[ ここから本文です ]

  • SHARE
第5期「MUFG Digital アクセラレータ」を振り返り、採択企業5社が感じた成果とは

第5期「MUFG Digital アクセラレータ」を振り返り、採択企業5社が感じた成果とは

邦銀初のスタートアップアクセラレータ・プログラムとしてMUFGが2015年に設立した「MUFG Digital アクセラレータ」。第5期となる今回は、新型コロナウィルスの影響による日程の延期があったものの、2021年1月に無事プログラムをスタートした。
去る4月16日、4ヶ月にわたり議論を重ねた成果を審査員に向けて披露する「DEMO DAY」が開催され、スタートアップ企業5社がプレゼンテーションに臨んだ。

第5期アクセラレータプログラム各賞は以下企業が受賞。後編では、各社からのコメントを紹介する。

【グランプリ】アルプ株式会社 代表取締役 伊藤 浩樹氏


写真:アルプ株式会社 Co-Founder, 代表取締役 伊藤 浩樹氏

グランプリを受賞したことで、これからMUFGと事業提携していくにあたり「アルプがめざしている方向を応援しますよ」とお墨付きをいただいたように感じます。また、我々のような小さなスタートアップ企業でも大企業と価値を共創していけるという自信になり、この取組みの方向性を新規事業開発としてさらに磨いていきたい思いが強まりました。

プログラム中、プロメンター・アドバイザーの皆さんとディスカッションを繰り返してきましたが、「もっとわがままを言ってくれ」と言われたのを覚えています。
「MUFG Digital アクセラレータ」はMUFGとの事業連携を前提としたブログラムなので、最初の頃は無意識のうちにMUFGの意向を伺う気持ちもありました。そうしたら「そんなことはしなくていい」と。「一切遠慮せずに、アルプとして都合がいいこと、MUFGにやって欲しいことをまずぶつけていくこと。アクセラレータプログラムではそれが許されるよ」という感じでおっしゃっていただいて、本当に嬉しかったです。
「まず、あなたたちのスタートアップ企業としての強いWill(意志)は何?」ということをMUFGメンターやアドバイザーの方々が大事にしてくださったことが新鮮でありがたかったですね。
 


写真:アルプ株式会社 Co-Founder, 代表取締役 伊藤 浩樹氏

MUFGという大企業とコラボレーションする大変さを感じたことはなかったです。大企業が何万人の組織だったとしても1つのチームがそこまで大きなわけでもないですし。むしろ僕は今回ご一緒する中で、MUFGの方々の「これまでの既存の事業だけではダメだ!」という強い意志を至るところで感じました。その強い意志をもって、どうスタートアップと関わっていくのか、新しい事業を創造していくのかに積極的に臨まれていて、我々こそ負けてられないなと思いました。
今回のプログラムを通して、Scalebaseのどういう要素が、具体的には契約や請求実績を軸とするトランザクションデータですが、MUFGにとって魅力なのか、価値があるのか、という議論を十二分にできたことが何より学びとして大きいです。本当に幅広い部署の方々、グループ会社の方々とディスカッションさせていただけたのがよかったですね。また、MUFGに対しても、既存の枠組みの中ではなかなか出てこない発想や情報の提供や議論の刺激は作れたかなと思います。「スタートアップって本当はこんな風に考えているんですよ」とか、「今世界はこんな風に広がっているんですよ」とかはお伝えできたのではないかと。どちらが正しいとか間違えているとかではない、新しい価値観を踏まえてMUFGとして、どう考えてどう動くのか、少しでも新しい指針の参考になれば嬉しいです。

事業規模やフェーズの全く異なる2社が4ヶ月という短い期間で何か1つのビジネスを完成させるとなったら難しいと感じますが、何か新しいきっかけを作る/始めていくには十分な時間でした。今後MUFGとは事業開発・連携の検討を続けていくと思いますが、他のスタートアップに対しても「MUFGのような大規模な組織とも、しっかり価値共創の足掛かりを作れるんですよ」と積極的にアピールしていこうと思っています。
 

