CFOメッセージ

2016年7月 取締役 執行役専務 グループCFO 徳成旨亮

2015年度の業績

2015年度は、低金利長期化のなか円高が進行し、また年度後半は中国・新興国経済の減速や米国の利上げなど相場環境も不安定となりました。これらの影響を受け、国内外の貸出や預金収益が減少し、手数料収益は増加したものの、業務粗利益は前年度比約2%減少の4兆1,432億円となりました。

経費は、海外規制対応などに伴う費用増加はありましたが、抑制的な運営に努め、前年度比ほぼ横ばいとなりました。
この結果、業務純益は前年度比約5%減益の1兆5,579億円となりました。

与信費用は、資源・エネルギー価格の下落および一部大口先要因から増加し、2,551億円となりました。
一方、持分法投資損益は、出資先の米国モルガン・スタンレーの業績が好調に推移したことから、増加しました。

以上により、親会社株主純利益は前年度比約8%減益ながら、公表目標9,500億円をやや上回る9,514億円となりました。
(詳細は、>「2015年度の振り返りと分析」をご参照ください。)

MUFGでは、中期経営計画において、以下の表のとおり、成長性、収益性および健全性を表す4つの指標を財務目標に掲げ、その達成をめざしています。

当社を取り巻く経営環境は、1年前の中期経営計画の発表時に比べて厳しい状況にありますが、引き続き、中計最終年度の目標達成に向け、努力してまいります。

中期経営計画財務目標

*1 算出方法は、>「財務ハイライト」ROEをご参照ください
*2 2019年3月末に適用される規制に基づく試算値

2016年度の経営環境と対応策

「三つの逆風」

2016年度は、海外経済の減速、与信費用、そして世界的な低金利の継続という、いずれも金融機関の経営にとっては負の影響をもたらす環境要因「三つの逆風」のもと、経営していくことになると認識しています。

これらに対応するため、MUFGでは、グループ総合力を発揮し、お客さまのニーズに的確に応える「真に付加価値のある」ご提案やサービスを提供することで、お取引の幅をさらに広げ、収益の多様化につなげていきます。

また、以下のとおり、厳格な与信運営に努めるとともに、経費削減や生産性の向上に向けた各種施策も、着実に進めてまいります。

与信費用の状況

与信費用の貸出金総額に対する比率は、現状0.2%台であり、アセットクオリティ(貸出資産の質)は全体として健全な状態にあります。

なお、資源関連の与信残高は10.4兆円、輸出信用機関(ECA)などの担保・保証等を控除した残高は6.9兆円です。そのうち、9割以上が正常先向けであり、不良債権(約1,200億円)の約9割は担保等で保全済みです。今後も、厳格な与信運営を継続していきます。
(詳細は、>「2015年度の振り返りと分析」資源関連与信をご参照ください。)

与信費用の状況

マイナス金利の影響

本年2月に導入された日銀によるマイナス金利政策により、国内資金利益の下方圧力が見込まれます。

このため、リテール分野では、リテール事業本部が受託財産事業本部と協働して、運用商品ラインアップの拡充などにより「貯蓄から投資へ」への流れを後押しするとともに、低金利で需要が拡大している優良な住宅ローンやアパートローン等に注力しています。

大口預金への対応では、海外金融機関が銀行間資金決済に利用する円口座について上限金額の設定や超過時の手数料適用を開始しました。国内法人のお客さまについては、低金利政策を活かすべく、資金需要の積極的な発掘に取り組むとともに、大口預金のモニタリングや総合的な取引採算の管理高度化を推進しています。

生産性の向上

「三つの逆風」による収益の減少に対応するためには、生産性の向上やさらなる経費削減が不可欠です。

この観点から、グループベースの施策として、米州・欧州における拠点再編や、銀行・証券のセールス&トレーディング業務の一体運営などによる重複機能の見直しを進めています。また、グループ内資産の有効活用や生産性の向上を企図した、総合職の削減を含む人材の適正配置などを着実に実行していきます。

資本運営

基本方針

(1)充実した自己資本の維持

MUFGは、「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」として、バーゼルⅢと呼ばれる国際的なルールに基づいて自己資本の充実を図ることが求められています。資本の健全性を示す自己資本比率において、2016年3月末の「普通株式等Tier1比率」は、所要水準8.5%を大きく上回る11%台と、現在の金融規制に照らして十分な水準を維持しています。

現在、各国当局間で新たな資本規制の導入が議論されており、2019年3月からは「総損失吸収力(TLAC)規制」も導入されます。
(詳細は、>「国際金融規制への対応」をご参照ください。)

これらの規制を充足しつつ、ROEを高めていくためには、「その他Tier1資本」(永久劣後債等)、「Tier2資本」(期限付劣後債等)および「TLAC適格シニア債務」を組み合わせ、最適な資本を構築すること―“資本のベストミックス”―が重要です。

こうした観点から、2015年度には、以下のとおり、多様な調達を実施しました。複数の領域で国内初の発行を行い、“プライス形成や投資家基盤の育成など先駆者としての役割を果たし、市場の発展にも大きく貢献”したとして、以下の表彰を受けました。

(1)充実した自己資本の維持

(2)収益力強化に向けた資本活用

持続的な成長を実現するためには、既存の顧客基盤や事業をベースとした自前成長に加え、資本を活用した戦略投資も重要な手段の一つです。M&A等の戦略的な出資にあたっては、資本の生産性を重視し、投資後一定期間内に資本コストを上回るリターンが得られることを投資決定の目線としています。投資後も定期的なモニタリングを行い、計画未達の場合の対応ルールを定めるなど、財務規律の徹底を図っています。

最近の主な出資案件

(3)株主還元の一層の充実

配当については、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的、持続的な増加をめざすことを基本方針としています。

また、2015年度には、株主還元の一環として1,000億円規模の自社株買いを2回実施しました。

今後も、資本規制への対応や格付の維持の観点から自己資本を適正水準に維持しつつ、成長のための資本活用の可能性も勘案した上で、株主還元のあり方を継続的に検討してまいります。

1株当たり配当/配当性向

持続的成長のために

リスク・アペタイト・フレームワーク

MUFGでは、事業戦略・財務計画策定にあたり、経営企画担当CSO、リスク管理担当CROと財務担当CFO傘下の各々のチームが“共通の言語”で議論するための枠組みとして、リスク・アペタイト・フレームワークを導入しています。

これは、「リスク・アペタイト」(進んで引き受けようとするリスクの種類と量)を明確化することで、リスクをコントロールしつつ、より多くの収益機会を追求することでグループの持続的な成長を実現しようとするものです。
(詳細は、>「リスク管理」リスク・アペタイト・フレームワークの運営プロセスをご参照ください。)

株主・投資家との対話・ディスクロージャー

CFOとして私が重要視していることは、株式や債券の投資家の皆さまとの建設的な対話やディスクロージャーのさらなる充実です。金融業を行うMUFGにとって、資本市場からの資本・負債の調達は、金融規制の充足や格付の維持、さらに外貨流動性の確保等の観点から極めて重要です。こうした観点から、日本基準・米国基準による財務情報の適切な開示に加え、2015年度は以下の対話を実施しました。

頂戴した投資家の皆さまからのご意見等は、定期的に取締役会・経営会議等において報告し、経営陣で共有しています。

今後とも、株主や投資家の皆さまとの建設的な対話に努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

株主・投資家との対話・ディスクロージャー
2015年度の実績

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