CEOメッセージ

「信頼され続ける存在」であるために 取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤 宏規 「信頼され続ける存在」であるために 取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤 宏規

2020年4月、グループCEOに就任いたしました亀澤です。

まず、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、感染された方々やそのご家族に心からお見舞いを申し上げます。また、日々対応にあたられている医療従事者をはじめとする関係者の皆さまに心から敬意を表し、感謝申し上げます。

新型コロナウイルスの影響が国内外の実体経済に波及する中、社会インフラを担う金融グループとして、健全な財務基盤のもと、金融サービスを通じお客さまのニーズに確りとお応えしていくこと、そして同時に、コロナ禍によって加速されるお客さまの行動様式の変化や社会のデジタルシフトに積極的に対応しながら、社会課題の解決に繋げていくこと、これが私たちMUFGの社会的使命です。

この難局を乗り越え、いかなる環境においても常にお客さまや社会から信頼され続けるMUFGをめざし、全力を尽くしてまいります。

コロナ禍が問いかけているもの

今、私たちは半年前には想像もしなかった環境にいます。私自身、在宅勤務を頻繁に行い、戸惑いながらも、ほとんど全ての会議をオンラインや電話で実施しています。不便さを感じることがある一方、オンラインであるがゆえに逆に社内外や海外の方と直接コミュニケーションする機会も増えるなど、生産性が上がっている面もあります。その過程で、多くの気づきがあり、また、普段よりも地域のことや国のこと、そして「社会とは何か」を考えるようになりました。

お客さまの行動にも変化があります。今回の外出自粛を機に、わざわざ店舗に出向かずともさまざまな金融サービスが利用できることを、多くのお客さまに実感していただけたと思います。インターネットバンキング等、非対面チャネルによる取引の増加が加速し、これまで以上のスピードで、それらは世の中へ浸透しています。

また、リモートワークも一気に進み、私たちの働き方や価値観、社会のあり様も大きく変化することが予想されます。人々は社会を意識し、協力し合いながらコロナに打ち勝とうとしています。

ウイルスとの闘い、これは人類の歴史でもあります。その闘いにおいて最も強力な武器は、何といってもワクチンや治療薬などの薬ですが、新型コロナとの闘いにおいては「デジタル化」が強い味方となります。オンラインでの会議、授業や診療により人と人との接触を減らし、データやスマートフォンを通じて感染者を追跡し、クラスターを特定する。この10年間の急激なアプリケーション技術やAIに代表されるデータ分析技術、そして高速通信技術といったICT技術の革新がこれらを可能にしています。今後、「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」と言われる世界で、社会が大きくデジタルシフトし、金融サービスにおいても変化が起こると予想されます。

日本では、特別定額給付金の支給を例に取ってみても、社会的なITインフラや事務プロセスにおいて課題があることが明らかになりました。私たち金融機関にも大きな責任があると考えています。デジタルシフトへの対応は、一種の社会課題解決であると同時に、私たちの会社としてのあり方そのものを大きく変える機会となります。お客さまの行動も大きく変化し始めている中、経営者も本気でこの社会変化に取り組まなくてはいけない、これが私の思いです。

コロナ禍が問いかけているもの、それは社会のあり様そのものであり、またそこにおける私たち自身の存在意義ではないでしょうか。

安心・安全な社会、暮らしやすい社会をいかにつくるか、私たち金融機関に求められているものは、「社会のデジタルシフトへの対応」と「社会課題解決への貢献」だと考えています。

MUFGの使命と組織の「強さ」

今回のコロナ禍を通じて感じたことが2点あります。

第一に、金融機関の「社会的使命の重さ」です。

世界各国での行動制限をはじめとする感染拡大防止措置の長期化により、今まで当たり前としていた日常生活や社会の営みそのものが停滞し、それによる実体経済の悪化は避けられないと思われます。私たち金融機関が第一になすべき社会的使命は、本業である金融サービスを通じてお客さまや社会を支え続けていくことです。すなわち、お客さまの生活や事業活動を支える資金を円滑に提供し続けること、そしてお客さまや従業員などステークホルダーの安全確保に留意しつつ、資金決済などのオペレーションを確りと継続していくことです。その大きな使命が私たちにはあるということを再認識しました。