【準グランプリ】
株式会社トーラス ビジネスディベロップメントマネージャー 前田 有香氏
代表取締役 木村 幹夫氏


写真右:株式会社トーラス ビジネスディベロップメントマネージャー
前田 有香氏
写真左:代表取締役 木村 幹夫氏

プログラムに参加して間違いなくビジネスが加速しています。弊社の場合、不動産登記簿は素材。その素材をどんな料理にするかによって価値が変わってくる。データを持っているだけではビジネスになりません。このデータをどのように価値化するか、これまで研究を重ねてきましたが、それでもなお自分たちだけでは気づけない部分が大きいと思っています。
そして、単なるデータの塊に見えていたデータベースも、「MUFG Digital アクセラレータ」の二次選考を通過した、MUFGが評価したとなった段階で、利用のされ方によってデータの価値は私達が予想していた以上であることが分かってきました。

弊社としては本プログラムに参加したことで自分たちのサービスが周囲の方たちに分かりやすくなったこともあり、現場の方からの嬉しい声もいただきましたので「もっと積極的にプロモーションしていこう」と思っています。(木村氏)
 


写真:株式会社トーラス ビジネスディベロップメントマネージャー 前田 有香氏

データを使うビジネスの場合、情報管理の部分が障壁になる可能性が高いのですが、「MUFG Digital アクセラレータ」では、MUFG側も「一緒にやりましょう」という前提で話が進むので、私たちだけで事業を進めるのに比べてものすごくスムーズに進んでいることは間違いないです。
今回、MUFG保有のデータを共有していただき取り組みを進めていたのですが、改めて情報管理が徹底されているのを目の当たりにして「こんなに顧客情報を大切にしているんだ」と顧客目線で安心感を覚えました。新しいビジネスを展開するとなると情報管理が障壁になることもありますが、情報の管理をしっかり行ってこそのビジネス。情報を丁寧に扱うことの大切さについて身をもって感じることができました。(前田氏)
 


写真:株式会社トーラス 代表取締役 木村 幹夫氏

プログラムを通して、MUFGの方たちに弊社のデータベースを見てもらう機会をたくさんいただきました。現場の支店長に弊社サービスの説明をしたところ「この中に私たちが欲しかった情報がすべて入っている!」と言っていただけました。
逆に本部の方からは「トーラスさんにはセキュリティー管理をさらにレベルアップして欲しい」と真摯なご指導を受けました。「ベンチャーではやってこられても、今後は金融機関の要求水準に合わせていく必要がありますから」とはっきり言われました。山あり谷ありですが新しい気づきをいただけて本当に助かりました。(木村氏)
 

【AWS賞】Crezit株式会社 COO 村井 亮太氏


写真:Crezit株式会社 COO 村井 亮太氏

会社としては事業戦略をブラッシュアップしている真最中、「そろそろ事業戦略が固まってきそうかな…」というタイミングでプログラムに参加することになったので、プログラム中に様々なメンターの方たちからお話を伺うことができ、僕らなりの価値を再認識できた気がします。
プログラム中、「大手企業と組む時はタイミングが重要だ」「スタートアップ側の交渉力が高くなるタイミングがあるんだよ」とメンターから言われて、なるほど!と思いました。タイミングを見極めて大企業に交渉にいかないと、僕たちにとって不利な条件での提携になりかねない。それであれば、僕たちにとってもっとも効果的なタイミングはいつなのか。それをどうやって見分けるのかなど、今回のプログラムについてだけではなく、今後ビジネスをしていく上でとても大切なことを教えてもらったように思います。
 


写真:Crezit株式会社 COO 村井 亮太氏

これまで多くの事業会社と話していく中で、僕たちが展開しようとしている「個人の与信」というビジネスは今後のびしろがあると確信しています。メンター・アドバイザーたちと議論させていただく中で、「個人の与信」のニーズの強さや「与信」に対する新しい気づきを皆さんにも与えれたのかなと思います。

グランプリを逃してめちゃくちゃ悔しかったので、事業で成功して見返してやろう!と思ってます(笑)。メンターや事務局の方々にすごく密にサポートしていただいて、ある種チーム戦でやるからにはグランプリをめざしていたので。
事業で結果を出して審査員のみなさんが「あの時見誤ったなぁ」と言ってくれるくらい結果を残したいですね。

