CEOメッセージ

真価が問われる今、揺らぐことなく、たじろぐことなく、変革を進めます。

中期経営計画1年目の成果、構造改革の進捗と課題中期経営計画1年目の成果と課題

昨年は、2008年のリーマンショック以来、世界経済の回復に双発エンジンの役割を果たしてきた中国の投資主導の高成長と米国の超金融緩和に転機が訪れました。これが引き金となって新興国の成長鈍化や原油・鉱物価格の下落に伴う資源国の経済悪化や市場の振幅が激しくなる、さらにはイスラム国やシリア難民問題が欧州諸国に深刻な地政学的・社会的問題を突きつけ、この6月には英国の国民投票でEU離脱が承認されるなど、世界は再び不安定な様相を呈し始めました。

こうしたなかで、私たちMUFGは発足10周年を迎え、昨年4月には「持続的なグループの成長に向けた進化・変革」を掲げて新しい中期経営計画をスタートさせました。

今回の中期経営計画は、日本においては、少子高齢化に伴う生産年齢人口の急速な減少、企業・産業の新陳代謝の進行、アベノミクス第二ステージへの移行に伴う構造改革、海外においては、米国経済の改善と欧州の政治・経済両面における課題の残存、中国や新興国の成長鈍化の帰趨、産業界においては、デジタル革命の予想を超えるスピードでの進展等、さまざまな変化を想定しつつ、10年後の世界においても、強い競争力を持ち持続的な成長を遂げられる企業グループを構築することをめざしています。

中期経営計画(2015〜2017年度)概要

それでは、計画初年度はどうだったのか?成果と課題をお話しします。

各事業は着実に成果を積み重ね、強い逆風のなかにあっても初年度の業績目標を達成各事業の成果

まず成果ですが、国内においては、リテール資産運用事業(アメリカでは、「ウェルスマネージメント」という言葉が一般的です)の前進を挙げたいと思います。日本郵政グループの総額1兆4千億円に上る三社同時上場という歴史的な民営化案件で、MUFGはモルガン・スタンレーとの協働によるグローバルオファリング*1、そして銀行の仲介チャネルの全面活用による国内での大型プレースメント*2に成功しました。これは、私どもが、モルガン・スタンレーとの証券ジョイントベンチャー事業を開始して以来最大の株式引受であるだけでなく、銀行窓口を全面的に活用して証券顧客とは異なる幅広い投資家層を開拓し、「貯蓄から投資へ」という流れに貢献できたという意味で、日本の市場におけるMUFGならではの証券事業モデルを切り拓く取り組みでした。

法人事業では、貸出が堅調な伸びを示したほか、企業の潤沢な手元資金の運用ビジネスや活況な市場環境を捉えた銀行・信託協働による不動産ビジネスに顕著な成果がありました。また、大企業取引では、内外M&A*3と債券引受で業界トップ、株式引受で2位の座を占めることができました。銀行における関連貸出・為替取引も含め、ここでもMUFGならではのビジネスモデルが成果を上げています。

また、5月には日立キャピタル(HC)との戦略的資本・業務提携に合意。MUFGは日立製作所(日立)から23%の株式を取得します。日立・HC・MUFG・銀行・三菱UFJリース(MUL)5社は、HC・MULの事業を強化するとともに、海外輸出を含む日本の社会インフラ事業をサポートするための総合金融プラットフォーム構築をめざします。また、HCとMULは経営統合を一つの選択肢とした将来の関係強化に向けて協議を開始する予定です。

国際事業は、海外経済の減速により、アジア中心に成長の鈍化を余儀なくされましたが、事業基盤の整備・拡充は着実に前進しました。米国では、スティーブン・カミングス氏を米国CEOに登用。同氏のリーダーシップの下、経験豊富な現地上級職員を起用して、西海岸の現地法人であるMUFGユニオンバンク(ユニオンバンク)と三菱東京UFJ銀行(銀行)の米国支店網の主要人事一本化を完了しました。

また、アジアでは、2013年に買収したタイのアユタヤ銀行、持分法適用会社であるベトナムのヴィエティンバンクの業績が順調なほか、本年4月には、近年成長著しいフィリピンで民間第5位のセキュリティバンクに20%を出資し、ここ数年来の取り組みである「アジアの成長を取り込む」施策を進めました。

