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MUFG Report 2026 CEOメッセージ MUFG Report 2026 CEOメッセージ

MUFG Report 2026(統合報告書)
CEOメッセージ

MUFGの「"いま"と"これから"」

取締役
代表執行役社長 グループCEO
半沢 淳一

4月にCEOに就任しました半沢です。ステークホルダーの皆さまへの初めてのメッセージを考えるにあたり、まず頭に浮かんだのは「CEO就任が発表されて以降、最も多くいただいた質問は何か」という点でした。

そこに私に期待されていること、伝えるべき内容が凝縮されているのではないかと考えました。

振り返ってみると、「MUFGの今の立ち位置とめざす方向性」に関するご質問が最も多かったように思います。簡単な問いではなく、すぐにお伝えしたいことやこれから考えを深めていくべきことなど、さまざまな観点がありますが、まずは自己紹介も兼ねてMUFGの「いま」について、私の考えをお話しします。

20年の想いと「いま」

昨年10月、MUFGは設立から20周年を迎えました。20年前にMUFGが発足した時、私は持株会社の統合企画室で三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスの統合業務を担当していました。当時は大規模な金融制度改革を背景とした持株会社設立や金融再編の時代。多様化する社会やお客さまのニーズに応えるために何ができるか、金融グループとはどうあるべきかを模索する日々でした。

 

もう少し遡ると、私は1988年に当時の三菱銀行に入行し、東京の下町にある支店に配属されました。その頃の銀行業務といえば預金と貸出がほとんどでしたが、「地域のお客さまに喜んでもらうためにより多様な商品・サービスを扱いたい」、初任店で感じたそんな想いを持ちながら、MUFGの立ち上げに携わっていたことを記憶しています。

 

それから20年、グループとしての機能統合・強化はもとより、Morgan Stanleyやアジア、さらには海外AM/IS領域への出資などを通じて、MUFGは国内外で多様な機能を有するグローバル金融グループとして進化してきました。

 

そして今般、20周年を記念してさまざまなイベントを企画するにあたり一つのコンセプトを作りました。

 

「これまでの20年の感謝を未来の20年(変革)につなぐ」というものです。私自身、このフレーズがとても気に入っています。お客さまや株主の皆さま、一人ひとりの社員に支えられて私たちMUFGの「いま」があり、この感謝を胸に、変革や飛躍を実現する新しいスタートを切りたいという想いを込めています。私の入行時はもちろん、MUFG発足時に一担当者として思い描いていた姿とは比べ物にならない「いま」があり、そのようなタイミングでグループCEOとして新たな挑戦をリードできることに、とてもやりがいを感じています。

環境・課題認識

そんな私たちを取り巻く環境の変化はますます速く、大きくなっています。昨日までの当たり前が今日には変わるかもしれない時代です。戦後続いてきた国際秩序は揺らぎ、通商・投資・技術など、さまざまな分野で分断と再編が進んでいます。中東情勢の緊迫化に伴うエネルギーや資源価格の変動、物流の不安定化、インフレ動向の不確実性も企業や人々の活動に影響を及ぼしています。

 

一方、このような環境変化は新たな成長機会も生み出しています。グローバルに加速するデジタルインフラへの投資や、インド・ASEANを中心としたアジアの底堅い成長は新たな需要を創出しています。そして、AIの社会実装や金融取引のデジタル化は産業構造そのものを変えつつあります。フロンティアAIのように正しく活用すれば圧倒的な力を発揮する一方、その能力の高さゆえに、サイバー攻撃などに悪用される場合の懸念など新たなリスクも顕在化しています。

 

こうした不確実性と成長機会が併存するなか、私たちのマザーマーケットである日本は、少子高齢化や人手不足という構造的な課題を抱えつつも、失われた30年からの脱却と持続的な成長軌道への回帰に向けた大きな転換期を迎えています。企業は、より高い付加価値を求めて成長投資に活発になり、物価上昇に応じた着実な賃上げが進み、成長と分配の好循環を取り戻しつつあります。データセンター増設やサプライチェーンの再構築、半導体・GX・コンテンツ等の新たな産業分野への投資機運は着実に高まっています。政府が進める「戦略17分野」も、わが国の産業競争力の強化に向けた重要な取り組みです。コーポレート・ガバナンス改革の進展による企業の変革や資本効率の向上も、日本への投資を活発化させています。

 

