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新たな動産信託の仕組みで描く
地域インフラの未来

三菱UFJ信託銀行動産信託による地産地消の金融循環モデル構築

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三菱UFJ信託銀行は、シェアサイクル事業を展開するスタートアップのチャリチャリ株式会社などと連携し、電動アシスト自転車を信託財産とする動産信託と、クラウドファンディングを組み合わせた国内初の個人投資家向け商品を販売しました。地方都市の交通インフラ課題解決をめざした挑戦の舞台裏に迫ります。

持続可能な地域交通インフラの構築への挑戦

近年、少子高齢化や人口減少に伴い、公共交通の減便・廃止といった交通インフラの弱体化が進み、代替となる移動手段の確保が深刻な社会課題となっています。その課題解決の一助を担っているのが、シェアサイクル等を運営するマイクロモビリティ事業者です。
一方で、交通インフラの弱体化スピードに比して、マイクロモビリティ事業者がサービスを十分に供給するための財源確保が追い付かないという問題もあります。九州・福岡エリアを拠点にシェアサイクルサービスを展開するチャリチャリ株式会社も、同様の課題を抱えていました。

そこで誕生したのが、国内初となる、個人(出資者)と社会課題解決に取り組むスタートアップとを結びつける地産地消の金融循環モデルです。
チャリチャリ株式会社の電動アシスト自転車を三菱UFJ信託銀行が動産信託化し、それを裏付けとした投資ファンドを構築。クラウドファンディングサービスを通じて、事業に共感した個人投資家から資金を募る仕組みです。2025年7月に「チャリチャリ地域インフラ投資ファンド」として販売し、販売開始からわずか10日間で目標額に到達しました。

「本プロジェクトを通じて、地域課題に対する個人投資家の関心の高さを改めて実感しました。当社としては、接点の持ちにくい若年層の投資家にアプローチできたことも大きな収穫でした。結果的に複数のメディアに取り上げられたこともあり、全国の拠点に問い合わせを頂くほどの反響を得られたと思います。」
こう語るのは、関係団体等の交渉全般やメディア対応を含めて本プロジェクトの全体統括を担当した岡田さんです。

三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 法人事業開発室 調査役 岡田 拓磨さん

三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部
法人事業開発室
調査役

岡田 拓磨さん

前職にて、スタートアップとの協業を中心とした新規事業開発に従事。2023年にキャリア入社後も、法人マーケット統括部で新規事業開発を担当し、スタートアップや地方公共団体とのオープンイノベーションを推進。本プロジェクトの全体統括を担当。

三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 法人事業開発室 調査役 古川 沙彩さん

三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部
法人事業開発室
調査役

古川 沙彩さん

前職にて地域活性化支援ファンドへの出向や、ベンチャーキャピタルでスタートアップ投資のミドル・バック業務を経験。その後、2025年にキャリア入社し、新規事業開発に従事。本プロジェクトでは、投資関連契約締結対応やSPC(特定目的会社)設立など、スキーム構築の実務を担当。

スタートアップの機動力と足並みをそろえて

今回のプロジェクトで、契約手続きやモニタリングといったミドル・バック業務を担ったのが、古川さんです。これまでのキャリアでスタートアップ支援の知見を蓄積してきた古川さんは、「スタートアップは事業拡大のため、迅速な意思決定のもと、少数精鋭で多種多様な業務を回しています。当社の都合で、事業の成長スピードを遅らせることのないよう、簡潔かつスピーディーなコミュニケーションを心掛けました」と語ります。
個人投資家へのアプローチは、古川さんにとっても初めての取り組みであったため、クラウドファンディング業者や会計事務所など複数の関係者と手探りで慎重に確認を進めていく大変さもあったといいます。一方で「本ファンドの販売開始後、チャリチャリ社の自転車を利用している方からファンドへの投資を通じてチャリチャリ社を応援したいとの声を頂くと、自分の仕事が地域貢献の一助になっている実感が湧きました」と古川さんは笑顔を見せます。

