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Power to Inspire Story

挑戦し続けるアスリートたちの物語

Power to Inspire: SPECIAL TALK. Alessandro Del Piero x Cafu

まだ僕らがやるべきこと、できることはたくさんある

Alessandro Del Piero x Cafu

アレッサンドロ・デル・ピエロ × カフー

元プロサッカー選手、ローレウス・ワールド・スポーツ・アカデミーメンバー

スポーツには、ただ競い合い、楽しむだけでなく、人々を成長させ、社会をも変える力がある。スポーツを通して挑戦を続け、多くの人を奮い立たせてきたアスリートたち。彼らは何を考えながら戦い、そしてどんなヴィジョンをその胸に秘めているのか。

長年にわたり、サッカー界を盛り上げたアレッサンドロ・デル・ピエロとカフー。彼らはいまローレウス・ワールド・スポーツ・アカデミーのメンバーとして、自らの可能性、スポーツの可能性を信じ、世界をよりよく変えるための活動を行っている。

Alessandro Del Piero x Cafu
ローレウスは僕に役割と場所を与えてくれた

90年代から2000年代初頭にかけて、イタリアのプロサッカーリーグ・セリエAは、間違いなく世界一のリーグであった。世界中のトッププロが集まり、しのぎを削る。その様子は日本を含め世界中のテレビで放送され、セリエAの選手たちは世界レベルでのスターとなっていった。その中でもトップクラスの人気を誇ったのが元イタリア代表のアレッサンドロ・デル・ピエロと元ブラジル代表のカフー。かつてライバルとして幾度となく戦ってきた2人は、現在ともにローレウス・ワールド・スポーツ・アカデミーのメンバーとして、スポーツの力で世界を変える取り組みを行っている。

デル・ピエロ 僕が最初にローレウスから声を掛けてもらったのは、2006年にワールドカップで優勝したときだったかな。ローレウスが行っているチャリティ事業について詳しく説明を受けてとても興味深く感じたんだけど、現役中はサッカーに集中したかった。それで2015年に引退した後、2016年にアカデミーに入ることになったんだ。

カフー 僕も同じ年にアカデミーに入ったよ。ちょうどリオ五輪を前にローレウスがブラジルでいくつかのプロジェクトを立ち上げていて、その手伝いをすることになったんだ。

かつてのライバルは今の友。2人は少年のように笑顔で語り合う。2人が再会したのはドイツ・ベルリン。2020年2月17日、この地でローレウス・ワールド・スポーツ・アワードの授賞式が行われ、アカデミーメンバーの2人も揃って出席した。

カフー ローレウスの活動に参加して本当に良かったと思うのは、サッカー以外のスポーツ界のレジェンドに会い、様々な話ができること。彼らと交流し、現役時代や引退後の話を聞くことは、人生を豊かにしてくれる。ローレウスの様々な活動がたくさんの人に明るい未来を与えているのはもちろんだけど、実は何より僕自身が楽しんでいるんだ。

デル・ピエロ 僕もアカデミーに誘ってもらったことを感謝している。スポーツを通して社会に貢献したいと漠然と思っているアスリートはたくさんいると思う。でも、僕自身もそうだったけど、具体的に何をどうすればいいのか分からない。ローレウスはそんな僕に役割と場所を与えてくれたんだよ。ローレウス・イタリアが行なっている障がいのある若者をサポートするプロジェクトに参加したりね。カフーは、普段どんな活動を行っているんだい?

カフー 僕はローレウスが南米で活動を行う際のアンバサダーの仕事をしているよ。それぞれの国に行き、具体的な活動内容についての監修もする。2004年からブラジルで自分の財団を立ち上げて、サッカーやダンス、カポエラといったスポーツを中心にアートや職業訓練なども含めて、これまで950人の子どものサポートをしてきたんだけど、ローレウスはそんな僕のチャレンジも応援してくれている。

デル・ピエロ そうなんだ、母国のために力を発揮できるのは嬉しいことだね。僕も今はアメリカで生活しているけど、イタリアで何かやるときは真っ先に飛んでいくよ。
Alessandro Del Piero x Cafu
スポーツにしかできない、スポーツだけができる偉業

