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グループ横断のデジタルプラットフォームを構築し、MUFGのウェルスマネジメントサービスをデジタルの力で強化

グループ横断のデジタルプラットフォームを構築し、MUFGのウェルスマネジメントサービスをデジタルの力で強化

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は、 富裕層のお客さまへのサービスをいっそう高度化するため、MUFGウェルスマネジメントデジタルプラットフォーム(以下、WMPF)を構築。2022年2月からグループの銀行・信託・証券で一斉に本格的な運用を開始した。グループの総合力を活かしたウェルスマネジメントサービス提供に欠かせないものとして開発が進められたこのデジタルプラットフォームとはどのようなものなのか、そして今後どう進化していくのか、開発を担当した髙濵光希、氏原良輔、大森友貴の3人に話を聞いた。

(写真 左から)
●三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 氏原 良輔
●三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 次長 髙濵 光希
●三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 大森 友貴

WMPFの概要

銀行・信託・証券に分散していた情報を一本化

—WMPFはどのような機能を備えたものでしょうか。

髙濵:大きく分けて三つあります。一つ目は「統合View」です。これまで銀行・信託・証券に分かれていたお客さまの資産情報やお取引情報を情報共有の同意書を受入したことを前提に、まとめて一画面で確認できるようにしました。MUFGが一体となってお客さまにさまざまなサービスをご提供するための欠かせない機能です。二つ目は「Goal Planning System(GPS)」です。お客さまは「80歳になったら経営から引退して地域貢献をしたい」「70歳を区切りに夫婦で高級老人ホームに入りたい」といった、さまざまなゴールをお持ちです。それらのゴールに向かって現状の資産状況や運用にどういう課題があるのかを見える化し、ご相談・ご提案できるシステムです。富裕層のお客さまは会社経営をされていることも多く、金融資産だけでなく、不動産や自社株式などさまざまな資産をお持ちです。それらをすべて網羅し、さらにバランスシートという形で現在・将来について、確認いただけるようにしました。法人の決算では当たり前ですが、個人の資産についてバランスシートで見ることはなかなかありません。ゴールに向かって今何が課題かということを、資産全体を見渡しながら明確にすることができます。そして三つ目が「Next Best Action(NBA)」です。お客さまに今どういうニーズがあり、何をご提案すべきか、MUFGの担当者向けにレコメンドを出します。MUFGはこれまでも、富裕層のお客さまの資産運用、資産承継、事業承継などのさまざまなニーズに対して、ワンストップでサービスをご提供するということを進めてきました。しかし銀行・信託・証券の情報連携について改善の余地や、サービスのご提案内容に属人化された部分が残っているといった課題があったことも事実です。このプラットフォームは、タイムリーで、また担当者個人のスキルに依存することのない質の高いご提案をサポートします。


(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 次長 髙濵 光希)

取り組みと成果

モルガン・スタンレーの知見を活かしながら独自開発

—大規模なシステム開発にもかかわらず短期間で完了されたそうですね。

髙濵:プロジェクトを立ち上げたのは2019年の1月です。当初は、大森さんを含めて4人のチームから始まりました。後ほど話がありますが、1年かけてMUFGのウェルスマネジメントとしてあるべき姿を業務要件・システム要件として考え抜きました。2020年2月から実際にシステム開発に着手し、2020年10月には一部拠店での試行を開始しました。その後、試行拠店や機能を拡充し続け、2年間で全国拠点での本格運用開始まで進むことができました。開発着手時がちょうどコロナ禍に重なり、開発チームとして加わっていたヨーロッパやアジアのメンバーとの対面でのやりとりやタスクが滞りそうになることも多く、この点は非常に苦労しました。

氏原:今回の開発はウォーターフォール開発ではなくアジャイル開発を取り入れています。小さくスタートしつつ、変更があったらそれを取り込み、少しずつアジャストしていくというスタイルでフレキシブルに対応してきました。それが短期間での開発を可能にした一つの理由であったと思います。

—モルガン・スタンレーの知見も活かされていますね。

大森:プロジェクトの立ち上げ直後に私がアメリカのモルガン・スタンレーを訪ねました。ウェルスマネジメントビジネスについてはアメリカなど海外の金融機関に長い歴史と実績があります。モルガン・スタンレーもその1社で、近年も10年がかりで完成させたデジタルプラットフォームを活かして先進的な取り組みを続けており、そのシステムを現地で見ました。そこで非常に重要だと感じたのが今回のWMPFに導入した「統合View」「GPS」「NBA」の三つの機能です。もちろん日本には日本固有の事情があります。税制は大きく異なりますし、資産運用に関する意識や文化も違います。単純に同じものをつくっても意味がありません。日本に戻ってからは、日本の富裕層のお客さまにどういうニーズがあるのか、それをつかむためにアンケートの実施や、お客さまの属性別に何通りもの“ペルソナ”をつくり、どんなタイミングでどういうニーズがあるのかを検討しながら開発要件を固めていきました。またNBAでは、お客さま向けのタイムリーな施策をレコメンドで担当者に伝えていますが、そのためにAIも活用して業務種類別にさまざまなモデルをつくっています。試行段階で実際のお客さまのニーズとの乖離をチェックし、モデルの高度化を図ることもしてきました。


(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 大森 友貴)

—運用が始まっていますが、どんな声がありますか。

髙濵:お客さまからは、GPSでご提案するバランスシートやポートフォリオなどが非常に見やすく、わかりやすいと好評です。ご提示する提案資料について「これを無料でもらえるの?」とか「税理士に相談したら有料と言われて諦めていたものを提案してくれた」と驚かれることもあります。また社内では、例えば銀行の担当者からは「『統合View』で信託や証券の動きが細かくわかるので、お客さまへの提案がMUFG一体でできた」という声がありました。各会社には長年使ってきたシステムがあり、WMPFに慣れていただくには少し時間がかかると思いますが、私たちも機能追加だけでなく使いやすさという点での改善を続けていきたいと思っています。

氏原:このシステムがMUFGのウェルスマネジメントビジネスをさらに伸ばしていくという期待感は大きいと感じます。これまでも資産運用単体のシミュレーションソフトはありますが、WMPFはそうしたものとはまったく違います。お客さまのゴールをベースに、すべての資産の動きを総合的にみながら、臨機応変に金融サービスのご提案ができます。お客さまの伴走者としてMUFGグループ一体でゴールをめざしていくための強力なツールになると思います。


(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 氏原 良輔)

今後の展望

お客さまが使える簡易版をMoney Canvas上で提供

—今後はどのような展開を考えていますか。

氏原:WMPFの一部の機能を使った富裕層向けスマホ用簡易版サービス「Wealth Canvas」を2022年10月にリリースしました。Money Canvas上でお客さまにGPSの一部の機能を使っていただけるものです。ゴールやその優先順位、今の資産状況などを入れていただければ、お客さま自身で気軽にシミュレーションができます。お客さまは非常にお忙しいので、隙間時間に試していただき、本格的な検討は、担当者がお伺いしてWMPFのフル機能を使ったツールでご一緒に検討させていただくことを考えています。ネットの世界とリアルの世界がつながってタイムリーなサービスがご提供できると思います。

髙濵:WMPFはすでに運用されていますが、お客さまや営業店の声もどんどん取り入れながら、さらに改善を進めます。このツールがMUFGの総合力を活かしたウェルスマネジメントビジネスの強化につながって、私たちがパーパスとして掲げる「世界が進むチカラになる。」ことに貢献したいと思っています。