2014年度の振り返りと分析
金融・経済環境
2014年度の金融・経済環境は、原油価格が急落するなど不透明感が強まる場面もみられましたが、概ね緩やかな回復基調で推移しました。米国は、雇用環境の改善等を背景に内需を中心に回復を続け、株価も概ね上昇基調で推移しました。欧州は、足元では持ち直しの動きもみられますが、財政・金融面等に構造的な問題を抱え、景気は低調な推移を続けました。アジアでは、中国は減速基調となりましたが、ASEANは堅調な消費に支えられ底堅く推移し、全体としては安定した成長が続きました。
こうしたなか、日本経済は、消費税率引き上げによるマイナスの影響を受けつつも、総じてみれば緩やかな回復基調を維持しました。個人消費は、消費税率引上げの影響等で年度前半にもたつきがみられましたが、足元では持ち直しの動きが徐々にはっきりしてきました。また、設備投資については、円安等を受けた企業業績の改善等を背景に、前向きな動きがみられました。
金融情勢では、米国が政策金利を過去最低の水準で維持しつつ資産買入れ策を終了した一方、ユーロ圏ではデフレに対する懸念等から、政策金利の引き下げや各銀行が中央銀行に置く超過準備等へのマイナス金利適用、さらには国債を含む資産買入れ策も導入されました。
日本においては、日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」を達成すべく、2014年10月に「量的・質的金融緩和」を拡大しました。こうしたなか、長期金利は低水準で推移し、2015年1月には新発10年物国債利回りが一時、過去最低となる0.1%台を付けました。円相場は2014年度半ば頃から円安基調が強まり、株価も企業業績の改善や米国株価の上昇等を受けて概ね堅調に推移し、日経平均株価は1万9,000円台まで上昇しました。



連結業績サマリー
連結業務純益
連結業務粗利益は、国内預貸金収益の減少や株式手数料の反動減があったものの、海外貸出や投資運用等による資金利益の増加、国内外での投資銀行業務、内国役務および保険を中心とした運用商品販売等の手数料収益の伸長に加え、アユタヤ銀行連結化による増収効果(+2,447億円)があり、前年度比4,755億円増加の4兆2,290億円となりました。
営業費が、海外事業に係わる経費の増加や消費増税、アユタヤ銀行連結化(+1,369億円)等を主因に同2,947億円増加の2兆5,841億円となった結果、連結業務純益は同1,808億円増加の1兆6,449億円(うちアユタヤ銀行は1,078億円)となりました。
与信関係費用総額
与信関係費用総額は三菱東京UFJ銀行( 以下、「BTMU」)単体、三菱UFJ信託銀行(以下、「MUTB」)単体での大口先の格下げによる費用増加、アユタヤ銀行連結化による費用増加(547億円)等があり、同1,735億円悪化し1,616億円の費用発生に転じました。
株式等関係損益
株式等関係損益は、大口売却益の剥落等を主因として、同514億円減少の931億円となりました。
経常利益
モルガン・スタンレーやBTMU、MUTBの持分法適用関連会社の業績改善を主因に、持分法による投資損益が1,596億円と同471億円増加したほか、その他の臨時損益が同151億円改善したことから、経常利益は同181億円増加し1兆7,130億円を計上しました。
当期純利益
特別損益は、BTMUの米国当局への和解金支払い370億円、モルガン・スタンレーに係わる持分変動損失332億円(前年度はなし)等により982億円の損失を計上しましたが、前年度比では2013年度に発生した三菱UFJニコスに係わるのれんの減損1,101億円の剥落等により、535億円改善しました。
以上の結果、当期純利益は同489億円増加の1兆337億円となりました。なお、連単差(当期純利益ベース)は、主要業態がいずれも利益貢献し、3,212億円となりました。


事業本部別の営業純益
前中期経営計画最終年度において、各種施策が結実し、全ての事業本部の営業純益が前年度比増益となったことに加え、アユタヤ銀行の連結化もあり、連結ベースの営業純益は前年度比2,124億円増加し、1兆6,754億円となりました。
また、海外対顧収益比率*は39%(前年度比9ポイント増加)となりました。
* 海外対顧収益比率=(国際+アユタヤ銀行)÷顧客部門営業純益


株主還元
MUFGは、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題と位置付け、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的、持続的な増加をめざすことを基本方針としています。
普通株式の2014年度期末配当は、1株につき9円、年間では中間配当金9円と合計で18円となり、前年度実績である16円から2円の増配となっています。
また、株主還元の充実、ROEの向上、機動的な資本政策の遂行を可能とするために、2014年11月に1,000億円を上限とする自己株式の取得枠を設定し、実施しました。


