[ ここから本文です ]

  • SHARE
おすすめ記事を読む グループ14業態から267名が参加!第1回MUFGデータサイエンスコンペ開催おすすめ記事を読む グループ14業態から267名が参加!第1回MUFGデータサイエンスコンペ開催
新規事業創出プログラムSpark XがMUFGを変える

新規事業創出プログラムSpark XがMUFGを変える
―第1回を終えた事務局に聞く成果と展望―

Spark Xは、顧客課題・社会課題を起点にボトムアップでの新規事業創出をめざすMUFG横断のプログラムとして2022年にスタートした。4月に締め切られた事業アイデアの募集には実に650件を超える応募があり、1次審査、2次審査を経た6組が11月7日の最終審査会で熱いプレゼンテーションを展開。グランプリと特別賞が授与され、事業立ち上げに挑戦することが決定した。プログラムをゼロから立ち上げ、グループ全体を揺り動かす大きなムーブメントとして結実させた事務局を代表して山本浩太と志治康伸の二人にこれまでの取り組みや今後の展望などについて話を聞いた。

(写真左から)
●三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 志治 康伸
●三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタルサービス企画部 DX室 山本 浩太 

新規事業創出プログラムSpark Xについて

MUFG横断のボトムアップであることにこだわり続けた

—新規事業創出プログラムSpark Xの発足の背景を教えてください。

山本:主に二つあります。一つ目は2021年に改正銀行法が施行されたことです。これによって金融機関が取り組めるビジネスの範囲は大きく広がりました。MUFGはパーパスとして「世界が進むチカラになる。」を掲げています。身の回りの小さなことでも、顧客課題・社会課題の解決に取り組み、積み重ねていくことで不確実で混迷した世界でも前に進めていくことができます。そのためには既存ビジネスだけではなく新たな価値を生み出す事業への取り組みが、今まさに問われています。しかし、実現には私たちのカルチャー・マインドセットが変わらなければなりません。これが発足の二つ目の背景です。従来、銀行などの金融機関は業務範囲や出資などに関する規制に守られています。そのため金融機関は、規制に抵触することがないよう、保守的な自主ルールを設け、運用も慎重に進めることに傾きがちです。私自身を振り返っても、会社のルール、所属部署のルール、さらに上司の判断があって「ここまでだろう、ここまでにしておこう」という自主規制が働いてしまう。思い切って提案してみようというマインドがどんどん希薄になってしまう時期もありました。経験者は私だけではないと思います。心理的安全性が確保され、困難な状況にもチャレンジできる場がなければ、規制緩和のチャンスを活かすことができないという問題意識がありました。

—その意味でもボトムアップの必要があったのですね。

志治:これまでは、新規事業開発というと会社の中で選ばれた特定の人が取り組むものというイメージがあったと思います。しかし、これだけ速いスピードで世の中が変化し、価値観も多様化していく中でMUFGが新たな価値を提供し続けていくためには、グループのあらゆるメンバーの力が必要です。誰もがチャレンジできる開かれたイベントにしてグループ全体を揺さぶることで、カルチャーを変える起点にしたいと思いました。

山本:新規事業開発とカルチャーの改革は切り離せない両輪だという想いは、当初から事務局の中に強くありましたね。カルチャーに働きかけるには、各社員のWill(想い)を起点にしたボトムアップの取り組みにすることが重要だと考えていました。


(三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタルサービス企画部 DX室 山本 浩太 )

最終審査会までの取り組みと工夫

予想をはるかに超えた応募数。グループ全体が動いた

—4月の募集開始からどういう取り組みをされたのですか。

山本:まず何より「失敗を恐れずにチャレンジしてほしい」と伝えたいと考えました。ただわれわれでは説得力にも欠けますので、一番説得力のある人物…と考え、トップの亀澤社長にメッセージをお願いしました。「今こそグループ全社員が多様な価値観と自由な発想で自由闊達に意見を出し合うことが大切であり、思い切って一歩を踏み出してください」というものです。ただ、応募者にはわれわれ自身の想いも直接届けたいと考え、説明会は10回以上行い、のべ2,500人に参加してもらいました。

志治:詳細なビジネスモデルや事業計画など高度なスキルが必要となる項目は不要として、「顧客仮説」「課題仮説」「解決策」「起案への想い」という4項目各200字程度の文書だけで応募できるようにしたのも、限られた人のためのプログラムではないということを示すためでした。挑戦を通じて成長するきっかけにもなればと思い、応募に向けて、勉強会やセミナーも複数回開きました。

