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「銀行」の仕事はここまで変わる!MUFGがAI Nativeな組織をめざす理由

「銀行」の仕事はここまで変わる!
MUFGがAI Nativeな組織をめざす理由

ChatGPTをベースに、MUFGが独自に開発した対話型AI「AI-bow」(アイボウ)。基本的な質問に回答するチャット機能のほか、議事録作成、翻訳、アイデアの壁打ち、Excel作業を自動化するマクロ作成など、あらゆるユースケースに対応する。2023年4月のキックオフからスピーディーに開発が進められ、早くも11月には全行で利用が開始された。利用者数は右肩上がりで増加、本部内の利用率はリリースから8ヵ月で3倍以上に急上昇している。今回は、デジタル戦略統括部AI・データ推進GrでAI-bow関連の業務を担うAI推進チームから、リーダーである中山智博、チームメンバーの平林一輝、森脇崇仁に、MUFGでAI推進に関わる面白さ、やりがい、さかのぼって入社の動機から将来の目標まで、幅広く話を聞いた。

(写真左から)
三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr
平林 一輝
中山 智博
森脇 崇仁

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さまざまな機能が充実、利用が加速するAI-bow

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 中山 智博
(三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 中山 智博)

Q. AI推進チームについて教えてください。

中山:AI推進チームはデジタル戦略統括部AI・データ推進Grの1チームです。24名で構成されており、全社的なAI推進の戦略立案、生成AIを活用したユースケースの推進と案件管理、生成AIの行内への浸透・利用促進、それらすべてを支える生成AI関連プロダクトやプラットフォームの企画・推進を担っています。その中で私がカバーしている主要な業務は、AI-bowを含む生成AI関連プロダクトやプラットフォームの開発・推進と行内への浸透活動です。加えて、AIの最新技術や進化について情報収集や調査を行うAIインテリジェンス、OpenAI社との協業の取り組みも行っています。

Q. 入行から現在までのお仕事を教えてください。

中山:私は2024年1月にキャリアで入行、すぐに現在のチームのリーダーに任命され、AI-bowプロジェクト全体の取りまとめを行っています。

平林:私も2024年2月にキャリアで入行して間もなく、AI-bowの技術開発の担当になりました。現在は主に2つの仕事を担っています。1つ目はAI-bowを含む生成AI関連プラットフォームの企画・推進です。具体的には、現在はGPTをAzureで提供しているのですが、他のLLMを社内で使えるようにすることや、LLMを容易に業務で活用できるように行員向けの開発基盤の構築に取り組んでいます。2つ目は手続検索支援システムの開発です。去年から技術開発を行い、精度を向上させて、今年7月に新製品としてリリースしました。

森脇:私は2023年4月、新卒のデジタルコースで入行しました。現在の仕事は大きく分けて3つあります。1つ目は、AI-bowの利用促進を主な目的とするAI教育で、AI-bowの使用方法や活用シーンについて、オンラインや各支店で勉強会を開催しています。2つ目は、AI-bowの利用状況の可視化です。Tableauを使ってAI-bowの利用ログをもとに、全行員がどの程度AI-bowを利用しているかを分析しています。3つ目は、MUFG全体でのAI活用推進です。銀行だけでなく、他のMUFGのグループ会社も含めてAIの活用を推進するため、イベントの企画運営などを行っています。

Q. 金融機関におけるAI推進の難しさや今の仕事のやりがいはどのようなところにありますか。

中山:金融機関においてAIを推進する上で最大の難しさは、「信用第一」という価値観に基づく厳格なリスク評価プロセスにあります。リスク管理を担う第二線の部署は、サイバーセキュリティやコンプライアンス、AI固有のリスクなどを多角的に審査し、導入の可否を慎重に判断します。

企画・推進側は、こうしたリスクを銀行として許容できる水準まで落とし込むため、設計や運用のあらゆる面で工夫を重ねる必要があります。一般的な企業では求められない水準まで配慮が必要であり、その分多くの労力がかかります。しかし、それこそが技術やユーザーを深く理解するための糧となり、自身の成長にも大いに役立っていると感じています。こうした厳しい審査を経てサービスがリリースできたときは、喜びもひとしおです。