市場事業では、不安定な市場環境と関連規制の強化が進み、一部の海外主要金融機関が事業の整理・縮小を進めるなか、MUFGでは、銀行・証券の協働が成果を結び、国内外ともお客さまのフローを裏付けとするセールス・アンド・トレーディング(S&T)*4が堅調に推移しました。これに加え、資産負債の統合管理(ALM)*5運営でも、円金利低下に対応して円貨から外貨への運用シフトを実施。前期比では減益となったものの当初計画を上回る収益と、十分な評価益を計上することができました。今年度以降実行フェーズに入るS&Tの銀行・証券一体運営に向けての準備も順調に進んでいます。

受託財産事業では、資産運用ビジネスの態勢強化を図るために、昨年7月三菱UFJ 投信と国際投信投資顧問を合併し、新たに三菱UFJ 国際投信を発足させました。両社が持つ商品開発・販売チャネルにおけるそれぞれの強みを融合させることで、顧客のニーズに適合した商品をより迅速に開発し、販売する態勢を構築していきます。また、資産管理の分野では、UBSからの事業買収などにより、ヘッジファンドやプライベートエクイティなど特定分野におけるグローバル・ネットワークの拡充を続け、当該分野においてはトップ10入りを果たしました。

こうした積み重ねもあり、前期業績は、年度後半の強い逆風のなかで減益となったものの、期初に掲げた9,500億円の当期利益(親会社株主純利益)目標をわずかながら上回ることができました。

  • *1 株式や債券などの有価証券を複数の市場で同時に募集、売出しをすること
  • *2 株式や債券などの有価証券を販売すること
  • *3 国内およびクロスボーダーのM&Aアドバイザリー
  • *4 為替・デリバティブなどの金融商品・ソリューションをお客さまに提供するセールス業務と、事業者間取引や取引所などで市場性商品の売買を行うトレーディング業務の総称
  • *5 貸出などの資産と預金などの負債に内在する資金流動性リスクや金利リスクなどを総合的に管理する業務

ICT戦略

ICT*1戦略では、デジタルイノベーション推進部が銀行・信託・証券など傘下の事業会社横断的に新たな金融デジタル技術やビジネスモデルの研究・開発に取り組んでいます。海外においても、シリコンバレー・ニューヨーク・シンガポールに要員を駐在させ、先端的な技術やビジネスを迅速に導入し投資できるグローバルな態勢を構築。フィンテック企業家育成のためのFinTech*2アクセラレータプログラムや「ハッカソン」*3の開催など活発な取り組みを続けています。こうした取り組みは今後、低コストのクロスボーダー送金、AIを利用した資産運用のアドバイスといったビジネス面での活用に加え、複雑な規制への対応(最近「RegTech」と呼ばれています)、貿易・決済インフラへのブロックチェーン技術の応用、バックオフィス事務の大幅な自動化など、さまざまな分野で金融の姿を大きく変える可能性があります。

他方、デジタル化の裏側で、サイバー・セキュリティーの問題が深刻となっています。今年2月に発生したバングラデシュ中銀の不正送金事件*4は、世界の銀行経営者に事の重大さを突きつける結果となりました。私たちも例外ではありえません。海外の先端的防御策を導入し日々新たな手口に対応すべく努力を続けていますが、国際的な官民協働が重要です。

  • *1 情報通信技術
  • *2 「金融(Finance)」と「技術(Technology)」をあわせた米国発の造語。世界的に普及したスマホのインフラや、ビッグデータ、人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービス
  • *3 「ハック」と「マラソン」からなる造語で、ソフトウェア開発者が共同して、一定期間集中的にプログラムの開発やサービスの考案を行い、その成果を競うイベント
  • *4 バングラデシュ中央銀行が米ニューヨーク連邦準備銀行に保有する口座がハッカー攻撃を受け8,100万ドルが不正送金によって盗まれた事件

課題は、「三つの逆風」への対応と、グローバルガバナンス、
そして原則を遵守するカルチャーの浸透課題

一方で、課題も多々あります。

第一に、最初にお話しした環境変化への対応。私は、「三つの逆風」と呼んでいますが、海外経済の減速、与信費用の増加、そして世界的な低金利の継続、とりわけマイナス金利は、私たちにとって厳しい試練ともいうべきものです。MUFGは「国内に確りと軸足を置き、海外に成長の機会を求める」方針を掲げて、過去数年順調な業績の伸展を遂げてきました。
海外経済、特に、私たちが第二のマザーマーケットと位置付けるアジア経済の減速は成長のブレーキとなります。歴史的にも低い水準で推移してきた与信費用の反転も、与信費用比率は過去10年の平均値を下回っているとはいえ、減益要因です。特に、昨年は、大口個社要因に加え、原油等資源価格の大幅な下落に伴うアメリカの原油採掘業で与信費用が増加しました。そしてマイナス金利は、単に資金収益を圧迫するだけでなく、現時点では、十分政策効果が現れていないなかで、先行きの不透明感から家計・企業とも新たな投資・運用を手控える傾向にあり、金融機関の経営に大きな影響を与えています。

