ジェンダー平等のテーマにおいて、女性のマネジメント比率の向上は特に重要な課題です。MUFGでは、中長期的な数値目標を設定し、経営トップのコミットメントのもと女性の育成・登用に取り組んでいます。上位職の女性社員に対しては、選抜研修やメンタリングプログラムなどを実施し、意識の醸成や、高度なスキルの習得機会を設けています。
銀行、信託、証券の3社では、2024年3月末までに日本国内の女性のマネジメント比率(注)を22%とする合同数値目標を設定しています。これは、多様な視点や価値観をより経営に近い領域で反映することを目的としたもので、中長期的に女性マネジメント比率30%を実現する過程におけるマイルストーンです。また、3社の合同数値目標のほか、各社で個別の数値目標を設定して、女性の登用を推進しています。
なお、2023年3月末時点で銀行、信託、証券における女性マネジメント比率(日本国内合算)は19.6%です。
- 銀行、信託、MUMSSを対象に、全労働者・正規雇用労働者管理職以上・正規雇用労働者非管理職・非正規雇用労働者の区分ごとに算出。
全労働者・正規雇用労働者は、他社への出向者を含み、他社からの出向者を除く。非正規雇用労働者は、嘱託を含み、派遣社員を除く。
平均値は(女性の平均年間賃金)÷(男性の平均年間賃金)により、中央値は(女性の年間賃金の中央値)÷(男性の年間賃金の中央値)により、割合を算出。
給与は、基本給および各種手当を合算した金額(賞与を除く)
上記の通り、主要3社においては男女間賃金格差があります。特に銀行においては、長きにわたり対個人窓口業務ならびに事務業務を支える部門において女性を中心としたBS職(一般職)の採用を続けてきた経緯があり、同職種においては比較的賃金の水準が低く、人数も多いことから、結果として男女間の賃金格差を拡大させる要因になっています。今後、2024年度に予定している「Ex制度」(特定の業務領域で専門性を追求可能な制度)の導入に加え、2025年度には総合職とBS職のコースの垣根を解消し、「プロフェッショナル職」を新設するなど、人事制度の改訂を予定しています。これにより、性別やコース区分等にとらわれない、自律的なキャリア形成をより一層後押ししていきます。
また、管理職・上位職への登用にも男女間格差があり、従前より銀行・信託・証券では各社ごとおよび合同での女性マネジメント比率のKPIを掲げ、女性のキャリア形成を支援しています。2022年には上位職層を対象とした役員メンタリングプログラムやLeaders Forumを開催しており、中堅層に対しても合同研修の新設や上位職層の女性がメンターとなり中堅・若手女性を育成する社員間でのメンタリングプログラムを開始する等、従前の取り組みに加えて、キャリア形成機会の提供を充実させています。
同等の職位間では男女間の賃金差異は80-90%台であるものの、時間外労働や時短制度の利用等、男女間の労働時間の違いに起因する差分も見られます。この点は、働き方改革の推進や男性の育児参画等を推進することで格差是正につながると考えています。
今後も各社で、より上位職層への女性登用拡大や勤務制度の柔軟化を進めることで女性の活躍機会を拡充し、ジェンダー平等・男女間賃金格差の是正をめざしていきます。
働き方改革に関する取り組みは「柔軟な働き方の提供」をご覧ください。
銀行、信託、証券では、経営層・管理職層の女性向けに、役員による個別メンタリングプログラムを実施し、キャリア形成上の課題解決等をサポートしています。また、選抜研修として、「WILL(注1)研修」を三社合同で開催し、より上位職での活躍に向けた「戦略構築力」「論理的思考力」等の補完的習得機会を提供しています。
管理職未満層に対しては、「WISH研修(注2)」として、「キャリア」、「リーダーシップ」等をテーマに、同職位間や女性マネジメント層との対話を通じて、管理職をめざすことを検討する場を提供するなど、次世代のリーダー育成にも力を入れています。
また、希望者を対象として、先輩社員にキャリアやライフイベントとの両立に関する悩みを相談できるオンラインでのネットワーキングの場など、さまざまなプログラムを提供しています。
- Women’s Initiative for Leadership and Learning
- Women's Initiatives Seminar on How to design our own career
階層 |
プログラム |
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経営職階 |
・MUFG Leaders Form(役員座談会)
・役員メンタリング
・外部研修派遣階層別研修
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中堅 |
・WILL研修(経営層・管理職層向け研修)、WISH研修(次世代向け研修)
・メンタリング
・外部研修派遣
・階層別研修
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全階層 |
・階層別研修
・ネットワーキング(キャリア座談会等)
・Job Challenge(公募制度)
