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保険選びは“ロボアド”から Japan Digital Design が「みんかぶ保険」の提供を開始

ロゴデザインはみんかぶ社のシリーズもの。緑色と女性のモチーフにて保険の安心感を表現している。

保険選びは“ロボアド”から Japan Digital Design が「みんかぶ保険」の提供を開始

AIの進化に伴い、注目を集めているロボアド。投資の分野ではすでにローンチしているサービスも見受けられるが、私たちにとって身近な保険の分野ではまだ展開が進んでいない。

こうした中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の連結子会社、Japan Digital Design株式会社(以下、JDD)では、株式会社みんかぶ(以下、みんかぶ)と共同で業界初の保険ロボアドバイザーを提供することを発表した。

「みんかぶ保険」と名付けられたこのサービスは、保険選びにおける、顧客と販売者の新たな橋渡しをする存在として大きな期待を集めている。そこで、今回はプロジェクトリーダーである山田和範氏(以下、山田氏)に保険ロボアドバイザーについて詳細を聞いた。

「新しいことにどんどんチャレンジする」みんかぶ保険が生まれたJDDの基本理念

保険ロボアドバイザーについて紹介する前に、このサービスが生まれたJDDについて簡単に説明しよう。JDDは、社会的課題に対し、積極果敢に次世代のより良い顧客体験を創出すべく、銀行内の組織であったイノベーション・ラボをスピンオフさせ、2017年10月に誕生した。

「JDDの基本理念は、失敗を恐れず新しいことにどんどんチャレンジするというものです。いろいろなアイデアをいち早くアプリケーションや動画などのカタチにアウトプットして、世の中に問います。結果、難しいと判断したものは、早ければ1ヵ月で見切りをつけます。一方で、新たな可能性があるものはピボット(方向転換)もします。」

社内の雰囲気は、まさに新興のITベンチャー企業のよう。共用スペースには卓球台やバーカウンターを設置している。ここでAIやセキュリティ、デザイナーといったスペシャリストたちが新たなプロダクトを生み出すべく活動している。

「私たちは金融がコアにあるのはもちろんですが、金融から一歩離れたところに視点を置いてアイデアを練ることもあります。私は以前、医療分野に着目していたこともあり、そこからアイデアを引き出しました。」

JDD第1号プロダクト「みんかぶ保険」とは

そのJDDからリリースされる「みんかぶ保険」。実際にどのようなサービスなのか、山田氏に聞いた。

「みんかぶ保険は、Webブラウザや今後、開発するアプリに搭載します。ユーザーが年齢や家族構成などの基本情報や、保険を選ぶ際の優先順位など簡単な質問に答えると、加入期間や保険料の目安、保障のバランス等、自分が何となく持っている保険のイメージを可視化します。例えば、必要保障額や一時金の有無といったプロダクト目線の質問ではなく、「もし入院したとき、どのような病室で過ごしたいか」といった、保険の素人でも簡単にわかる質問に答えることで、自分に合った自分だけの保険をデザインします。」

実際にUIを確認すると、画面はわかりやすく、サクサクと質問に回答することができる。みんかぶ保険は、ユーザーの回答を踏まえて対象の保険サービスをいくつか提示してくれる。

続いて山田氏よりみんかぶ保険のメリットを聞いた。「みんかぶ保険を使えば、ユーザーに特別な知識がなくても自分がイメージする保険をデザインできます。最初から保険のプロに相談するのは、面倒だったり、何を聞いていいのか分からなかったりと様々なペインがあると思いますが、それらを払拭した今までにない保険選びが体験できるでしょう。」

また、みんかぶ保険は従来のロボアド投資と明確な違いがあるという。「みんかぶ保険は、あくまで保険をデザインするサービスです。詳細な商品説明や相談は、保険会社や代理店が担うこととなり、その橋渡し(送客)をする仕組みとなっています。ロボアド投資の場合、資産運用を管理するサービスもありますが、みんかぶ保険はスピードや法規制等を踏まえてこのようなコンセプトにしました。」

みんかぶ保険の注目度の高さは、保険会社の反応からもうかがえる。山田氏によると「2018年1月末にプレスリリースを出してから、国内にあるほとんどの生命保険会社から関心を持っていただきました。保険会社に自社情報・商品情報を投稿する機能を搭載することで、投稿された保険商品がロボアドバイザーを通じてユーザーに知らせる仕組みを提供します。保険商品ごとにユーザーが評価・コメントできる機能もあり、保険会社とユーザー双方向の参加型コンテンツであることも大きな特徴です。」と話す。

