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未来を見据えた米シリコンバレーのスタートアップとの協働・新規ビジネスの創出

左から 佐近、力石、柴田、大西(リーダー)、前田、佐藤、五月女

未来を見据えた
米シリコンバレーのスタートアップとの協働・新規ビジネスの創出

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は、オープンイノベーションを推進するため、2014年に米国・シリコンバレーにGlobal Innovation Team (以下、米GIT)を開設した。

ミッションは、米シリコンバレーのスタートアップやビッグテックとの協働、並びにビジネスモデルを創造すること。目まぐるしく変化するデジタル領域における、米GITの日々の活動とシリコンバレーでの取り組みについて話を聞いた。

活動・ミッション

米国を中心とする技術トレンドの把握、シリコンバレースタートアップとの連携

—活動内容やミッションについて教えてください。

MUFGはグループとしてDX活用に力をいれており、その軸として、スタートアップとの協業、ビジネス創出があります。その中でも、米国シリコンバレーの優れたスタートアップとの連携は、DXを考える上で特に重要なポイントとなっています。

我々米GITは、米国シリコンバレーに拠点を構え、日々米国でのトレンドを把握し、スタートアップとのビジネス創出を検討しています。

活動内容についてまとめた図
<図:活動内容について>

—具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。

活動内容は大きく分けて下記の3つです。

1.米国の最新技術やトレンドの把握・調査を行う「リサーチ」

カンファレンスへの参加や、アカデミア、Venture Capitalist(以下、VC)等の有識者との議論、スタートアップとの集中議論を行うことで、数あるスタートアップの中から有力な協業先候補を洗い出していきます。情報収集をする上で、相談する相手やスタートアップに自分たちが「何者であり、何が目的であるか」をしっかりと伝えることは重要だと考え、常に相手にとっても有益である「Give&Take」となることを心がけています。

2.スタートアップの技術が確かなものなのかを見極める「検証」とビジネスを創る「創出」

スタートアップは非常にプレゼンが上手であり、すべてのソリューションが「素晴らしく」聞こえます。そのため、真に優れたソリューションであるのか、MUFGにとって魅力的なものであるのかを判断するために、技術検証(PoC)を実施します。これにより、スタートアップのプレゼンや資料では見えてこない本質を洗い出します。

また、PoCのみならず、MUFGにおける新しいビジネス創造の可能性についても、MUFG内の関係者も含め、スタートアップやビッグテックと日々議論を進めています。ホワイトボードを囲み何時間も議論する中で、抱える課題や描く未来にスタートアップの技術がマッチするかどうかを検討します。彼らのビジネスモデルを一部変更してもらうこともあるなど、まさに一緒にビジネスを作り上げるのがこのフェーズです。うまくいかないことも多いですが、形になったときの達成感を分かち合えた時は「努力が報われた」と思える瞬間です。

3.「シリコンバレーエコシステムへの参加」

シリコンバレーは村社会であると言われることもあり、このインナーサークルにいかに入り込むかが米GITの任務遂行において重要です。そのため、チームメンバーがそれぞれの注力領域での知見、人脈を深め、プロフェッショナルとなってシリコンバレーに「認めてもらう」ことを常に意識して活動しています。また、エコシステムの構成には、スタンフォード大学のようなアカデミアが大きな役割を果たしています。そこで、米GITはスタンフォード大学と提携し、この活動の加速を目指しています。その結果、最近は少しずつですが、スタートアップのCEOやCTO等から、「〇〇に紹介してもらって、連絡した」とダイレクトメールをもらうことも増えてきました。

3つの活動を写真とともにまとめた詳細
<図:3つの活動の詳細>

代表的な取り組み

有望スタートアップアップとの協業実現

—どのような取り組み事例があるのでしょうか。

ここ3年間での代表的な取り組みを2つご紹介させてください。

AIによる高度なスキャンを実現するRipcord社との連携詳細はこちら

大切なお客さまの情報をお預かりするMUFGでは、紙での情報も多く保管しています。その量をすべて手作業で対応するのは難しく、デジタル化を考える上で大きな課題の一つでした。そこで、経費削減のみならず、お客さまへより良いサービスの提供という難しい課題に対して、Ripcord社のソリューションを活用し、解決を目指しています。

