350万DL!スマートアイデア社の「2秒でつける」家計簿アプリ
スマートアイデア社はもともと、家計簿アプリ「2秒家計簿おカネレコ(以下、おカネレコ)」を開発し、展開してきた。ユーザーのおよそ7割が女性で、年代別の内訳はそれぞれ、20代女性が42%、30代女性が25%、40代女性が17%となっている。
江尻社長は、おカネレコのユーザーについて「時間のない中で使えることもあり、OLの方はユーザーの51%。主婦やパートの方が23%、中には男子学生も使っている」と解説する。
スマートアイデア社はおカネレコを2013年の秋にリリースしており、現在ではアプリのダウンロード数も350万に達するなど、多くのユーザーを獲得している。アプリの機能改善も進んでおり、マーケティング分野で活躍してきた江尻社長の経験を活かして、ユーザーの意見を反映させた開発を進めている。
江尻社長は、「ユーザーの中にはアプリのようにデジタルデータだけではなく、紙で家計を管理したいと感じる人もまだまだいる。そうした要望に応えて、家計簿を印刷する機能を備えている」と、アプリの機能改良について説明する。
他には、開発面での体制構築でもスマートアイデア社は工夫を凝らしており、ベトナムに開発拠点を開設している。現地では、約10名のベトナム人エンジニアたちが、プロダクト開発を担っており、江尻社長は「ハノイ工科大学出身のスキルの高い、エンジニアを採用できている。『おカネレコ』も約3ヵ月で開発できるくらいのスピード感のある開発ができている」と話す。
お金について楽しく学ぶアプリ『おカネNavi』
「MUFG FinTech アクセラレータ」で、スマートアイデア社は新たなアプリプロダクトを企画、開発しており、その点では確かな成果を得た1社である。「楽しみながらお金について学ぶ」をコンセプトにしたアプリと、おカネの相談に優しく答えてくれるチャットボットの開発に結びつけたのだ。
スマートアイデア社はすでに「楽しみながらお金について学ぶ」アプリである「おカネNavi」の展開を開始した。このアプリはお金について学べるゲームで、キャラクターから出されるクイズに答えることで進めていく。登場する「イケメン」キャラクターが対話相手になることで、ユーザーにゲームを楽しみながらお金についての知識を身に付けてもらうのが狙いだ。
江尻社長は「おカネNavi」のアイデアについて、「メンターの方から『恋愛シミュレーションを組み合わせると面白いのではないか』というアドバイスをもらったことがきっかけだった。モテ女子になり、対話を楽しむことを習慣化し、金融教育に活かせるのではないかと開発した」と開発の経緯を語る。
クイズの内容は、例えば出産一時金の支給額についてなど、内容は具体的に役立つものである。クイズが「難しい」という評価もあるが、最終的にはお金の教育につながる。
現在のところ、アプリをダウンロードしたユーザーの継続率も高く、今後の展開に期待しているという。ゲームのイケメンキャラクターに、より魅力的なイラストを用いるなどの計画も進んでおり、今後どのように進化していくのか注目だ。
またスマートアイデア社は、顧客対応を行うチャットボットである「Robo Financial Adviser」を、併せてアクセラレータプログラムをきっかけに立ち上げた。このチャットボットを活用すれば、スマホを使ってお金について「専門家や銀行などに何を相談して良いのかわからない」などの悩みに答えることができる。実店舗での相談を予約することもでき、顧客との接点強化策の一つにも位置づけられそうだ。
江尻社長は「スマホでのやりとりで、ある程度まで来店客の要望を聞き出せるようになる。窓口で並ばなければならないという不満の改善を図れるほか、ユーザーが欲しい情報をより得やすくなるというメリットがある」と説明する。
また「おカネNavi」と「Robo Financial Adviser」を開発したMUFG FinTech アクセラレータプログラムの中でも、スマートアイデア社のベトナムにある開発拠点が機能し、活躍したという。江尻社長がメンターからコーチングを受けたり、ディスカッションでアイデアを出し合ったりした後、ベトナムの拠点がフィードバックを参考にアプリを開発。アクセラレータプログラムで得られるメリットと、自社の開発リソースを上手く連携させた取り組みである。
「自社を外側の視点から見た」アクセラレータプログラムの4ヵ月
スマートアイデア社は、2つの新しいプロダクトをアクセラレータプログラムで具体的な製品に落とし込んだ。「おカネNavi」と「Robo Financial Adviser」を製品ラインアップに加えただけでも大きな成果に見えるところだが、江尻社長にとっては他にも得られたものがあるという。
江尻社長によれば、アクセラレータプログラムへの参加のメリットには、ベンチャーキャピタルなどですでに活躍しているメンターたちから意見が得られることだという。また、同じプログラムに参加したスタートアップやベンチャーと培ったネットワークや、そこで情報交換ができることなどもメリットである。
ベンチャーにとっては出来ることが限られている中で、数多く得られるアイデアや企画、アドバイスを整理して、具体的な形に落とし込んでいくことが重要だ。「いろいろなアイデアがあり、もっと絞り込めたらより良かったのではないか」と江尻社長も自身の経験を振り返る。
他にも江尻社長は「MUFG FinTechアクセラレータプログラムに参加する前は、自身の事業の中から自社を見ていたが、プログラムの中では、自社事業の枠の外側から会社のことを見られた。アタマも柔らかくなり、今後を考える上でもいい機会だったし、いろいろなものにチャレンジしようと思えた」と、アクセラレータプログラムへ参加した意義を説明する。
スマートアイデア社や江尻社長にとってアクセラレータプログラムへの参加は、今後さらなる飛躍へのきっかけとなるだろう。