新型コロナウイルス感染症の影響が終息するまでには、年単位での時間がかかると言われています。また、第二波・第三波の発生が懸念され、社会がコロナ禍を克服して完全に元の生活に戻ることは見通しづらく、その先の世の中を見据えながら進んでいかなければなりません。そしてその間、私たちには金融面からお客さまや社会を最大限サポートし続けていくことが求められています。

二つ目は、MUFGの「組織の強さ」です。危機時にこそ組織の力が試されますが、今回の危機対応を通じて、それぞれの持ち場での自律的な対応や、拠点内や拠点同士の助け合い、グループ会社間や本部と拠点間の連携等、さまざまな現場起点の取り組みがみられました。私自身も、社内の危機対策本部においてさまざまな対応を行ってきましたが、皆がお客さまのため、社会のために創意工夫し協働する姿に接し、大変誇らしく、同時に大きな自信に繋がりました。

MUFGはこれまでも、バブル崩壊やリーマンショックなど、さまざまな危機を乗り越えてきましたが、いつの時代も「金融サービスを通じてお客さまと社会に貢献する」という社会的使命は変わることなく受け継がれてきました。このコロナ禍においても、お客さまや社会からの「信頼・信用」をより強固なものにしていきたいと考えています。

中期経営計画の進捗とCEOとしての方針

2019年度はビジネスモデル変革をめざした中期経営計画の2年目でした。その成果とCEOとしての経営方針についてご説明します。まずは、2019年度の振り返りです。

2019年度の振り返り

2019年度は、当期純利益が、ASEANのパートナーバンクののれん一括償却を主因に、前年度比3,445億円減益の5,281億円となり、非常に厳しい決算でした。

しかしながら、資本効率改善に向けてリスクアセットのコントロールに取り組み、約9兆円のリスクアセット(規制最終化ベース)を削減した中にあって、業務純益が5年ぶりの増益に転じ、顧客部門の業務純益も2018年度以降の増益トレンドを維持しており、今後の成長に向けて一定の手応えを感じました。

また、課題として取り組んできた経費コントロールについても、国内経費が減少に転じるなど、数字の上でも一部で効果が表れてきています。

施策面においても、いくつか特筆すべき成果が出ています。

1点目は、グループ一体経営の進化です。持株会社でグループ全体の事業戦略を構築し、銀行、信託、証券の協働により、お客さまの多様なニーズに最適なソリューションを提供できる態勢がさらに進展しました。法人のお客さま向けビジネスでは、債券引受のリーグテーブルで首位、不動産業務で約10%の増益を確保しています。個人のお客さまには、資産承継や事業承継を起点としたソリューション提供により、資産運用のみならず相続や不動産取引が拡大しています。

2点目は、ASEANにおける商業銀行プラットフォームの完成です。インドネシアのバンクダナモンの子会社化により、同地域における商業銀行4行からなるビジネスプラットフォームが完成しました。欧米銀とも異なるMUFGならではのビジネスモデルによりASEANの経済成長を取り込んでいきます。

3点目は、事業の効率性向上への取り組みです。グローバルCIBビジネスでは、取引採算の目線を引き上げ、低採算アセットを削減し、高採算アセットへの入れ替えを進めました。市場ビジネスの領域では、選択と集中を行い、強みのある業務に経営資源を集中しました。また、国内の店舗ネットワークの見直しや非対面チャネルの拡充によるチャネルシフトを進め、利便性を向上させつつコスト構造改革を進めています。