平林:難しいと思うのは、AIの精度と信頼性の問題です。100%ではないことへの手当をどのように考え、理解を得るかがポイントになります。技術的な課題を克服してシステムの精度を向上させ、実際に行員の皆さんに使ってもらえるようになると、大きな達成感があります。特に銀行特有の膨大な文書が関わる作業では、生成AIによって大幅な効率化が可能です。最近では、手続検索支援システムが好評なので、とてもうれしく思っています。

森脇:私は現場の不安や理解の差に難しさを感じています。ルールをつくって勉強会を実施しても、部署や職種によって反応が大きく異なり、その分析と対応が課題となっています。それでも、継続的に教育を行うことによって、組織全体の理解を深めていけることには、大きなやりがいを感じます。

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 平林 一輝
(三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 平林 一輝)

生成AI活用の最先端で力を発揮

Q. 入行を決めた理由を教えてください。

中山:私は大学を卒業して、SIerに10年間在籍した後、2年間留学、それからAI関連のスタートアップやコンサルティング業界で、主にAIを「つくって提供する側」としてキャリアを積みました。2022年末にChatGPTの登場を目にした際、次第に「AIをつくる側」ではなく「使う側」に関心を持つようになりました。AIが生活やビジネスにより身近な存在となるこれからの時代には、技術を開発すること以上に「使い倒す」ことにこそ価値があると考えたからです。当初、金融機関は候補に入っていませんでしたが、エージェントからの紹介で銀行にもそういったポジションがあることを知りました。金融業界では人員減少に伴い大幅な効率化が求められており、AI導入が不可欠なのではないか、また、生成AIを活用すれば、メガバンクが抱える数千万人の顧客に対しても、個別にカスタマイズした対応ができる可能性があると考えました。最終的にMUFGを選んだのは、AI推進に積極的に取り組んでいたから。特にトップがそのメッセージを明確に打ち出しているところに頼もしさを感じました。

平林:私は卒業後、通信会社に約10年間勤務していました。ネットワーク運用保守を5年間行った後、R&Dに携わり、その間に、社会を変える力がある生成AIの可能性に魅了されました。転職に際しては、生成AIに関われる仕事を条件に、最初は技術系の会社を考えていましたが、私もやはりエージェントから金融業界での可能性を聞き、にわかに興味を持ちました。銀行で生成AIを適用することができれば、他業種へ影響が波及し、社会的に大きなインパクトになります。MUFGを選んだのは、初期からDX推進を牽引してきた方に面接でお会いして、感銘を受けたのが決定打になりました。

森脇:就職活動では、大学で学んだプログラミングを活かせることを重視しており、当初、銀行は視野にありませんでした。関心を持ったのは、デジタルコースがあると知ってからです。特にMUFGでは、面接前にデジタル関連部署で働く人たちと直接話す機会が設けられていて、実際の職場環境を知ることができました。オープンな雰囲気の中、生き生きと仕事をする姿に強く惹かれ、「この人たちと一緒に働きたい」と入行を志望する気持ちが固まりました。

Q. 入行してからイメージのギャップはありましたか。入行してから感じたMUFGの魅力を教えてください。

中山:ネガティブなギャップはなかったですね。むしろ、トップが期待していた以上にAI推進に積極的で、「ここまでやるのか!」というポジティブな驚きがありました。MUFGでは、社長をはじめ、役員層のAIへの感度が非常に高く、最新技術への探求心が旺盛です。AIインテリジェンスの重要性を明確に示し、チームに最新情報の収集を指示したところにも、その姿勢が表れています。

平林:同じく良い意味でのギャップで一番驚いたのは、意思決定の速さです。銀行といえば、何かと時間がかかるイメージでしたが、MUFGでは方針変更でも1日、場合によっては数時間で意思決定が行われます。また、承認が必要な部長クラスとの対話が非常にスムーズで、アイデアを素早く実行に移せる環境に魅力を感じています。