また、「金利のある世界」が到来するなか、成長資金が円滑に循環する仕組みを高度化することが求められています。官民連携の進化、リスクテイクの高度化、さらには非金融領域も含めた機能を一体的に発揮することで、企業の成長投資、個人の資産形成を支え、日本経済の持続的成長に貢献していく。こうした役割をより広く、より高度に果たしていくことが必要です。

中期経営計画の進捗とめざす方向性

2024年度から取り組んでいる3年間の中期経営計画(中計)は着実に進捗しています。前中計最終年度である2023年度から3年連続で過去最高益を更新しました。サービスブランド「エムット」のリリースにより国内リテールビジネスを進化させ、法人ビジネスではリスクテイクを強化、インドのShriram Financeへの出資を通じてグローバル戦略も加速させました。

 

そして、2026年度は今中計最終年度です。まずは通期の目標である親会社株主純利益2.7兆円、ROE12%程度に向け、戦略をしっかりとやり切ることにこだわります。そのうえで、その先に向けた議論も本格化していきます。ここでは、今中計で掲げた三本柱「成長戦略の進化(成長をつかむ)」「社会課題の解決(未来につなぐ)」「企業変革の加速(会社がかわる)」の進捗と今後の方向性についてお伝えします。

成長をつかむ

国内リテールビジネスではエムットの商品・サービス拡充に加え、OpenAIをはじめとするテック企業との戦略的な協業を通じたAI機能の実装など、新たな顧客体験を創出します。ウェルスナビと共同開発を行っているMAP (Money Advisory Platform)では、多様なデータとAIを活用して、お客さまの資産状況やライフステージ・ライフイベントにも寄り添ったパーソナライズドサービスを強化します。また、日本では世代間の資産移転が大きく進むなか、デジタル相続サービスも開始します。

 

金利のある世界において、ネット銀行のみならず他業界から金融業への参入など、競争環境が厳しさを増すなか、重要なのは「分かりやすさ」です。多様な商品をバラバラに並べてもお客さまの共感を得ることはできません。お客さまのニーズを汲み取り、最適な商品・サービスをご提案することが、付加価値につながるのだと思います。エムットを通じてMUFGの多様な金融サービスをシームレスにご活用いただけること、実店舗とデジタルバンクという対面/非対面の双方のチャネルを通じてご相談いただけること。こうしたMUFG独自のマスリテール戦略を磨き上げていきます。

 

5月に発表したGoogleとの戦略的提携を起点に、Googleの持つ日常に広がる接点やAI・Cloud等の先進技術と、MUFGの幅広い金融サービス・データを掛け合わせ、エムットを「生活の中で自然に使われる金融」へと進化させます。こうした機能を買い物やエンターテインメント、健康管理やレジャー等、日常のあらゆるシーンへ広げ、次世代の金融体験の実現をめざします。

 

国内法人ビジネスでは、従来の間接金融に加え、エクイティやファンド、各種ストラクチャードファイナンスなど資金供給の多様化や、さらなるリスクテイクにも取り組みます。官民連携の先頭に立ち、MUFGが有する総合力を活かして、大きな視点で産業の発展を牽引し、新たなビジネス機会も創出していきます。また、受託財産領域では資産運用機能を高めながら、資産管理・ミドル業務の提供を通じた運用会社の支援などを通じて、政府が掲げる「資産運用立国」に向けた動きを加速させます。

 

海外ビジネスでは、引き続き、アジアと米国がとりわけ重要なマーケットです。先日、インドのShriram Financeへの出資を完了しました。20代のころ、大蔵省の国際金融局(当時)に出向し東南アジア向けの円借款を担当していましたが、アジアが持つポテンシャルへの想いは今も変わりません。他方、国ごとに発展段階が大きく異なるため、規律ある資本運営のもとで各国の状況や時間軸を踏まえた戦略を遂行することが重要であり、それがMUFG、ひいてはアジアの成長につながると考えています。また、米国ではグループが持つそれぞれの機能を戦略的に強化し、世界最大のマーケットにおける成長をつかみます。国や地域の成長性を見極め、グローバルな事業ポートフォリオをさらに強靭化します。

 

今年で18年目を迎えるMorgan Stanleyとの協働は、MUFG独自の強みであり、投資銀行業務はもちろん、市場業務、ウェルスマネジメント、AM/IS、AI活用など、国内外のさまざまな領域において連携を深めています。