これらに加えて、デジタライゼーションの取り組みも着実に進んでいます。デジタルを活用した利便性向上や業務プロセス改革に向けた施策を、各事業本部の計画に組み込み、具体化を進めています。さらに、新たな金融サービスの提供に向け、さまざまな領域で強みを持つパートナーとの連携を進めており、例えば、米国Akamai社と共同で開発した新型ブロックチェーン技術(注1)を活用したネットワーク事業は、国内で今年度スタートさせる予定です。こうした取り組みを新たな収益ドメインとして中長期的に育てていきます。

また、コーポレート・ガバナンスにおいても高度化に向けた取り組みを続けています。昨年度は、グループベースのガバナンス強化に向けた議論を進めるとともに取締役会評価を踏まえた課題のさらなる明確化と取締役会運営の高度化など、ガバナンスの実効性向上に向けて弛まぬ改善を続けています。しかし、コーポレート・ガバナンスの高度化に終わりはありません。サステナビリティ経営をさらに推し進めていく上でも、引き続き、重要な課題として取り組んでいきます。

  1. (注1) MUFGとAkamaiが共同開発した、毎秒100万件超の取引処理が可能な技術

CEOとしての経営方針と重点戦略

次に、CEOとしての今後の経営方針と重点戦略を述べたいと思います。

これまでMUFGは、事業環境が大きく変化する中でも持続的に成長し続けていくために、デジタライゼーションなど「11の構造改革の柱」からなる「MUFG再創造イニシアティブ(注2)」を進めてきました。スタートから3年が経過し、大きく進展した項目がある一方、戦略の修正が求められる項目もあります。また、今回のコロナ禍は、「働き方改革」や「デジタル化」、「SDGs(注3)への意識」等のコロナ禍以前からの社会変化をさらに大きく加速させるものと捉えており、これまでの戦略を纏め直して、アフターコロナを見据えた今後の成長戦略を構築していく必要があると考えています。

この成長戦略のために、新たな経営方針として以下三つを掲げます。キーワードは「デジタル化」、「強靭性」、「エンゲージメント」です。

一つ目の「デジタル化」は、社会のデジタルシフトに対応するために、お客さまとの取引チャネルのみならず、私たちの業務プロセスや働き方はもちろん、「会社のあり方をデジタル化する」、すなわちデジタル技術を活用し、会社の運営そのものを革新することをめざすものです。

二つ目が「事業としての強靭性重視」。今回の危機においても再確認されたものですが、MUFGはいかなる環境においても信頼され続ける存在でありたいと考えます。そのためにも金融機関としての健全性を確保し、経営資源を当社が強みを有する領域へと最適に配置します。

最後に、「エンゲージメント重視の経営」。大きな変化や変革が会社ひいては社員一人ひとりに求められる中、変革の方向性に対する共感を大切にし、社員間や組織間、お客さまや社会とも共感できる、皆が参画意識を感じられる、魅力的な会社にしていきたいと考えます。

以上が経営方針ですが、私自身は実践的かつ具体的なものを重んじています。これらの方針に基づき、自身として優先し、かつハンズオンで取り組む重点戦略として、「国内リテール領域のデジタル化」、「グローバル戦略の再構築」、「基盤・プロセス改革」の三つを掲げました。

一つ目の「国内リテール領域のデジタル化」について、これまでも非対面チャネルへの取引シフトを推進してきましたが、足元の新型コロナウイルスの影響により、ご利用いただくお客さまの数が格段に増加しています。このような変化に合わせ、店舗を含むチャネル、UI/UX(注4)、事務プロセスやシステムアーキテクチャを見直し、一層のデジタル化を進めていきます。これらの具体化に向けた戦略チームを立ち上げ、お客さまにとってさらに便利で安心・安全なサービスの提供とともに、コスト構造改革を一層推し進めていきたいと考えています。

