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日本の電力先物市場へ銀行として初参画
電力の安定供給を支え、より市場を広げるために

三菱UFJ銀行 金融市場部電力の先物市場への新規参入

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三菱UFJ銀行は、日本の電力市場の健全な発展に寄与するべく、2024年9月に電力の先物市場に新規参入しました。生成AIの普及などに伴う社会全体での電力消費量の増加と、それを受けた電力価格の高騰も懸念される中、銀行初の試みについて、起案者である阿部さんと共にプロジェクトを率いる加藤さんにお話を伺いました。

集合写真

プロジェクトを共に進めるチームの仲間
(左から吉川さん、阿部さん、加藤さん、七宮さん)

安心して取引を行える環境をつくりたい

2016年の電力小売全面自由化に伴い電力事業は広く開放され、多数の小売電気事業者が参入。市場価格変動の仕組みが形成され、電力を売買する「電力市場」の在り方も変化しました。電力は貯蔵ができず、発電量と使用量を常に一致させなければならないため、価格変動が大きく、時には数倍にも価格が跳ね上がります。このような中、電力価格の急激な高騰に耐えられず、電力事業を停止・撤退する小売電気事業者も少なくはありませんでした。諸外国では、電力価格の変動に対応するため、最終需要家(個人・法人などの電力を消費する人)を含めて将来の電力価格をヘッジすることが一般的です。一方で、日本の市場はまだ若く、事業者が安心して取引できる状況には遠いと感じていました。

三菱UFJ銀行として何か価値提供ができるのではないか。そう感じ、取り組み始めたのが、阿部さんです。「私たちのような社会的信用度の高い存在が市場に仲介者として参入することで、皆さんがより安心して取引ができるのではないかと考えました」。
金融市場はもちろん、海外の電力市場では既に銀行をはじめとする大手金融業者が仲介者として参入し、安全性を担保する仕組みが整えられています。しかし、日本での前例はありませんでした。実現に向けてまず、取引所をはじめ日本の電力市場関係者へヒアリングからスタートしました。

株式会社三菱UFJ銀行 金融市場部 グローバルクライアントソリューション室 エキスパート 阿部 知行さん

株式会社三菱UFJ銀行
金融市場部
グローバルクライアントソリューション室
エキスパート

阿部 知行さん

2010年入行。法人RMを経て、市場部門へ。市場営業部では西日本(大阪)勤務、シンガポール駐在を経験し、大企業セクターのデリバティブセールス担当に。並行して新たなビジネスを模索していた際、電力市場に興味を持ち調査を進める中で銀行として価値提供ができると確信、本プロジェクトを始動。2024年に業務開始。

電力市場関係者の期待に応えるために

電力市場関係者の期待に応えるために

発電事業者や小売電気事業者、取引所、電力市場に関わる多くの方が銀行の参入に好意的でした。その理由は、“銀行だからこそ担える役割にある”と阿部さんは語ります。
「既存の相対取引と異なり、取引所取引を活用することで、例えば販売先の小売電気事業者が廃業した際にも、大きな損失を出さずに済むのです。私たちが信用力を活かし、その取引所取引を仲介者(クリアラー)としてサポートすることで、発電事業者・小売電気事業者などの市場参加者は与信管理面での不安を解消でき、安心して取引所取引を行うことができます。また、取引所としても、電力業界に大手銀行が参入し、こうして取引システムの安定性が高まることで、さらなる取引の活性化につながると感じていただけました」

銀行だからこそできる価値提供があると再確認し、本格的に動き始めた阿部さん。トレーディングやデリバティブの提供も視野に入れながら、あらためて電力市場参入の方向性を模索しました。そして、枝葉ではなくコアマーケットを育て、当時日本全体の電力使用量に比べて0.1%ほどの取引量しかなかった電力先物市場の流動性を高めることが今後の電力市場の広がりには重要と考え、クリアリング事業から着手することに決めたのです。

取り組みの意義を、皆に理解・共感してほしい

新たなビジネスを立ち上げる。その苦労は非常に大きなものです。それでも諦めず取り組み続けられたのは、三菱UFJ銀行が第一人者として電力市場の安定化や拡大に貢献したいという強い想いと、仲間たちの支えがあったからだといいます。
「まったく新しい試みだったこともあり、バックオフィスの皆さんをはじめ社内の仲間たちも、興味を持って前向きに協力してくれました。今もまだ認知拡大や浸透に向けた施策の最中ですが、今後も少しずつ体制を整えていきたいです」(阿部さん)

2024年9月には、銀行として初めて、エネルギー商品先物を扱う株式会社東京商品取引所(TOCOM)の取引参加者資格・清算参加者資格を取得。2025年4月には、取り組みをさらに加速させるために加藤さんもプロジェクトに参加。現在も、電力会社の方々を中心にディスカッションを重ね、業界全体の電力先物取引の知見向上や顧客のニーズに基づいた新たな金融商品開発を行っています。

株式会社三菱UFJ銀行 金融市場部 グローバルクライアントソリューション室 調査役 加藤 大貴さん

株式会社三菱UFJ銀行
金融市場部
グローバルクライアントソリューション室
調査役

加藤 大貴さん

2019年入行。法人RMを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ出向、円金利トレーダーを経験。2024年に現部署に着任し、2025年4月より本プロジェクトに参画。電力先物のクリアリング事業の推進や商品開発、営業を担う。

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私たちだからこその、新たな価値を届け続ける

「来てくれてありがとう。銀行が参入してくれてうれしい」今でもそんな声が先々で聞こえてくると言います。また、三菱UFJ銀行の参入以降、TOCOMの取引量は飛躍的に伸び、取引所主催イベントの参加社数も2022年と比べ約7倍に。安心して取引が行える環境づくりが着実に進んでいます。三菱UFJ銀行には、海外プレイヤーからも相談が来るようになるなど、日本の電力市場に国内外から注目が集まりつつあります。

未知の領域に臆さず挑戦したことから始まった今回のプロジェクト。成功の理由を伺うと、「企業力にある」と加藤さんは話します。「培ってきた長年の信頼・信用、資金力や金融市場での経験など総合的に見て強い企業だからこそ、取引所をはじめ電力市場に関わる方々に信頼いただけていると感じます。また、RMも本業務の意義を理解してくれ、非常に好意的に協力いただいています。RMの既存リレーションを活用し、お客さまに適切にアプローチ、ソリューション提供が可能になります。」

今後の展望を阿部さんは「電力価格・市場の安定に貢献しつつ、その市場を利用するすべての皆さまに市場取引の便益を届けていきたいです。そして、誰もがより自由に自ら選択して電気を使える社会の枠組みづくりに尽力していきます」と語ります。また、加藤さんも「クリアリング以外の事業も展開し、価値提供の幅をさらに広げていきたいです。また、電力市場に関する取り組みで得た知見を、社内やお客さまに還元したいと思います」と意気込みます。

三菱UFJ銀行の電力市場における挑戦はまだ始まったばかりです。

未来につなぐ
(2025年12月現在)

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