リスク管理

はじめに

2008年の世界金融危機以降、より高度で広範なリスク管理が金融機関に求められるなか、商業銀行・信託銀行・証券会社をはじめとした多くの子会社を有し、グローバルに事業展開するMUFGにとっても、リスク管理の果たす役割は従来にも増して重要となってきています。
こうした環境下、MUFGでは、リスクカルチャーに立脚した「統括型」、「グローバル」、「予防型」を軸としたグループ経営管理・統合的リスク管理の態勢強化を基本方針とし、地域・子会社と持株会社との一体運営強化によるリスク・ガバナンス態勢の実効性向上を進めています。
さらに、事業戦略を強力に支えるリスク管理を実践するため、「リスク・アペタイト・フレームワーク」を導入し、グループ全体のリスクリターン運営を強化しています。

リスク管理の全体像

リスク・アペタイト・フレームワーク

「リスク・アペタイト・フレームワーク」とは、MUFGの事業戦略・財務計画を達成するための「リスク・アペタイト」(進んで引き受けようとするリスクの種類と量)を明確化し、経営管理やリスク管理を行う枠組みです。「リスク・アペタイト・フレームワーク」の導入によって、経営計画の透明性が向上し、より多くの収益機会を追求できると同時に、リスクをコントロールした経営が可能となります。

リスク・アペタイト・フレームワークの概要

リスク・アペタイト・フレームワークの運営プロセス

MUFGでは、事業戦略・財務計画を策定・実施するにあたり、必要なリスク・アペタイトを適正に設定するとともに、リスク量のモニタリング・分析を行っています。
リスク・アペタイトの設定・管理プロセスは、以下の通りです。リスク・アペタイト・フレームワーク運営の実効性確保のために、経営計画策定プロセスの各段階で、割当資本制度、ストレステスト、トップリスク管理などのリスク評価・検証手法を活用します。

リスク・アペタイトの設定・管理プロセス

1、経営計画策定上の前提条件の確認

経営計画策定前に、内外環境を踏まえ、事業戦略策定や財務・資本運営上の留意点を検証します。

  • ・マクロシナリオ予測に基づく将来バランスシートのシミュレーション
2、経営計画案の策定

経営ビジョンの実現に向け、事業戦略、財務計画、リスク・アペタイトからなる経営計画案を策定します。

  • ・「リスクカルチャー」に立脚した取るべきリスクと回避すべきリスクの明確化
3、リスク・アペタイトの検証

主にリスク所管部署が、必要なリスク・アペタイトの適正性を検証します。ストレステストの結果、最大限取りうるリスク量を超過する場合などは、経営計画案の見直しを行います。

  • ・「ストレステスト」に基づく計画の収益性・健全性評価
  • ・個別の事業戦略実行に伴って生じるリスクの評価(定量面・定性面)
4、経営計画の決議

経営会議・取締役会にて、事業戦略、財務計画、リスク・アペタイトを一体的に審議・決議します。

  • ・「割当資本制度」に基づき、リスク量に見合う割当資本を各子会社・事業本部へ配賦
5、実績モニタリング

持株会社および各子会社のリスク管理部署は、配賦した割当資本およびリスク・アペタイトに対する実際のリスク量をモニタリングします。

  • ・「トップリスク管理」に基づく内外環境の予防的評価
  • ・個別の事業戦略に対するリスク・アペタイトの実績管理、予兆管理に基づくリスクの状況把握
6、リスク・アペタイトの見直し

モニタリングの結果、リスク・アペタイトと実際のリスク量に乖離がある場合や、環境変化に伴ってリスクが高まっている場合は、リスク・アペタイト計画を改めて設定します。

  • ・リスク・アペタイト再設定のために、必要に応じ、「ストレステスト」を再実施

総合的リスク管理の手法

MUFGでは、業務遂行から生じるさまざまなリスクを可能な限り統一的な尺度で総合的に把握・認識し、経営の安全性を確保しつつ、株主価値の極大化を追求するために、統合的リスク管理・運営を行っています。統合的リスク管理とは、リスクに見合った収益の安定的計上、資源の適正配分などを実現するための能動的なリスク管理を推進することです。
統合的リスク管理の主要な手法として、(1)割当資本制度、(2)ストレステスト、(3)トップリスク管理を採用しています。

