人型ロボットが成田支店から出張、3ヵ国語で対応
ブースに展示されたアシスタントロボット「NAO」は高さ58センチメートルほどの人型ロボット。いつもは三菱東京UFJ銀行成田空港支店に設置されており、外国人観光客向けに観光案内も含めて応対している。会話だけでなく、口座開設の案内もできるロボット銀行員だ。CEATECの展示ではIBM Watsonと連携し、日、英、中の3ヵ国語を聞き分けて的確に回答して来場者を驚かせていた。
スマホアプリ「MAI/MAIQ」は、AIによるバーチャルアシスタントだ。それぞれ女性と男性のキャラクターが用意されている。スマホのマイクに向かって銀行取引に関する質問をすると、三菱東京UFJ銀行のWebサイトに掲載されている「よくあるお問い合わせ(Q&A)」から適切な内容を選択し、回答する。
さらに、複雑な内容になるとコールセンターへと誘導する仕組みだ。バーチャルアシスタントとのやり取りの内容もコールセンターに伝わるため、顧客がコールセンターの対応員に改めて問い合わせ内容を伝える必要はないという。
グループ各社がAIやビッグデータを活用したプロダクトを展示
ブースには、MUFGが今夏まで半年以上かけて行っていたスタートアップアクセラレータ・プログラムでグランプリを受賞したゼノデータ・ラボ社や、準グランプリであるアルパカ社なども、プロダクトについての展示やプレゼンを行った。また、プログラムの最終5社に残ったスマートアイデア社、ゼロビルバンク社、ナレッジコミュニケーション社についても紹介されていた。
MUFGグループからは、カブドットコム証券が同社の株取引ツールである“Kabuステーション”“Kabuパソ”を展示。ビッグデータによるリアルタイム株価予測のデモを行った。今後、アルパカ社との協業を進め、AIを活用したツールの強化を行っていく。また同社は、ゼノデータ・ラボ社、ゼロビルバンク社とも協業を行なっていくことを発表している。
三菱UFJ信託銀行は、運用面でAIをフル活用したファンドを紹介。投資信託の運用に際しAIが銘柄選定の支援を行うという。200以上の指標を用いて株価との相関性を分析し、安定的なプラス収益の実現をめざす。過去データのバックテストを行ったところ、良好な結果を示しているという。機関投資家をはじめ、個人投資家への販売も行っていく。
三菱UFJニコスは、クラウド型マルチ決済システム“J-Mups”を展示。同ソリューションは、決済アプリケーションをJ-Mupsセンターへ集約することで「拡張性」「安全性」「低価格化」を実現している。銀聯カードや、Suica、PASMO、ICOCAなどの電子マネーにも対応したマルチ決済サービスであることも特徴だ。
じぶん銀行は会期中、アルパカ社との協業によるAIを使った外貨預金のデモ投資を実施。リアルタイムで変動する収益をスクリーンに表示していた。CEATEC会期中のわずか5日間で100万円近くの利益を出し、来場者を驚かせていた。
最終日にはMUFGデジタルイノベーション推進部の藤井達人シニアアナリストが、「金融機関のオープン化が示す未来の可能性」と題して講演。MUFGとしての取り組みや、金融機関がフィンテックやアクセラレータ・プログラムに取り組む意義などを話した。
今後予想される流れとして、「AIがサービスや社内プロセスのあらゆる部分で活用される」「量子コンピューティングが金融サービスの質を変える」などを挙げたうえで、法制度やAPIなどにまつわる、今後想起される論点についても紹介した。
AI関連の出展が増加、CEATEC JAPANの今後の展開に期待
人々のライフスタイルが多様化し、またICTによる様々なデバイス等が進化するなか、MUFGのような金融機関、またその他の業界も、ICTを顧客サービスにフル活用していく動きが強まっている。
こうした流れを受け、かつて電機業界を中心とする見本市だったCEATEC JAPANは今年から衣替えを行い、電機業界以外の企業の展示も行うようになった。電機関係各社のブースに加え、MUFGブースをはじめとする新しくお目見えした企業それぞれのブースでも、特にAI関連の出展が目立っていた印象があり、AIが今後のICTサービス高度化に大きく寄与していくことは間違いない。来年度のCEATEC JAPANでもこの傾向は強まっていくだろう。今後の展開に期待したい。