社外取締役インタビュー

MUFGの社外取締役であり、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授でもある川本 裕子氏に、コーポレート・ガバナンス態勢の強化に向けた取り組み、そして、その中でのご自身の役割について聞きました。

略歴

東京大学文学部社会心理学科卒業。オックスフォード大学大学院開発経済学修士。東京銀行を経て、1988年マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。1995 ~ 1999年パリ勤務。2004年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。2013年6月より三菱UFJフィナンシャル・グループ社外取締役。

*川本裕子氏は、元東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)行員であるため会社法の定める社外取締役の要件を満たしませんが、退職後25年以上に及び経営コンサルタントや大学院教授としての豊富な経験と見識を有し、当社からの独立性は社外取締役と同様であると考えています。なお、会社法改正により、2016年6月定時株主総会終結後は社外取締役の要件を満たします。

MUFGのコーポレート・ガバナンス態勢の強化に向けた取り組みについて、
どのように評価されていますか。

企業組織の外、日本の外に開かれたオープンな経営をめざし、
さまざまな変化を起こしてきたと評価しています。ただ、慢心は許されません。
ガバナンス改革への不断の取り組みが必要であると考えています。

日本が世界経済のエンジンの一翼を再び担えるようになるのか。日本のコーポレート・ガバナンスはその成否を握る鍵の一つであり、今や世界中の関心の的です。一方で執行と監督の分離の不徹底、取締役会の監督機能の脆弱性、社内の同質性がもたらすリスク、人事意思決定の不透明性など、克服すべき課題は山積しています。
MUFGはこの2年間で、トップのリーダーシップと勤勉なスタッフにより、日本のメガバンクのコーポレート・ガバナンス改革をリードしてきたと評価しています。企業組織の外、日本の外に開かれたオープンな経営をめざし、さまざまな変化を起こしてきました。
取締役会については、社外取締役を増員するなど、制度面での改革を進めています。メンバーの選定だけではなく、運用面でも有効な議論を促進するため、議案の見直しに取り組むなど、大幅な改善があったと思います。私が就任した2年前と比べ、取締役会での議論は、量・質ともに格段に進化したと感じています。
従来の指名・報酬・監査委員会に加え、ガバナンス委員会とリスク委員会を取締役会の傘下に新設したことで、実質的に議論の場が広がりました。また、コーポレート・ガバナンス方針を明確化したことも評価しています。女性の取締役を複数起用するなど多様性の確保に努めるとともに、さらに2015年、指名委員会等設置会社に移行したことは、監督機能の強化につながると期待できます。
MUFGは国際的にも存在感を高めています。外国の規制機関を含め、特別な規制を受ける金融機関として、当社のコーポレート・ガバナンスのあり方が国際的な高い関心の的であることは、経営陣として一時たりとも忘れてはいけないと感じています。
その意味で慢心は許されません。これからも、中期経営計画で示された「お客さま起点」「グループ起点」「生産性の向上」を基軸に、ガバナンス改革への不断の取り組みが必要です。

MUFGがめざす姿である「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を
実現するにあたり、社外取締役としてどのような役割を果たしていかれますか。

執行から独立した立場であることを活かし、
取締役会をはじめとした経営陣との対話の場において率直な意見をインプットすることにより、
「変革のサポート役」としての役割を果たしていきたいと思います。

「変革のサポート役」でありたいと思っています。
経営陣は、企業のステークホルダーである株主やお客さま、従業員、地域社会など、関係者間のバランスをとりながら、企業価値を最大化する努力をしています。しかし、バランスをとるといっても、実際には「正しい判断」を行うことはなかなか難しいというのが実感です。
社外取締役には、取締役会が経営方針のバランスのとれた検討、決定を行う上で重要な役割があると考えています。企業内で色々な慮おもんばかりにより、タブーとなりかねない論点についても「普通の感覚」で質問することで、執行サイドに気づきを与えることができます。うまく回転すれば、企業価値最大化に向け、取締役会が真にバランスのとれた、良い判断ができる可能性が高まると思います。取締役会の決定に偏りがないことこそ、会社が信頼される土壌になるのではないでしょうか。
「世界で選ばれる」ためには、MUFGは社会のインフラとして、また経済のエンジンとして、日々望ましい姿に向け、日本経済やグローバル経済の変化を鋭敏にとらえて柔軟に対応する必要があります。
社外取締役は、執行から独立した立場にあることが経営への貢献の根拠となります。「外へのアンテナ」を高く張り、投資家の期待は何か、お客さまのニーズは何か、といったことを敏感にとらえ、取締役会をはじめとした経営陣との対話の場において、それらを率直にインプットし、議論に厚みを持たせることができればと願っています。そうすることが、最終的には企業価値の向上につながると確信しています。

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