 

【Microsoft Award】サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役 CEO 平瀬 錬司氏


写真:サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役 CEO 平瀬 錬司氏

スタートアップは毎日が大変なので、4ヶ月を振り返ってみてもプログラムに対する辛さは感じませんでした。それでも敢えて辛かったことを挙げるとするなら、大企業とスタートアップ企業ではカルチャーの違いがあるなと感じた時ですね。我々なら100点満点中50点くらいの状態でも「とりあえずやってみよう」という精神で動いてみて、修正しながら進んでいくのが普通ですが、大企業であればそういうわけにはいかない。初動に時間がかかるんだなぁと感じることがありました。
 


写真:サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役 CEO 平瀬 錬司氏

プログラム中、メンター・アドバイザーに言われて印象に残っている言葉はいくつかあるのですが1つ挙げるとしたら「セクシーなストーリーを作れ」という言葉です。コンシューマー向けのアプリ事業とかであればもっと楽しく語れるかもしれませんが、FinTech領域のビジネスはどうしても小難しくなりがちです。だけど、小難しいことを小難しく話してはダメだと。「セクシーに語ってファンを作れ」という言葉が今も胸に刺さっています。

これまで、ビジネス拡大のために毎日自分のエネルギーが100あるとしたら120くらいを使ってやってきたつもりでしたが、それでは全然足りないな…と気づかされました。今回プレゼンテーションを終え、結果を踏まえて「これからは200のエネルギーを使ってやるんだ!」と決意しました。


【DEJIMA賞】yup株式会社 代表取締役社長 阪井 優氏


写真:yup株式会社 代表取締役社長 阪井 優氏

プログラム4ヶ月の間、プロメンターの方と2週間に一度お話させていただく中で、「プログラムを通してMUFGと何かをやりたいし、やらないと」という焦りが湧いたことがありました。でも、そんな時メンターの方から「その気持ちも分かるけど、プロダクトを通じてユーザーの何を解決したいのかという軸をぶらさずに、その先にMUFGと何かできたらいいくらいに考えた方が良い」とアドバイスをいただいたことが印象に残っています。「MUFG Digitalアクセラレータ」プログラムとはいえ、MUFGよりもまずはユーザーに何を届けたいのかをしっかり考えるきっかけになりました。

僕らが参加することになった時、実はまだどんなサービスにするかもまったく決まっていなかったです。構想段階からミーティングをしてくれて、ユーザーニーズの部分から法律的な部分まで幅広くサポートしていただいたおかげで、僕らだけだったらだいぶ時間がかかっていただろうな…と感じます。
時には無理難題もあったと思うのですが、僕たちが会いたいと思う人たちとのご縁をどんどん繋いでくださって、事業開発を加速させるという点では本当にありがたかったです。
 


写真:yup株式会社 代表取締役社長 阪井 優氏

プログラム中はずっと辛かったですね(笑)。他のチームとは違い、まったくプロダクトがない状態からのスタートで、プロダクトも開発しながらかつMUFGとも話を進める日々。あらゆることを同時並行で進めなくてはならなかったのが結構辛かったです。でもその反面、自分たちでは想像していなかった可能性に気づかせてもらいました。請求〜支払いを一括管理するサービスをさらに発展させれば、サンフランシスコにある最先端のコンビニ「Amazon GO」のように、“手ぶらで決済”なんて世界の一助にもなるのかな、と夢を膨らませています。

今回プログラムに参加して、みなさんの素晴らしいサービスにいい刺激を受けました。それを脇に見て、いい意味での焦りというかライバル心が湧き、「僕たちも足跡を残さないと!」と気持ちが引き締まりました。
今後については、まずはMUFGとのプロジェクトの足固めをしっかり取り組んでいこうと思っています。その次に、スモールビジネスと接点のある金融機関は全国にたくさんあると思うので、MUFGを足掛かりに全国にある地方銀行にも僕らのサービスを知ってもらうアプローチも増やしていきたいと考えています。