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2022年度より、役員メンタリングプログラムの対象年次を引き下げ、対象者を約150名に大幅に拡大しています。2023年度はさらに対象を拡大し、マネジメント候補の女性に早期に経営視点を養う機会を積極的に提供することで、女性登用をより一層加速させていきます。また、Microsoft Teamsを活用した女性向けの社員コミュニティ「WIN-Japan」を開設し、女性同士でいつでも気軽につながり、コミュニケーションをとることができる環境を整備しています。
マネジメント候補者を対象に、上司を巻き込みながら、アセスメントや面談を通じて、成長を支援していくプログラム「Women's Leadership Program」を約5ヵ月間にわたり実施しています。
女性管理職を対象としたメンタリングプログラムと、管理職候補者の研修受講を拡大し、育成を加速させています。5年次女性社員全員にはキャリア形成、ライフイベントに対する不安払拭を目的に研修を実施し、先輩社員とのネットワーク、キャリア意識醸成に繋げています。また、女性社員のキャリアを紹介する「STEP」を創刊し、多様なキャリアを知る機会を提供しています。
社員一人ひとりの自律的な成長機会を支援することを目的に、キャリアを考えるセミナーやコース転換後のフォローセミナーの実施、管理職候補者にメンターを付けること等により、キャリアアドバイスを行っています。
自分らしく長く働き続けるための「キャリアデザイン研修」を実施しています。育児と仕事を両立しながら活躍している女性社員とのパネルディスカッションを実施するなど、女性ならではのキャリアについて考える機会を提供しています。
南カリフォルニア大学が提供している多様な女性リーダーの育成を目的とした「The Multicultural Women Executive Leadership Program (MWELP)」では、さまざまな国やカルチャーにおいて実際に活躍する女性リーダーによる研修やコーチングが受講可能です。MUFG Americasからも毎年多くの女性社員が本プログラムに参加しており、参加者は、本プログラムを通じてリーダーとしてさらなる成長することをめざします。なお、本プログラムはMUFG Americasもスポンサーとなっています。
欧州ではVice Presidentレベルの女性のためのコミュニティ「SHEROES」を立ち上げました。 SHEROESは、各分野の専門家とも連携しながらキャリアアップに向けたスキルの研鑽を図り、メンバー同士で支えあい、高めあうことをめざすコミュニティです。本活動においては、ゲストスピーカーを招いたイベントの開催、CSR活動、書籍の研究、国際女性デーなどの主要なイベントへの参加、オスカーのような毎年恒例のガライベント等があります。
配偶者の海外転勤に伴う退職者の再雇用や休職制度、勤務地変更制度等を設けて、キャリアの継続を支援しています。
銀行、信託、証券では、3社の合同目標として「2024年3月末までに女性マネジメント比率を22%とする」ことを設定しています。社員のキャリア形成には、部室店長の部下育成力・サポートが不可欠であることから、部室店長を対象とし、3社合同での「MUFGダイバーシティ・マネジメントフォーラム」を2022年度に新設しました。銀行・信託・証券の人事担当役員がファシリテーターとなり、外部有識者やMUFG女性役員との対話を対談形式で実施し、MUFGの部室店長約1,200名は視聴必須としています。今後も、部室店長が女性登用・女性育成の必要性を実感し、現場で実践することを後押しする場として継続していく方針です。
毎年3月8日は、国連が定める「国際女性デー」(International Women’s Day、IWD)として、世界中で女性の社会、経済、文化、政治における功績を祝福し、ジェンダー平等について考えるイベント等が開催されています。
世界でジェンダーギャップ解消における取り組みが進む中で、MUFGも金融商品やサービス、社会貢献活動、風土醸成等を通じて世界のジェンダー平等に貢献しています。
2022年度には「MUFG Happy TRY Festival」を開催しました。「楽しくためになる、3日間」をテーマに、女性特有のがんや健康について学ぶセッションや東名阪の会場をつないでDEIの精神を体現するスポーツであるラグビーの試合を社員の家族とともに観戦するイベントを開催。セッションでは東京藝術大学准教授でアーティストとしても活躍中のスプツニ子!氏による「女性の健康支援とDEI推進」についての講演のほか、4名の女性役員による心身の健康維持法や自己啓発をテーマとしたトークセッション、育児両立に関する社員座談会、公募を通じて社員が企画した不妊治療セミナーを実施しました。
社員による有志の活動が活発に行われており、女性社員の有志団体–Women’s Initiative Network(WIN)が、米州の全社員に向けた各種オンラインイベントを開催したほか、カナダや南アメリカでも現地拠点主催のローカルイベントを開催しました。
