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CEATEC 2021 NTTドコモ・マネーフォワード・MUFG対談(テキスト版) CEATEC 2021 NTTドコモ・マネーフォワード・MUFG対談(テキスト版)

CEATEC 2021 NTTドコモ・マネーフォワード・MUFG対談(テキスト版)

日経ビジネス2021年11月22日号掲載

変わる価値観、カルチャー改革の重要性
経営者が語る改革・デジタル・持続可能性

2021年10月19日に開催されたITとエレクトロニクスの総合イベント「CEATEC 2021」において「デジタル変革の中で新たな社会のプラットフォームを創る わたしたちの役割とグローバルな共創」と題した対談が行われた。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規取締役代表執行役員社長グループCEO、NTTドコモの丸山誠治代表取締役副社長、マネーフォワードの辻庸介代表取締役社長CEOの3人がデジタルトランスフォーメーション(DX)と持続可能性をテーマに語り合った。進行は日経BP総合研究所の大和田尚孝上席研究員が務めた。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中の価値観や生活様式が変わりました。経営者として自社の存在意義をどのように考えていますか。

三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役代表執行役員社長 グループCEO 亀澤 宏規氏

三菱UFJフィナンシャル・グループ
取締役代表執行役員社長 グループCEO
亀澤 宏規氏

亀澤:私が社長に就任してすぐ日本では緊急事態宣言が発出され、生活様式が大きく変わる中で「我々の存在意義は何だろう」と深く考える機会が多くありました。その中で思い至ったのが、いまMUFGが掲げている「世界が進むチカラになる。」です。この言葉を各社員が自身の仕事に結びつけられるよう、パーパス起点での全社の対話に取り組んでいます。
丸山:私も「我々のサービスがコロナ禍での新しい生活様式の役に立っているのだろうか」と改めて考えさせられました。例えばリモート会議は便利ですが、リアルほどはよくない。コンサートもやっぱりリモートだと物足りない。私自身がこう実感しました。リモートであってもリアルと同様の満足感を得てもらえるよう、NTTドコモがやるべきことはたくさんあります。
NTTドコモ 代表取締役副社長 丸山 誠治氏

NTTドコモ
代表取締役副社長
丸山 誠治氏

優れたデジタル技術を駆使し、圧倒的な力を持つプラットフォーマーが世界で台頭する一方、「マイクロサービス」化など機能・サービス単位での企業間連携が加速しています。こうした動きをどう見ていますか。

マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介氏

マネーフォワード
代表取締役社長CEO
辻 庸介氏

:いまプラットフォーマーと呼ばれる企業も、最初からそこを目指していたわけではなく、圧倒的に使いやすいサービスを提供してきた結果だと思います。マネーフォワードは、プラットフォーマーとは程遠い規模ですが、圧倒的に使いやすいサービスを提供するという点では同じことをしていきたい。マネタイズするためにデータをお預かりするのではなく、良いサービスを提供した結果、データをお預かりでき、思いもよらない価値を提供できるようになれば理想的です。
丸山:イノベーションをいち早く取り入れた企業がプラットフォーマーとして成功していると感じます。当社としても優れたプラットフォームを提供することは大事だと考えています。当然、自社だけでは難しいので、様々な企業の力を借りたい。それからデジタル技術についていくのが難しいお年寄りの方などに寄り添うことも重要です。例えば当社はドコモショップでスマホ教室を開いており、既に約1200万人にご参加いただいています。

MUFGは「金融・デジタルプラットフォーマー」を掲げています。どのような姿を目指していますか。

亀澤:私が考えるプラットフォーマーの定義は、自社で強いインフラを持ち、その上でのルールを自分たちで決め、多くの人を呼び込んで一緒にサービスを提供する、というものです。そういった姿を目指してNTTドコモ、マネーフォワードとも、シンガポールで配車サービスを提供しているGrab社とも提携しました。

 

デジタル化の鍵は全部がつながることであり、そこで生じたデータをどう扱うかです。いま様々な産業で機能単位に分割する「モジュール化」が起きています。当社もバンキング機能をモジュール化し、他社の様々なサービスと融合して新たな価値を作っていきます。

最近は大企業がベンチャー企業と組むなど、オープンイノベーションの動きが活発です。業種や事業規模が異なる企業と提携する狙いはどこにありますか。

辻:これだけ社会の変化が激しいと、企業は変化に対応する必要が生じます。しかし、大企業は既存のオペレーションなどを変えない方が都合の良いケースもあります。そこで外部のスタートアップと新たな実験を繰り返して、ある程度メドが付いたら一緒にサービスを始める手があります。スタートアップ企業からしても、必死に取り組んでイノベーションを起こしたところが残っていく。マクロ的に見ると大企業とスタートアップは良い組み合わせだと思います。
丸山:いまやオープンイノベーションなくしては、新たな領域に乗り出すのは難しいと実感をしています。当社はコーポレートベンチャーキャピタルとして100社以上に700億円規模の投資をしています。お金を投じるだけではなく、ビジネス面での協業にも積極的に取り組んでいます。これからの時代はいろいろ方々とオープンにクリエートしていく活動がより重要になると思います。
亀澤:当社は、世界に変革をもたらす熱意を持ったベンチャー企業の方々と革新的なビジネスの立ち上げを目指す「Digitalアクセラレータ」の活動で、40社近くを支援しています。そこで若い人たちと話すと「MUFGと取り組みたい」と言う理由は3つ。まず当社のお客さま向けに自分たちの力を試したいという思い。次に当社の資本力への期待。最後が「MUFGの信用、信頼を基に一緒に挑んで成功したい」ということ。それが「社会課題の解決にもつながっていく」と言ってもらえます。

変革に向けた社内のカルチャー改革と社員のエンゲージメント向上について、どのように取り組んでいますか。

亀澤:会社はお客さまのために存在し、社員は会社そのものです。お客さまは対応した1人の社員のことを見ます。従って、社員一人ひとりが会社の方向性をしっかり理解することが重要です。それには社員のエンゲージメントが欠かせず、エンゲージメントを重視する経営を一生懸命進めていきます。
辻:会社とは何かを突き詰めて考えると、人でありカルチャーです。カルチャーは人が長く在籍して醸成されるものです。一方、プロダクトについては、当社が作れるものは、究極的に言えば、時間や人などのコストをかければ他の会社でも作れる。つまりカルチャーこそが競争優位性であり、そこに磨きをかけていきます。

持続可能な社会と新しい未来のために、どう取り組んでいますか。

亀澤:当社の中期経営計画のキーワードはDXとカルチャー改革、そしてサステナビリティです。社会が持続可能で初めて、MUFGも成長できます。いままではまずビジネスがあって、「この商売はこの社会課題に当たる」と後付け的な議論でした。この順番を逆にして、「この社会課題を解決するために当社が存在しており、この業務がある」と考えると、社員の意識が変わります。社会課題の解決と戦略を一体化させることで社会に貢献していきます。