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三菱UFJ銀行の新たなWEBサービス「そうぞくガイド」 担当者が語るサービスに込めた想い

(左から デジタルサービス企画部 DX室 熊本 小林 池内)

三菱UFJ銀行の新たなWEBサービス「そうぞくガイド」
担当者が語るサービスに込めた想い

三菱UFJ銀行が展開する、相続手続をサポートする新サービス「そうぞくガイド」。このサービスは、個人情報の入力が不要という「手軽さ」と誰でも無料で利用できるという「間口の広さ」を兼ね備えた、相続手続に関するサポートを提供するもの。今回は、そんな「そうぞくガイド」開発のきっかけや、開発過程での課題、今後の展望などについて、サービス開発の中心メンバーであるデジタルサービス企画部DX室の小林氏、池内氏、熊本氏の3名に話を聞いた。

相続に関するオーダーメイドのTo Doリストが作成できる

デジタルサービス企画部 DX室 新事業Gr 熊本 梨那
(デジタルサービス企画部 DX室 新事業Gr 熊本 梨那)

Q.「そうぞくガイド」の概要について教えてください。

熊本氏
「そうぞくガイド」は相続に関してお困りの方に幅広くご利用いただけるWEBサービスです。相続の手続は一般的にやることが多く、手続を行う先や期限も異なります。また、お客さまの状況によって必要な手続が変わってきますし、専門的な知識が必要となることも多いです。そのため、銀行の窓口には、相続発生後に何から手を付けて良いかわからない、とお困りのお客さまが多くいらっしゃいます。このような窓口担当者の声を受け、デジタルでご自身に必要な相続手続の一覧や解説が見られるようなWebサイトを構築することを考えました。
具体的には、用意された20問程度の質問に回答していただき、その回答に応じた「やることリスト」を作成できるようにしました。「やること」の解説閲覧や進捗管理も含めて、個人情報の入力不要、かつ、無料でご利用いただけます。また、相続には様々な法律対応や専門用語等も多く、慣れない方が一人で全ての手続を担うのは大変ですし、時間もかかります。お客さまの状況やご意向に応じて、弁護士や税理士、司法書士といった相続の専門家を検索できる「専門家検索」機能も搭載し、専門家に頼る場合の選択肢もお客さまに提示できるサービスとしました。

Q.競合サービスにはない本サービスの特徴はありますか?

熊本氏
相続に関する包括的な手続リストのようなものは他にもあると思いますが、自分自身に必要な手続に絞った形でリスト提供できる無料サービスはあまりないように思います。またこのサービスは、相続に関連したあらゆるニーズをお持ちのお客さまに対応できるよう選択肢を提示している点が特徴で、自分で解決したい方はお客さま専用のやることリストで完結できますし、専門家の力を借りて解決したい方は、相続の専門家を探すこともできます。
相続手続は、自分で手続を実施するのも、専門家に任せるのもお客さまの状況や意向次第で変わると思っています。どのように進めればいいかわからない方に対して、あらゆる選択をサポートできるサービスとなれればと考えています。

Q.本サービスを導入しようと考えた経緯を教えてください。

熊本氏
当行では年間約11万件以上の相続受付を行っています。これは、日本で発生する相続の約1割に相当します。その中で、相続の手続とはどのようなものか、どのように進めていけばよいのか、とお悩みの方が多いと感じていたのがもともとのきっかけです。従来ですと、当行のサービスや手続の範囲内でしかお客さまの課題にお応えできていなかったのですが、その範疇にとらわれることなく、より多くの方にご利用いただき、お悩みを解決していただきたいと考え導入に至りました。

「お客さまファースト」を胸に 誰もが利用できるサービスへ

デジタルサービス企画部 DX室 業務改革Gr 池内 和訓
(デジタルサービス企画部 DX室 業務改革Gr 池内 和訓)

Q.本プロジェクトをどのような想いで進めていったのかを教えてください。

池内氏
当行のお客さまだけではなく、当行に口座をお持ちでない方も含めて、幅広い方々にサービスを提供したい、という想いは一貫して持っていました。というのも、被相続人の方が当行のお客さまであったとしても、相続人の方は当行のお客さまではない、といったケースも多々あるからです。
当行でも相続をフックとした資産運用や相続対策といったサービスを持っていますが、今回のサービスでは弁護士や税理士の先生といったある意味競合になりうる方々の情報も提供する、といったことも行っています。純粋にお客さまにとっての選択肢を増やすことが最もお客さまのためになると考え、常に「お客さまファースト」を念頭に置いて取り組みました。