二つ目の「グローバル戦略の再構築」は、経営方針の二つ目の「強靭性」と関係しますが、地域ごとの成長性や強みを見極め、経営資源を最適に配置します。これまで私たちは国内の低成長を補うために新たな成長を求め、ASEANの商業銀行を中心に戦略出資を行ってきました。バンクダナモン子会社化により完成したASEANの商業銀行プラットフォームをデジタルの側面で補完する目的で、今年2月に東南アジアで配車・フードデリバリー、デジタル決済などのサービスを提供するスーパーアプリ事業者のGrab社と資本・業務提携しました。同社が持つ動態的なデータとMUFGが持つ顧客・金融情報を掛け合わせ、スーパーアプリを活用することで、お客さまの目的や消費行動に合わせた金融サービスを柔軟に提供していきます。

また、グローバルアセットマネジメントの領域でも、昨年度、オーストラリアをベースとする資産運用会社ファースト・センティア・インベスターズを買収しました。

今後は、これらの戦略を具体化し、成果を上げていきます。

三つ目の「基盤・プロセス改革」は組織のカルチャー改革にも繋がるものですが、ペーパーレスや印鑑レス等を通じた事務プロセスの効率化やシステム等の改善を進めるとともに、社員の多様な価値観・働き方を踏まえ、働きがいを感じることができる環境・基盤の整備をより一層推し進めていきます。

  1. (注2) 2017年からスタートしたビジネスモデル変革を中心とした構造改革
  2. (注3) Sustainable Development Goalsの略。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標
  3. (注4) UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)の略。サービスの使い勝手、それから得られる体験や価値

社会課題解決への貢献をめざして

今回のコロナ禍を機に、今まで以上に企業の存在意義として社会課題の解決力が問われる時代へと変化しています。私たちも、社会インフラを担う金融機関としての存在意義を改めて認識したと同時に、社会課題解決と経営戦略との一体化をより進め、持続的な成長への道筋を示していくことが求められていると感じています。

社会課題解決への貢献においては、ESGのうち、E(環境)の重要性、すなわち金融機関として気候変動への対応をさらに推し進めていく必要があることに加え、今まで以上にS(社会)への貢献が問われています。

MUFGは、これまで、本業であるファイナンスを通じてさまざまな取り組みを行ってきました。2019年に日本の金融機関として初めて、サステナブルファイナンスの数値目標を設定し、「環境分野」では、再生可能エネルギー事業向け融資、グリーンボンドの引受・販売などに、「社会分野」では、スタートアップ企業の育成や雇用の創出、貧困の改善に資する事業へのファイナンスなどに積極的に取り組んでいます。2019年度から2030年度までに累計20兆円の実行をめざしており、初年度の実績は3.7兆円と順調に推移しています。

また、ファイナンスに関しては、環境・社会への配慮を実現するための枠組みとして「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を定めています。昨年度の改定では、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しないと表明していますが、これに続き、今年度は新たに対象セクターを拡大しました。今後も、定期的に見直しを行い高度化を図っていきます。

今回のコロナ禍においては、各種給付金の支給に際して地方自治体で手作業が発生するなど政府、行政機関、金融機関との間でのデータ連携の課題が浮かび上がりました。これら日本社会の課題とされる社会インフラのデジタル化の推進などにも、金融機関として貢献していく必要があります。

加えて、高齢化が進む日本においては、お客さまとの対面取引の場所としての店舗の価値はこれまで以上に高まってきます。チャネル戦略を考えるにあたっては、お客さまの行動様式に合わせ、対面、非対面のどちらでも安心して使っていただけるように、チャネルやサービスの最適化を進めていきます。

こうした取り組みをさらに進めていくため、今年度より、チーフ・サステナビリティ・オフィサーを設置し、社内の推進体制を強化しました。環境・社会課題を起点としたビジネスのあり方を改めて整理することで、サステナビリティ重視の経営を加速していきます。事業を通じた取り組みにより、課題解決を進めることで、自ずと企業価値も向上していくという好循環を生み出していきたいと考えています。

他方、本業を通じた社会課題解決には一定の限界があります。社会貢献活動も企業として果たすべき重要な社会的責任であるとの考えのもと、今回のコロナ禍に際して、創薬・再生医療等ライフサイエンス事業への支援を目的とする100億円の投資ファンドの設立に加え、医療支援、学生の進学・生活および芸術活動の継続等に対して総額25億円の寄付・支援を行いました。