第二に、グローバルガバナンス。私たちの事業は今や世界約50カ国、従業員数も14万人を超える規模となりました。こうした広範な事業を、各地域固有の市場特性、法令・当局規制に的確に対応しつつ、グローバルに一貫性をもって運営するためには、柔軟かつ堅固なガバナンスの仕組みを構築する必要があります。かつて、いくつかの有力なグローバル金融グループが、金融危機のなかでガバナンスの脆弱性を露呈し、あるいは市場から姿を消し、あるいは大幅な事業の縮退を余儀なくされた歴史を、私たちは他山の石としなければなりません。

MUFGでは、例えば、米国のリスク管理全般を監督する米国リスク委員会が、MUFGの取締役会傘下のリスク委員会にレポートする体制とし、地域的ガバナンスと全社的ガバナンスを両立する仕組みを構築しています。広範な地域と事業領域で内部統制システムを有効に機能させることは容易ではありません。本質的には、経営陣から見えない領域を作らないこと、即ち、コアとなる事業・地域への集中と簡明な組織体制づくりを、常に指向することが重要と考えています。

第三が、コンプライアンスとカルチャー。リーマンショック後、LIBOR・為替レートの操作、証券化商品の不適切な販売、マネー・ローンダリング、脱税幇(ほう)助など金融機関におけるさまざまな不正行為が明らかになり、金融機関と職員のモラルが問われてきました。解決のために要した法務費用は、一部の金融機関では1兆円を超える金額に上っています。私たちも規模は異なるとはいえ例外ではありません。勿論、国ごとに異なるルールを当該国以外への適用も含めて遵守することは大きな負担ですが、決して不備があってはならず、経営陣が最も留意すべき内部統制上の課題です。仮にルールが明確でない場合であっても、原則(プリンシプル)に反する行為は許されず、さらにそうした行為を根本的に防ぐためには、不正を生み出さない企業風土(カルチャー)が必要です。最近の取締役会における大きなテーマがこのカルチャーの問題であり、私自身を含む経営陣からの明確なメッセージの発信と現場への浸透、そして現場における課題の把握と対応を粘り強く続けていきます。

コーポレート・ガバナンス改革の成果と今後の取り組みコーポレート・ガバナンス改革の成果

重要なのは、取締役会の役割明確化、社外取締役に強く多様な人材を得ること、
そして取締役と経営陣のコミットメント。常に改善に向けて取り組んでいる。

MUFGは、昨年6月、指名委員会等設置会社に移行し、この1年ガバナンスのさらなる高度化に取り組んできました。私は、以前から「ガバナンスは形ではなく、中味だ」と言ってきました。「ガバナンス先進国」とされる米国において、2000年代初めに大規模な企業会計不正事件が起こり、リーマンショックでは金融機関のガバナンス不在が問題となったように、形を整えるだけでは実効性は上がりません。

そこで私たちは、既に設置していた社外取締役と専門家からなる「ガバナンス委員会」で1年にわたる議論を行って現在の仕組みを創り、移行後は走りながら改善を続けています。重要なのは、第一に、取締役会の役割を明確にすること、第二に、取締役会での活発な議論に必要なリソースを確保・提供すること、第三に、それを取締役と経営陣が理解しコミットすることだと思います。

取締役会の主たる役割は、基本戦略・内部統制システム・主要人事の決定と執行のモニタリングですが、それを機能させるためには、まず社外取締役に強く多様な人材を得なければなりません。私どもでは、異なる業種の経営者・CFO経験者、国際会計の専門家、ガバナンスに精通した法律家、金融分野の大学教授が、それぞれの経験・知見に基づき、闊達な議論を展開しています。また、奥田氏を議長とする社外取締役会議の設置や、資本政策など経営上重要な事項に関しては、事前に議論の場を設けるなど、社外取締役の声がより有効に経営に反映される工夫を重ねています。

今後は、社外取締役がMUFGの事業をより深く理解するための機会の充実(例えば、オフサイトの戦略ミーティング開催)や、サクセッションプランを次世代の経営陣育成に活用するための仕組みづくりなどに取り組みます。もう一つの重要な課題は、どのようにして取締役会での議論を、事業本部、傘下の事業会社、それぞれの現場に伝え、新たな価値を生み出し、お客さまを含むステークホールダーにその価値を届けていくかということです。