—650件もの応募があったそうですね。

山本:非常に驚いたしうれしかったですね。実は事務局内部では「目標150件!」と言っていたんです。

志治:650という数もさることながら、グループの全業態から幅広く応募があり、全国各地からエントリー書類が届きました。年齢層も20代の若手から60代のベテラン社員まで幅広く、支店長、部長という職務に就いている人からも応募があった。この幅の広さに大きな価値があると思いました。

山本:所属部署内での先輩・後輩や、中には久々に同期入社の社員が連絡を取り合ってチームを組んだというケースもありましたね。

志治:やはり完成したビジネスモデルを求めなかったという点が大きかったと思います。世の中の誰を救いたいのか、その人に何を提供したいのか、それだけをシンプルに問いかけたわけです。

—最終審査まではどういうことをしていったのですか。

山本:まず書類審査です。アイデアは多岐にわたりますので、事務局だけでなく、事業開発実績のある社外有識者、MUFG内のさまざまな部署・知見を総動員し、20件に絞りました。準備していたリソースの都合もあり、絞り込まざるを得ませんでしたが、選考を通過できなかったすべての応募案については、良かった点、不足している点をフィードバックしています。通過した20件については、MUFGと外部協力企業によるメンタリングや事業開発に必要なスキルを学ぶ研修の提供、顧客ヒアリングのサポートなどを行い、20件の起案者が一堂に会してプレゼンテーションを行う二次審査を行って最終的に6件に絞りました。

志治:4月末の募集締め切りから最終審査会まで約半年あったわけですが、この間の経過はできるだけ細かくグループ内に情報提供することを心がけました。従来のこの種の取り組みでは結果だけがリリースされるということが多かったのではないかと思います。しかし今回は、そもそも起案者がどのような想いを持って応募し、書類審査通過以降どんなプロセスを通じてブラッシュアップし、二次審査をどのように進み、最終選考に臨んでいったのか、といった各起案者の動きを刻々とグループのネットワークで発信していきました。そこに挑戦している方々の率直な想いを、可能な限り伝えるように意識していました。最終審査会も大きな会場を借り、公開イベントとして設定し、多くの方々がこの想いを直接感じられるようにもしました。


(三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 志治 康伸)

成果と展望

当事者としての熱量の高さに心を動かされた

—最終審査会をどう見ていましたか。

山本:それぞれのプレゼンテーションが素晴らしかったですね。どの組も非常にわかりやすく、この課題をなんとしても解決したいという“当事者意識のかたまり”でした。顧客ヒアリングで悩みを聞かせてくれた人の想いに応えたいという気持ちもあったと思います。これが仮に、「やらされ感」に基づく活動だったら、あの熱量は出てこなかっただろうと思います。

志治:私も心から感動しました。このプログラムにはグループを変える大きな力があると信じてこれまで取り組んできましたが、それが確信に変わった瞬間でしたね。私は日頃から情熱さえあれば物事は動かせると思っていますが、その想いも新たに感じました。自分たちで発案し、実際に困っている人のところに行って話を聞き、さらに企画を練り上げていった――その過程でどんどん深まっていった皆さんの想いがあったからこそ、あれだけのプレゼンになったのだと思います。プレゼンターの中にはご両親やパートナーなど、家族を呼んだ人もいました。それほど想いを込めたメッセージを用意してくれたのだと思います。


(最終審査会発表の様子)

—第2回に向けてどんな展望を持っていますか。

山本:初回は夢中で走りきったという印象です。真価が問われるのは2回目であり、それがうまくいってこそSpark Xが定着すると思っています。改善すべきところももちろんあります。

志治:最初から考えていたことですが、Spark Xを一過性のイベントにしてしまったら今回の意味が薄れてしまうと思います。いかにこのイベントを根付かせるか、今は小さな火種かもしれないけれど、これをグループ中で大きく燃え上がる炎にし、会社全体のカルチャー・マインドセットを変えていくことが事務局のミッションだと思っています。

山本:今回選ばれた新事業を軌道に乗せるのはもちろんですが、Spark X をMUFGの全社員が注目し、毎年楽しみにするプログラムとして定着させ新規事業創造と風土改革の二つを実現していく原動力にしていきたいと思います。