MUFG Digitalアクセラレータについて
MUFGがスタートアップとチームアップし事業創造に向けて歩む
—「MUFG Digitalアクセラレータ」の概要を教えてください。
大嶋:2015年に開始した邦銀初のアクセラレータプログラムです。スタートアップとMUFGが力を合わせてビジネスモデルのブラッシュアップや実際の事業立ち上げに取り組んでいくもので、これまで5期合わせて31社にご参加いただきました。
アクセラレータプログラムと呼ばれるものは、世の中にいくつか存在します。その中でも「MUFG Digitalアクセラレータ」の大きな特長は2つあると思っています。1つは強力なメンター陣の存在です。MUFGグループが総力を挙げてプログラムを支えていることによるものですが、グループ各社からさまざまな分野のエキスパートがMUFGメンターとして多数参加しています。さらにMUFGのネットワークを通して、気鋭のベンチャーキャピタリストやマーケッター、事業家、弁護士などの多様な方々にも外部メンターとして加わっていただいています。
もう1つの特長は、MUFGの本気度です。採択企業1社ごとに事務局から1人、三菱総合研究所から1人が付いて専属チームを結成し、MUFGメンターと共に事業創造に向けて取り組み、プログラムの全期間を通してファシリテーターとして伴走します。メンタリングのサポートをはじめ、チームの一員として事業創造をどう進めるか、熱く議論します。事務局の私たち自身がスタートアップの事業の成長を心から望んで取り組んでおり、スタートアップ側もMUFGとどう組めるのか、とことん考え抜きながらディスカッションを進めていくので双方の熱量は非常に大きなものがあります。
張:チームとして一体となって取り組む点がポイントですね。メンター陣がスタートアップを上から指導する、あるいは外部からアドバイスするという関係ではなく、メンター陣と事務局とスタートアップが対等な立ち位置でチームビルドし、事業創造に向かうところが、このプログラムならではだと思います。また、一般のアクセラレータプログラムが、短期で終了することも多い中、4ヵ月にわたって議論を重ねていく点も特長です。
(三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部DX室 大嶋 英雄)
—期を重ねる中で変わってきた点があれば教えてください。
濱谷:私が感じるのは、プログラムの推進者であるMUFGの進化です。スタートアップとの会話が非常にスムーズになってきていると思います。最初の頃は、スタートアップの人たちと接する機会も少なく、どう議論を進めたらいいか戸惑っているようにも感じました。しかし最近では、さまざまな部署で実際に協業が始まっていることもあり、自分たちもやってみたい、そのためにもっとスタートアップと関わりたいという機運が高まっています。それがディスカッションの内容をより密度の濃いものにしていると思いますね。
佐々木:スタート当初はやはり、自分たちはサポートを提供していく側だという意識が強かったと思います。それが一緒に事業を創造しようというものにどんどん変わってきました。
プログラムの成果と評価
「MUFGという大企業と対等に話せる場」と評価する声が多い
—第5期までの成果としてどのようなものがありますか。
大嶋:プログラムに参加した31社の過半数の企業・グループとは、業務提携の発表や具体的な協業のスタートなど、MUFGと何かしらのビジネス上の関係性を築き上げています。いくつか例を挙げれば、第3期のクレジットエンジン株式会社とは、オンライン融資サービス「Biz LENDING」を共同開発し、すでにリリースしました。第4期のファンズ株式会社は、個人が1円から企業への貸付投資ができるファンドを昨年銀行がリリースした資産運用プラットフォーム「Money Canvas」上で展開しています。「Money Canvas」上ではほかにも、第4期のSTOCK POINT株式会社と連携して金融商品連動型ポイント運用サービスを提供しています。また、アクセラレータプログラムでできた縁を活かして、中・長期的な視点でチャレンジを継続しているものも少なくありません。
—プログラムを経験したスタートアップからはどんな評価がありますか。
張:「メガバンクときちんと話す機会はなかったのでありがたい」という声が圧倒的に多いです。確かに、スタートアップがプロダクトを携えてメガバンクの見解を求めようとしてもなかなか場がないと思います。さらに「ここまで対等に議論ができるとは思っていなかった」という声もよく耳にします。
大嶋:ベンチャーキャピタリストの人ともかなり密にコミュニケーションをとることができるので、その点の評価もありますね。出資を受ける前から著名VCと月に何回も真剣にディスカッションする、という機会はまず得られないと思います。また、フィンテック関連の法規制に関する最新情報やマーケティング手法、資金調達に関する知見が得られるという点はMUFGのプログラムならではといわれています。
佐々木:プログラムの活動の中で「ピボットまでできた」という評価もありました。スタートアップがMUFGとのディスカッションを経て新たなニーズに気づき、応募時のものからピボットして、よりリアリティのある事業に向かっていくということが実際にありました。長期にわたって集中的にメンタリングするプログラムだからこその結果だと思っています。
(三菱UFJ銀行 デジタルサービス企画部 DX室 張 君萍)
今後の展望
MUFGが提示した課題について応募いただく“リバース型”も登場
—第6期の新しい試みとしてどんなものがありますか。
大嶋:2つ考えています。1つは募集・審査のプロセスに関するものですが、これまでのいわば自由テーマに近いオープン型の募集に加えて、リバース型の募集を行います。MUFGがあらかじめ課題を提示し、その課題解決を通じて革新的な事業の創出につながるプランをスタートアップから応募いただくというものです。メガバンクが自らの課題を外に示すということはあまりないと思いますが、MUFGと協創することでスケールしていただくという機会にもなると思います。
もう1つは、プログラム終了後の関係継続についてです。これまでは事業化間近というところまで話が進んでいても、期間終了後にどう継続するかは、関わってきたMUFGの部署とスタートアップの個別の意向に任されてきた面があります。プログラム終了後も事務局として、スタートアップとの関係性維持、イノベーション施設である「MUFG SPARK」を中心としたコミュニティに参加している企業との橋渡し、施策を具体化していくためのリソース面での支援といったさまざまなフォローを行っていく計画です。
—応募を検討中のスタートアップ企業へのメッセージをお願いします。
濱谷:MUFGというとフィンテックをイメージされやすいかと思いますが、過去採択企業にも表れているように限定していません。幅広くMUFGと一緒に金融を変えたいと考えている皆さまにぜひ参加してほしいと思います。金融というビジネス領域は、初期にまとまった資金が必要になるケースや、制度上の制約が非常に多いケースなど、スタートアップ単体では事業化が難しい場合があります。早い段階からMUFGと議論することで、そういった問題への解決の糸口も探れると思います。
佐々木: MUFGの「一緒にやろう」という意欲は非常に強いものがあります。単なるマッチングやアドバイスの提供ではありません。また、コロナ禍でオンラインでのディスカッションが増えていますが、日々忙しいスタートアップの皆さまとはかえってコミュニケーションの密度が上がっています。その点でも利用しやすくなっているのではないかと思いますね。
大嶋:MUFGは本気です。ぜひこのプログラムを活用していただければと思います。
(左から:三菱総合研究所 経営イノベーション本部 事業戦略グループ 佐々木 伸、濱谷 櫻子)