未来につなぐ

今中計では、「社会課題の解決」と「成長戦略の進化」を両輪として捉えています。社会やお客さまの課題を解決するソリューションを提供する、そして、課題解決を通じたビジネス機会の拡大により収益力を高め、経済的価値も向上させていきます。例えば、サステナブルファイナンスや金融経済教育の推進、さらには地域における課題解決の支援など、国内外でさまざまな取り組みを進めています。最近では、伝統工芸の支援に加え、ものづくりに強みを持つ地域でベンチャー企業の誘致やビジネスマッチングを実施するなど、産官学連携で地方創生に取り組んでいます。また、MUFGスタジアムを通じて社会や次世代を担う子どもたちにどのような価値を創出できるか、グループ各社の社員が集まって意見を出し合い、アイデアの実現に向けた検討を進めています。

 

こうした取り組みを広く理解いただくために、移行計画の進捗をアップデートした「Transition Progress 2026」や社員が起点となった課題解決事例を掲載したレポートも発刊していますので、ぜひご覧ください。

 

財務に直結する事業戦略と、財務的な可視化が難しい社会課題解決・人財戦略・企業カルチャーなどは一体不可分であり、相互に連関して企業価値を形成していると考えています。引き続きサステナビリティや人的資本に関する非財務情報の開示を拡充し、財務諸表には表れない無形の価値の重要性をできる限り分かりやすく丁寧に示していきたいと思います。

会社がかわる

成長戦略の進化と社会課題の解決の土台となるのは企業変革であり、その取り組みに終わりはありません。足元ではスピード変革に取り組んでいますが、ここでいうスピードとは単に業務処理を速くすることではありません。情報収集、分析、判断、実行、そして改善までの一連のサイクル全体を短くし、経営と現場の意思決定の質と速度を同時に高めていくことが、本当の意味でのスピード変革です。そのために、アジャイルな働き方を導入し、短期間のPDCAで成果を積み上げていきます。現場での小さな改善を積み重ね、それを組織全体の変化につなげることで、変化に適応し改善を続けるアジャイルな業務運営とカルチャーの定着をめざします。

 

そして、AI。AIは従来のデジタル化の延長線上にあるものではなく、業務や意思決定そのものの在り方を大きく変えています。日々の業務や意思決定の中にAIを組み込んでいくことが、私たちのめざす「AI Nativeな組織」であり、社員一人ひとりの思考を深めるパートナーとして位置付けています。そのためには、専門人材の育成・採用や全社員のAIリテラシー向上に加え、AIが働きやすい環境を整えること、つまりAIが必要な情報にアクセスしやすい基盤を整備することが不可欠です。加えて、数値や属性のような整理された情報だけでなく、現場での日々のやり取り、経験の中で培われた知見、すなわちMUFGならではの暗黙知をAIが活用できる形で蓄積し、組織の資産に変えることが重要です。こうした取り組みにより、AIの高度化と社員の成長を両立し、その相互進化の循環を生み出すことでMUFGの競争力を高めていきます。

 

一方で、AIを業務や意思決定に深く組み込むほど、ガバナンスの重要性は高まります。 AIの分析や示唆をどう使い、AIにどの業務を委ね、最終的に誰が判断し責任を持つのかが曖昧であってはなりません。活用を止めるための統制ではなく、安心して挑戦し、学びながら広げていくためのガードレールとしてのガバナンスです。フロンティアAIを巡る議論は、この点を象徴しています。従来見逃されていたような脆弱性を自動で検出し、攻撃に転用可能な手段の生成まで一気通貫で行い得るAIは、正しく使えばシステムの防御力を大きく高める有効な手段になります。一方で、悪意を持って使われれば、金融システムにとって大きな脅威にもなり得ます。これまでのサイバーリスク対応の時間軸そのものを変える存在であり、私たちも従来以上に機動的な対応が求められます。政府や関係機関とも連携しながら、官民一体で知見を持ち寄り、実効性ある対応を進めていきます。

“変わらぬ原点”と“MUFGならでは”の進化で切り拓く「これから」

代表執行役社長 グループCEO 半沢 淳一

さまざまな変化に順応し、それをリードすることが求められる一方、「社会やお客さまと共に成長する」という私たちの原点は不変です。むしろ社会課題が複雑化する今だからこそ、大局観を持ち、お客さまに先回りして課題解決に取り組むこと、持続可能な価値創出型のビジネスモデルへ発展していくことが、私たちに求められています。