2023年の国際女性デーのキーワードである 「Embrace Equity(公平性の尊重)」をテーマに、誰もが自分の真価を発揮すべく、公平で多様性のある職場をめざし、欧州の役員主催の交流会や、女性のこころと健康に関するウェビナーなどを開催しました。
アジア・欧州においてDEIの取り組みを支援する、部門の地域マネジメント3名を招いたパネルディスカッションやセミナーを開催しました。その他にも、IWDをより身近に感じる取り組みとして、IWDのテーマカラーである紫色のアイテムを身につけて、指定のポーズで撮影した写真をリレー形式でEメール送信するイベントを行っています。また、社員同士で①女性の功績と貢献、②女性の活躍を支援する男性に感謝を伝えるe-cardを送りあうイベントを実施しました。
MUFGでは、性的指向・性自認等にかかわらず、自分らしく働ける職場づくりをめざし、性的指向・性自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を明記しています。
グループ各社でeラーニング等による研修や映画の上映会等を実施し、正しい理解の浸透と、差別・偏見の防止への意識向上に取り組んでいます。職場で持つべき心構えや、起こりがちなケースへの対応等をまとめた「職場のためのLGBTハンドブック」を発行し、当事者の上司などを中心に役立てられています。 2022年2月には、性の多様性を描いた図書や絵本について学ぶ「インクルーシブな図書を考える会」を開催しました。
銀行、信託、証券、ニコス、MUSビジネスサービス、MUS情報システム、三菱UFJインフォメーションテクノロジーでは、社員の同性のパートナーを配偶者と同等と認定し、休暇や家賃補助等、社内の福利厚生の利用を可能とする「同性パートナーシップ認定」制度を導入しています。
毎年、東京の代々木公園で開催される「東京レインボープライド」(注)に協賛しており、2021年以降は3年連続で、みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループと協働してその活動を支援しています。2023年は、オンラインブースの出展とSNS投稿、また、それらで利用するメッセージ動画を3社で協働制作し、社会に対するメッセージを発信しました。
- 特定非営利活動法人「東京レインボープライド」が主催する、LGBTQ当事者とそのAlly/アライ(理解者・支援者)が一堂に会する国内最大級の啓発イベントです。
毎年6月は「プライド月間」として、世界各地でLGBTQへの支持を示すイベントが行われます。MUFGは、2023年6月のPRIDE月間中、グローバル各地域でLGBTQへの理解を促進し、その権利を啓発するための取り組みを実施しました。
みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループとの合同企画として、LGBTQ当事者の視点を描く映画の鑑賞を通じて、当事者やその家族が直面する課題、さらには一人ひとりの個性や価値観を受け入れることの重要性を学びました。イベント会場には、三社の社員とそのご家族、ご友人約100名にご来場いただき、また同時オンライン配信も実施しました。
DEI、カルチャー、フィランソロピー(慈善活動)チーム、そして社員主体のコミュニティ(ERN)である 「Pride Alliance Employee Resource Network」が一体となって`Together with Pride’をテーマにPRIDE月間のイベントを開催しました。反ユダヤ主義、LGBTQ、異なる人種等に対するヘイトスピーチや暴力などが職場における生産性や社員のメンタルヘルス、ウェルビーイングに悪影響を及ぼすことから、一人ひとりが良いAlly/アライ(理解者・支援者)となり、より安全な職場環境を構築するためにはどうすべきなのか、”Become an Upstander and An Effective Ally”という社員向けのラーニングセッションでディスカッションしました。また、ERN主催でGod’s Love We Deliver (GLWD)というボランティア活動に社員が参加し、支援を必要としている地元の方に栄養のあるおいしい食事を料理して届ける取り組みも実施しました。
一人ひとりが自分らしさを表現しながら活躍できるインクルーシブな職場環境を醸成することを目的に、欧州の「Pride Alliance Employee Resource Network」が主体となってさまざまな取り組みを行っています。アライシップの輪を広げるための活動として、Eメールの署名に発信者の性自認に応じてshe/her(女性)、he/him(男性)などのジェンダーを表す代名詞や、they/themといった女性・男性の枠組みに捉われないノンバイナリーの代名詞の記載を社員に呼び掛けています。それにより、さまざまな性自認・性表現が存在することを可視化し、一人ひとりの性自認が異なることについて関心が高まるきっかけとなりました。また、レインボーカラーのデコレーションでオフィスを飾り、PRIDE月間を祝いました。