森脇:思っていた以上に自由です。キャリア採用か新卒かなどにこだわらないフランクな雰囲気も魅力です。若手でも意見が言いやすく、活躍の機会が与えられます。論理的に考えを伝えれば、たとえ最初は却下されても、実現する方法をアドバイスしてもらえます。実際に私も最近、企画した施策が採用になり、自分で運用を始めました。また、社会人経験の少ない私が、さまざまな年代の人にAI教育をすることには、恐怖心もありますが、それ以上にやりがいを感じています。

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 森脇 崇仁
(三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 森脇 崇仁)

時代に即したカルチャー醸成にも貢献

Q. 今後の目標や将来の夢を教えてください。

中山:MUFGをAI Nativeな会社にすることです。現在、ユースケース支援や生成AI関連のプラットフォーム整備を進めていますが、まだ生成AIの価値が行員全員に十分に届けられていないと感じています。銀行には、AIで業務効率を劇的に改善できるユースケースが膨大にあります。やりたいことがたくさんあるので、チームを大きくして、MUFG内のAI活用に関する課題や要望には「待ってください」と言うことなく、すべてに対応できる体制をつくりたいと考えています。

平林:私の目標は、行内の文化を変えることです。どういうことかというと、社会全体でも同じことが言えますが、行内でも、AIを利用することに、程度の差こそあれ、まだ心理的な壁があります。特に銀行には、人間の緻密な判断と丁寧な対応で顧客の信頼を築いてきたという文化があります。その文化からすると、AIで業務がブラックボックス化することには、抵抗感があるのかもしれません。しかし、業務がますます複雑化する今日、AI活用が避けられない選択肢であることは、誰もが理解しています。私はAIの信頼性を向上させ、AIを使う機会を自然と増やしていくことで、徐々に組織文化としてなじませていきたいと考えています。

森脇:私は、現在はまだ先輩のサポートを受けている部分が大きいので、自分で動けるだけの企画力と運営力を身につけることが目標です。また、後輩が入ってきた際には、リーダーとして彼らを引っ張っていきたいと思っています。

Q. 入行を希望する人へのメッセージをお願いします。

中山:MUFGは、世界最大級の顧客基盤と金融データを持つフィールドで、生成AIを含む最先端テクノロジーを本気で活用しようとしています。トップ自らが旗を振り、会社として生成AIに正面から取り組んでいるのが大きな特徴です。
ここでは、金融の専門性だけでなく、AIやデジタルの知見を生かせるポジションが数多くあり、自らの強みを活かしながら新しい挑戦をすることができます。数千万人規模のお客さまに影響を与えるサービスを設計できるというスケール感は、他では得られない経験になるはずです。
生成AIの活用によって金融のあり方そのものを変えていくダイナミックな変革に、私たちと一緒に挑んでみませんか。

Profile

※所属・肩書は取材当時のものです。

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 中山 智博

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr

中山 智博

大学卒業後、SIerに10年間在籍、2年間の留学を経て、AI関連のスタートアップやコンサルティングに従事。2024年1月、三菱UFJ銀行入行。AI推進チームのリーダーとして、AI-bowプロジェクト全体の取りまとめを行う。

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 平林 一輝

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr

平林 一輝

大学卒業後、通信会社に約10年間勤務、前半の5年間はネットワーク運用保守、後半5年間はR&Dに携わる。2024年2月、三菱UFJ銀行入行。AI-bowの基盤拡張、およびAIを使った社内サービスの企画を担当。

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr 森脇 崇仁

三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 AI・データ推進Gr

森脇 崇仁

2023年4月、三菱UFJ銀行デジタルコースに新卒で入行。勉強会の実施や情報宣伝により、AI-bowの行内活用促進に努める。MUFGグループ全体でのAI利用浸透を図るHello AI@MUFGも担当。