この考え方をさらに進め、このたび、事業収益の一定割合を社会貢献活動に拠出する枠組みを構築しました。こうした取り組みを通じて、MUFGグループ内においても、事業活動と社会課題解決が一体であるという意識を向上させていきたいと考えています。

エンゲージメント重視の経営 ~魅力ある会社をめざして

私は、MUFGの変革を進めていくための鍵は「人」だと考えています。今の時代、変革は一人のトップだけで成し遂げられることではありません。個人としての成長、組織としての成長を志す「人」を育て、皆で変革を成し遂げていくことこそが、経営者の最大の責務です。

私の理想の会社は、社員が日々楽しく、やりがいを持って働ける魅力ある会社です。MUFGをそういう会社にしたいと考えています。「MUFGのことが本当に好きな社員」、「チームや仲間の役に立ちたいと頑張る社員」が増えることで、MUFGの組織力は間違いなく高まるはずです。経営への参画意識が高まること、そしてMUFGの存在意義に共感し実感できることが重要だと考えています。これが、経営方針の一つに掲げた「エンゲージメント重視の経営」であり、MUFGの持続的な成長に向けた変革を成し遂げていくためにも重要なテーマだと考えています。

私が日々の業務運営でこだわりたいのは、①シンプルに考え、行動すること、②思い切って仕事を任せること、③何でも話せる、発信できる環境づくり、の3点です。

2020年6月に開催した社員とのオンライン懇談会の様子

2020年6月に開催した社員とのオンライン懇談会の様子

変化の激しい時代の中、何でも話せる環境のもとで未来志向・未来起点の考え方を取り入れ、シンプルに考え、仕事を任された社員がチャレンジをしていく、こういう動きがあらゆる場所で加速されることが理想です。

そして、こうした挑戦を「実践」していく中で、組織が、会社が変わるということを「実感」する社員を一人でも増やしていきたいと考えています。

さらに、実際の成果をあげるためには、個人のチャレンジを奨励すると同時に、チーム力を上げることが必要不可欠です。その際に私がこだわっていきたいのが、「共感」です。チーム力を最も発揮できるのは、概念を洗練させていくだけでなく、具体的な取り組み等を「実践」し、それらを通して皆が「実感」し、たくさんのコミュニケーションを通じて最終的な目的意識を共有し「共感」することです。

こうした「エンゲージメント重視の経営」を実践していきます。

株主還元の考え方

最後に、株主還元に関する私の考えをお話しします。

株主の皆さまへの利益還元は、これまでと変わらず、重要な経営課題と位置付けています。

2019年度は、厳しい決算となりましたが、業務純益の5年ぶりの増益反転、顧客部門業務純益の増益トレンド維持など、今後の成長に向けて一定の手応えを感じています。

課題であるROE向上に向けては、経費率改善による効率性の追求、リスクアセットコントロールを通じた資本効率の向上に取り組んでいきます。同時に株主還元の一層の充実に努め、株主の皆さまの期待に応えていきたいと考えています。

終わりに

今、世界は前例のないウイルスとの闘いを続けています。

私のCEOとしての船出もこの対応から始まりましたが、足元の危機対応の先には必ず未来が開けています。

私は、MUFGがいかなる環境においてもお客さまや社会から「信頼され続ける存在であること」が重要であると考えています。そのためには、金融サービスを通じて、あるいは金融サービス以外においても、社会の持続的成長に貢献する企業でありたい。そして、MUFGのさまざまな場所で働く社員が、「日々楽しく、やりがいを持って働ける、魅力ある会社」であること、それによりお客さまに「MUFGが変わろうとしている、変わったな」と感じてもらえること、これがCEOとして私がめざすところです。そしてそれが、株主・お客さま・社員・社会をはじめとする全てのステークホルダーの皆さまにMUFGの価値を提供することになると信じています。