保険会社としても、ユーザーの生の声が可視化され、新たなマーケティングにつながる可能性を秘める。みんかぶ保険は、保険選びにおける新たなUXとして、保険会社にとっても非常に魅力的なようだ。

みんかぶ保険のコンセプトムービー。サービスの価値を15秒に凝縮して紹介している。

事業モデルを聞いてみた。「ユーザーは無料でご利用いただけます。私たちは保険会社への橋渡しとして広告収入をいただきます。こうした新たな収益モデルの着想を得たのも、JDDとして銀行からスピンオフしたからこそですね。」

みんかぶ保険が誕生した背景とは

みんかぶ保険はどのような経緯で誕生したのだろうか。山田氏からは意外な答えが返ってきた。「当初、ある保険代理店のセールス担当者の支援ツールとしてプロトタイプを開発しました。保険代理店からは、保険販売が属人化することなく新たな保険提案ができる、と好評でした。」

しかし、ひとつの保険代理店の販促支援ツールとして利用されるだけではビジネスとしてスケールしない、とJDDのCEOから指摘を受け、2017年10月の段階ではプロジェクト終了を宣告された。「ただ、構想とプロダクトのできには自信がありました。『ビジネスモデルを再考させてください』とCEOに直訴し、3ヵ月間の猶予をいただきました。」

そこから、山田氏はロボアドを活用した保険サービスの構想について、さまざまな場面で周囲に呼びかけた。そこから思いがけない出会いが生まれた。

MUFGのネットワークが紡いだ「みんかぶ」との出会い

「みんかぶを紹介しましょうか?」

山田氏は同じMUFGグループのカブドットコム証券の担当者から提案を受けたという。みんかぶは、個人投資家の株価予想をメインに、株式情報のインターネット交流サイトを運営する。多くのユーザーやPVを有しており、株式以外にもFX/為替、投信、仮想通貨などの総合金融情報メディアとして国内最大級のポジションにいる中、次の展開を狙っていた。そこに目を付けた山田氏は、ピボット(方向転換)し、これまでの代理店向けからコンシューマー向けへとビジネスモデルを再構築した。話はどんどん進んでいき、2017年12月、みんかぶと保険ロボアドバイザーの共同開発・運営の合意に至った。「これは非常に大きかったです。みんかぶはピッタリのパートナーでしたし、特徴的なサービスを提供する企業と接点を持つカブドットコム証券がMUFGにあったことも恵まれていました。」と山田氏は語る。MUFGが持つネットワークが、みんかぶ保険誕生のターニングポイントにもなったのだ。

JDDという新しい組織でプロダクトを開発するメリットについて、山田氏はこう言及する。「JDDとして銀行から独立し、スピード感を持って開発に取り組めたのは大きかったです。『消費者が自分で保険選びをする』というコンセプトは1年前から構想していましたが、みんかぶと共同運営し、コンシューマー向けに提供するビジネスは、2017年末からわずか3ヵ月で構築しました。」

JDDのスピード感のある組織運営が、みんかぶ保険の開発にポジティブな影響を与えたのは間違いない。


ビジネスモデルの再考をしている中で「みんかぶ」と出会い、わずか3ヵ月でカタチにしたと話す山田氏。JDDのスピード感のある組織運営も開発を後押しした。

「保険を切り口にさまざまな企業とコラボレーションを」みんかぶ保険に秘められた可能性

みんかぶ保険は2018年4月下旬のサービス開始を予定している。山田氏にサービスへの想いを聞いた。

「消費者からの生の情報がどんどん集まるので、このデータをうまく活用したいですね。保険を切り口にすると、保険会社だけでなく、入院保険に関連する医療機関、学資保険関連だと塾や習い事を提供する企業と連携できるかもしれません。いかに消費者の日常生活やライフステージに寄り添って、保険への自然な導線を構築できるかが非常に重要です。そのためには、多種多様の事業会社とコラボレーションしながら、世の中に新たなマーケットを創出していきたいですね。保険を入口に消費者のニーズやペインを拾い、出口には保険だけにとどまらないサービスを提供できればと考えています。」

JDDには多種多様な人材が集まっている。人材のコラボレーションがさらに進めば、みんかぶ保険はさらに進化するだろう。みんかぶ保険を使うことが私たちにとって当たり前になる未来が訪れる可能性もあるだろう。

〔みんかぶ保険サービスページ〕