私は、モルガン・スタンレーの取締役も兼務していますが、この数年で彼らの運営も随分進化しました。良いところは、大いに取り込んでいきたいと考えています。

経営環境が大きく変化するなかでの持続的成長に向けた取り組みと思い持続的成長に向けた取り組み

「進化と変革」を加速させ「三つの逆風」に立ち向かう。私たちの真価が問われるのは今。

激しい環境変化のなかにあっても「国内に確りと軸足を置きつつ、海外に成長の機会を求める」という私たちの基本戦略は変わりません。「現在の中期経営計画で掲げた、『お客さま起点』『グループ起点』『生産性の向上』を軸とした『進化と変革』への挑戦を加速させることで、この難しい局面を乗り越える。そして、変化をチャンスとして捉え、新たな成長を実現していかなければならない。『疾風に勁草(けいそう)を知る』という言葉のとおり、私たちの真価が問われるのは今だ」と考えています。

それでは、先程も申し上げた「三つの逆風」にどう立ち向かい、今後の成長に繋げるのか?中期経営計画に掲げた「変革」の加速がそのキーワードです。

第一に、海外経済の減速に伴う既存事業領域の成長鈍化に如何に立ち向かうか。私たちの海外事業は大きく三つの分野で構成されています。一つは、コーポレートファイナンス(ホールセール型事業金融)、二つ目がリテール・ミドルマーケット分野の商業銀行事業、三つ目が資産運用・管理事業。いずれも私たちMUFGのコア・ビジネスであり、アジア・米州・欧州という地域間の分散にも留意しています。

一つ目のコーポレートファイナンスは、私たちの海外進出当初からの事業であり、進出している世界約50カ国ほぼすべての拠点で展開してきました。以前は日本の企業が主たる顧客でしたが、現在では約7対3で大手外国企業の占める割合が高くなっています。貿易や投資の縮小の結果、期待したアジアではブレーキが掛かっていますが、米国・欧州は計画通りの進捗です。貸出中心型のビジネスモデルから、キャッシュマネージメントを含むトランザクションバンキング*1、市場取引、資本市場取引などのクロスセル型*2へ転換することで、資産収益率の改善をめざします。

  • *1 預金業務・内国為替業務・外国為替業務、およびそれに付随する業務(キャッシュマネジメント、トレードファイナンス)の総称
  • *2 関連商品を販売すること

二つ目の海外商業銀行事業は、米国西海岸のユニオンバンクが唯一の拠点でしたが、ここ数年、ASEANへの展開に着手し、ベトナムのヴィエティンバンク、タイのアユタヤ銀行に続き、先程触れたフィリピンのセキュリティバンクへの出資を完了しました。いずれも、日本との経済関係が深く、将来が期待される国々であり、拡大する内需の取り込みを狙う戦略です。私たちMUFGが持つ知見・金融技術・経営管理手法を移植することで、企業価値の向上を図るとともに、相互間での協力関係を築き、将来は「MUFG環太平洋パートナーシップ」ともいうべき形に発展させたいと考えています。目下、これらアジア地場銀行の業績は順調であり、逆風を打ち返す力に育てていきます。

既存のコーポレートファイナンス事業およびユニオンバンクについては、トップラインと併せ、規制対応コストを含む経費増加傾向を如何にコントロールするかが課題です。ユニオンバンクと三菱東京UFJ銀行(銀行)の米国支店網の統合、欧州大陸における銀行支店のオランダ現地法人傘下への統合、アジア拠点における事務集約のためのマニラでのセンター設立など、さまざまな変革に取り組んでいます。

また、海外において一層拡大したいのが資産運用事業です。世界経済の成長が鈍化し、「長期的停滞」が指摘される一方、家計・企業の富の蓄積は加速しています。加えて、リーマンショック後、銀行・証券といった規制金融機関の金融仲介能力低下もあり、最近の国際金融界で影響力を増してきたのが、資産運用会社(「アセットマネージャー」と呼ばれています)です。私たちも、日本では年金運用・投信などの分野で最大級のプレーヤーですが、海外では英国のアバディーン、豪州のAMPなどへの持分法適用出資が中心です。この事業は手数料ビジネスであり、収益多様化の観点で本腰を入れて取り組んでいきます。

第二の与信費用の問題は、国内に関しては直ちに大きな与信費用が発生するとは見ていませんが、経済は常に循環的であることに加え、超金融緩和下でのバブルの発生には目を光らせる必要があります。一方、海外については、資源・エネルギー向け貸出総枠の削減のほか、与信集中の回避、今回のような市場急変時の対応力向上を図ります。