Q.リリース前の課題とそれをどう解決していったかをお聞かせください。

池内氏
前述の通り、当行では年間約11万件以上の相続手続を無償で対応しているという現状があります。事務コストのみが発生している領域において、お客さまに寄り添うサービスを、いかにビジネスとして成り立たせるか、が大きな課題としてありました。そこで、利用者は無料で情報収集・専門家検索でき、弁護士や税理士といった士業の方々には広告出稿いただいて顧客開拓を図っていただく、という広告モデルの導入を考えました。
しかし、これを実現するためには法律面でかなり多くのハードルがありました。銀行が提供するサービスのため銀行法に則ることはもちろんのこと、弁護士法や司法書士法といった士業ごとの法律においても問題ないようにサービスを構築する必要がある、という点です。弁護士の先生や当行内の法務部と協力して、一つひとつ課題を明確にし、クリアしていきました。

他には、今回新しいWEBサービスを構築するにあたって、開発チームの組成方法も工夫しました。新規サービスのUX設計を得意とする、MUFGの子会社であるJapan Digital Design株式会社と一体となって開発チームを作ることで、UX設計から開発・運用まで、一気通貫でアジャイル開発を進められる体制を構築しました。その結果、開発期間はわずか10ヶ月程度と、銀行としてはかなり異例のスピードで開発することができました。
銀行という組織内でも、スピーディーに開発ができるチームを組成できるということが分かったことも、今回のプロジェクトの成果の一つと言えます。

Q.プロジェクトを進めるにあたって銀行外のメンバーとの協力も多くあったのでしょうか?

池内氏
前述した通り、士業の先生方には多くご協力いただきましたが、実はそれ以外のプロジェクト進行は銀行内部のメンバーだけで行いました。このようなプロジェクトの場合、銀行では外部のコンサルティング会社に企画からお手伝いいただくのが通例です。しかし、今回はコンサルティング会社にはご協力いただかず、銀行員のみで進めたというあまり例のないパターンでした。
また、掲載させていただく士業の先生方の広告内容や、事務所の紹介文のチェックといった運用業務もすべて銀行員で行っています。

開発を担ったMUFGのデジタル戦略子会社のJapan Digital Design社も含めて、MUFGだけでも新しいサービスをローンチできた、という結果はMUFGや銀行にとって大きな財産になったと思います。

相続の入口になるサービスをめざしてお客さまの声に耳を傾ける

デジタルサービス企画部 DX室 新事業Gr 小林 亜紗子
(デジタルサービス企画部 DX室 新事業Gr 小林 亜紗子)

Q.本サービスを認知させていく方法についてお聞かせください。

小林氏
まずは年間11万件以上の相続受付という当行ならではのタッチポイントを活かし、既存のお客さまをしっかりと「そうぞくガイド」にご案内していきたいと考えています。複数ある相続受付の経路の中で、ネットであればページに広告を掲載したり、書類送付の際はチラシを封入したりするなど、既存のお客さまへの認知を高めていくつもりです。
また、外部のお客さまに認知していただくための施策も現在検討中です。理想としては、相続といえば三菱UFJ銀行の「そうぞくガイド」、と言われるような存在をめざしたいと考えています。

Q.今後の展望について教えてください。

小林氏
これまでは、「まずはリリースすること」を目標にチーム一丸となって突き進み、ようやくリリースの段階にきました。しかし、今ではここはスタートラインに過ぎないと思っています。今後はお客さまの声をしっかりと聞き、アジャイル的に短期間でどんどん機能改善を行っていきたいと考えています。

本サービスは、相続が初めてで何をしていいのかわからない方にとって解決策をお示しできる、入口のようなサービスをめざしています。もちろん、今後は3士業の方々のみではなく、他の専門家の情報掲載や、資産運用サービスの紹介など、相続をきっかけに幅広く展開していきたいと考えています。しかし、軸は「お客さまファースト」。お客さまの声を第一に聞き、より良い顧客体験・価値の提供に向けて常に改善を図っていきます。