個人投資家からの信頼に応える仕組みづくり

取り組みの要になったのは、動産信託とクラウドファンディングを掛け合わせるという、異色のスキームです。「比較的少額かつGPSによって所在を把握しやすい電動アシスト自転車は、動産信託における信託財産として適格でした。これを裏付けとして、地域住民など多くの方々に投資していただきたいと考え、クラウドファンディングの利用を決めました」と語るのは、動産信託スキームの検討・構築を担った廣川さんです。
こだわったのは、受託者である三菱UFJ信託銀行を信頼し、チャリチャリ株式会社に共感してくださった個人投資家の利益を、可能な限り保証すること。「収益の支払い順位に優先劣後構造を設定することで、個人投資家の利益を守る仕組みをつくりました。最善利益義務(※)の法制化後、具体的な対応が必要になる初めての案件だったので、社内外の有識者にご協力いただきつつ、数ヵ月間を費やして検討を進めました」と話します。
※金融機関が、顧客に対して最も適切な利益を確保するよう努める義務。2024年11月から施行

三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 法人事業室 調査役 廣川 美鈴さん

三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部
法人事業室
調査役

廣川 美鈴さん

2015年に三菱UFJ信託銀行へ入社し、債権流動化や合同金銭信託の商品改定などを担当。2020年から現部署にて、非対面型の個人向け信託販売や動産信託など新商品の開発に取り組む。本プロジェクトでは、動産信託スキームの検討・構築や、個人投資家向け販売に向けた社内調整を担当。

「動産信託」の可能性を広げる取り組み

木下さんと西村さんは、動産信託の骨格づくりから契約調整、社内事務との連携を担当しました。「本プロジェクトでは、税務や法務の論点を整理しながら、最適なストラクチャーの構築に向けたサポートに注力しました」と木下さん。
一方、契約書作成やスケジュール管理など、実務面を担った西村さんは「バックファイナンスのスケジュールが先行していたため、全体の進行がタイトではありましたが、事務の経験を活かして、やりとりを円滑に進められるよう努めました」と振り返ります。実際にその過程では、プロダクトガバナンスを守りつつスピード感を求められる場面も少なくありませんでした。
社会課題解決に資する新たな取り組みであり、社内の関心も高まっています。「税務・法務といったルールを遵守しながら、金融という枠組みで創造的な仕事をすることが私の責務です。この取り組みで培ったノウハウを横展開し、MUFGグループのシナジーを引き出すことで、動産信託の可能性を広げていきたいと考えています」と木下さん。
西村さんも「資産金融部として本プロジェクトに携わり、信託スキームの知見を広げることができました。法人マーケット統括部への異動後も、培った専門性とチームワークを武器に、社会的意義と経済的価値の両立に貢献していきたいです」と語ります。

三菱UFJ信託銀行 資産金融部 上級調査役 木下 哲哉さん

三菱UFJ信託銀行
資産金融部
上級調査役

木下 哲哉さん

前職にてリテール業務、企業年金業務、信託を活用した投資商品の組成業務を経験した後、2023年7月に三菱UFJ信託銀行に入社し、現部署にて信託スキームを活用した金融商品の企画・組成を担当。本プロジェクトでは、契約内容の調整や社内事務との連携を含め、動産信託の組成を責任者として推進。

三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 法人事業室 (プロジェクト担当当時は資産金融部) 西村 夏紀さん

三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部
法人事業室
(プロジェクト担当当時は資産金融部)

西村 夏紀さん

2021年に入社。資産金融部にて債権流動化案件の事務や組成に携わり、本プロジェクトでは、契約内容の調整や社内事務との連携など、動産信託の組成における実務を担当した。2025年10月より、現部署にて非対面型の個人向け合同金銭信託の販売や動産信託など新商品の開発に取り組む。

「動産信託」の可能性を広げる取り組み

「地産地消の金融循環モデル」を次の取り組みへ

最終的に、4,000万円の資金が集まった本プロジェクト。地域の移動における課題解決に共感してくださった個人投資家のうち、約6割はチャリチャリが本社を構える地元・福岡在住の方々でした。地域住民自らが地元の交通インフラを支える「地産地消の金融循環モデル」の実現へと一歩近づきました。「今後は別の形でこの動産信託の取り組みを発展させていく構想もあります。スピード感を持って、今後も挑戦を続けたいと思います」
5人はさらなる未来を見据えています。

未来につなぐ
(2025年12月現在)

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