多様性)を養うことではないかと思っています。社員一人ひとりがイントラパーソナルダイバーシティを1~2割増やせば、実質的な組織の多様性は飛躍的に向上します。社内外での副業や外部企業への出向などは視野を広げるきっかけになりますし、そうしたきっかけは身近にもあります。読書も大切ですし、他社との勉強会や他業界の人との対話でも鍛えられます。大切なことはそういう視点や意識を持つことです。新人が入ってきて、「なんでこんなことやっているんですか」と聞かれたとき、今までなら「決まりだからやりなさい」で済ませてきたことも、ゼロから考えたら「そうだよな、これはおかしい、このプロセスは見直そう」となることもある。冒頭で申し上げた「初々しさ」は、言い換えれば若さでもあります。自分にも若さはあったわけだから、自分の中の初々しさを呼び起こすこともできるはずです。そういう初々しい気持ちで人の話を聞いて、受け入れられるだけの柔軟性や度量、対話力があるかどうか。それが会社の生き残りにとっても重要ではないかと思います。

資本政策・株主還元

今中計では資本運営の目線として普通株式等Tier1比率(規制最終化ベース、有価証券含み益除き)のターゲットレンジを9.5%~10.0%に設定しています。このターゲットレンジに沿って、成長投資や追加的な株主還元に資本を配賦していきます。

 

収益力強化に向けた資本活用については、引き続き、デジタル、グローバルAM / IS、アジア等の成長領域への投資を検討していきます。持続的成長に向けた戦略性・出資採算・資本効率の観点で規律を持って検討し、投資基準に合致する案件が無い場合には、一定の資本余力を確保しつつ、ROE向上の観点から、株主還元に活用したいと考えています。

 

配当を基本とした株主還元の充実に努める方針は不変です。2022年度の配当予想は、1株当たり配当金の累進的な増加と、今中計期間中に配当性向40%を実現する観点から、前年度比4円増配の年間32円としています。また、今年5月に3,000億円の自己株式取得を決定しました。今後も資本の状況や見通し、そして成長投資の検討状況も踏まえながら、継続的に株主還元を検討していきます。

 

当社の株価はこの1年、比較的堅調に推移してきました。国内事業の収益基盤の強化や、海外事業の量から質への転換により、稼ぐ力が着実に高まっていることに加え、MUFGユニオンバンクの売却などの経営判断をしたことをご評価いただいたものと認識しています。一方で、PBRは0.5倍程度に留まっており、MUFGの潜在力を考えれば十分ではありません。さらなる株価の上昇にはROEの引き上げが足りないということだと思っています。稼ぐ力を着実に伸ばしながら、経費とリスクアセットをコントロールすることで、今中計では7.5%のROEを必達し、中長期的にROEを9~10%に引き上げることをめざして取り組んでいきます。

ワクワクするMUFGへ

事業提携している外部のパートナーと話すと、「MUFGの社員は真面目で優秀だ」とよく言われます。一生懸命に話を聞いて、プロジェクトに真摯に取り組んでくれると。ただ続きがあって、「ワクワクしている感じがしない」とも言われるのです。新しいことを真面目にやっている、やらなきゃいけないと思ってやっていると。真面目にきちっとやるところは、MUFGの社員のベースだとは思います。そこを失ってほしくはないけれど、一歩間違えると、自分がやってきたことを固持するような堅さになってしまう。鎧を脱いで自然体になるだけで、良い方向に変わるのではないかと思います。

 

昨年の統合報告書で、「1年後、『MUFGは変わったな』と思われたい」と言いました。1年じゃ無理だろうという声もありましたが、最初の1年で変わらなかったら3年経っても変わらないと思い、敢えて1年と言ってきました。お客さまから「少し雰囲気が変わりましたね」という声をいただくこともありますが、社内からはまだまだという声もありますし、もっと変わっていけるはずだとも思います。

 

MUFGの変革は一歩目を踏み出したところです。頭で考えていたことが、ようやく行動としての一歩になった。これから二歩目、三歩目を踏み出し続けるには、社員一人ひとりが、自分がどう「世界が進むチカラになる。」のかを考えながら、少しずつ行動を変えていくことが必要です。

 

新しい世の中では、事業パートナーを選ぶのは我々ではありません。我々は選んでいただく側です。我々には長年培ってきた強みがありますが、事業パートナーとして声が掛かり続けるには、やっぱり一緒に働いて楽しいと思われるかどうかが重要だと思います。ちょっと遊びがあって、話してみようと思えるような、そんなMUFGに変えていきたい。お客さまやパートナーをはじめとするステークホルダーの皆さまから「MUFGってなんか楽しそうだな」と選んでいただけるように、変革に向けた取り組みを加速させていきます。

COLUMN
ステークホルダーと共に生み出す好循環

ステークホルダーと共に生み出す好循環

「会社は誰のためにあるのか」と聞かれることがあります。ROEを中計の最重要の目標に掲げているので株主の方ばかり向いているように見えるのかもしれませんが、ROEの向上は企業として最低限の責務だと思っています。世の中のためになっていれば稼ぐ力が低くていいというものではありませんし、それではサステナブルではないでしょう。私自身、「社会への貢献」が自分の指針ですから、全てのステークホルダーのチカラになることをめざしています。私の整理では、会社とはステークホルダーの間で好循環を生み出す存在です。会社はお客さまのためにあり、社員は会社そのもの。社員の総和が会社であり、それは社会の一部でもあります。リスクを取ってくれた株主には利益をきちっとお返しします。この好循環を作っていける会社であれば、次世代にとっても良い存在として存続することができます。

 

経営者同士で話していると、気を遣うことがたくさんあって難しい時代だという話になることがあります。格好良く言えばマルチステークホルダー資本主義ですが、数字だけでなく環境や倫理など追求すべきことがたくさんあります。さまざまなステークホルダーがいる中で、どうやって意見を集約し、どういう方向へ持っていくのか。今までのやり方では通用しない難しさがあります。

でもさまざまなステークホルダーと対話する中で最近よく思うのは、それぞれ立場が違っても、皆仲間だということです。同じ時代を生きる仲間として、前に進もうとしているからこそ、厳しい意見も出てくる。それをどう聞いて、どう受け止め、どう行動するかは自分たち次第。自分たちの対話力にかかっています。いろいろな情報を聞いて、咀嚼し、自分なりに考えて、アウトプットする。初心を思い出すこともそうですが、自分の思いを隠さず素直に表現できるようになると、周りの人もいろいろな形でついてきます。楽しそうな人やワクワクすることには心を惹かれるものですし、ビジネスや社員同士のコミュニケーションにおいても重要なことです。

 

今回の統合報告書では、複数の社員が登場し、業務のことなどを素直に語ってもらっています。楽しそうな様子もあれば、堅いところもあるかもしれませんが、ありのままのMUFGを見ていただけたらと思います。

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