カフー ブラジルでもそうだけど、サッカー選手が果たせる役割はイタリアでもかなり大きいはずだよ。特にアレッサンドロみたいなスター選手はね(笑)。

デル・ピエロ イタリアの場合、州ごとにかなり違う文化を持っている。北と南の対立もあるし、なかなか一つになるのが難しい。でも話がサッカーになるとまとまる。それは一瞬のことかもかもしれないけど、スポーツが国民を一つにすることができるんだ。イタリア人にとって、アートとスポーツは特別なもの。音楽を聞いて感動し、サッカーに情熱を注ぐ。イタリアの人々に希望と愛情を与えてくれるんだ。

カフー ブラジルでもそうだね。ブラジルは去年、南米選手権で優勝し、今年の2月に東京五輪の予選突破も果たし、また盛り上がっているよ。リオ五輪や自国でのW杯に反対した国民もいたけど、結果的に観光客が増加したし、ブラジル国内の企業の業績も良くなった。たくさんのインフラも残ったし、プラスになったのは間違いない。

デル・ピエロ 経済的な効果だけじゃないよね?

カフー もちろんだよ。リオ五輪で柔道の金メダルをとったラファエラ・シルバ選手はリオデジャネイロのスラム街出身で、LGBTの選手。多様性の象徴ともいえる彼女の活躍は、ブラジルの子どもたちへの影響も大きかった。ブラジルは、貧富の差が激しいし、国家運営は常に不安定。でもオリンピックはきちんと開催できた。これはスポーツにしかできない、スポーツだけができる偉業だよ。

まだ僕らがやるべきこと、できることはたくさんある

スポーツ界がまだまだ多くの問題を抱えているのも事実だ。ドーピングやハラスメント、アマチュア選手にとっては活動環境や資金の問題もあるだろう。また、引退後はセカンドキャリアについて壁にぶち当たることもある。デル・ピエロとカフーもこの問題に積極的に取り組んでいるという。

デル・ピエロ 「アスリートは二度死ぬ」という言葉があるけれど、本当にそうだと思う。選手としての死=引退と、本当の死。引退のときを迎えてルーティンと収入を失ったとき、多くのアスリートが精神的なダメージを負ってしまう。ローレウスでは、こういったアスリートのためにセカンドキャリアのセミナーを開くべきだと思う。彼らのスキルや経験を次の世代のために活かす機会をつくっていかなければと思っているんだ。

カフー 僕らはローレウスに声を掛けてもらったことで、引退後の自分のヴィジョンが見えた。そういう機会を多くのアスリートに与えていきたいね。できれば選手としてのキャリアが終わる前の段階で、コーチやトレーナー、代理人などの勉強を始めるためのサポートをするとか。そういった勉強は、年齢を重ねたアスリートの力にもなると思う。

デル・ピエロ セカンドキャリア以外にも解決すべき課題はたくさんあるよね。

カフー たとえば、ジェンダーについての課題。スポーツの世界は、まだまだ男女平等とはいえない。賞金も規模もまだまだ男子優勢だからね。いきなりプロの世界を変えるのは大変だから、まずはジュニア世代からスポーツ界における男女平等に取り組むと良いと考えているよ。

デル・ピエロ スポーツ界が変われば、世界も変わる。

カフー 僕もそう思うよ。引退したとはいえ、まだ僕らがやるべきこと、できることはたくさんありそうだね!
Alessandro Del Piero x Cafu

アレッサンドロ・デル・ピエロ(右)

1974年生まれ、イタリア出身。セリエAの名門ユベントスで93年から2012年までプレー、513試合に出場し208得点を上げた。95年から2008年まではイタリア代表としても活躍し、3回のワールドカップに出場。2006年のドイツ大会では優勝に大きく貢献した。2015年に引退し、現在はアメリカで生活。レストラン経営などを行っている。

カフー(左)

1970年生まれ、ブラジル出身。地元サンパウロでプロデビュー、セリエAのローマやACミランでも活躍。1990年から2006年までの長期間ブラジル代表に選出。4回のワールドカップに出場、優勝2回、準優勝1回という輝かしい成績を残した。ポジションは右サイドバック、右ウイングバック。「右サイドの支配者」の異名で呼ばれていた。プレー中も笑顔を絶やさないことで知られており、人を幸福な気分にさせてくれるその笑顔は引退した今も変わらない。カフーはニックネームで、本名はマルコス・エバンジェリスタ・デ・モラエス。
文・川上康介 写真・淺田 創 コーディネート・フローラン・ダバディ
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ローレウス・ワールド・スポーツ・アカデミー ホームページ(英語)
https://www.laureus.com/