Ripcord社の最大の強みは、スキャンする機械(ハードウェア)と、その上で動くソリューション(ソフトウェア)の両方を持つことです。それにより、封筒に入っている紙を取り出す機器とソリューションを数週間で作ってくれる等、ニーズに合わせてスピード感のある対応をしてくれました。

Ripcord社のビジネスはもともと米国が中心であり、協業の形を作るまでは長い道のりでした。しかし、MUFGとのビジネスや日本市場のポテンシャルを根気強くシェアすることで、経営戦略を変更してもらい、協働を実現できました。実際、金額の交渉や契約書の一文一句にわたる攻防は神経をすり減らす作業でしたが、今となっては良い思い出です。

ESG領域におけるグローバル基準に対応するSINAI社との連携詳細はこちら

SINAI社は独自の脱炭素化インテリジェンスプラットフォームを通じて、大手企業のGHG排出量の算定・分析・削減を支援しています。単なる排出量算定プログラムの提供ではなく、科学的根拠に基づいた、クライアント企業のGHG排出量削減ロードマップの策定・監視を実現していくシナリオ予測機能を持っているのが特徴で、世界的にも注目されている企業です。

MUFGは、「世界が進むチカラになる。」というパーパスを掲げており、ESG領域、特に脱炭素領域で先頭をけん引していきたい、と考えています。脱炭素の核となる温室効果ガスの排出量の算定・報告等のプロセスを見える化し、SINAI社のソリューションを国内外の共通プラットフォームとしてグループ約2,000拠点に導入、グローバル基準に準拠したサステナビリティレポートを作成しました。

取り組み事例のRipcord社連携とSINAI社連携をまとめた図
<取り組み事例:Ripcord社連携/SINAI社連携>

スタートアップとの協働のポイント

—スタートアップとの協働において意識していることを教えてください。

米GITでは以下2つの「違い」を意識したアプローチを心がけて活動しています。

文化・スピード感の違いを理解・意識したアプローチ

スタートアップとの連携において、「文化」と「スピード感」に違いがあることを理解し、戦略を検討しています。文化の違いには、「日米の商慣習の違い」、「大企業とスタートアップの違い」、「ITシステム導入のアプローチの違い」の3つがあると考えています。

前述のSINAI社との連携に関しても、この3つのポイントを意識した上で、先方のCEOやCTOと双方Win-Winの状況をイメージして直接交渉し、ビジネスの創出を目指しました。最終的には、通常1年以上を要するグローバルプロジェクトであるにも関わらず、ソリューションとしての採択決定から、わずか6か月で導入が実現できました。

「違い」を意識した、SINAI社との交渉概要をまとめた絵図
<図:「違い」を意識した、SINAI社との交渉概要>

「スタートアップ」のステージによる違いを理解したアプローチ

スタートアップと言っても、創業間もないSeedの会社もあれば、すでに数百人もの従業員を抱えるLaterの会社もあります。それぞれのステージによって我々のような会社に求める要望は異なり、協業の形も変わってきます。たとえば、Seedであればより資金サポートを求めている一方、Laterであれば成熟した既存のビジネスから次の新しいビジネスを生み出したいと考えているケースが多いと言えます。

このステージを見極め、「先手」をいかに取ることができるかが、我々米GITの付加価値をシリコンバレーで高めることにつながると思っています。

今後の展望

—今後の活動の方針を教えてください。

今はさまざまな事柄が目まぐるしく変化する時代です。

大きくトレンドが変わるセキュリティへの対応や、Chat GPTをはじめとする新技術をいち早くキャッチアップし、MUFGのデジタル化を加速させていきたいと考えています。