連結貸借対照表サマリー
(億円)
2015年 3月末 |
2014年 3月末 |
2014年 3月末比 [増減率] |
|
---|---|---|---|
資産の部合計 | 2,861,497 | 2,581,319 | 280,178 [+10.9%] |
うち現金預け金 | 404,883 | 239,698 | 165,184 |
うち貸出金(銀行勘定) | 1,093,683 | 1,019,389 | 74,294 |
うち国内法人貸出 (政府等向け貸出除き) |
424,567 | 413,128 | 11,439 |
うち住宅ローン | 158,791 | 163,477 | (4,685) |
うち海外貸出 | 410,435 | 339,070 | 71,364 |
うち有価証券 | 735,381 | 745,155 | (9,773) |
うち国内株式 | 63,236 | 49,982 | 13,254 |
うち日本国債 | 352,106 | 406,499 | (54,392) |
うち外国債券 | 235,715 | 214,318 | 21,396 |
うちのれん | 3,091 | 5,526 | (2,435) |
負債の部合計 | 2,688,622 | 2,430,190 | 258,431 [+10.6%] |
うち預金 | 1,533,574 | 1,447,602 | 85,971 |
うち2行単体合算 | 1,373,323 | 1,321,216 | 52,106 |
うち個人預金 | 704,151 | 688,672 | 15,478 |
うち法人預金その他 | 474,491 | 457,245 | 17,245 |
うち海外支店 | 189,583 | 170,052 | 19,531 |
純資産の部合計 | 172,875 | 151,128 | 21,746 [+14.4%] |
株主資本合計 | 113,286 | 113,462 | (176) |
うち資本剰余金 | 14,284 | 21,743 | (7,459) |
うち利益剰余金 | 78,604 | 70,331 | 8,272 |
その他の包括利益 累計額合計 |
39,892 | 17,097 | 22,795 |
うちその他有価証券 評価差額金 |
28,350 | 12,183 | 16,166 |
うち為替換算調整勘定 | 9,515 | 4,072 | 5,443 |
少数株主持分 | 19,613 | 20,481 | (867) |
純資産
株主資本は、利益剰余金は増加するも、配当支払(2,639億円)、自己株式取得(1,000億円)、優先株式の取得・消却(3,900億円)等により2014年3月末比176億円減少し、11兆3,286億円となりました。その他の包括利益累計額は、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定の増加を主因に同2兆2,795億円増加し、3兆9,892億円となりました。
貸出金
国内法人貸出および海外貸出の増加を主因に、2014年3月末比7兆4,294億円増加し、109兆3,683億円となりました。

金融再生法開示債権残高は若干増加したものの、総与信が増加したことにより、開示債権比率は2014年3月末比で0.25ポイント低下し、1.16%となりました。

預金
個人預金、法人預金、海外預金のいずれもが増加したことにより2014年3月末比8兆5,971億円増加し、153兆3,574億円となりました。

有価証券
国内株式や外国債券が増加したものの、日本国債が減少したことから、2014年3月末比9,773億円減少し、73兆5,381億円となりました。
その他有価証券の評価損益は、国内株式および外国債券での増加を主因として、2014年3月末比2兆2,632億円増加の4兆1,332億円の評価益となっています。
国債の残存期間別残高は、5年以下の債券が減少した一方、5年超の債券が増加しました。デュレーションは3.2年と若干長期化しました。


自己資本
(億円)
2015年 3月末 |
2014年 9月末 |
2014年 9月末比 |
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普通株式等Tier1比率 | 11.14% | 10.97% | 0.16% |
Tier1比率 | 12.62% | 12.21% | 0.40% |
総自己資本比率 | 15.68% | 15.39% | 0.28% |
Tier1資本 | 141,303 | 127,261 | 14,042 |
普通株式等Tier1資本 | 124,666 | 114,358 | 10,308 |
うち資本金・資本剰余金 | 35,699 | 35,809 | (110) |
うち利益剰余金 | 78,604 | 75,310 | 3,293 |
うちその他の包括利益累計額 | 15,957 | 4,486 | 11,470 |
その他Tier1資本 | 16,637 | 12,903 | 3,734 |
うち優先株式・優先出資証券・劣後債務 | 12,602 | 13,260 | (657) |
うち為替換算調整勘定 | 5,709 | 2,033 | 3,675 |
Tier2資本 | 34,219 | 33,130 | 1,089 |
うち劣後債務 | 19,449 | 20,399 | (950) |
うちその他有価証券含み益 | 11,085 | 9,973 | 1,112 |
総自己資本 ( Tier1資本+Tier2資本) |
175,523 | 160,391 | 15,131 |
リスクアセット | 1,119,015 | 1,041,601 | 77,413 |
信用リスク | 982,922 | 885,300 | 97,622 |
マーケットリスク | 25,117 | 28,359 | (3,242) |
オペレーショナルリスク | 66,446 | 60,726 | 5,720 |
フロア調整 | 44,528 | 67,215 | (22,686) |
自己資本額
当期純利益の積み上げに加え、株価上昇に伴うその他有価証券含み益の増加や円安に伴う為替換算調整勘定の増加を主因として、普通株式等Tier1資本は2014年9月末比1兆308億円、総自己資本は同1兆5,131億円それぞれ増加しました。
リスクアセット
円安の影響、貸出残高増加等による信用リスクの増加を主因として同7兆7,413億円増加しました。
自己資本比率
普通株式等Tier1比率は11.14%、Tier1比率は12.62%、総自己資本比率は15.68%となりました。
なお、2019年3月末に適用される規制に基づく普通株式等Tier1比率の試算値は12.3%となっています。