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MUFGがCEATEC JAPAN 2017にて“MUFGコイン”を初展示

MUFGがCEATEC JAPAN 2017にて“MUFGコイン”を初展示

日本では数多くの種類の電子マネーが使われている。コンビニなどの店舗レジエリアは、多数の決済端末に加えてQRコードの増設もあり、混雑する一方だ。

他方で、日本は世界の先進国と比較して現金の利用率が依然として高いと言われる。欧米ではレストランでの食事後の割り勘を、複数枚のクレジットカードで分割支払いをすることが多いが、日本の割り勘シーンでは現金払いが多いという背景がある。

こうした日本の決済事情に、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が開発している“MUFGコイン”はどのような変化をもたらしていくのだろうか? MUFGデジタル企画部 事業開発グループの藤井達人氏、小出俊介氏に出展の背景、および今後の展開を聞いた。

—昨年に引き続きCEATEC JAPAN 2017(以下、CEATEC)にブース出展されましたね。話題となっているMUFGコインが、初めて一般向けに展示されましたが、その狙いを教えてください。

藤井「MUFGコインは、私どもの方で開発している新しいデジタル通貨です。昨年の初めに企画し始め、プロトタイプの開発を経て、今年の5月から三菱東京UFJ銀行の行員で実際に使い始めています。1コイン=1円の価値となっており、コインと円を相互に変える事も可能です。」

「現存の決済手段の不便なところ、いわゆるフリクション(使いにくさ)を解消するとどういう事が実現できるのか、という点についてブレストするところからこの企画は始まりました。例えば、送金のしやすさだったり、人からの受取り方法だったり、既存の仕組みでは時間の制約や手数料など、様々なフリクションが存在しますよね。」

「私どもが考えているアイデアについて率直な感想と意見をいただき、今後の開発に活かしていきたいという考えがあり、今回、CEATECという舞台でプロトタイプを一般の方にお見せすることになりました。」

—なるほど。CEATECでは実際にどのような内容での展示を行ったのでしょうか?また一般の方々の反応はどうでしたか?

藤井「CEATECでは、“IoTタウン”という、IoTとSociety5.0をテーマとしたエリアに出展しました。IoT機器と組み合わせたダンベルを持ち上げるとコインが貯まる仕掛けを準備し、貯まったコインでドリンクが買える自動販売機を設置しました。例えばトレーニングジムなどで、目標の運動回数を達成したらリワードがもらえる、そんなシーンを想定しました。」


MUFGコインで購入できる自販機を展示


ダンベルを上げるとコインが貯まる仕組みを展示


QRコードを自販機にかざすと飲み物を購入することができる

「来場されたお客さまは、ブロックチェーンって何?という疑問を持たれる方から、MUFGコインで何が便利になるの?といった具体的なところまで、数多くの反応をいただきました。電子マネーと何が違うのか?という質問も多かったですね。」

小出「仮想通貨というキーワードを新聞やニュースでよく見かけるようになったため、ビットコインなどの仮想通貨との違いを聞かれるお客さまも多かった印象です。我々は“新しいデジタル通貨”という呼び方をしていますが、行内で利用している現在、電子マネーあるいは仮想通貨の良いところを組み合わせたような形になっています。」

—仮想通貨はよく聞くようになりましたが、ブロックチェーンは一般の方にとってまだ馴染みがないキーワードであるように思います。

藤井「ブロックチェーンの良いところは、システムを効率的に組み上げることができる可能性がある事、また、分散的に運用しながらも高い改竄困難性を持つという事にあります。ブロックチェーンを用いることで、MUFGコインは、既存の銀行の勘定系とは切り離してスピーディに開発しており、またスマートコントラクトを用いたDAppsと呼ばれる 分散型の新しいサービスを載せる基盤にもしていけるでしょう。」

小出「小数点単位での超少額決済にも対応しています。実際に、今回の自販機では1本120.5コインに設定して決済していました。こうした機能は、IoTが普及していく社会における機器間の少額多頻度決済などにも応用していくことが可能と考えています。」


MUFGコインについて
出展:MUFG デジタルトランスフォーメーション戦略(2017年9月11日)配布資料より抜粋

「ブロックチェーンの技術的なところを一般の方に説明するのは難しいのですが、今回の展示のように身近な決済シーンでは、ブロックチェーンを全く意識せずにサービスを使うことができます。ユーザーにとっては、手数料が低いとかスピーディに使えるといった利点が実現できるでしょう。」

—新しい技術だけに、開発が難しそうですね。開発に苦労している点やエピソードなどがありましたら教えてください。

小出「まずはブロックチェーンを活用したシステム開発に慣れることです。例えば、銀行として安心・安全なサービスを提供する上で、求める品質水準が実現可能かという点や、処理速度や処理件数などの性能面については将来的な目標値を置いて、どう実現するかを開発しながら検証しています。また、これはブロックチェーンに限らない話ですが、デジタル通貨という概念や、その使い方として小数点単位での決済機能など、これまでユーザーに馴染みのなかったサービスを自然に受け入れてもらうためのUI/UX設計に腐心しています。」

—現在は行内での利用ということですが、今後一般の人たちも使えるようになるのでしょうか?

藤井「現在、一般のお客さまにもお使いいただくことを想定して開発を続けています。全体としてのセキュリティや処理能力が十分な基準に達して、安心してお使いいただけるようになった段階でリリースすることになるかと思います。」

小出「来年の早い段階で、三菱東京UFJ銀行の全行員、MUFGのグループ企業へと利用対象者を拡大していく予定です。そこで得たフィードバックをさらに取り込んで開発をしていきます。」