(1)割当資本制度

割当資本とは、各種リスクから生じうる潜在損失額を資本に換算し、業務戦略・収益計画を踏まえて、リスク種類別、子会社別などに設定する資本の額です。
MUFGでは、資本のモニタリングおよびコントロールを通じた健全性の確保、業務戦略・収益計画を踏まえたリスクに対する自己資本充実度の評価および資本政策への反映など、適切な資本配賦の実現のために、割当資本制度を運用しています。

(2)ストレステスト

自己資本充実度評価用ストレステスト

経営計画策定時に、自己資本比率規制(バーゼルⅢ)に基づく規制資本、および内部のリスク計測手法に基づく経済資本の2通りの観点から、自己資本充実度評価を目的としたストレステストを行っています。
ストレステストにあたっては、内外の環境を分析し、期間が3年程度の予防的なシナリオを策定します。

資金流動性ストレステスト

事業戦略および財務計画を踏まえた将来のバランスシートに対して、MUFG固有のストレスおよび市場全体のストレスが発生した場合でも、短期間の資金流出、かつ中長期的なバランスシートの構造変化に対してあらゆる対策を講じることで資金不足に陥らないことを検証します。

(3)トップリスク管理

各種のリスクシナリオが顕在化した結果MUFGにもたらされる損失の内容をリスク事象と定め、その影響度と蓋然性(内外要因)に基づき、リスク事象の重要度を判定します。その上で、今後約1年間で最も注意すべきとMUFGが認識しているリスク事象をトップリスク*として特定し、トップリスクを網羅的に把握したリスクマップを作成することによって、予防型リスク管理に活用しています。
MUFGおよび主要子会社は、トップリスクを特定することで、予め必要な対策を講じてリスクを制御するとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的な対応が可能となるように管理を行っています。また、経営層を交えてトップリスクに関し議論することで、リスク認識を共有した上で実効的対策を講じています。2015年3月の当社リスク管理委員会で議論され取締役会に報告された主要なトップリスクの例として、「長期金利上昇による損失拡大のリスク」などが挙げられます。
具体的なトップリスクの内容は、資料編47ページをご参照下さい。D詳しくはこちらpdf

リスク委員会の設置

MUFGでは、「社外の視点」を重視した、コーポレート・ガバナンスとリスク管理態勢のさらなる強化の観点から、取締役会傘下の任意の委員会として、2013年に「リスク委員会」を設置しています。リスク委員会は、独立社外取締役、社外専門委員を構成員とし、MUFG全体のリスク管理全般に関する諸事項を審議し、取締役会に提言・報告を行っています。

リスク管理の実効性向上に向けて

優れたリスク管理とリスク・アペタイト・フレームワークの実現には、リスクカルチャーに立脚した、質の高い議論と充実したコミュニケーションを組織として継続することが重要です。

リスクカルチャーの醸成・浸透

MUFGでは、「リスクの取り方および管理に関するMUFGの組織・個人の判断・行動を規定する基本的な考え方」をリスクカルチャーと定義し、リスク管理における行動規範として、社内で共有しています。
具体的には、「与信業務」「市場業務」「業務全般」に関わるリスクカルチャーを策定し、リスク・アペタイト・ステートメントに記載しています。リスクカルチャーを社内に醸成・浸透するため、経営者からの定期的なメッセージ配信、グローバルな会議体設置・運営によるリスクカルチャーの共有などに取り組んでいます。

リスクカルチャーの抜粋

リスク・アペタイト・ステートメントの制定

MUFG全体の統合的な戦略やリスク運営の実効性を確保することを目的に、リスク・アペタイト・フレームワークを明示する文書として、リスク・アペタイト・ステートメントを制定しています。リスク・アペタイト・ステートメントには、リスク・アペタイト・フレームワークの全体像(基本方針・運営プロセス)と、具体的な事業戦略、財務計画、リスク・アペタイトを記載しています。
また、リスク・アペタイト・ステートメントの要約版をグループ内に配布・周知し、グループ全体へのリスク・アペタイト・フレームワークの考え方の浸透を図っていきます。

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