今後とも皆さまのご理解と一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

取締役
代表執行役社長 グループCEO

亀澤 宏規

プロフィール

実践、実感、共感

私は、これまでのキャリアにおいて、前任者のいない異動が多くありました。入社後まもなく配属された市場部門では、債券オプション業務の立ち上げを担当しました。トレーニーとして単身アメリカに飛び、半年かけてさまざまな金融機関を視察、帰国後まさに一から業務を立ち上げました。その後金利の自由化が進む中で、ALM(注5)業務を立ち上げ、新しい住宅ローンや定期預金の開発等を手がけました。

次に異動した証券会社では、エクイティ業務を立ち上げました。山一證券が自主廃業するなど証券業界が揺れ動いた頃で、日中はディーリング業務を行いながら、夜はチーム立ち上げのための採用面接を繰り返す日々でした。目まぐるしい毎日でしたがとても充実していました。その後、銀行に戻りCPM(注6)業務を立ち上げました。銀行の根幹業務である貸出等の信用リスクをコントロールする新たな枠組みとして、世界各国の銀行で取り組みが始まった頃でした。

どの業務の立ち上げも、一人か二人で始め、やがてチームになり、室になり、部になると達成感がありました。こうした経験で感じたことは、実践し、実感し、共感することでプロジェクトが回っていくということです。たくさん失敗もしましたが、皆で、わいわい言いながら楽しんで仕事をしました。いろいろなことを任せてくれた上司には本当に感謝しています。また、チームづくりの大切さもこの時に学びました。同じ性格の人ばかりでなく、論理的な人、実践に強い人など、いろいろなタイプの人を入れることでチームは強くなります。

マネジメントになってからは、難局の連続でした。2008年にCPM部長になった直後にリーマンショックが、融資企画部長だった2011年には東日本大震災が起こり、市場企画部長だった2012年にはLIBOR問題が顕在化。自分の担当領域で会社の経営を揺るがすような問題に直面しました。難局に直面した時に心がけていたのは、嫌な情報であっても、経営陣に数字とファクトを正しく伝えるということです。今、経営者の立場になって改めて思いますが、嫌な情報ほど本当に大切です。その当時、上司から「危機時こそ組織の実力が試される。考え抜いたら、後は自信を持って前を向け」と励まされました。その時の経験が自分を大きく成長させてくれたと感じています。

2014年に米州副本部長としてニューヨークに赴任すると、新たな挑戦が待っていました。米国人CRO(注7)の退職に伴い、CROを兼務することになったのです。53歳で初の海外駐在でしたが、その日から米国人2,000人の直属の上司になりました。最初はもちろん戸惑いました。でも、現場に飛び込んで、担当者とも直接話をするうちに周囲もサポートしてくれるようになりました。目の前の課題に対し、具体的な事例や数字に基づいて、実践・実感を持って中身のある議論ができたからこそ、共感も得られたのだと思っています。

帰国後、2017年にはデジタルを担当するCDTO(注8)という新設ポストに就任しました。社内外から多様な人材を集めてチームをつくり、さまざまな業務のデジタル化に取り組むとともに、非連続なチャレンジとして、Akamai社とのアライアンスやGrab社への出資を実現しました。

新しいことや難局に際して常に心がけていることは、シンプルに物事の本質を捉えるということです。そうでないと長続きしませんし、言語や国境を越えて伝わりません。そして失敗してもいいから実践していく。コンセプトの議論だけでなく、具体的に実践することで実感でき、その実感を通して共感が生まれる。そうした会社の方が楽しいですし、社員が楽しくないと社会に対しても魅力ある会社にならないと考えています。

  1. (注5) アセットライアビリティマネジメントの略。貸出などの資産と預金などの負債に内在する資金流動性リスクや金利リスクなどを総合的に管理する業務
  2. (注6) クレジットポートフォリオマネジメントの略。貸出債権などのリスクをリスク移転取引を活用してコントロールする業務
  3. (注7) チーフ・リスク・オフィサー
  4. (注8) チーフ・デジタルトランスフォーメーション・オフィサー