インクルーシブな社内風土醸成の一環として、6色のレインボーカラーのオリジナルストラップを制作し、希望する社員に配布しています。LGBTQの理解者であるAlly/アライを社内で顕在化させるとともに、当事者の存在を意識するきっかけにしています。
特例子会社の設置や、障がい特性に配慮した職場環境整備により、障がいのある社員の活躍の場を拡げています。現在、MUFG全体では、約1,400人の障がいのある社員が活躍しており、国内のグループでの雇用率は2.60%(注)(2023年6月1日時点)となっています。
- 法定雇用率制度で定められた算出式を用いて、銀行、信託(前述の2社は特例子会社およびグループ適用関係会社を含む)、証券、ニコス、アコムにおける国内の雇用率を算出したもの。
銀行および信託では特例子会社を設置しています。一人ひとりが能力・適性に応じた役割を果たすことによって、働きがいを得ながら、社会に貢献していくことをめざしています。
三菱UFJビジネスパートナー
(三菱UFJ銀行特例子会社)
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1996年設立。神奈川県、東京都、大阪府、愛知県の4 拠点で計約370人の障がいのある社員が、障がい特性に配慮した職場環境で業務に励んでいます。各種銀行事務や名刺印刷など多様な業務に加え、学校向け出張授業や障がい者雇用セミナーの開催等、共生社会推進への取り組みを障がいのある社員主体で運営し活躍の場を広げています。
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菱信データ
(三菱UFJ信託銀行特例子会社)
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1979年設立。
都内3拠点で計約60人の障がいのある社員が業務に励んでいます。
聴覚に障がいのある社員が中心のため、「3色パトライト」で来客や緊急時等を知らせたり、一日の業務量と作業の進捗状況を「大型モニター」に掲示して共有したりするなどの工夫がされています。また、会議や研修では、音声認識ソフト等も活用しています。
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グループ各社で障がいのある社員にとって働きやすい職場づくりに取り組んでいます。銀行では、聴覚に障がいのある社員には、音声情報を文字情報に転換して表示する音声認識アプリ付iPadの配付や、非常警告灯(パトライト)の設置を実施しています。視覚に障がいのある社員には、パソコンの文字を音声に変換して出力する音声読み上げソフトを導入しているほか、盲導犬同伴で勤務する社員もいます。
証券では、役職員の健康増進に向け、2022年度に本社にマッサージ室を開設し、国家資格「あん摩マッサージ指圧師」の有資格者をヘルスキーパーとして配置しました。また、ヘルスキーパー制度を導入し、マッサージの施術や健康に関する助⾔を通じて、社員の健康増進、疲労回復、業務の⽣産性向上等をめざしています。ヘルスキーパーとして視覚に障害を有する社員を採用・配置しており、障がいの有無にかかわらず、すべての役職員が相互に尊重し、支え合い、働くことのできる就労環境をつくることも同時にめざしています。
■株式会社ミライロへの出資と共生社会に向けた取り組み
銀行は、株式会社ミライロが掲げる「バリア(障がい)をバリュー(価値)に変える“バリアバリュー”」の理念と事業内容に共感し、DEI推進の強化に向けたパートナーシップを目的として、2023年5月に同社に出資しました。
本出資を通じて、MUFGのお客さま、さらには社会全体への新たなサービスや価値の提供に取り組み、多様な人材が活躍できる共生社会の実現に向けて、より一層貢献していきます。
MUFGでは、シニア人材が豊富な経験や能力を最大限活かして、継続的に活躍できる職場づくりや自律的なキャリア形成の支援を進めています。
一定の年齢を迎える社員を対象に、多様な価値観に基づくキャリア形成を考えるための研修や能力開発を支援するプログラムを導入するほか、安定的な就労機会の提供と多様なニーズに応えられるよう、定年以降も柔軟な勤務形態での継続雇用制度を設けています。
MUFGは、世界50以上の国でビジネスを展開しています。海外では現地採用を積極的に推進しており、全社員のうち、約57%が海外採用社員で占められています(2023年3月末時点)。グローバル各地域の社員一人ひとりが、それぞれの違いを尊重し、活かし合いながら活躍できる職場環境を醸成するとともに、各国の人材から「MUFGで働きたい」と思われるよう、国内外に対して企業ブランド醸成を図っています。
MUFGでは、さまざまな専門領域で活躍するプロフェッショナル人材が多様なバックグラウンドやスキルを活かしながら活躍しています。グループ各社では、各種研修・OJT等を通じて積極的な人材育成に努めていますが、新事業への進出・展開等にあたっては、新たな分野の専門性を有する、即戦力となる人材が必要になることなどから、外部人材の採用や業務領域別採用を積極的に進めています。
- キャリア採用比率はMUFGにおける2022年度実績。キャリア採用管理職比率はMUFGにおける2023年3月末時点の数値。