第三のマイナス金利影響については、低金利政策の効果を有効に捉え、資金需要の積極的な発掘や投資運用商品開発に注力するとともに、複数の対応策に着手しています。

一つ目は、経費の抑制や生産性の向上です。先程触れた銀行の海外拠点統合、銀行・証券のS&T業務の実質的統合など重複機能の見直しのほか、銀行では今後10年で総合職を3,500名削減するなどスリム化を進めます。

二つ目は、リスクリターンの改善。格付機関から資本性を認められる収益性の高い貸出の推進、組成した貸出の投資家向け販売による手数料ビジネスなど、新たな顧客のニーズを捉えるとともに、従来預金収益があることを前提にして設定されていたサービスの手数料見直しもテーマです。

三つ目は、政策投資株式の削減。昨年来、コーポレートガバナンス・コードやリスク削減の観点から取り組んできた株式売却は順調にスタートしましたが、今後もお取引先の理解を得ながら計画に沿って進めていきます。

さらに、この6月には若手によるグループ横断的なタスクフォースを立ち上げ、生産性向上施策の徹底的な議論を開始しました。当然ながら、デジタル化時代における店舗やバックオフィスのあり方も検討の対象となります。

赤字を計上した三菱UFJニコスの前期決算は、過払い利息返還請求に関連した引当金の追加計上と、システム更新計画に伴う将来の課税所得見積もり低下による繰延税金資産取り崩しが主因です。特に、後者は当面業績の重石となりますが、懸案であった三つのカード・ブランドごとに分かれていたシステムを統合することで、機能の高度化とコスト削減をめざす重要なプロジェクトであり、高い効果を期待しています。同社は、MUFGの決済サービス事業の中核企業であり、今後は、ICT活用による先端的な決済の開発や銀行との協働によるBtoBtoC分野の開拓に注力します。

グローバル人材の育成に大切なのは、MUFGの価値と文化の共有人材の育成と登用

最後に、人材の育成と登用に触れたいと思います。

私は、金融は何よりも「人」に依存するビジネスだと考えています。デジタル化によって「人」が担うべき領域は変わっていきますが、事業領域・インフラ領域を問わず戦略的判断やリーダーシップの発揮、あるいはお客さまとの信頼関係構築といった部分が機械に取って代わられることはないでしょう。また、私たちの事業領域や活動地域は拡大しており、これに対応するためにも、次世代のリーダーを含む人材の育成は重要な課題です。

その際の鍵となるのがダイバーシティです。私たちMUFGの社員の半数近くは女性ですが存分に力を発揮できているのか?海外の社員は4万人を超えますが、キーとなるポスト登用は進んでいるのか?前者に関しては、今年、銀行の海外で2名、三菱UFJ信託(信託)の国内で1名の執行役員が誕生しましたが、まだまだです。例えば、銀行の国内では産休・育休取得中の社員が1,500名に達するなど、働くための環境づくりは進んできました。部長や支店長も47名いますが、リテール事業が中心であり、さらに多様な分野での活躍を可能とするようなキャリアづくりが必要です。海外採用の役員は銀行・信託で11名に増えましたが、これもまだまだでしょう。近い将来外国人の取締役を招聘するなどダイバーシティを加速させます。

もう一つはグローバル人材の育成です。既に、内外横断的にMUFGの次世代リーダーを育てる「グローバルリーダーズフォーラム」を立ち上げ、グループ内での拡大を図っています。私も最終報告の講評に参加し、毎回レベルの向上を実感していますが、その際大切なのはMUFGの価値と文化の共有です。先程触れたカルチャーの問題であり、私たちの掲げる「ミッション」「ビジョン」「バリュー」をさまざまな機会とチャネルを通じて明確に伝え、実践に結びつける努力を重ねなければなりません。私自身も含めトップマネージメントの果たすべき役割は極めて大きいと考えています。

最後に最後に

私たちは今期の親会社株主純利益目標を8,500億円としました。これは前期比約1,000億円のマイナスであり、また二期連続の減益となることを、私自身大変重く受け止めています。「疾風に勁草を知る」という言葉通り、MUFGの真価が問われるのはまさに今であり、私たちは、逆風のなかにあればこそ、揺らぐことなく、ステークホールダーの皆さまから信頼される存在であり続けなければならないと考えております。グループ全体がそうした覚悟と危機感を共有しつつ、今年度は、以上ご説明した施策に一丸となって取り組み、現中期経営計画の最終年度である来年度に向けての道筋を切り拓いてまいりますので、引き続きのご理解・ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

2016年7月
取締役
代表執行役社長 グループCEO

平野 信行

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