協業の経緯
出会いのきっかけはアクセラレータプログラム
—STOCKPOINT for MUFGの提供が始まった経緯を教えてください。
土屋氏:MUFGとの最初の出会いは、2019年の第4期の「MUFG Digital アクセラレータ」に応募し、採択いただいたことがきっかけでした。2017年12月に「STOCK POINT」を開始してから、1年ほど経過した頃でもあり、より多くの方にこのサービスを知っていただくためにも、機会があればMUFGとの協業の可能性も追求したいと考えていました。
—プログラム終了後、すぐに協業が具体的になったわけではないのですか。
土屋氏:すぐにというわけではありませんでした。私たちのようなスタートアップは、アイデアがあれば「これでいけるんだ!」と突き進むところがあります。それは利点でもあると思いますが、世の中を大きく動かす力を持ち実際にさまざまなビジネスを展開している企業には、また違った複雑なロジックがあります。多様な考え方や価値観を持った方たちと議論ができたことは非常に勉強になりました。
田中:アクセラレータプログラムにご応募いただいたときは、私は直接関わる立場にはなかったのですが、同僚からポイントを使い運用体験ができるというSTOCK POINT社のサービスを聞いて、すごいなと思っていました。こんなことができたらいいね、というものを実際にサービスとして開発され運用していらっしゃる、大きな感銘を受けた記憶があります。その後私たちは、アクセラレータプログラムを継続する中でスタートアップから大きな刺激を受け、銀行は変わらなければという危機意識を持ってデジタルサービス部門を立ち上げたわけです。ちょうど私は資産運用・資産形成に関するサービスを担当していたので、STOCK POINT社の「習うより慣れろ」という視点で展開されていた点も非常におもしろいと思い、私たちから改めて声をかけさせていただきました。
(三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部企画Gr 次長 田中 誉俊)
プロジェクトのねらい
RPGの世界観で楽しみながら資産運用のきっかけにしていく斬新な提案
—企画はどのようにできあがっていったのですか?
田中:これまでMUFGは、新しい金融サービスが出ると対面でのご案内をしていました。しかしスマホでのサービス案内が主流になると、お客さまに株や投信などのことを細かくご説明する機会はなくなります。その中で、MUFGとの接点をどう継続していただくか。MUFGが提供可能なポイントを活用していただき、お客さまとの関係を継続しながら資産運用の世界への気軽な入り口をご提供できないかと考え、企画の提案をお願いしました。
土屋氏:日本人はまじめな人が多いですから、投資や運用というとどうしても勉強という方向に考えがちです。するといずれ時間があるときにと後回しになってしまう。その点、STOCK POINTは、株や投資信託など日々値動きする金融商品に連動してポイントの価値が変わるという、ポイントを使った珍しいサービスです。ポイントは金融商品ではないので、口座開設しなくても気軽に誰でも値動きを体感し、金融商品の値段が動くことや株価の変動をご理解いただけます。まずはポイントで資産運用の疑似体験をしていただき、ある程度理解が進んだら次は口座開設をして、自分でお金を出して金融商品を買っていただくというステップになるので、MUFGの考えるデジタルを使ったサービスの入り口としてふさわしいと思いました。ただ、一般の人は仕事もあり毎日忙しく過ごされています。その中で、デジタル上のサービスにどれだけ時間を使っていただけるか。そのためには楽しくて、ちょっと気になって、ちょっとためになるという、この“ちょっと”の組み合わせが重要ではないかと思い、キャラクターが資産運用の世界を舞台に活躍し、たくましく育っていくロールプレイングゲームをご提案しました。かなり実験的で挑戦的な提案になったと思いますが、非常に好意的に受け止めていただくことができました。
田中:一般に思われている銀行のサ―ビスというのは、ときに「安心・安全」な特徴が前面に出すぎてしまうところがあります。協業に際しても、せっかくSTOCK POINTという新しい発想でかつ気軽に楽しめるサービスですので、MUFGという名前が付くことで、急にまじめになりすぎてはいけない、と思っていました。その点、提案いただいたものは素晴らしく、キャラクターの絵を含めた企画を見せていただいたときは、MUFGのほうからは期せずして「おー!」と歓声があがりました。「ソダテ」のネーミングや株にひっかけた「カブの兜」も楽しかったですね。また、アプリの開発期間はどのくらいになりますか、と聞いたときの答えに示されていたスピード感にも圧倒されました。刺激を受けっぱなしでしたね。
土屋氏:メガバンクなのでいろいろな観点で検討されるだろうなとは思っていましたが、田中さんはじめメンバーの方が、「デジタルで新しいサービスを」という熱い思いを持っていらしたので進行はスムーズでした。とてもいいタッグが組めたと思います。
(STOCK POINT株式会社 代表取締役 土屋 清美氏)
今後の展望
Money Canvasへシームレスにつなげていく
—今後の展望をどのように考えられていますか?
土屋氏:サービスをリリースしてからまだ半年ですが、STOCKPOINT for MUFGで、これまでおよそ10万人の登録をいただいています。ここからさらにアクセルを踏んでいきたいと思っています。
田中:MUFGとしても、MUFGや協業先さまとのイベントに組み込むといったことをしながらSTOCKPOINT for MUFGを、さらにお客さまに周知していきたいと思います。
土屋氏:STOCKPOINT for MUFGからシームレスにMoney Canvasに移動してさまざまな金融情報に触れながら、実際の金融取引への流れをつくっていくのが次のステップです。日本では投資や運用は銀行や証券会社で行う特別なことで、日頃の買い物などとは別の話と切り離されてしまっています。しかし、私たちの普段の生活の中でものを購入し、代金を支払う、そしてそのお金が循環して企業の生産活動に使われていくというように、私たちが使うお金が経済を回し、社会を回していきます。その意味ではSDGsなども、決して遠い話ではないと思います。私たちのちょっとした行動が、これからの社会を変えていくことにつながるわけです。それを一人ひとりがきちんと意識して、私たちの将来、そして社会の将来を考えていく第一歩にしていただきたいと思い、STOCK POINT を運用してきました。これからもSTOCKPOINT for MUFG を通して、一般の生活者と企業の間の橋渡し役が担えればと思っています。
田中:STOCK POINT社がユーザー参加型で企業のサービスや製品、社会貢献について紹介している「愛され企業さーち」というサイトも、日常のレベルで消費者と企業をつなぐ試みで素晴らしいと思っています。私たちもMoney Canvasをどんどん進化させながら、STOCK POINT社との協業をさらに深めていきたいですね。
土屋氏:私たちだけではできないことがたくさんあります。しっかりした基盤のもとでビジネスを進めているMUFGさんと協力しながら、誰もが心豊かに暮らせる社会をつくっていくという志を忘れずに進んでいきたいと思います。