そして、社会やお客さまに選んでいただくには、私たちMUFGが魅力的な存在であり続けなければなりません。MUFGには、国内最大の顧客基盤、グローバルにバランスの取れた事業ポートフォリオ、多様なサービスをシームレスに提供できるグループ力といった「MUFGならでは」の強みがあります。これらの強みに磨きをかけ、日本を代表する金融機関から世界を代表する総合サービスグループへと進化し、企業価値をさらに高めていきます。20年前、MUFG設立当初に掲げていた「グローバルトップ5」という目標を今こそやり遂げるべく、そこへ向かう道筋をつけたいと考えています。

「MUFGならでは」を突き詰めて考える際、社会における金融というビジネスの役割が変化していることを正面から受け止める必要があります。お客さまの課題がますます複雑化するとともにAIやデータ活用の進展に伴い、金融と非金融の垣根は一段と低くなっています。お客さまからすれば金融か非金融かは問題ではなく、望んでいるサービスが安全で便利に利用できることに価値があります。だからこそ私は、金融サービスを提供するグループに留まらず、社会やお客さまの課題解決を起点に「総合サービスグループ」へ進化したいと考えています。例えば、先日リリースしたコンテンツ分野での取り組みもその一環です。日本のアニメや映画といったコンテンツ分野において、出版社や制作会社と連携し、作品の企画・制作を支える資金の提供やグローバル展開を見据えた枠組みづくりなどに取り組んでいます。従来の金融の枠を超え、多様なプレイヤーをつなぐことで価値創造を後押しし、日本発のコンテンツの魅力、可能性を世界に広げていく。このような取り組みを他の分野にも広げていきたいと考えています。

「成長志向の進化」と「挑戦を結果につなげる」という意識

国内外の部店長や社員に向けて、また、先日実施した投資家の皆さまへの説明会において、そうした想いの実現に向けCEOとしてこだわりたい二つのメッセージをお伝えしました。

 

一つ目は、「成長志向の進化」です。私たちのマザーマーケットである日本が構造改革モードから脱却し、未来を見据えた成長志向のビジネスモデルへ進化することを力強く後押ししていきます。そのためにも、MUFG自らがより高い成長志向を掲げ、MUFGならではの価値創造にこだわることで、日本、そして世界の成長のチカラになる、それが私たちの果たすべき使命だと考えています。

 

二つ目は、「挑戦を結果につなげる」という意識です。やや保守的と言われてきたMUFGですが、これまでの取り組みから積極的に挑戦するカルチャーは定着しつつあります。次はこのカルチャーを大切にしながら、挑戦することに満足するのではなく、それを成果につなげることにもしっかりとこだわることで、社会やお客さまとともに大きな価値を創り出したいと考えています。

 

そして、こうした取り組みを通じて、「社員がやりがいと誇りを持って活躍できる会社」であり続けたいと思います。「MUFGで働くことを誇りに思う社員」「やりがいや働きがいを感じる社員」が増えることで、MUFGはもっと強くなります。社員の成長と組織の成長とが重なる状態をつくることが、経営の重要な責務です。

 

この20年でMUFGは大きく変わりました。グループ運営のあり方も、「グループ協働(各社が必要に応じて協働する状態)」から「グループ起点(各社がグループ方針に沿って役割を果たす状態)」、「グループ一体(各社が一体となり一つの組織として機能する状態)」へと進化してきました。「総合サービスグループ」へ進化するにはこのような変革をさらに加速させることが必要であり、それを実現することがグループCEOの役割だと考えています。銀行頭取を務めた5年間、自分の想いを正しく社内に浸透させるため、また、現場の声から課題を見出すべく、国内外の多くの社員とコミュニケーションを重ねてきました。今後はグループCEOとして、より多くの社員との接点を増やし一人ひとりとの対話も続けていきます。

 

変化の時代に必要なのは「強い信念」とそれを成果につなげる「実現力」だと考えています。

 

私たちMUFGは環境変化を的確に捉え、グループ総合力を発揮することで、「世界が進むチカラになる。」というパーパスを体現していきます。

 

MUFGの「いま」があり、「これから」の未来を切り拓いていけるのは、社会やお客さまの成長があってこそだと考えています。共に成長する、さらには成長をリードするという気概を持って、大胆に挑戦していきます。

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